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    八月お題「貝殻」で参加させていただきます。
    夏だ海だ連隊戦だ!夜光貝だ!からの夜光貝と言えば螺鈿細工の材料の一つという連想の元書かせていただきました。調べたら製作キットマジであるらしい。ちょっと欲sゲフンゲフン。

    #あずはんにゃ

    螺鈿 夏の連隊戦が行われている真っただ中、本丸総出で夜光貝集めに駆り出されていた為に中々二振りで過ごす時間が取れずにいた。だが、本日ようやくお互いの出陣予定がなくゆっくり過ごせる時間が取れた。いつも以上に浮かれた気分で大般若の部屋を訪ねた。
    「大般若、はいっても?」
    「構わないさ。あぁ、でも少し待ってもらえるかな。」
     そう言って部屋に迎え入れてくれた大般若の手にはキラリと光る見慣れぬものがあった。
    「それは?」
    「あぁ、これかい?美しいだろう。万屋街で見つけてね、口説き落として迎え入れたんだ。中々に骨が折れたよ。」
     ほら、と見せてくれたのはフクロウの親子を模した螺鈿細工のブローチであった。キラキラと光を反射して輝くそれは確かに美しいもので大般若が気に入るのも良く分かる。愛おしそうな目で「また後でな。」とブローチを箱に仕舞う姿に何故だか胸がもやもやとしたものに覆われる感覚を覚えた。無意識にしかめっ面をしていたのか大般若に眉間を指で押さえられた。
    「心配しなくとも、アンタを一番愛しているよ。」
    「わかっているさ。わたしもあいしてる。」
     時間も勿体ないからと今まで触れ合えなかった分まで目一杯触れ合い、愛し合った。けれども、心に芽生えたもやもやが最後まで晴れることはなかった。

                *

     大般若は美しいものは美しいもの、恋人は恋人ときちんと分けて愛を与えてくれるし、私への愛が一番大きくて強いものだと理解をしていても、私には他にも大般若の愛と口説き文句を受ける存在があるのがどうにも面白くなかった。酷い独占欲と嫉妬だとは自分でも思うが中々に自制が出来ない。与えられるほど、与えるほどもっともっとと欲望が芽生えてしまう。刀であったころには持ち得ることすらなかったものに困惑を隠しきれない。どうしたものかと悩んでいれば見かねた小竜に「大般若が見つけて口説き落としてくる以上に与えてしまえばいいんじゃない?そしたら少しは落ち着くかもね。」と言われてしまった。なるほど、その手があったか。
     与える、と言っても具体的には何を与えればいいのか、と考える。折角なのだから大般若が他に見向きしなくなるようなものを贈りたい。しかしながらスイーツではいつもの事の上、連隊戦でお互い時間が合わない上にあまり長い間置いておけないので今回は却下。愛も同じく、それでは足りぬと私の欲望が叫んでしまう。ならばどうするか、となった時に丁度連隊戦の戦場から戻って来た部隊が持っていた夜光貝を見て、以前大般若が口説き落としてきた螺鈿細工を思い出す。確か、螺鈿細工の製作キットなるものがあると、主がカタログを見ていたの覚えている。頼めば取り寄せてくれるだろう。善は急げとばかりに主に頼みに行った。

