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    別にR18ではないけれど何が起こるか分からないからここに入れました。
    現パロ尾月。『疲れている時の人間の行動力って、侮ったらいけない』
    ほのぼのと見せかけた意味不明なギャグ。そして下ネタが多めです(?)。すみません、ここにはカッコいい尾形もカッコいい月島もいません。社畜が過ぎると人間って壊れるよねっていう話をぽっきーの日に便乗したら落下しました。
    二番煎じすみません、何でも許せる方向けです🙇

    #尾月
    tailMoon

    尾月『疲れている時の人間の行動力って、侮ったらいけない』「『わたしきてぃ。今あなたの家の最寄り駅にいるの♡』」
    「…………」
     土曜日の二十二時すぎ、休日出勤で疲労がピークに達したと思われる恋人・尾形から、裏声を使った謎の嫌がらせ電話が入った。あぁ、またか。またか、というのはこれが初めてではないという事だ。
     俺達は悲しき社畜道を謳歌しているため、その反動で定期的に壊れる。俺もこいつほどではないが、仕事の繁忙期で残業が多発するほど、妙なテンションでこいつに絡む事があった。しかし今回の奇行ほどではないと思う。……ま、いつも酒が入っていて覚えてはないが。というかなんだ、なんで裏声で自称きてぃなんだ。
     無言で面倒くさいという空気を垂れ流す俺に対して、尾形の追随が始まった。
    「『ねぇみっふぃー?今わたし、あなたの家の近くのコンビニに来たわ。買い物してから向かってもいいかしら?』」
    「……おい、誰がみっふぃーだ。せめてはん◯ょどんとかにしろ、色々ややこしくなる。それよりもお前、なんなんだ?これ確か元ネタは捨てられた人形の復讐劇だったろ。俺はこれからお前に呪われる役でもやらされるのか?」
    「『うふふ、うふふ、うふふふふふふ♡』」

     ――プツ!

