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    あらむらとみずいこが好き

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    喧嘩できないみずいこのお世話を焼くあらむら

    喧嘩したあらむらに恩返しするみずいこ

    (みんな大人です。違う形でだしたものを少し修正しました。)

    #みずいこ
    waterLake
    #荒村
    desertedVillage

    【喧嘩できないみずいこのお世話を焼くあらむらのお話】



    「イコさんに怒られへんねん、俺」

    テーブルに突っ伏す男が発した独り言のような嘆きに、荒船は眉を寄せた。付き合いの長さはそれなり。出身校の同級生というわけではないが、不思議と縁がある。少なからず遠慮はいらない相手だ。

    「はあ?」
    「腹立つこともあるし注意もする。せやけど喧嘩にならん」
    「平和でいいだろ」

    もとより配慮はできるが遠慮がないと評される性格の荒船である。恋人との予定が流れたタイミングで狙ったように声を掛けられ、久方ぶりに顔を突き合わせたと思えば酒のつまみにこの吐露。気を回してやる所以はない。

    「昨日、女にくっつかれとるとこ見てもよう喧嘩にならんかった」

    そもそもが相手にも原因がある。水上という目の前の男から酒の席に誘われたことなど数える程度しかない。それもあまりのタイミングの良さだ。恐らく、いや確実に、恋人の予定変更のきっかけを知っているとみていいだろう。あるいは気の優しい恋人のことだ。水上の為に何かしら計らってやった可能性すらある。荒船とは違い二人は学生時代の同級生でもある。互いにマメに連絡を取るタイプではないのに、共通する境遇もあり定期的に電話している事実を察していない荒船ではない。

    「信用してるからじゃねえのか」
    「してるけど普通に嫌やろ」

    見るからに落ち込んでる。それも酷く。あくまでも表情ではなく雰囲気が、ではあるのだが。ポーカーフェイスに一体何が効果的なのかを追及するには踏み込む遠慮の無さが必要である。やろうと思えばできなくはないが、村上の苦手分野のはずだ。それを見越してのことだろう。荒船は頼りにされているのだ。傷つきやすいほど優しい一面を持つ恋人の為にも、気持ちを切り替え漸く話を聞く姿勢をとった。

    「お前らどうやって喧嘩して仲直りするん」
    「普通に、ちょっとしたことで言い合いになるぞ。連絡の有無だとか間の悪い台詞だとかで」
    「仲直りは?」
    「言いたいこと言って少し落ち着いたら次の予定だけ立てるな。疎遠になんのは困るし、大概は朝一緒にランニングして飯食う約束してそこで持ち直す」

    ぐい、と酒の入ったグラスを空にしてメニューに手を伸ばす。恋人の手前、深酔いするまいとアルコール度数の低いものを選択しておいたが今夜はあまり酔える気分でもなさそうだ。少し濃いものにしようかと目を走らせ、呼び出しボタンを押す前に水上にも追加を確認しようと顔をあげた。

    「…はー…びっくりするぐらい健全やな。イメージ通りやけど」
    「不健全なこともするけどな」
    「イメージ通りいうたそばからやめてくれへん?」

    落ち込んでるには違いないはずだが、たいして変わらぬ表情にこの程度の切り返しは許されるだろう。

    「くっつかれたっつっても、そもそもどういう状況だよ」
    「彼氏にフラれたいう同僚に泣きつかれとった」
    「あー……」

    下心が見えてしまったのだろう。本気か甘えかはともかく、裏を見抜くことを得意としない性格は互いの恋人の類似点だ。

    「困っとるんは見てわかんねん。せやけど俺が横におっても剥がしもせん」
    「まあ、優しいんだろうな」
    「……さすが鋼くんの彼氏さんで」
    「うるせえよ」

    話題の人物ではなく、荒船は自らの恋人を用いて同じシチュエーションを思い描いた。
    あいつなら、困りつつも諭す。ところが諭したうえで悲嘆の涙にくれられようものなら感情移入しかねない。だからこそ自分のような男がそばに居てやったほうがいいのだとも思っている。実のところ荒船自身も女性の心の機微に鈍感な面があるからこその対策的思考でもあったりはする。当事者だったのならば異性の涙をそうは気にせず村上を優先して、遠慮なく間に割って入ると断言できた。
    だが水上は、意外と遠慮するのだ。恋人に絡む女にではない。恋人の方にである。

