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    かがり

    @aiirokagari の絵文置き場
    司レオがメイン

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    かがり

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    (2025.7.26)
    第5回司レオワンドロ・ワンライお題「お家デート」より

    映画そんなに詳しくないけど、二人にこういう雰囲気でゆるゆる映画観てほしくて

    #司レオ
    ministerOfJustice,Leo.
    #小説
    novel
    #ワンライ
    oneLai

    雨天決行:司レオ 輪郭に沿って垂れる毛先を、指で数回撫で付ける。
     タクシーで直接マンションのエントランスに乗りつけたはずなのに、髪が湿気を吸って普段よりも重く感じる。そのことから司はつい、中止となった計画に思いを馳せて溜息をついた。
     昨日から断続的に降る雨は、夜にかけて強まる見通し。何度も確認した天気予報は、もう確認する意味はなくても思わず覗き込んでしまう。
     レオとオフの日程の擦り合わせをして、首都近郊で開催される花火大会に行こうと約束をしていた。――そう、デートとして。それは間が悪いことに、完膚なきまでにこの荒天の予報と重なる日程だった。
     開催の前日というタイミングで花火大会の延期の発表がされたことは、英断だと言えるのかもしれない。ただ、司たちはアイドルであり、延期日に二人分の予定を再調整することは難しかった。
    「じゃあ、うちくる⁇」
     イベントが延期される――つまるところ、明日の予定がまるっと空いてしまった旨を伝えると、レオは何てことないように司にそう持ちかけた。
     レオの言う「家」とは、彼が主に自身の作曲活動のために借りているマンションの一室のことだ。当初の予定とは様変わりしてしまったとして、共に一日を過ごすことは変わらないだろう、とレオは言外に告げているようだった。
    「……お言葉に甘えても?」
     そうして考えるより先に、司はそう返答したのだ。

     

     
     
