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    syako_kmt

    むざこく30本ノック用です。
    成人向けが多いと思うので、20歳未満の方はご遠慮下さい。

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    むざこく30本ノック④延長戦
    4日目
    刀に宿る付喪神な黒死牟…つまり刀剣男子な彼。そんなネタはいかがですか?無惨サマの立ち位置は審神者でも、全然関係ない一般人でも、何でもいいと思います。

    #むざこく30本ノック
    random30Knocks
    #むざこく
    unscrupulousCountry

    刀に宿る付喪神な黒死牟…つまり刀剣男子な彼。 大きな溜息を吐きながら、田んぼのあぜ道を歩く。
     この夏、両親が海外に赴任となり、田舎の祖父母宅で暮らすようになった。どうせなら自分も海外生活を送りたかったが、再来年には大学受験があり、両親の赴任先は治安が良くないということで、仕方なく日本に残ることになった。
     都会で生まれ育った月彦にとって、バスに乗り、更に山道を歩いて通う高校生活は苦行以外のなにものでもなく、治安が悪くても両親に同行したいと強く押すべきだったと後悔していた。
     家は大きいものの古い日本家屋で何かと不便であり、近所に娯楽はなく、テレビのチャンネル数も都会より明らかに少ない。読書や勉強にはちょうど良いが、何も楽しみがないのは都会育ちの男子高校生には不満しかない。
    「大学生になれば東京に戻れるから」
     両親も祖父母も軽く考えているが、これまで高校生活を人並み以上に楽しんでいた月彦にとって、この生活は周囲が思っている以上につらいのだ。
     何か楽しみを見つけようと近所を散策することにした。それ以前に祖父母宅は無駄に広大な敷地を有している。辺り一帯がうちの土地だと聞き、田舎は土地が安いからだろうと軽く考えていた。
     そんな敷地内をうろうろとしていると、大きな椋木の影に蔵があることに気付いた。
     好奇心旺盛な月彦は祖父にその蔵のことを尋ねた。しかし、自分たちもその蔵を開けたことがないと言う。いくつかある蔵の中で、実際に今でも倉庫や納屋代わりに使っているものは母屋近くのもので、リフォームされて、すっかり綺麗になっている。
    「どうせ、古い箪笥や何やらが入っているだけだと思うよ」
    「鑑定団に出せるようなお宝なんてないわよ」
     と祖父母は笑うが、古い鍵を預かり、月彦は蔵の中を探検することにした。

     祖父母の言う通り、暗い蔵の中は埃だらけで黴臭い。マスクの上からバンダナを巻いていたが、それでも空気が悪くて、早々に退散しようと思った。
     蔵の中は大量の書物があり、本の形状になっているものから巻物まで様々である。中には日本語ではない本も大量に置かれている。
     一番上は埃が積もっていて見えないので、埃が飛び散らないようにゆっくりとずらして二番目の本を取り出した。誰かの日記帳のようで、革張りの手帳を開くと、そこには何か植物の調査をしていた記録がある。
    「青い彼岸花……?」
     月彦がそう呟くと、真っ暗な蔵の奥に淡い藤色の光が現れた。
     そこに視線を向けると、それは細長い木箱で光を放ちそうなものではない。ゆっくりと近付いて箱を見ると幾重にも呪符が張られ、縄が厳重に巻かれている。
    「これ、絶対やべぇやつだ……」
     明らかな特級呪物を自宅敷地内から見つけ月彦は苦笑いする。こういうものを開けると、ここから呪いが溢れ出る……という、お決まりのパターンを想像するが、それは創作の中での出来事である。
     その冷静な感覚と、もしかすると魑魅魍魎が出てくるのでは……という好奇心が鬩ぎ合っているが後者の感覚が当たりそうな予感がした。何故なら、その箱から小さな声が聞こえるのだ。
    『早く……早く……我が名をお呼び下さい……』
    「え?」
     何故、木箱から声がするのか。気味が悪くなった月彦は手帳を置いて蔵を飛び出した。
     戻ってから身体中についた埃を落とす為に風呂に入り、夕食時に祖父母に「先祖に植物学者はいたのか」と尋ねたが、心当たりはないと言う。
     本当に祖父母は何も知らないのだろう。なので、あの呪符の貼られた木箱については尋ねなかった。