    「なら嫌だって言えばいいじゃねえか。あれはしてほしいこれはしてくれんなって言うんじゃなくても、気持ちを伝えるぶんには抵抗ねえだろ」
    「あるからこうして愚痴ってますねん」
    「面倒くせえヤツだな」
    「くそ…俺も鋼くんに泣きつきたいわ…」
    「おいコラ」
    「ええやん。かっこええ彼氏おって靡かんのわかりきってんねんし」

    煽てているのが半分、ヤケになっているのが半分、といったところだろう。勝手に話を区切り、自分が飲み食いしたいものを適当に頼んだ。食で発散するつもりがないと踏んだからだ。荒船としては頼んだメニューを早く運んできてくれと願うばかり。

    「で、そんなになるまで自分に嫌気が差したのか」
    「振り返ったら明らかに今朝までの態度拗ねてもうとった…」
    「情けねえな」
    「傷口に塩どころやないで、お前」

    居酒屋の狭い個室で背中を丸めていた知人のような友人のような関係の男は、背中を伸ばして手を後ろにつく。明る過ぎない照明をぼうっと見上げながら、落ち込んでいるのかわかりづらい表情で呻き声を発した。存外、本当に参っているらしい。

    「……あん人、今日に限って家におらんねん。はよ謝ってさくっと切り替えたい」
    「そうしろよ」
    「せやからできるもんならしたいねん。できへんからこうしてるんやん」
    「…まあ、多少は付き合ってやるけど携帯の音と充電は管理しとけよ」
    「え?なに?荒船どないした」
    「惚気ていいなら付き合ってやらなくもない」
    「もしかして………こないだのクラス同窓会で鋼くんとの四国行き流れたん根に持ってはる?」
    「知ってたのかよ」

    愚痴や共通の悩みを語れる相手はそう多くいない。良い機会だと認識を変え、叩かれた薄い仕切りの向こう側に返事をした。










    一時間は経過しただろうか。揚げ出し豆腐を口に咥えながら日本酒に手を伸ばす行儀の悪い男へ注意を促しつつ、響いた音に安堵する。一先ず酒を受け取ってやる。咀嚼した男は大人しく自らの尻ポケットに手を伸ばした。画面に触れた瞬間、ろくに噛まずに通った食事が喉を鳴らす。
    気にするなと、なにくわない顔で代わりに手の酒に口をつければ全て察した男は苦い顔で機械を耳にあてがった。その察しの悪さにやはり余程気落ちしていたのだと納得ができる。

    「もしもし…」
    『おっ。水上か?』
    「そらそうでしょ」

    可愛くねえなぁ、と思った。荒船の恋人は不意の連絡に対し温かさを含んだ声色で応えるというのに。自分の苗字をかっこいいと思ってくれているらしく、それを知ってからというもの届く声は甘いものでしかない。

    『あんな、昨日ごめんやで』
    「飲み会の迎えぐらい…気にせんで大丈夫ですよ」
    『せやけどその後ろくにお前と話さんと任務やったやろ。やっぱ礼は言うとこ思うて』
    「…で、鈴鳴と交代してもろたんです?」
    『いや。鋼がな、別区域終わってから個人的に交代しに来てくれてんやんか。お前が元気ないから話聞いたってて』
    「…すんません」
    『めっちゃええ友達やな』
    「っすね」

    今や鈴鳴支部の第二部隊隊長を担っている恋人の人間性を褒められ、荒船は師匠としても恋人としても鼻が高い。頑なにその表情を見ようとしないところから、水上は視界に入れずとも理解しているらしい。

    『今どこや。今日は俺が迎えに行くわ』
    「子供やないし大丈夫ですて」
    『昨日の俺へのブーメランやめて』

    ぼそり、と店名を口に出す。観念したらしくはいはいといつもの口調で話し始める。必要事項を伝え終えた頃、個室内に電話の向こう側の声がはっきりと聞こえた。

    『水上』
    「はい」
    『泣くんやったら俺の前で以外はやめたってな』

    水上の恋人は、水上とは異なる意味合いで読み難い人物だ。だが、これは。とんでもなく良い恋人であろう。

    「お前抱かれるかもな」
    「ほんまやめてくれへん?」

    成る程。この男の恋人が務まる相手方というわけである。
    酔いから場所を離れることも忘れ通話を終えた水上は、名残惜しげに皿に残った刺身を一口。さっさと帰り支度をして店外に出るつもりのようだ。敵うはずのない優しい恋人をせめてもと待つつもりでいるとみた。甘え切らない格好のつけようには、荒船にも共感できるところがある。

