パオス山の冬はとても寒く、雪も深い。
幸いというか孫家のある辺りは風の流れなどの関係か雪は積もりにくいようだが、冬は積もった雪を少し集めてその中に白菜などを入れて保管できるくらいには積もる。
朝起きたチチが、いつもとは違う静けさに期待しながらカーテンを開けたその日がまさに雪の日で、子供達に知らせてやらねばと思ったが、長男と次男もトランクスに招かれてお泊りで遊びに行っていることを思い出した。夫である悟空もまた修行に出ており、まだ数日は戻らないのではないかとチチは思っている。
まぁ今は畑仕事は完全ではないがそんなに多くもないし、このような雪が積もってしまった日はチチも致し方なしとのんびりすることにする。
いつもよりゆっくりと家事を済ませて、せっかくだから昼から入浴を楽しむことにしたチチはそれならばと外に出て雪遊びを楽しんだ。
子供達に誘われてやることもあったが、ひとりで好きなように無心で冷たいものを手にし遊ぶ機会はなかなかない。チチが生まれ育ったフライパン山はもともとは過ごしやすい気候の場所であったし、一時期は文字通り灼熱の山だった。結婚してからは早い時期で悟飯を身ごもり、季節を家族で過ごしていたのでチチひとりだけというと、夫が二度目の死別から戻ってきてから、彼と子供達の不在という時間で得ているという気がする。
雪を手の中で固めて球にし投げて遊んでいたチチは次に子供達が作るような大きな雪だるまを作ってみようと思ったが、ひとりで作るには大変そうだと考えなおし、小さな雪だるまを作ることにした。
小さい、と決めたが雪玉と違ってきれいな丸にするのはなかなかに難しい。
苦戦しながらもなんとかそれっぽい大小の雪の塊を作り、大の上に小を乗せて満足していると、空から夫がチチの名前を呼びながら降りてきた。珍しく思いのほか早い帰宅らしい。
雪景色のパオズ山の感想と冷えたチチの手に驚く悟空は、彼女の足元の小さな雪だるまに表情をほころばせ、友達を作ってやろうぜ、とチチに一緒にもうひとつの雪だるまを作ろうと誘った。
「そいつかわいいけどよ、ひとりじゃさみしいかもしんねぇから」
夫のそんな言葉にチチも笑顔で頷いた。
楽しい時間を過ごしつつも、すっかり冷たくなった耳と手、あと赤くなってしまった鼻の頭に笑いながら風呂にはいるために家へと入っていく夫婦の作った、ふたつの雪だるまが仲良く並んでいたのは言うまでもない。