孫家のアルバムは分厚くて、華やかだ。
一番最初に貼られた写真は悟空とチチの結婚式の写真で、一番新しいものに関してはもう十才を過ぎた孫娘パンの写真が多い。
「キレイにやってくれてたんだな」
アルバムをめくっていた悟空が呟く。
写真は撮られても別に構わないが、悟空自身はあまり撮ることに関しては必要性を感じていない性質だ。それを示すように、アルバムの中は悟空や悟飯と悟天に、義家族であるビーデルやパンのものが多い。それは写真を撮る主な人物が悟空の妻、チチであることを示している。
彼女単体の写真はないわけではないが他の者より少なく、他の第三者に撮ってもらっての家族写真の方が多いくらいだ。
しかしながら、少なくも単体写真はあるわけで、そのうちの一枚であるはにかんだ笑顔の写真に悟空の金色の瞳は釘付けになっていた。
「寂しくなったらアルバムでも見たらいいだよ」
そう言った彼女は本日は用事でパオズ山から離れている。用事の内容から悟空がついていくことはできなかった。いわゆる、留守番だ。
悟空自身が修行でパオズ山から離れることは多かったし、その中でひとり夜を過ごすなんてこともあった。しかしながら、こうしてひとり自宅に置いて行かれるということは、思いのほか寂しいものだと思う。
出かけにチチが冗談めかして言っていたアルバムの存在を思い出して、わざわざ四つ目の超化をしてしまわれていたアルバムを取り出したほどだ。
朱に縁どられた瞼を閉じれば遠い場所に、小さいながらもやわらかなチチの気を感じる。行こうと思えば瞬間移動で彼女の元へ行けるのだが、本日は留守番なので我慢をするしかない。
視線は写真から動かさないまま、彼の尻尾だけが時折揺れる。
「帰ってきたら写真いっぺぇ撮らねぇとな。悟天のやつに頼めば、まぁやってくれっだろ」
なんだかんだ言ってあの次男は母親に甘い。
母さんの写真がアルバムに少ないんだと言えばカメラを手にレンズを向けてくれるだろう。
「なんで、お父さんは当たり前のように一緒に撮られようとしてるのさ」
とは言われるだろうが、妻の肩を抱き寄せて並んで写真を撮ってもらうつもりである。
孫家のアルバムはここからチチの写真が増えるのだ。そう思えば少しだけ、悟空の口角は持ち上がるのだった。