    「………は?」
     こちらの問いには答えることもなく、尾形は電話を切った。なんだあの、本家を真似てはいるが絶妙に狂気じみた笑い声は。なるほどな、確かに今日のこいつはだいぶ『キてい』るようだ。あぁ、だからキて……――いや、俺まで何を言ってるんだ?
     実は俺も遅くまで休日出勤をし、先ほど風呂を済ませたばかりであった。湯船でだいぶ疲労は取れたが、それでもまだ疲れは残っている。帰宅前に尾形に連絡をしたが、既読がつかないから向こうは帰って寝てるのかと安堵していたんだが、まさかこいつの方が後だったなんて。
     仕方なく、すぐ側まで来ている様子なので、手軽に食べられるおにぎりでも作ってやることにした。コンビニに立ち寄ったから何かしら買ってくるだろうが、いらなければ俺が食べればいい。むしろ俺も小腹が空いているから、握り飯に癒やされたい。
     冷凍ご飯を二つ、電子レンジに放り込むと、タイミングがいいのか、着信ベルが鳴った。
     スマホ画面を確認し、やはり尾形であったため、仕方なく出てやった。
    「『わたしきてぃ、今コンビニを出たわ』」
    「……まだ続けるつもりか」
    「『ねぇみっふぃー、わたし今日はね、コンビニでお花を買ったのよ?花キ◯ーピットじゃないけどお花を買ったの』」
    「おい、まさか……?」
     こいつ、さっきから俺をあの白ウサギに見立ててるのは、昔流行った(かどうかは分からないが頻繁にやっていた)コマーシャルの謳い文句を言わせるつもりか?いや待て、俺も疲れてるんだぞなんのプレイだこれは?
     嫌な予感は的中したようで、自称きてぃはかわいこぶりながらネタを振ってきた。
    「『あーあ、きてぃ疲れているから、久しぶりにみっふぃーのあれが聞きたいなぁ』」
    「いや、やらんぞ。久しぶりも何もやったことすらないぞ」
    「『あー今すぐ聞きたいなぁ。聞きたいなぁ。聞きたいなぁ』」
    「だからやらんと……」
    「『聞きたいなぁ聞きたいなぁ聞きたいなぁ聞きたいなぁ聞きたいなぁ……!!』」
    「うるさっ!お前、酒でも入ってるのか!?そんな無茶振りに俺が応じてやる義理はな――」
    「――あー、こんなささやかな願いも叶えてはもらえないのか。やはり俺は祝福されていないのか。やはり俺では駄目なのか……」
    「……………」
     やめろ。急にいつものテンションに戻るな。無機質な低音を響かせて自虐に走るな。これじゃまるで俺が加害者みたいじゃないか。
     とんでもなく面倒くさい絡みをしてくる恋人に、俺はあからさまな溜息をつく。そして咳払いを一回すると、無表情かつ出したこともないような高い声で、うろ覚えの呪文を吐いた。
    「『……今日はお花を買いに行こう♪花キ◯ーピット〜♪』」
    「『わあぁぁ〜さすがみっふぃー!とっても可愛い♡』」
    「…………」
     こいつのテンションはどうなっているんだ。途端に先ほどからの自称きてぃキャラに戻り、尾形が高音ボイスではしゃいでいる。しかし俺の心は、到底レンジでは解凍できない冷凍ご飯のように冷めていた。一体いつまで続くんだ、この茶番劇は。
     すると、ピーという音とともにご飯の温めが完了したようだ。今の俺の癒やしはお前だけなのだ、そう思いながらホカホカのご飯を二つ取り出すと、塩にぎり作りに取り掛かる。
     しかし地獄の絡みはまだ続いていたようで、こいつはまだキャラを継続したまま、要求をグレードアップさせてきた。
    「『でも、このお花はあとで湯船に散らすとして、ミッフィーにはこのウサ耳と白のネグリジェ、着けてもらいたいなぁ~?』」
    「はぁ!?ウサ耳とネグリジェ!?」
    「『今日ね、とっても疲れたの。ううん、もう最近ね、疲れが取れないの。これはもう、わたしの可愛いみっふぃーちゃんに、元気付けてもらわなくちゃ割に合わないの♡』」
    「おまっ!……ひとつ要求を通してハードルを下げたつもりか。俺はそんなもの、断じて受け入れんぞ」
    「――なに言ってるんですか?こっちはさっきからこんな裏声まで使ってやりたくもねぇキャラになりきってあげてるんですから、恋人ならひとつやふたつや一本くらい、その堪んねぇオクチで受け入れて下さいよ」
    「お前は当り屋か何かか!?勝手に意味の分からない電話してきて、頼んでもいない設定押し付けられて、はい、そうですかと何でも承諾する訳がないだろ!?……あとその下世話な話を近所でするな!変な目で見られるだろうが!!」
    「ははぁ、それこそ自意識過剰でしょ?誰が見てもあんたは俺に抱かれてにゃんにゃん啼く可愛い子猫ちゃんですから、もう今更ですよ?みんな温かい目で見守ってくれてるから心配せんで下さい。それに、別にこんなもの着けたくらいで一瞬で床に放られて終わるんですから、別にいいじゃねえか」
    「切るぞ」
    「あぁ、待って下さい!!冗談です、俺が悪かったです!!もう……いつも酔っ払ったあんたに絡まれる俺の気持ちが少しは分かったでしょ?今日はぽっきーの日なんですよ、せっかくだから二人でやりましょうよ」
    「はぁ?なんだそれ」
    「やれやれ、本当になんも知らねぇんだから。あの棒状のプレッツェルにチョコかけた有名な菓子があるでしょう?今日はそれを互いに咥える日なんですよ。愛をシェアするんだそうで」
    「あぁ?そんなもの、バレンタインデーと一緒で企業戦略の一環だろう?菓子くらい好きな時に好きなタイミングで食えばいいだろ?」
     俺は呆れたといった態度で、尾形の希望を跳ね除けた。ただ言われてみて、ドラマか何かでその場面を目にした記憶があると思った。きっとあれのことだろう。棒状の菓子の両端を恋人同士で咥えて、端から徐々に食べていって最後にキスをする、とかいうやつだ。
     なんだ、本当はあれをやりたかったから、こんな茶番を演じたのか。照れ隠しにしては存外可愛らしいところもあるじゃないか。
     仕方ない、今日くらいは疲れている恋人を労ってやるか。俺はおにぎりを作り終えると、笑いを堪えて折れてやろうとした。

