Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    肴飯のポイ箱

    @sakana2015414

    pkmnでkbdnとか、kbnとdndがわちゃわちゃしてるような話を書いてます。時々ホラーなものをあげるのでそこだけ注意です。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 🐉 💜 👏 ☺
    POIPOI 64

    肴飯のポイ箱

    ☆quiet follow

    ワンドロ開催ありがとうございます!
    お題『手紙 ラブレター』
    ⌛️遅刻+1時間
    自覚は、時にいきなりくるよねっていう話

    #キバダン
    #kbdnワンドロ
    kbdnOne-dropping
    #kbdn

    根こそぎ全部 明かりをつけても少し薄暗く感じてしまう室内に、ダンデとキバナは立っていた。
     視線を巡らせる先全てには、本と雑誌、そしてまた本。積み上がったそれらは不思議なバランスを保って、奇跡的に雪崩を起こさずに鎮座している。その隙間を縫うように小さな木製の丸椅子が一つ、申し訳程度に壁際へと置かれている。よく見ると、低めの棚かと思っていたものは本を限界まで積まれているベッドのようだった。
     先程通されたリビング兼ダイニングの部屋は、モデルルームみたいに最低限の物しか置かれていなかったので、その分目の前に広がる本の洪水のような光景に驚きを隠せない。隣で悪戯が見つかった子どものように気まずそうな顔で笑っているダンデに、言いたい事を色々と飲み込んでキバナは深いため息を吐いた。
    「本と家具の配分、逆じゃね?」
    「…自分でもそう思ってはいるんだが、今更どこから手をつけていいのか分からなくてな。」
    2人揃って、元は広かったであろうダンデの寝室、書斎もとい物置のような部屋の中で腕を組む。
     事の始まりは少し前に遡る。
     キバナがずっと読みたかった、ちょっと市場では値上がりしてしまっている本がダンデのマンションにあるかもしれない。そんな事を、タワーでの仕事が漸く落ち着きを見せてからの、久しぶりにランチを共にしている時に知り、キバナの目は子どものようにキラキラとさせていた。
    「頼む!もしあるなら貸してくれない?」
     電子化はされてもいるが、やはり本は紙媒体で読みたい派のキバナは、十年来の友人であり、ライバルである男へテーブルから身を乗り出しながら頼み込んだ。
    「貸すのは良いが…見つかるかどうか」
    「えっ、どっかに仕舞い込んでるとか?」
    「うーん…多分、見てもらった方が早いな。キミ、この後仕事はあるのか」
    「いや、無いけど」
    「じゃあ、もし大丈夫ならオレのマンション来てもらえるか」

     そうして、現在広がるのがこの光景である。確かにこれはなんと言って良いのか分からないというのも分かる。
    「実は同じような部屋が、あと三部屋ある」 
     と後出しで言い出した時は流石に頭を小突いたが、とりあえず目標はキバナの読みたい本を探し出すことだ。そうして、二人は手分けして部屋の本の中を探索することになった。

     ガッシャン!!

     本の雪崩が起きないように集中して作業をし始めてから2時間弱。キバナは同じように作業をしているはずのダンデの居る部屋から大きな音を聞いて、何かあったかと思い直ぐに音のした部屋へと向かう。
    「すげぇ落としたけど大丈夫か?!」
    「…えっ!えっと、大丈夫だせ!ちょっと物を落としてしまって…」
     足元に落ちているブリキのクッキー缶を見て、キバナは音の正体を直ぐに悟った。そして、次に部屋の中を見回す。
     色とりどりの封筒に可愛らしいヒトカゲの描かれたメモ帳や、今時どこで手に入れるんだと疑問に思うような、ホワイトヒルが映された古めかしいポストカードまで。色も形も様々なそれらが、床の上へと散りばめられている。アワアワと焦っているダンデを中心に、黒地の薄いカーペットに散らばったそれらはさながら、あの日見た紙吹雪のようでキバナは一瞬だけぐらりと眩暈を感じる。

    「怪我はないか?」
     直ぐに平静を装って声を掛けるが、喉奥が少しだけ震える。何年経ってもよく分からないこの感覚は未だにキバナを狼狽えさせる。
    「何これ、手紙「すっストップだ!!!ストップ!」
     気持ちを切り替えようと目の前にあった封筒の一つを触れるために屈むと、ハッとしたダンデが慌てて止めてくる。結構な大声に、キバナも驚いて直ぐに手を止める。お互い微妙な沈黙が流れる。
    「えっと…大声を出してすまない」
    「いいよ。プライベートなもんだろ。いきなり触ろうとしてこっちも悪かったしな」
    「キミは…優しすぎると言われないか?」
    「イケメンすぎるっては良く言われるけど」
     なんだそれ。なんて目尻に皺を寄せて破顔するダンデを見て、キバナは同じように笑いながら屈んでた姿勢をやめて背中を伸ばす。
    「結構時間も経ったし、一旦休憩しようぜ。キッチン借りていい?」
    「別にいいが、水か炭酸水しかないぞ」
    「マジかよ。じゃあペリッパー便でなんかデリ頼むわ。お前のも適当に見繕っていいか?」
    「おお、よく分からないが助かるぜ」
     よく分からないのにオッケーを出すダンデに、いつか詐欺とかに引っ掛かりそうだなと思いつつ、キバナはいつも通りに戻った空気感に安堵して、とりあえずキッチンへと向かおうとドアノブへと手を伸ばす。が、何かがカツンと靴の踵に当たった感覚がして目を下に向ける。視界に映る封筒の端に書いてあった文字の羅列は、見間違いで無ければ。

