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    かみすき

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    かみすき

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    トマ蛍
    はじめてのこたつ

    #トマ蛍
    thomalumi
    ##トマ蛍

    ≪トマ蛍≫こたつの話こたつ。寒い季節を乗り越えるアイテム。社奉行でご飯をご馳走になったパイモンが体験したというそれはとてもとても快適らしく、なあなあ洞天にも置こうぜ! と連日熱烈なアピールを受けている。確かに、最近は洞天の気温を少し下げているのもあり、日が落ちるとぐっと冷え込む。様々な表情を見せてくれるという四季に憧れ、マルに頼んで管理してもらっているのだけれど。全室に暖炉を用意するのも大変だし、かといって火鉢だけでは暖めきれない。新しい暖房器具を導入したいのは山々だが、なんせ邸宅にはどうにか詰め込んだ家具たち。詳しいことはわからないけれど、たくさん家具を置きすぎるとマルが困ってしまうらしい。今はもうこれ以上物を置く余裕がないのだ。

    「ふう、お腹いっぱいだ! さらにこたつでぬくぬくできれば最高なんだけどなー」

    任務達成の報告に訪れた社奉行。休憩していくといいと貸し出された一室で、パイモンはニンジンとお肉のハニーソテーがつまったお腹を撫でながらちらりとこちらを伺う。このもこもこな仲間がご飯とお宝以外に惹かれるだなんてどれほど魅力的なんだろう、と少しだけ気になってはいるのだけれど。パイモン曰く、机から布団が生えている家具。机なら、それを増やすスペースなんてもうない。
    そもそも布団が生えているってなんだ。この部屋にある机はいたって普通の机だし、実物を見たことがない蛍にはどんなものかも想像ができない。
    視線に気づかないフリをしてお茶を啜れば、わざわざ目の前まで飛んできてこてんと首を傾けたパイモンと目が合う。

    「可愛いフリしてもだめ。もう家具はいっぱいだよ」
    「そこをなんとか! ほたるぅ!」
    「『こたつは人をダメにするほど最高なんだ』、でしょ? これ以上パイモンがへにゃへにゃになったら困っちゃうよ」
    「うぅ、そういえばそんなことを言ったな」

    そこは嘘でも、へにゃへにゃになんかならないぞって言うところでしょう。本当に素直だなあ。オイラのこたつ……と呟きながら膝の上に倒れ込んだふわふわの髪を撫でる。ぐぬ、と鳴きながらも頭を擦り付けてきてとってもかわいい。そろそろ邸宅の整理をするべきかと悩んでいれば、障子の向こうに影が差した。

    「やあ、ふたりとも、開けていいかな? 食後のお茶はどうだい?」
    「その声、トーマか?」

    そろり、と開いたすき間から、ひょっこりと顔が覗く。
    視線が合えば目がきゅっと細められた。

    「聞こえたんだけど、こたつが欲しいのかい?」
    「そうなんだ! だけどこいつがなかなか」
    「だって、新しい家具を置く場所はもうないよ」
    「いや、前にあげたあの机、あれはこたつになるだろ?」

    社奉行で使わなくなったからと譲り受けたもののことだろうか。あれは普通の食卓だったけれど、あの机に布団が?まさか本当に生えてくるの?
    そんな話を聞いたパイモンは目を輝かせて前のめりで食いついた。

    「それホントか?」
    「一緒に使っていた布団もまだどこかにあるはずだ。洗っておこうか……そうだな、明後日には準備できるよ」



    ******



    こたつ!こたつ!とはしゃぐパイモンに、トーマとふたりついて行く。少し肌寒い厨房の隣には例の食卓が置いてある。トーマがねじを緩めれば天板が外れた。そんな仕組みだなんて知らなかったな。
    デザインも好みだったこの机を譲り受けたとき、細かな傷こそあれど、綺麗に磨かれてつやつや輝いていたのをよく覚えている。とても丁寧に使われていたのだろう。古いものでも手入れや修理で永く大切に使っていく稲妻の文化は気に入っていたし、蛍もそれに参加してみたかった。貰ったときには、ひっそりとうきうきしていたのを覚えている。
    パイモンのおねだりを断っていたのは、この机はどうしても片付けたくないというわがままもあった。
    骨組みの上にぶわっと布団を広げて、天板を乗せる。これまた存在に気づかなかった電気コードを引っ張り出せば、こたつの完成、らしい。なるほど、確かに机から布団が生えているように見える。
    さっそく布団に潜り込んだパイモンは待ちきれないとばかりにうずうずしている。トーマはそれを笑いながらヒーターの電源を入れた。

