螺鈿 夏の連隊戦が行われている真っただ中、本丸総出で夜光貝集めに駆り出されていた為に中々二振りで過ごす時間が取れずにいた。だが、本日ようやくお互いの出陣予定がなくゆっくり過ごせる時間が取れた。いつも以上に浮かれた気分で大般若の部屋を訪ねた。
「大般若、はいっても?」
「構わないさ。あぁ、でも少し待ってもらえるかな。」
そう言って部屋に迎え入れてくれた大般若の手にはキラリと光る見慣れぬものがあった。
「それは?」
「あぁ、これかい?美しいだろう。万屋街で見つけてね、口説き落として迎え入れたんだ。中々に骨が折れたよ。」
ほら、と見せてくれたのはフクロウの親子を模した螺鈿細工のブローチであった。キラキラと光を反射して輝くそれは確かに美しいもので大般若が気に入るのも良く分かる。愛おしそうな目で「また後でな。」とブローチを箱に仕舞う姿に何故だか胸がもやもやとしたものに覆われる感覚を覚えた。無意識にしかめっ面をしていたのか大般若に眉間を指で押さえられた。
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