『いい夫婦』と言われるようになったのは比較的最近のこと。
悟空が不思議そうに、だが少し不満そうにずっと夫婦なのに? と首を傾げるとチチが苦笑して「だって悟空さおらの近くにいない時間が長かったから」と言われてしまうと悟空としては返す言葉もなく腕を組んだままがっくりとうなだれるしかない。
状況が状況だったとしかいいようがないが、振り返るとぐうの音もでない。最近はブルマやクリリンら、子を持つようになった友人、そして親になった息子達もあの頃のチチのことを思うと胸が苦しくなると言われている。
「怒るとか恨むとか通り過ぎたべな。最後のやらかしで、悟空さおらに悟天ちゃん預けていったし」
「いや…ほんと…なんかもう……」
「『すまねぇ』なら聞きたくねぇだ」
「う………」
方眉を持ち上げて今の悟空と同じく両腕を組んで見上げてくるチチのまなざしはきついそれだったが、シャボン玉が弾けたようなぱちりとした切り替えで、彼女の表情は笑顔に変わる。
「おらに友好的な言葉は『ありがとう』だべ。おらも、まぁ…いろいろあったけんど、悟飯ちゃんや悟天ちゃんのおっとうになってくれて、二回死んじまったけんど、おら達のところに戻ってきてくれた悟空さにありがとうって言うから」
「チチ……おめぇ、いい女だなぁ」
「んだ。だからおら達、いい夫婦になれてるんだべよ」
悟空はたまらずチチを抱きしめて、その広い背中に細い腕と小さく見えてしまう手が回されていた。