    「君も入ってごらん」
    「これがこたつ?」
    「そうだ。これがまた格別で、本当に動けなくなるんだよな」

    なんて自分もこたつに入ったトーマは、だあぁ〜なんてちょっとおじさんみたいな声を出す。はわ……と目を閉じたパイモンは今にも眠ってしまいそうだ。
    トーマの正面にそろ、と足先を入れてみれば、じんわりと温かさが伝わってくる。これはいい。いそいそと身体をねじ込めば何かを蹴った。慌てて布団をめくると、トーマの膝がある。

    「ごめん!」
    「アハハッ、大丈夫だよ。誰かとこたつに入るときは、足を折るといい」

    わたわたする蛍を見て、トーマはからからと笑った。布団をめくり上げたまま謝罪を続ければ、パイモンに寒いと怒られてしまった。こたつ、難しい。
    でもこれは確かに。少し冷えた足がやさしく温められて、手の先までぽかぽかとしてくる。さらにふわふわの布団に包まれては動けなくなるというのも頷ける。

    「さ、こたつに入るならみかんだ」

    トーマが上半身を伸ばして引きずり寄せた鞄から、橙色の果実が出てくる。稲妻で冬に旬を迎える果物らしい。
    指で皮を剥けるのか。トーマの真似をしてべり、と皮を剥けば、爽やかな香りが漂う。
    一方のパイモンは、布団に潜り込んだまま机上を覗こうと必死に首を伸ばしている。小さな相棒には、こたつは高さが合わないのは難点だなと思いながら、パイモンを膝の上に抱え直す。
    皮を剥いた果実はさらに小さく割けるらしいが、薄皮を破ってしまって手が汚れた。

    「難しいね」
    「そのうち慣れるさ」
    「うん、うまいな!」
    「よかった。庭でたくさん採れたんだ。置いていくから食べるといい」

    あっと言う間に5つも食べたパイモンは、膝から降りてこたつに潜り込む。寝ないでねと声をかけたのに、誘惑を断ち切ってこたつを抜けた蛍がお茶を手に戻ると、もうぐうぐうといびきをかいていた。もう、と形だけ叱っておく。
    みかんの皮を集めているトーマの隣に無理やり身体をねじ込めば、優しく笑って少しだけ避けてくれた。皮は掃除に使ったり、乾燥させて湯に浮かべたりするんだとか。ふんふん、と頷きながらみっつ目に手を伸ばす。

    「そうだ。みかんを食べ過ぎると身体中がみかんの色になるから、気をつけた方がいい」
    「えっ」

    みかん色の旅人にみかん色のパイモン。やけに真剣な顔で忠告するトーマのせいで思わず想像してしまったそれへの恐怖から、持ち上げたみかんをそっと戻す。口元を引き締めながらゆっくり手を引く蛍に、トーマはついに我慢できないとばかりに笑い出した。珍しいくらいに大笑いするから、思わずぽかんとしてしまう。そんな表情すら面白いのか落ち着く気配もなく、ついにむっとした蛍をぽんぽん撫でながらもまだ笑っている。

    「冗談だよ。真っ黄色になるものでもないし、せいぜい手のひらとか足裏にちょっと色が着くくらいだ」

    そう言いながら新しくみかんを剥き始めて、一房蛍の口元に寄せる。

    「トーマが真剣な顔して怖いこと言うから」
    「悪かったって、許してくれよ。ほら、口開けて」

    おいしい。不貞腐れた顔のままそう言えば、もうひとつ差し出された。……おいしい。

    「3個食べたくらいじゃそう変わらないよ。色がついてもすぐ治るし」
    「トーマは黄色くなったことある?」
    「あるよ。手のひらが黄色くなって、若が病気にかかったんじゃないかって言うからすごく怖かったのを覚えてる。わかっててそういう冗談を言うんだから困っちゃうよ」

    にんまりと満足そうに笑う綾人の顔が浮かぶ。やりそうだ。そういうトーマだって、今やったじゃないかと思うけど。
    一房むしっては食べる様子を眺めていると、だんだんと瞼が重くなる。また丁寧に皮を集めてる……今度みかん風呂やってみよう……。
    首ががくっと落ちて慌てて目を開けたけれど、無理せず寝ればいいよ、なんて言いながら先に横になったトーマに負けてしまう。まったく甘やかすのが上手だあ、なんてぼんやりした頭で考えながら倣って転がった。ヒーターの電源を落としたたくましい腕をたぐり寄せて抱え込めば、ぽかぽかと温かいトーマとふかふかの布団と、確かに、こたつは最高だね。

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