                *

     結論から言えば、完成はしたもののあまり良い出来、とは言えないものであった。当然ながら長い修行を積み重ねた職人の作るものに遠く及ばないにしても少しでも大般若の目に留まればと思っていたがこれでは見向きもされないだろう。難しいものだとわかっていたけれど想像以上であった。しかしながら捨てるわけにもいかないので棚の奥にでも隠しておこうと腰を上げた時、部屋に大般若がノックもなしに入って来た為、慌てて後ろ手に隠した。
    「今、何を隠したんだい?」
    「なんでもないよ。それよりなにか、ようだったのかな?」
    「あぁ、連隊戦の報酬で笹貫が来たんで歓迎会をするからその連絡に。」
    「なるほど、したくをしてからむかうよ。」
    「あぁ、そうしてくれ。」
     用件を伝えて部屋を出ていこうとする大般若にバレなくて良かったとホッとしたのもつかの間、くるりと踵を返した彼に後ろ手に隠していたものを取られてしまった。
    「おや、こいつは…。」
    「あ、それは…。」
    「ふむ、確かに一般的に流通している物に比べれば雲泥の差ではあろうがそれを補うだけの強い思いが籠っている。美しいなぁ…。これ、誰が作ったんだい?」
    「…だが。」
    「ん?」
    「わたしが、つくった。」
    「へぇ、なんでまた。」
    「きみがいぜんくどきおとしてきた、らでんざいくにしっとして、すこしでももっとこっちをみてくれればと…おもって…。」
     最後の方はしどろもどろになってしまったが、大般若はきょとんとした顔をした後、私の髪をくしゃくしゃと撫でながら嬉しそうな顔をした。
    「全く…可愛い奴だなアンタは。ならこれは俺がもらい受けよう。折角の品だ。きちんと飾ってやらないとな。」
    「あまり、よいできとはいえないのだけれど。」
    「いやいや、十分いい出来だよ。アンタが俺を思って慣れない物を作ってくれた。ただそれだけで価値があるというものさ。」
    「そういうものかい?」
    「そういうものだよ。あぁ、そうだ。今度互いの非番が重なった時にでも一緒に作ろうか。きっともっと良いものが作れるだろう。」
    「いいのかい?」
    「勿論だとも。あぁだが、俺は一度も作ったことがないから手取り足取り教えてくれると助かる。」
    「わかったよ。」
    「とりあえず今日のところは宴会に行こうか。早くしないと色々取られてしまうからな。」
    「そうだね。いこうか。」
     約束をして部屋を後にする。次の非番はいつだったかと思いを巡らせながら宴会場へと向かった。

                *

    おまけ
    「こいつは中々…。」
     非番の日に、材料を買い足して二振りで作った螺鈿細工の手鏡は少しばかり不格好なものになってしまった。けれども、悪くはない。
    「すこし、おもっていたばしょからずれたりはしているけれどもまえよりはよくなった…はずだよ。」
    「難しいな、螺鈿細工と言うのは。」
    「そうだね。けれど、かずをこなせばよくなるものだよ。なにごともね。」
    「確かにな。」
     また作ろうと約束をして、互いに作った手鏡を交換した。
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    DONE八月お題「貝殻」で参加させていただきます。
    夏だ海だ連隊戦だ!夜光貝だ!からの夜光貝と言えば螺鈿細工の材料の一つという連想の元書かせていただきました。調べたら製作キットマジであるらしい。ちょっと欲sゲフンゲフン。
    螺鈿 夏の連隊戦が行われている真っただ中、本丸総出で夜光貝集めに駆り出されていた為に中々二振りで過ごす時間が取れずにいた。だが、本日ようやくお互いの出陣予定がなくゆっくり過ごせる時間が取れた。いつも以上に浮かれた気分で大般若の部屋を訪ねた。
    「大般若、はいっても?」
    「構わないさ。あぁ、でも少し待ってもらえるかな。」
     そう言って部屋に迎え入れてくれた大般若の手にはキラリと光る見慣れぬものがあった。
    「それは?」
    「あぁ、これかい?美しいだろう。万屋街で見つけてね、口説き落として迎え入れたんだ。中々に骨が折れたよ。」
     ほら、と見せてくれたのはフクロウの親子を模した螺鈿細工のブローチであった。キラキラと光を反射して輝くそれは確かに美しいもので大般若が気に入るのも良く分かる。愛おしそうな目で「また後でな。」とブローチを箱に仕舞う姿に何故だか胸がもやもやとしたものに覆われる感覚を覚えた。無意識にしかめっ面をしていたのか大般若に眉間を指で押さえられた。
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