    「…これさ」
    「頼む。説明するからせめて時間をくれないか」
     その言葉にイエスともノーとも返す前に、キバナはグイグイと背中を押されて扉の外へ。ダンデの方を振り返ろうにも力が強く、彼の表情を見ることなく扉が閉まり、鍵を掛ける音が響く。

     シンっと静寂が耳に響く。

    「とりあえず、クリームティーセットでレモン無し。ジャムはマゴで良い?」

     キバナが混乱したまま発した言葉に、勢いの無いノックが一回だけ返ってきた。



     キッチンへと続く廊下を歩きながら、キバナは考える。
    『キバナへ』
     あの右上がりの癖字は絶対ダンデの文字だ。そして宛名は自分。もしかして、あの散らばった封筒や便箋全てがそうなのだろうか。そうだとしたら、何故?過去十年以上友達として交流はあるが、手紙を貰った事なんて一度も無かった。というか、今まで沢山遊んできたが家に来たのも今回が初めてだった。

     なんか、モヤモヤすんなぁ。

     腹の中に言葉に表現できないような淀んだ気持ちが生まれ、ぐるぐると1人思考の渦に包まれつつリビングへと戻り、じゃれついてくるフライゴンと一緒にそのまま隣のキッチンへ。ダンデの言葉通り、水と炭酸水しか入っていない冷蔵庫に笑いながら念の為と冷凍庫も見てみる。氷すら無く、何なら買った時に貼られていたであろう固定用テープがそのままなのが予想以上で笑ってしまう。
     パタン、と冷凍庫の扉を閉めつつキバナはもう一度思考を巡らせる。
     人が手紙を送る理由って何だろうか。旅先の近況、季節の挨拶、そして——。

    「ラブレター…とか?」

     ガッシャン!

     思いついた言葉をポツリと声に出して呟いた瞬間、背後から先程も聞いた覚えのある音が響いた。驚いて振り返ると、ダンデがキッチンの入り口で先ほどの缶を取り落とした姿のまま固まっていた。顔を真っ赤に染め上げるだけでは足らず、耳の先まで赤らんだその姿に、何故だかキバナは腹の奥底からズグリと何かが込み上げる感覚がした。
    「ちょっ…まっ…よ…キミ、読んで!?」
    「読んでねぇよ!誓って読んでねぇ!」
     大きな音にポケモン達も何事かと覗きに来る。ザワザワとしたオーディエンスに囲まれながらキバナは考える。考えて考えて、そして気付いてしまった。
     床に響く足音、散らばる紙吹雪、そして目の前には。

    「なあダンデ」

     触ったら溶けて零れ落ちてしまいそうなくらい潤み始めたアンバーを見て、キバナは漸く自覚した。

    「全部貰ってもいい?」

     よく分からないが良いぜ。なんて言葉を返してくれないかな。そう考えながらキバナは口元を隠さずに笑って、散った紙吹雪を全部龍の腹の中へと収めるために手を伸ばしたのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    肴飯のポイ箱

    DONEREVELЯY2411「COUNT DOWN vol.2」の書き手クイズ企画に提出した作品となります。
    お題「催眠 付き合ってないキダ」
    開催中はドキドキとしながら過ごしておりました!すごく楽しい企画でした☺️✨ありがとうございました!
    夜空、星二つ ガラルにしては気持ちの良い、からりとした青空が朝から広がっている日だった。ブラックナイトに関する諸問題で暫く奔走を余儀なくされていたキバナは、ようやく業務もひと段落し始めた。屋外での作業は晴れの少ないガラルでは何よりも優先したい事柄だ。そんなこともあって、キバナは温かな陽気の中、ナックルジムの中庭で膝と頬を土で汚しながらせっせと植物の剪定に明け暮れていた。元が城ということもあり、一般の人々が立ち入らない場所には未だに当時の面影を残す部分が多い場所だ。キバナが居る中庭もその一つで、ナックルのジムリーダーが代々手入れをしていくことがいつの頃から習わしとなっていると聞いていた。初めてその役割を聞いた時には正直乗り気では無かったキバナだったが、元々好奇心旺盛な方だと自覚していることもあって、やり始めてみればなんだかんだと楽しみを見つけ出し、気付けば少しずつこだわりも持つようにもなってきた。
    6909

