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    肴飯のポイ箱

    @sakana2015414

    pkmnでkbdnとか、kbnとdndがわちゃわちゃしてるような話を書いてます。時々ホラーなものをあげるのでそこだけ注意です。

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    肴飯のポイ箱

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    ワンドロ開催ありがとうございます!
    お題『手紙 ラブレター』
    ⌛️遅刻+1時間
    自覚は、時にいきなりくるよねっていう話

    #キバダン
    #kbdnワンドロ
    kbdnOne-dropping
    #kbdn

    根こそぎ全部 明かりをつけても少し薄暗く感じてしまう室内に、ダンデとキバナは立っていた。
     視線を巡らせる先全てには、本と雑誌、そしてまた本。積み上がったそれらは不思議なバランスを保って、奇跡的に雪崩を起こさずに鎮座している。その隙間を縫うように小さな木製の丸椅子が一つ、申し訳程度に壁際へと置かれている。よく見ると、低めの棚かと思っていたものは本を限界まで積まれているベッドのようだった。
     先程通されたリビング兼ダイニングの部屋は、モデルルームみたいに最低限の物しか置かれていなかったので、その分目の前に広がる本の洪水のような光景に驚きを隠せない。隣で悪戯が見つかった子どものように気まずそうな顔で笑っているダンデに、言いたい事を色々と飲み込んでキバナは深いため息を吐いた。
    「本と家具の配分、逆じゃね?」
    「…自分でもそう思ってはいるんだが、今更どこから手をつけていいのか分からなくてな。」
    2人揃って、元は広かったであろうダンデの寝室、書斎もとい物置のような部屋の中で腕を組む。
     事の始まりは少し前に遡る。
     キバナがずっと読みたかった、ちょっと市場では値上がりしてしまっている本がダンデのマンションにあるかもしれない。そんな事を、タワーでの仕事が漸く落ち着きを見せてからの、久しぶりにランチを共にしている時に知り、キバナの目は子どものようにキラキラとさせていた。
    「頼む!もしあるなら貸してくれない?」
     電子化はされてもいるが、やはり本は紙媒体で読みたい派のキバナは、十年来の友人であり、ライバルである男へテーブルから身を乗り出しながら頼み込んだ。
    「貸すのは良いが…見つかるかどうか」
    「えっ、どっかに仕舞い込んでるとか?」
    「うーん…多分、見てもらった方が早いな。キミ、この後仕事はあるのか」
    「いや、無いけど」
    「じゃあ、もし大丈夫ならオレのマンション来てもらえるか」

     そうして、現在広がるのがこの光景である。確かにこれはなんと言って良いのか分からないというのも分かる。
    「実は同じような部屋が、あと三部屋ある」 
     と後出しで言い出した時は流石に頭を小突いたが、とりあえず目標はキバナの読みたい本を探し出すことだ。そうして、二人は手分けして部屋の本の中を探索することになった。

     ガッシャン!!

     本の雪崩が起きないように集中して作業をし始めてから2時間弱。キバナは同じように作業をしているはずのダンデの居る部屋から大きな音を聞いて、何かあったかと思い直ぐに音のした部屋へと向かう。
    「すげぇ落としたけど大丈夫か?!」
    「…えっ!えっと、大丈夫だせ!ちょっと物を落としてしまって…」
     足元に落ちているブリキのクッキー缶を見て、キバナは音の正体を直ぐに悟った。そして、次に部屋の中を見回す。
     色とりどりの封筒に可愛らしいヒトカゲの描かれたメモ帳や、今時どこで手に入れるんだと疑問に思うような、ホワイトヒルが映された古めかしいポストカードまで。色も形も様々なそれらが、床の上へと散りばめられている。アワアワと焦っているダンデを中心に、黒地の薄いカーペットに散らばったそれらはさながら、あの日見た紙吹雪のようでキバナは一瞬だけぐらりと眩暈を感じる。

    「怪我はないか?」
     直ぐに平静を装って声を掛けるが、喉奥が少しだけ震える。何年経ってもよく分からないこの感覚は未だにキバナを狼狽えさせる。
    「何これ、手紙「すっストップだ!!!ストップ!」
     気持ちを切り替えようと目の前にあった封筒の一つを触れるために屈むと、ハッとしたダンデが慌てて止めてくる。結構な大声に、キバナも驚いて直ぐに手を止める。お互い微妙な沈黙が流れる。
    「えっと…大声を出してすまない」
    「いいよ。プライベートなもんだろ。いきなり触ろうとしてこっちも悪かったしな」
    「キミは…優しすぎると言われないか?」
    「イケメンすぎるっては良く言われるけど」
     なんだそれ。なんて目尻に皺を寄せて破顔するダンデを見て、キバナは同じように笑いながら屈んでた姿勢をやめて背中を伸ばす。
    「結構時間も経ったし、一旦休憩しようぜ。キッチン借りていい?」
    「別にいいが、水か炭酸水しかないぞ」
    「マジかよ。じゃあペリッパー便でなんかデリ頼むわ。お前のも適当に見繕っていいか?」
    「おお、よく分からないが助かるぜ」
     よく分からないのにオッケーを出すダンデに、いつか詐欺とかに引っ掛かりそうだなと思いつつ、キバナはいつも通りに戻った空気感に安堵して、とりあえずキッチンへと向かおうとドアノブへと手を伸ばす。が、何かがカツンと靴の踵に当たった感覚がして目を下に向ける。視界に映る封筒の端に書いてあった文字の羅列は、見間違いで無ければ。