    「着きましたよ」
     インターホン越しに告げると、「いいぞ、入ってきて!」とレオの元気な声が響く。「花火はおまえが計画してくれたし、今回はおれがこのお家デートをプロデュースするから!」とは、昨日のレオの言。勝手知ったる家主だろうし、何かやりたいことがあるのなら、と司はそれを了承した。
    「お邪魔します、レオさん」
    「スオ〜! 昨日ぶり〜!」
     玄関先でぎゅうと抱きついてきたレオを受け止める。現金なもので、屋外だったらこうした接触はできなかったことを思うと、これはこれで良かったのかもしれない、と司は内心で手のひらを返した。
    「早速だけど、スオ〜! 手洗ってからキッチンに来て」
    「Kitchen、ですか⁇」
     指示通りに念入りに手洗いを済ませてキッチンに向かえば、レオは既にコンロの前に立って何やら作業を始めているようだった。 
    「今日は何をなさるのか、まだ教えてくれないのですか?」
    「もうちょっとだけ内緒な」
     油を熱して、何やら豆のようなものをざらざらとフライパンに投入してから、レオは蓋を閉める。かと思えば蓋を押さえたまま、がしがしとフライパンを揺すり始めた。
    「まあ、見てろって!」
     そうして、不意にポッと、粒がひとつ弾け飛んで、白くこんもりとしたシルエットに変わる。これは、もしかして――。
     次の瞬間、ぼぼぼぼぼ、と弾けて蓋に当たる音が響き出した。
    「Popcorn!」
    「そう!」
     フライパンの振動が落ち着いてから、レオは高らかに宣言する。
    「今日はここを映画館とする!」
     司は思いがけずにパチリと瞬きを返す。なるほど、だからわざわざポップコーンを作った、ということなのだろうか。
    「まあ、映画なら雨でも実際に行けたかもだけど、なんかいま映画館って激混みらしいし!」
     たまにはこういうのもいいだろ〜、とレオは笑う。
    「……とはいえ、なんか思ったよりいっぱいできちゃったな⁇」
     レオが予め用意していたボウルは出来上がったポップコーンでいっぱいになり、普段づかいしているだろう茶碗やカップまで動員する羽目になってしまった。
    「あの、このタイミングですが、手土産を持って来ていて」
    「おっ、ありがとな〜!」
    「『何か持ってくるなら少しJunkなものを』と仰っていたので、Donutsにしました。Chocolate掛けの」
    「……カラフル!」
     レオは楽しそうに、チョコレートとチョコスプレーがたっぷり掛かったドーナツを皿に取り分けている。
    「今更ですがこれCalorieとか……」
     自身が持ち込んだドーナツと大量のポップコーンを前に、このタイミングでどうしても、司の脳裏には厳しく叱責するユニットメンバーの顔が浮かんだ。
    「スオ〜、知ってるか? ポップコーンは……野菜なんだ」
    「そういう問題ではない気もしますが……しかし、まあ、折角のDateですもんね」
     カロリー分の運動をすれば問題はないはず、と司は内心で誰にともなく言い訳を零す。
     そうして、トレイに乗せた映画のお供をレオに倣って運んで行けば、壁面に沿うように不自然な配置に置かれたサイドテーブルに辿り着いた。
    「ええと、映画を観るのでしょう? TVはそちら側ですが……」
     レオは悪戯っ子めいた笑みを深める。
    「スオ〜、ソファのそっち持って!」
    「はぁ、はい……?」
     肌触りのいい真紅のソファをレオの指示通りに移動させると、真向かいには白い壁があるばかりだ。
     パチン、と不意に部屋の電気が落とされる。と同時に、パッと光源が灯り、壁面に四角の画面が表示された。
    「じゃーん! プロジェクター! なんか、でっかい画面でおれ達のライブを見返したら霊感が湧くかも? って思ってこのまえ衝動買いしちゃった!」
    「これは……! TVとは比べ物にならない大きさですね⁈」
     ミニシアターと言っても差し支えないような投影画面の大きさに、司は素直に感嘆する。
    「そうだろうそうだろう! ちなみにこのマンションは防音だから、音量も上げちゃって大丈夫! いい感じのスピーカーもあるぞ!」
     照明が落とされた薄暗い部屋で、壁一面の大きさに投影された画面。香ばしいポップコーンの匂いに、座り心地の良いソファ。それから――。
    「映画館、完成〜!」
     ソファのすぐ隣が沈み込み、司の肩にレオの体重が乗る。
    「何観よっか?」
     プロジェクターに接続したタブレットを掲げて、レオはにんまりと笑った。
     


     

    「……これ、ゲームが原作なんだっけ。スオ〜やったことある?」
    「この手のBoard Gameはまだ無いんですよね。人数と時間がある程度必要ですし」
    「今度Knightsの皆でできないかな?」
    「いっそ何かの仕事でそういうOfferがあれば良いんですけどね……」
    「……スオ〜さ、今のとこ、どういう意味か分かる⁇」
    「ああ、恐らく……有名なEpisodeから引いているんだと思います。確かに、知っている前提で描写されていて若干分かりにくいですね……」
    「……今の劇伴よかったよな〜! 初代の有名なやつのアレンジ! でも、おれだったらもっとこう……」
    「Imageがあるのですか? 聴いてみたいです」
    「待って、隣の部屋からキーボード持ってきてもいい⁈」
    「では、このままEnd Rollを流しておきますね……」
    「……宇宙人って実際にいたとして、本当に意思疎通ができるんでしょうか」
    「スオ〜おまえ忘れちゃったのか⁈ 知ってるはずだろ! ほら、大きな声で!」
    「うっちゅ〜? ……やらせないでください!……」

     