    肴飯のポイ箱

    DONE12月オンイベ展示作品その②(新しいお話)
    みんなが寝静まった夜。こっそりひっそり楽しく過ごす不思議な生き物のキバナとダンデのお話
    「🎄ホリデー編🌟」
    ※ポ世界のクリスマス概念が曖昧な為、あえてクリスマスから正月までをホリデーと設定してお話をかいています。細かく考えず緩くお楽しみください🌟👻👻🎄
    それは賑やかな すっかり夜の帳が下り、静まり返ったとある家のキッチン。小綺麗に整頓されたそんな場所を小さな林檎程の大きさの何かが二つ、白い布を頭から被ってチョロチョロと薄暗いキッチンの中を動き回っている。
    「キバナ、息が真っ白だ!寒いなぁ」
    「今日も月が大きいなぁ。でも、流石に今日はみんな寝てるだろ」
     月明かりに照らされたキッチンを、キバナと呼ばれた大きい方がそれよりも少し小さなダンデの手を引きながらずんずん進んでいく。
     少し前にお菓子を貰ったキッチンは、同じように整えられていた。水切り籠にはジュラルドンとリザードンが描かれたカップが逆さまになって雫を落としていた。今日は、それ以外にもカラフルなカップや皿がたくさん並んでおり、いつもは食器棚の一番上で偉そうにしている白地に金の模様が入った大きな皿も、ピカピカに洗われて月の光を反射している。
    2994

    肴飯のポイ箱

    DONEオンイベ開催、アンド素敵企画ありがとうございます!
    この作品は、12.3歳ごろの2人がナックルシティの片隅にあるとある喫茶店を舞台にわちゃわちゃとしていくお話となっています。
    ※両片想いほのぼのです。
    ※ガラル市民がたっくさん出ます。
    ※視点がコロコロ変わるお話です。
    少しでも楽しんでいただければと思います☺️
    とあるナックルの片隅で◆ライラック色の髪をした少年の回想

    「あ、チャンピオンだ!」
    「チャンピオン!」
    「何かイベントでもあったっけ?」
     困った。
    俺は、大きな街の真ん中で冷や汗を掻きながら、どうしてこんなことになったのかをひたすらに考えていた。
     今日は午前中にシュートでのチャリティイベントに参加した。午後はスポンサーの会社が行うガーデンパーティへの参加が予定されていたが、そちらが主催者側の事情でのキャンセルとなったので、突発的に午後は丸々オフとなった。予定されていた休みより、こういうイレギュラーな休みって得な感じがして俺は好きだ。せっかくだから前々から欲しいと思っていた物を買おうと意気込み、勢いのままユニフォームで飛び出した。自分なりに人目が少ない道を探しながら、地図アプリと睨めっこ。しかし、俺の努力も虚しくうっかり路地から大きな通りへと出てしまった。途端に集まるキラキラとした眼差しの人、人、人。応援してくれる人達の期待の眼差しを裏切ることはできず、突発的に始まってしまったファンサービス。握手に写真、サイン。もみくちゃにこそされないけれど、このままだと行きたい場所に行けないまま休みが終わってしまう。顔には出せないが内心焦りつつも人混みは消えるどころが増えていく。どうしたものかと困っていると、人混みの奥から良く通る声が聞こえて来た。
    9874

    related works

    肴飯のポイ箱

    DONEお題『お絵かき・絵画・美術』
    絵心と、リベンジと、ちょっとした日常の話。

    https://poipiku.com/6450412/7832908.html
    と繋がっています。
    よく見てみよう「どした?」
    「……」
    「えっ…本当になに?」
     休日の朝。一通りのトレーニングを終えたキバナは、のんびりとカウチに座りながら数日前に発売されたポケモン雑誌を読んでいた。気になっていたコラムの続きを読もうと、ペラペラとページをめくっていたが、同居人がどうにもこうにも凄く熱い視線をずっと無言のまま向けてくること、三十分。最初は気のせいかと思っていたが、パチリと音が出そうなくらい目線がかち合った後も、何故かダンデは、座っているキバナを真正面から直立不動で見つめてくる。しかも、焦れたキバナがあれこれ話しかけても全く反応は無く、只々この謎な状態が続いている。
     ダンデは、口で説明するよりも行動で示す方が速いと思うと、時々突拍子もない行動に出ることがある。後から理由を聞くと、なるほど。という内容も多いが、理由を聞いても首を傾げる内容の時もある。今はどちらだろうか。そう考えながら、キバナはつやりと輝きながらこちらを見つめてくる琥珀色をぼんやりと眺めたのだった。
    2011

    recommended works