     あれから、不思議な夢を見るようになった。
     紫の着物姿の髪の長い侍。ぼんやりと立ち尽くし、動かないのではなく、そこから動けない、といった様子だ。
     自分も何か言いたい。喉の奥に引っかかったように、言えない言葉があり、とてももどかしく息苦しい。何かを叫ぼうとした瞬間に必ず目が覚めるのだ。
     興味本位で蔵を覗くべきでなかったと後悔する月彦だが、更なる後悔が訪れる。
     その日は学校行事の準備で居残りし、5月だというのに暗くなる時間まで帰ることが出来なかった。
     真っ暗な山道を歩くことに慣れていない月彦は、バスを降りてからタクシーを呼ぶことも考えたが、来てくれる車などなく、スマホの灯りを頼りに歩いていた。
    「うん、大丈夫。迷わずに帰れるから」
     心配している祖父に電話をかけ、月彦はぼちぼちと山道を歩く。本当に田舎って不便だと恨めしく思っていた。
     そんな時、背後からガサガサと音がする。野生動物かと思い身構えたが、出てくる気配はない。少々怯えながら、じわじわと歩みを進めると、目の前に2メートルを超える巨大な化け物が現れた。熊ではない。兜や鎧を纏い、教科書で見た武将のような格好をしているが、明らかに人ではないのだ。禍々しいオーラを放ち、大太刀を構えている。
     呻き声をあげながら刀を振り上げたので「殺される!」と思った瞬間、夢の中に現れた侍が月彦の体を持ち上げ、化け物から離れた。
    「お前……!」
    『名を……名を……』
     何度もそう伝えてくる。月彦は夢を思い出し、自分が何を言おうとしていたのか、そして、誰の名を呼ぼうとしていたのかを必死に思い出そうとする。しかし、そうしている間、化け物は待ってくれない。
     大太刀が月彦の頭に振り下ろそうとされた瞬間、月彦の目が赤く光り、化け物は怯んで動きを止めた。
    「黒死牟!」
    「ここに……」
     月彦に名を呼ばれ、亡霊だった侍は肉体を取り戻す。蔵での封印が解け、中で眠っていた刀も黒死牟と呼ばれた侍の手に戻る。
     それからは一瞬だった。黒死牟が横一文字に刀を振るうと化け物の首が飛び、化け物は塵となり消えて行った。
    「お怪我は……ございませんか……」
     黒死牟は月彦に跪いて深々と頭を下げる。ゆっくりと顔を上げると、額の左部分に独特の痣があるが美しい顔をした男であった。
    「お前は一体……」
    「私は黒死牟……かつて鬼舞辻無惨という鬼に仕えた者です」
     家までの道中、黒死牟に「鬼舞辻無惨」という男について教えられた。
     平安時代の貴族の出で、人を食らう鬼となり、千年という長い年月、人を食らい生きたのだという。黒死牟はその男に仕えた武士だと言うが、どうやら鬼舞辻無惨は月彦の遠い親戚にあたるという。
    「無惨様に子はありませんでしたが、平安の世にいらした御兄弟から脈々と受け継がれているとお見受けします」
     しかし、鬼舞辻無惨も黒死牟も多くの人を殺した。その罰として、黒死牟は愛刀であった「虚哭神去」に封じ込められ、月彦の実家の蔵に閉じ込められていたのだという。
    「それと今の化け物に何の関係が……」
    「私はある種の怨霊として刀に封じられることとなりましたが、名刀と呼ばれるものたちには付喪神が宿り、そして、その付喪神が悪しきものを祓う能力があります」
    「今みたいか? では、お前も付喪神になったのでは……」
    「違います。あれは悪しき者ではなく、政府の放った正式な術です」
    「え?」
     あれは化け物であった。黒死牟の言葉に驚いた月彦は足を止める。
    「政府の目的はひとつ。鬼舞辻無惨の生まれ変わりである月彦様の魂の抹消です」
    「魂の抹消……?」
    「肉体ごと魂を無に帰すつもりだったのでしょう。そして、今後も月彦様はお命を狙われると思われます」