      
    「ん〜〜〜さすがにいっぱい観たな〜〜」
     レオが隣で大きく伸びをしてから、ソファの背もたれに戻ってくる。そうしてそのまま、ぽすんと司の肩に頭を預けた。
     ボードゲーム原作のアクション・ファンタジー、ダーティな騎士譚、怪獣ものの有名作、地球外生命体と出会う不朽のSF作品……休憩やレオの作曲などによる中断も含めながらも、幾つもの作品を鑑賞し、ほとんど丸一日をこの「映画館」にて二人で過ごしたことになる。
    「どう? 楽しかっただろ? おうち映画館」
    「……ええ。こんなに本格的にできるものなんですね……普通の映画館だとできないようなこともできますし、なんだか新鮮でした」
    「……何する気だ⁇」
    「お喋りです、お喋り! ずっとしていたでしょう⁈」
     からかい半分で身を引いたレオを、今日の定位置となっていた真隣へ引き寄せる。肩が触れ合う位置まで戻ってくると、壁のスクリーンに視線を向けたまま、レオは上機嫌に司の手を握った。
    「わはは! おまえ、雨でちょっとしょんぼりしてたからさ、楽しいデートにできてよかった!」
     その言葉に司は、この人には敵わないなあと思いながら、レオの手を握り返す。
    「……次はEscortさせてくださいね」
    「もちろん!」



     【終】
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    Replies from the creator

    かがり

    DONE(2025.6.23)
    ラブコレクター・ミニトーク「射止める心」より
    弓道部モブ後輩視点(モブ→司くんは心を寄せているけど恋愛感情ではない)
    司くんが弓道部部長だと捏造しています
    弓道関連用語については薄目で見てください
    正射必中!:司レオ「……朱桜先輩! お疲れ様です!」

     一礼して敷居を跨いだ弓道場で、真っ赤な髪色の人影を見つけた瞬間、反射的に弾んだ声が出た。
     私立夢ノ咲学院の中でも独特の雰囲気を持つ弓道場は、校舎の端に位置しているせいか、その場に相応しい静けさが支配している。思いのほか反響してしまった声を咎めることもなく、その人物は鷹揚に振り返った。スローモーションのように癖のない髪が揺れる。
     ぴしりと背筋を伸ばし、いつも保たれている綺麗な姿勢は弓道着姿がこの上なく似合う。そうして、夢ノ咲学院弓道部の部長たる朱桜司先輩は、悠然と微笑んでこちらに視線を向けた。

    「はい、精が出ますね」

     部で指定している活動日ながら、朱桜先輩以外の人影は見えない。校内ライブが近いから、きっとレッスンを優先している人が多いのだろう。元よりアイドル活動以外にはそれほど力を入れていない校風だし、弓道部も例外でなくそういった雰囲気を持つ部活だ。
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    DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。七夕を楽しむ二人と、夏の風物詩たちを詰め込んだお話です。神頼みができない人にも人事を超えた願いがあるのは良いですね。
    >前作:昔の話
    https://poipiku.com/271957/11735878.html
    まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    星渡 折からの長雨は梅雨を経て、尚も止まぬようであった。蒸し暑さが冷えて一安心、と思ったが、いよいよ寒いと慌てて質屋に冬布団を取り戻そうと人が押しかけたほどである。さては今年は凶作になりはすまいか、と一部が心配したのも無理からぬことだろう。てるてる坊主をいくつも吊るして、さながら大獄後のようだと背筋が凍るような狂歌が高札に掲げられたのは人心の荒廃を憂えずにはいられない。
     しかし夏至を越え、流石に日が伸びた後はいくらか空も笑顔を見せるようになった。夜が必ず明けるように、悩み苦しみというのはいつしか晴れるものだ。人の心はうつろいやすく、お役御免となったてるてる坊主を片付け、軒先に笹飾りを並べるなどする。揺らめく色とりどりの短冊に目を引かれ、福沢諭吉はついこの前までは同じ場所に菖蒲を飾っていたことを思い出した。つくづく時間が経つ早さは増水時の川の流れとは比べるまでもなく早い。寧ろ、歳を重ねるごとに勢いを増しているかのように感じられる。
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