蝶の羽ばたき店の予約時間まであと1時間。少し空き時間ができたので、磯貝と咲子は有名チェーン店のカフェで時間を潰すことにした。
窓際のカウンター席がちょうど並んで空いているのを見つけた2人はそれぞれハンカチを置いて席を取り、カウンターへ飲み物を買いに行く。
磯貝はアイスコーヒー、咲子はアイスカフェラテをそれぞれのレジで注文し、飲み物を受け取って席に戻った。
「あれ?デザートは頼まなかったの?」
席に着いた磯貝が咲子のトレイの上を見て首を傾げると、咲子は大きく頷いた。
「この後のためにお腹空かせておきたいので我慢しました」
「なるほど」
咲子らしい回答に磯貝は笑みを浮かべつつ、ストローを口に含んだ。
真夏の暑さにやられていた体に、コーヒーの冷たさが口元から喉、そして胃へ、そのまま体全体に染み渡るように感じる。
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