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    azusa_n

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    #チェズルク版ワンドロワンライ
    「花」「もっとしたい」
    前回のお題に記念日お祝いを添えて。
    尚、全然ワンドロではない。

    デートの途中、ルークが足を止めた。
    スイーツの店ではなく花屋とは、彼にしては珍しい。

    「ボス、私以上に目を引く花がおありで?」
    くぎを差したのにも気付かず、ひとつの小さい鉢を指差す。
    「この花、君にちょっと似てる気がするな……って」
    ラベルにはハナカイドウと記載してある。
    桜や桃に似たピンク色の花の苗木だ。
    薔薇や百合と言った大振りの花に例えられる事の方が多いが、何が琴線に触れたのやら。愛しい相手ではあれど美的センスには相違があるため判断はつかない。
    「似ている…でしょうか?」
    「なんとなくだけど」
    絶世の美女である王妃に例えられた逸話のある花だったか。逸話を知っているとは思わないが、彼にしては悪くない見立てだ。

    「こちら、宅配していただけますか?」
    店員へと声をかけ、ルークの家へと配送を頼む。

    「え、チェズレイ?」
    「見る度に私を思い出してくれるならなによりだと思いまして」
    「……うん、ありがとう」
    そう栽培難易度が高いものでもない。この辺りの気候であればすぐに枯らすこともないだろう。
    私に似た花を見る度に私のことを考えて欲しい。
    それから水遣りを忘れないように、つまりは泊まり込みを減らしてほしいと願いを込めて。

    その後も、いつもよりも周囲の店に気を取られがちなルークの視線の先を追う。そうして、彼よりほんの少し先回りをする。
    プレゼントを贈る度に喜びと、少しの困惑と焦り。
    様々な感情が入り交じるのがたまらなく愛おしい。



    その日の夜、直接持ってきた分のプレゼントの包みを開けながら、ルークが首を傾げた。
    「……今日はチェズレイに贈るものを探してたんだけどなぁ…。どうして僕ばっかり買ってもらってしまっているのか」
    「フフ、私にはその気持ちだけで充分ですよ」
    「今日は君と付き合い始めた記念日じゃないか。
     それなのにちょっといいなって思った物、全部君が買っちゃうから何もあげられなかった」
    「ボスが私への贈り物を一日中考えてくれるというだけでこの上ないプレゼントですので。
     なにか買ってしまえばその時間も終わってしまうでしょう?」
    「……プレゼントを買い終わったってどうせ君のこと考えちゃうんだから、貰いっぱなしにしたくない僕の気持ちも汲んでほしいんだけど……」

    彼と過ごす時間を捻出し、彼の休みが重なるように難航していた捜査の手助けを行い今日に備えた。
    花だけではなく、今彼が着ている服の全てを整えて。
    こんなにも有意義な時間の使い方が他にあるだろうか。
    彼から欲しいものなど、形や金額のないものばかりなのだから、もう十二分にもらっているのだが、もう一つ欲しいとすれば。

    「では、あの花を来年の今日まで大切に育てていただけますか?
     そして、来年の同じ日に美しく咲いた花を贈ってください」

    明日をもわからない身で未来の約束とはなんと傲慢なことだろうか。
    だと言うのに、ルークはそれこそ花が咲くような笑みを浮かべた。
    「ああ、もちろん。観察日記もつけようか?」
    「いいですね。私のディルの観察日記と交換して添削しましょうか」
    「それは楽しそうだな。
     ちなみに、庭にはスペースもあるし、結構大きくなると思うんだけど。……来年の先も予約していい?」
    「ええ、喜んで」

    いつだって私の望みを超えてくるのだからたまらない。これに見合う返礼は何をすればいいのやら。

    「ありがとう。来年も再来年も、もっと先も。君とこうやって一緒に過ごしたいからさ」





    -----
    3/25の誕生花「ハナカイドウ」
    花言葉:艶麗
    花言葉は他にもあるけど今回はここ推しで。
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    💜💙💜💙👏👏📦
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    DONE #チェズルク版ワンドロワンライ
    第8回お題「海」お借りしました。
     ――潮騒の音が聴こえる。

     ミカグラは島だから、四方を海に囲まれている。
     それはもちろん知っていたのだけれど、夏場と違って肌寒さを感じる時期しか知らなかったから、あまり実感はないままでいた。DISCARD事件の捜査の合間、海へ足を向ける事はついぞなかったし、労いにとナデシコさんが用意してくれた保養地は温泉で、長い時間を過ごしたマイカの里は山あいだ。
     海沿いの街をそぞろ歩くことはあっても、潮の香りが届く場所には縁がないままこの土地を離れた。
     だからこうやって、潮騒が耳に届く庭先でぼんやりと涼む時間を過ごすことは初めてだ。僕はと言えば、休暇中の穏やかな時間を存分に楽しんでいた。
     久しぶりに訪れたミカグラは、ますますマイカの影響を受けているように見える。朱塗りの電柱にはびっくりした。小さな島で異彩を放つ高層建築が立ち並ぶ中、平屋や二階建ての慎ましやかな家が新たにいくつも軒を連ねていた。事件の直後には、ほとんど木造の家なんてなかったけれど、マイカの里のひとたちが少しでも穏やかな気持ちで暮らせるようにと、ブロッサムの人たちが心を砕いた結果なのだと、コズエさんが嬉しそうに話していたことを思い出す。
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