    「何故だ! 俺はただの高校生で……」
     納得いかなくて当然だろう。政府に命を狙われるようなことなど何もしていない。その貴族の一族だと言っても、家は田舎の地主程度で、元は貴族だったなんて話など聞いたことがない。動揺する月彦を見ながら黒死牟は淡々と話す。
    「月彦様は後に無惨様であった頃の記憶を取り戻され、歴史修正主義者となり時間遡行軍を先導し、大正期に叶えられなかった目的を達成する為に歴史を変えると言われています」
    「……馬鹿げた話だ。もうそんな妄想、聞きたくない。俺は家に帰る」
     黒死牟を無視して月彦は歩き出した。しかし、大きな手に腕を掴まれ、再び歩みを止めた。
    「現に今、僅かに能力が覚醒しておられます。瞳が赤く光ったこと、そして、私の名をお呼びになられた」
    「それはお前が呼べと……」
    「少しずつ記憶が目覚めておられるのです」
     ずきんっと頭が痛む。不明瞭ながらも頭の中で自分の知らない記憶がじわじわと広がっていくのだ。
    「では、殺されるのを待て、と?」
    「まさか……私は二度も無惨様を失うつもりはございません……」
     黒死牟はにやりと笑うと、六つ目の異形となり、藤色の刀にも無数の目が現れ、先程の大太刀より更に大きな刀に変貌した。
    「無惨様をお守りする為に地獄より蘇って参りました……どうぞ、我が名をお呼び下さい……私が無惨様の刀となりましょう……」
     その瞬間、月彦の記憶は途切れる。しかし、しっかりと自分の足で立っているのだ。赤く光った瞳が黒死牟を見据え、愉快といった様子で笑う。
    「頼んだぞ、私の壱」
    「御意」
     ずっと、この時を待ち侘びていた。
     無惨の子孫はおらずとも「鬼舞辻家」の血筋は途絶えていない。傍系の中でも産屋敷家が気付いていない一族を探し、無惨の魂の「入れ物」に最も近い人間が現れる日を、あの暗い蔵の中で待ち続けたのだ。
     月彦は最も無惨の容姿に近く、申し分ない魂の入れ物であった。やっと主の刀として蘇る日が来る。黒死牟は虚哭神去を錆び付かせることなく、無惨の願いを叶える為にこの日を今か今かと待っていた。
     二人は久方振りの逢瀬を懐かしむように、強く抱き締め合った。
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    13日目
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう 今日もやっと1日が終わった。
     朝から晩まで、あの鬼上司2人に扱き使われたのだ。
    「おい、零余子!」
    「はい!」
    「零余子!」
    「はいー!!!!」
     多分、この数年で確実に親より名前を呼ばれている。これまで割と要領良く生きてきたので、こんなに怒鳴り散らされることはなかった。
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     今をときめくイケメン政治家、鬼舞辻無惨の下で働けるなんて……その上、彼は独身。もしかして、もしかする、未来のファーストレディになれるようなルートが待っているかもしれない!? と馬鹿な期待をして入職したのだが、それは夢どころか大きな間違いだった。
     毎日怒鳴り散らされ、何を言っても否定され、無惨だけでも心がバキバキに折れそうなのに、これまたイケメンの秘書、黒死牟が更にエグイ。まず行動原理が「無惨様のため」なので、無惨の怒りを買った時点で、どんな言い訳をしても通用しない。こちらに非が無くても、無惨に怒鳴られ、黒死牟にネチネチと嫌味を言われ、最悪のコンボが待っている。
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