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    磯咲でバレンタイン話。

    (注意)家に遊びに行く関係になった頃という設定

    #磯咲

    ダークチョコレートと恋人たちバレンタインの数日前の土曜日。
    磯貝の家に咲子が遊びに来ていた。
    「磯貝さん、少し早いですがどうぞ」
    咲子がそう言って差し出したのは綺麗にラッピングされたチョコレートの箱。
    「ありがとう」
    磯貝は軽く頭を下げてそれを受け取った。
    そしてふんわりと嬉しそうに笑う。
    「開けていい?」
    「はい、もちろん!」
    咲子も嬉しそうに微笑みながら首を縦に振った。
    包みを丁寧に剥がして中の箱を開けるとそこには、濃い色のチョコレートが綺麗に並べられていた。
    「甘いものはあまり食べないっておっしゃってたのでダークチョコレートにしてみました。86%カカオのチョコレートなのでちょっと苦いかもしれないんですが…」
    磯貝は驚いた様子で箱から咲子へと視線を移す。
    「ありがとう、わざわざ探してくれたの?」
    「えへへ、色々なチョコレートがあって楽しかったです!磯貝さんのお口に合えば良いんですが」
    咲子のその言葉に磯貝は心の中がじんわりと温まるのを感じた。
    「じゃあ、さっそく…」
    「あ、待って下さい!実はもう1つ見てもらいたいものが…」
    磯貝の言葉を遮って、咲子が鞄の中から平たい板のようなものを取り出して磯貝の目の前に差し出した。
    磯貝が受け取ると薄いその箱には大きく100%CACAOの文字が書かれていた。
    磯貝が先ほどとは違った意味で驚きの表情を浮かべる。
    「え!?100%カカオのチョコレート!?」
    「そうなんです!!私、びっくりしちゃって!!」
    咲子が大きく頷きながら手を上下に大きく振った。
    そして、少し困ったような表情を浮かべて手を下ろす。
    「バレンタインのチョコレートには向かないと思ったんですが、つい気になっちゃって…」
    「いや、これは気になるでしょ!」
    よく見つけたねー、と磯貝は感心しながらチョコレートの箱の裏にある成分表に目を通し始めていた。
    同じように驚いて共感してくれる磯貝に、咲子は安心した表情を浮かべる。
    「へー、砂糖が一切入ってないんだな」
    「やっぱりすごく苦いんですかね?」
    「試しに食べてみようか。俺、コーヒー淹れてくるよ。池田さんのは砂糖多めが良いかな?」
    「えっ、私淹れますよ」
    一緒に立ちあがろうとする咲子を制して、磯貝は立ち上がった。
    「良いよ良いよ、池田さんはチョコレートを持ってきてくれたんだし、遠慮しないで座ってて」
    「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて、砂糖多めでお願いします」
    「はい、了解」
    磯貝は笑って頷いた。



    「では…」
    「はい!」
    磯貝と咲子が並んで座り、手にした一欠片のチョコを同時に口に入れる。
    そして噛んだ瞬間口の中に広がる苦味に、2人は目を見開いてコーヒーを1口啜る。
    そしてお互いに相手を見た。
    「凄い苦くてびっくりですね…!でも、カカオの香りが口の中に広がってやっぱりチョコレートなんだなって。お砂糖多めに入れてもらったとはいえ、コーヒーがいつもより飲みやすく感じます」
    咲子の食レポに磯貝は大きく頷く。
    「うん、確かに。こっちのブラックコーヒーも苦味と酸味がマイルドになった感じがしたな」
    そんな彼の言葉に、咲子がキラキラした目で磯貝のコーヒーを見つめる。
    磯貝はそれを見て吹き出しそうになるのを堪えながら、咲子に自分のマグカップを差し出した。
    「こっちも試してみる?」
    「良いんですか?」
    「うん。どうぞ」
    磯貝からコーヒーを受け取り、咲子はもう一度チョコレートを一口齧ってコーヒーを一口啜った。
    咲子のより温めの温度のそれは、砂糖が入ってないため当たり前だが苦味が口全体に広がる。
    だが磯貝の言う通り、コーヒー特有の苦味と酸味が抑えられて飲みやすく感じた。
    「わぁ〜!これはこれで美味しいですね!」
    「そうだね。…でも池田さんはこっちの方が好きなんじゃない?」
    磯貝はそう言いながら、一粒のチョコレートを咲子の口にそっと入れた。
    咲子がびっくりして噛みしめると、口の中にどんどんとほろ苦さと甘さが広がっていき、彼女の顔がみるみるうちに笑顔になっていく。
    彼の手にはいつのまにか開封された86%カカオのチョコレートの箱があった。
    花が咲きそうな笑顔の咲子を満足そうに見つめながら、磯貝もそこから一粒チョコレートを取り出し自分の口に入れる。
    「おっ、100%のあとだとやっぱり甘く感じるな」
    「はい、甘くて美味しいです。苦味もあるのですがそれも美味しく感じますね」
    咲子はありがとうございますと礼を言いながら磯貝にマグカップを返し、自分のマグカップを啜る。
    コーヒーの砂糖の甘みにほんわかと笑顔になる彼女を優しく見つめつつ、磯貝はスマホでチョコレートについて調べてみた。
    「…へ〜、この苦味ってポリフェノールの正体らしいよ」
    「ポリフェノールってアンチエイジング効果とかでよく聞くアレですか?」
    「そうそう、詳しくはないけど動脈硬化予防とか抗酸化作用があるってやつ。…あ、アレンジ集もあったよ。99%カカオのだけど1%しか変わらないから使えるんじゃないかな」
    磯貝はスマホをスクロールしながら読み出す。
    「えっとね…ココアに溶かす」
    「ココア…!良いですね〜」
    「それから…バニラアイスにトッピング」
    「なるほど、アイス!絶対美味しいです!」
    「あとカレー」
    「カレー!!!」
    磯貝が言い終わる前に、咲子が食い気味に反応した。
    「確かに、チョコレートはカレーの隠し味で使われたりしますもんね!」
    咲子はキラキラした目で大きく頷く。
    (おお、これは完全に池田さんのチャレンジ精神に火がついたな)
    磯貝は腕時計を見る。
    時刻は15時半。時間は十分にある。
    「じゃあ今からスーパーに行く?今から作れば晩飯に間に合うし」
    「え、良いんですか!?磯貝さんにあげたチョコなのに…」
    「もちろん。俺にはこっちのチョコレートがまだあるし」
    磯貝は最初にもらったチョコレートの箱を指差した後、ニッコリと笑った。
    「なにより俺も気になってきたしね」
    その言葉に咲子が安心したように微笑む。
    「じゃあ行こうか」
    「はい!」
    玄関に向かいながら、磯貝と咲子は話し続ける。
    「そういえば磯貝さんはいつもカレーは何のお肉使ってますか?」
    「いつもはレトルトだからなぁ…実家だと確か…」
    2人の楽しそうな声は玄関のドアが閉まるまで聞こえ続けたのだった。
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