    「…これさ」
    「頼む。説明するからせめて時間をくれないか」
     その言葉にイエスともノーとも返す前に、キバナはグイグイと背中を押されて扉の外へ。ダンデの方を振り返ろうにも力が強く、彼の表情を見ることなく扉が閉まり、鍵を掛ける音が響く。

     シンっと静寂が耳に響く。

    「とりあえず、クリームティーセットでレモン無し。ジャムはマゴで良い?」

     キバナが混乱したまま発した言葉に、勢いの無いノックが一回だけ返ってきた。



     キッチンへと続く廊下を歩きながら、キバナは考える。
    『キバナへ』
     あの右上がりの癖字は絶対ダンデの文字だ。そして宛名は自分。もしかして、あの散らばった封筒や便箋全てがそうなのだろうか。そうだとしたら、何故?過去十年以上友達として交流はあるが、手紙を貰った事なんて一度も無かった。というか、今まで沢山遊んできたが家に来たのも今回が初めてだった。

     なんか、モヤモヤすんなぁ。

     腹の中に言葉に表現できないような淀んだ気持ちが生まれ、ぐるぐると1人思考の渦に包まれつつリビングへと戻り、じゃれついてくるフライゴンと一緒にそのまま隣のキッチンへ。ダンデの言葉通り、水と炭酸水しか入っていない冷蔵庫に笑いながら念の為と冷凍庫も見てみる。氷すら無く、何なら買った時に貼られていたであろう固定用テープがそのままなのが予想以上で笑ってしまう。
     パタン、と冷凍庫の扉を閉めつつキバナはもう一度思考を巡らせる。
     人が手紙を送る理由って何だろうか。旅先の近況、季節の挨拶、そして——。

    「ラブレター…とか?」

     ガッシャン!

     思いついた言葉をポツリと声に出して呟いた瞬間、背後から先程も聞いた覚えのある音が響いた。驚いて振り返ると、ダンデがキッチンの入り口で先ほどの缶を取り落とした姿のまま固まっていた。顔を真っ赤に染め上げるだけでは足らず、耳の先まで赤らんだその姿に、何故だかキバナは腹の奥底からズグリと何かが込み上げる感覚がした。
    「ちょっ…まっ…よ…キミ、読んで!?」
    「読んでねぇよ!誓って読んでねぇ!」
     大きな音にポケモン達も何事かと覗きに来る。ザワザワとしたオーディエンスに囲まれながらキバナは考える。考えて考えて、そして気付いてしまった。
     床に響く足音、散らばる紙吹雪、そして目の前には。

    「なあダンデ」

     触ったら溶けて零れ落ちてしまいそうなくらい潤み始めたアンバーを見て、キバナは漸く自覚した。

    「全部貰ってもいい?」

     よく分からないが良いぜ。なんて言葉を返してくれないかな。そう考えながらキバナは口元を隠さずに笑って、散った紙吹雪を全部龍の腹の中へと収めるために手を伸ばしたのだった。
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    Replies from the creator

    肴飯のポイ箱

    DOODLEワンドロ
    少年kbn君と同年代🚺dndちゃんの話。
    ※先天性女体化です。
    心より行動が先にくる1人と、心が来てから一気に行動し始める1人の話
    お題『初恋or意識し始め』
    まずは一手 昼下がりのナックルシティ。ジムリーダーになって一年とちょっと。自分に割り振られた仕事をなんとか回せるようになってきたキバナは、最近になって漸く入ることを許された宝物庫内の書庫に昼休憩はもっぱら入り浸っていた。保存の観点から外に全く出される事のない書庫は、知的好奇心が強いキバナにとっては大分豪華なオモチャ箱のようなものだった。
    「(今日は午後から休みだし、入室許可も取った。絶対閉まるギリギリまで入り浸ってやる!)」
     少し浮き足だった歩みで書庫の扉を開け、少し埃っぽい空気を吸い込む。この、何とも言えない紙とインクの香りがキバナは大好きだった。
     ナックルジムの書庫は少し不思議な形をしている。吹き抜け式の円柱型の室内には螺旋階段がぐるりとドラゴンの体のように巻き付いている。その螺旋に沿って壁に本棚が埋め込まれている。光を最低限取り込む為に作られた丸い天窓には、月と太陽をモチーフにしたステンドグラスが嵌められており、外の光を透かして淡い彩光を放っている。
    2021

    肴飯のポイ箱

    DONEワンドロ
    お題「駆け引き•取り引き」
    立ち止まって周りを見たら不安になってしまった1人と、立ち止まった先でずっと待っていた1人の話。
    ※イズオーバー後同棲設定
    すっごい…難産でした…でも楽しかった!
    よーいどん すっかりと夜の帳が下りたナックルシティの片隅。夕食もシャワーも終わらせたキバナは、リビングでのんびりと読書をしながら膝に顎を乗せてくるフライゴンの頭を撫でて存分にリラックスモードだった。間接照明によって柔らかい明るさに包まれた部屋の中では、他のポケモン達ものんびりと寛いでおり平和の一言だ。ただ、少し引っかかる事があるとすれば同棲している恋人の様子が変だったこと。仕事から帰って来たと思えば夕飯もそこそこに共有してる書斎に引き篭もってしまった。
     まあ、何かに集中したい時には同じような事は度々あった。キバナもたまにやる。ただ、今回は表情がいつもより鬼気迫ったというか焦っていたというか。
    「…ふりゃ」
     撫でる手が止まっていた事にちょっと不満げな声でフライゴンが拗ねる。それに謝るように撫でる動きを再開すると、満足そうに目を細めて擦り寄ってくる。そんな可愛い姿に、今日は甘えただなぁ。なんて思いながらキバナは読書を続ける。
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