     ……しかし。

     そんな俺の予想を遥か飛び越えたところに、尾形の思考はあった。
    「そうですよ、あんなものは菓子売り付けるための口実に過ぎません。だけどせっかくだから、俺達は俺達の【ぽっきーの日】をやればいいんですよ」
    「……は?」
    「棒状のモノなんて、互いの体にくっついてるでしょう?それを咥えればいいんです、名付けて【勃――」

     ――プツ!

    「……さて。握り飯食ったら、今日はもう寝るか」
     俺は何も聞かなかった事にして通話を切ると、清々しい気持ちでおにぎりを頬張った。優しくしてやろうと思った俺が浅はかだったのだ。いくら疲れていようとも、こいつはもう手遅れだ。合鍵を持っているとはいえ、ドアチェーンさえ掛けてしまえばあいつは入って来られない。
     俺は咀嚼しながら足早に玄関を目指す。内鍵の取っ手を掴みあげ、ロックをかけようとする。

     ――その瞬間だった。

     ガチャリ!という音と共に、扉が勢いよく引かれた。まずい、思ったよりも近かったのか。俺はおにぎりにより片手が塞がっていたため、空いた手で戸を締めようとしたが間に合わない。
     寸でのところで足をねじ込んで扉を締めさせまいとする尾形が、息を切らして俺を見下ろす。そして、こちらを呪い殺さんばかりに隙間から黒目を向けると、瞬時に呪いの言葉を吐きやがった。
    「わたし、尾形……ねぇ月島さん、ここを開けて……?わたしを入れて……?じゃないとわたし、ご近所に聞こえちゃマズイお話し、大声でしてあなたを辱めたくなっちゃうわ……♡」
    「――ッ!!」

     この後の事はそう……ご想像にお任せしよう。ただこれだけは断言できる。

     疲れている時の人間の、尾形の行動力は、決して侮れないという事だ。明らかにおかしな呪いの電話を取ってしまった時には、何もかもがすでに手遅れなのだ。
     相手をしている場合ではない。
     握り飯を作っている場合ではない。
     その電話が鳴った瞬間、ほとぼりが冷めるまで、ホテルなどに身を潜めて、連絡を断つしかない。
     ……これ以外に道がないのだ。
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    DONE別にR18ではないけれど何が起こるか分からないからここに入れました。
    現パロ尾月。『疲れている時の人間の行動力って、侮ったらいけない』
    ほのぼのと見せかけた意味不明なギャグ。そして下ネタが多めです(?)。すみません、ここにはカッコいい尾形もカッコいい月島もいません。社畜が過ぎると人間って壊れるよねっていう話をぽっきーの日に便乗したら落下しました。
    二番煎じすみません、何でも許せる方向けです🙇
    尾月『疲れている時の人間の行動力って、侮ったらいけない』「『わたしきてぃ。今あなたの家の最寄り駅にいるの♡』」
    「…………」
     土曜日の二十二時すぎ、休日出勤で疲労がピークに達したと思われる恋人・尾形から、裏声を使った謎の嫌がらせ電話が入った。あぁ、またか。またか、というのはこれが初めてではないという事だ。
     俺達は悲しき社畜道を謳歌しているため、その反動で定期的に壊れる。俺もこいつほどではないが、仕事の繁忙期で残業が多発するほど、妙なテンションでこいつに絡む事があった。しかし今回の奇行ほどではないと思う。……ま、いつも酒が入っていて覚えてはないが。というかなんだ、なんで裏声で自称きてぃなんだ。
     無言で面倒くさいという空気を垂れ流す俺に対して、尾形の追随が始まった。
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