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    かみすき

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    かみすき

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    トマ蛍
    いっぱい甘えてほしいし、いっぱい甘やかしてほしい

    #トマ蛍
    thomalumi
    ##トマ蛍

    《トマ蛍》熱い暑いけど抱きしめて 珍しくトーマより早く起きていた蛍は、じっとりと汗を滲ませた熱い額を押し付けてきた。
     食べたくないとごねるその口に白粥を突っ込み、咳き込む蛍の背中を擦って蜂蜜を湯に溶かす。顎まで布団をかけてしっかり寝るように言い聞かせ、こうして屋敷に出てきたわけだが。
     ひとつ何かをする度に、いらぬ心配がトーマの頭を過った。彼女が子どもではないことも、いざとなれば助けを呼べる小さな仲間が見てくれていることもわかっている。ただどうしても、滅多に弱音を吐かない蛍がトーマの手を握って「行かないで」と呟いた光景が離れなくて。やがて眠った蛍の酷く熱いその手をベッドの上に置いてきたことを、激しく後悔していた。体調が悪い時には人肌が恋しくなるものだ。隣にいるだけでいい、そんな人として選んでもらったというのに、寄り添ってやることもできずに自分は一体何を。
     それらを表面に出さないように努めていたつもりだったが、長年の付き合いのせいか見事に見抜いた主人に追い出されるように屋敷を飛び出した。あれだけ大きなため息を繰り返されれば、と後から聞いたときは居た堪れなさでいっぱいになったが。
     自然と駆け足になるまま、慌てて蛍が眠る部屋へと飛び込んだ。思ったよりも大きな音を立てて軋んだ扉に起こしてしまったかと心配になったが、蛍はすでに身を起こしていたようだ。

    「トーマ! ……おかえり?」
    「うん、ただいま」

     大きく見開かれた瞳は、今朝のように熱に浮かされて涙を滲ませる様子もなさそうだ。いつの間にか力んでいた体を緩め、そっと近寄る。トーマの突然の登場に驚いていた蛍も、すぐに表情を和らげた。

    「どうしたの急に」
    「どうしたって、そりゃあ」

     蛍が心配で。その言葉は腹に顔を埋めてきた蛍を前に飛び出ることはなかった。今度はトーマがどうしたのと尋ねる番だ。
     しかし蛍はなんでもないと首を振るばかりで、一方腰にがっちり手を回して離してくれるつもりもないらしい。擦り寄せられる額もだいぶ熱は引いたようだ。

    「元気そうで何よりだ」
    「ううん、まだ熱い……かも」

     そんな子どもでもわかる嘘を、罪悪感が拭えないのか視線を逸らしながら呟く。曖昧に付け足したほんの少しの弱気は、まだ少し不調を引きずっているのだろうか。

    「じゃあちゃんと休まないと」
    「……ひとりじゃ寝れないの」

     本当に弱っているのかただの弱ったフリなのかはわからないが、可愛い恋人からの精一杯の甘えたい合図についにトーマが勝てるはずがなかった。
     そのまま蛍を抱きしめて小さな体ごとベッドに潜り込めば、ふふ、と元気そうに笑う。騙されたかなあとぼんやり考えるトーマの腕の中でもぞもぞと楽な姿勢を探り、猫のように小さく体を丸めた。

    「眠れそうかい」
    「もっとぎゅってして」
    「はいはい」

     隙間のないよう、回した脚で抱き寄せる。ちょっとした悪戯できつく締めれば痛いとしっかり怒られた。やっぱり元気じゃないか。

    「夜ご飯、トーマのお味噌汁が食べたい」
    「うん。作ろうか」
    「お団子も」
    「いいけど、そんなに食べられるの?」

     ひとつひとつ聞き入れ、返事をする。味噌汁だろうが団子だろうがいくらでも、毎日だって作ってみせよう。困らせたいのか少しずつ大胆な内容になっていくけれど、次々と出てくるお願いはどれもトーマにとって些細なものでしかなかった。
     やがて我儘が尽きた蛍が口を閉じる。黙りこくって、トーマの服が皴になるほど握りしめ、額をひたすらに擦り付けた。きっと本当は言いたいことがまだあるのだろう。なんでも言えばいい。促すように蛍の頭を撫でて、汗で絡まってしまった髪を梳く。全部、教えて。

    「いっしょに、いてほしい」

     言葉を覚えたばかりの子のようにたどたどしく呟き、恥ずかしいのか何なのか、さらに小さく丸くなった。

    「寂しかった?」

     もう少しでも離れていれば届かなかったであろう小さな頷きがトーマの耳を打つ。
     そんな簡単なことも素直に言い出せず、ぐずりと溶けるほどに抱え込んで回りくどいことばかり。なんて可愛い。そう伝えたらきっと怒ってしまうだろうな。
     どうやったらこの可愛い可愛い塊をめいっぱい甘やかせるのか。ただひたすらに抱きしめるくらいしか浮かばず、潰してしまわないように必死で抱え込んだ。気の抜けたような蛍の笑顔があれば、引っ張られた服が伸びることなんてちっとも気にならなかった。
     抱きしめた温度につられて少しずつ落ちてきた瞼を振り切りたくとも、同じようにうとうと首を揺らす蛍を見ればそんな気も起きず。彼女を休ませるためだからと言い訳をして、潔く意識を手放した。
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