    「悪いな。鋼くん仕事さしてもうて」
    「アイツから言ったんだ、気にしねえよ。それにオレ連休なんだ」
    「うん?」
    「寝こけてる鋼の世話焼くの嫌いじゃねえんだよ」
    「……惚気ごちそうさん」
    「おう」

    静かに財布を開く水上から妥当な金額を受け取る。呆れた顔に、してやったりと笑ってやった。
    しかしながらそこで笑みを向けられた側の脳裏に思いだされた荒船の前半の愛想の無さ。悔し紛れに、水上からも惚気をひとつ。

    「同棲するて決めたら、また教えてな。祝い酒持ってくわ」
    「うるせえよ」

    すっかり立ち直り、あとは吐き出せなかった謝罪を伝えるのみである。さっさと帰宅して片を付ければ万事解決だというのに余計な一言が憎らしく、水上らしくもある。らしからぬ素直さなんてものは酒のせいにしてしまえばきっと丁度いいのだから早く行ってしまえと荒船は手で追い払った。












    【喧嘩したあらむらに恩返しするみずいこのお話】



    「喧嘩したらしいやん」
    「もう終わってる」

    余計なことを言うんじゃなかった、と悪態を隠しもしない。今朝、水上の恋人がランニング中に出会ったという目の前の男こと荒船。この男は可愛い弟子とパン屋から並んで現れたのだそうだ。

    「朝メシ美味かったですか」
    「まあ美味かったな」
    「四国の実家にご挨拶の旅またあかんようになってんて?」

    一瞬で視線を外す。喧嘩の原因すら確信している水上を相手に取り繕う気は毛頭ないらしい。

    「そんなんじゃねえよ」

    だけども、そのつもりがなくとも、不実行続きで意識せざるを得なくなってしまった。そういうことだろう。実直誠実能動的。二人揃ってそんな性格なのだ。例えマイノリティであっても相手への筋は通したいだとか、根っこにはそんな感情を飼っていると予想がつく。
    水上は手にしていた封筒を卓上にのせた。

    「これやるわ」
    「は?」
    「一回目は俺も関係者やし。あとこないだの礼」

    一回目というのは、数ヶ月前の荒船も同行する予定だった村上の帰省が中止になった一件の話だ。帰省のタイミングに重なる形で数名予定を調整できなくなり、自分の変更だけで済むのならと村上の側が日程を延期してくれた。おかげで不慣れな幹事を任された同窓会が無事に開かれたのだ。気にかけられていた影浦も大人しく参加したのは村上の存在が大きい。
    だが、今回の行動のとしては'礼'というのが主な動機である。利用予定がなくなってしまったチケットの新たな使い道は生駒とも既に相談済みだった。

    「礼って、礼されるほどのことしてねえよ」
    「まあまあまあ」

    あえて軽い調子でご近所にお裾分けをする主婦の如く、水上の指が封筒を荒船の前へと滑らせる。

    「俺も仕事ついでに行こう思うてた実家、帰られへんようになってしもてんやんか」
    「災難だったな」
    「その予定日が明日やで」
    「急だな。けど手続きはしてもらえんだろ」

    頷く水上。ではこれは何のつもりかと荒船が問いかける。

    「こっちは俺の分ちゃうから経費やない。払い戻し面倒いし使うて気晴らししてきたら?足しにはなるやろ」

    成程。恋人と二人で地元関西へ向かうつもりであったが都合が悪くなったということか。理解した荒船はそれとわかる封筒に入ったチケットを見下ろした。様子から察するに彼自身、表情に険しさが残っている自覚はある。恐らくは自分の器の小ささに対する苛立ちが消化できていないのだと理解もしている。
    村上は、身内の体調不良を見舞う為に数時間前から帰省している。真面目な彼は自身の恋人を連れて出向くことに抵抗があったらしい。荒船のほうが先約とはいえ不謹慎なのではないかと、そのことで相談を受けた。まあ、他にも様々な要素が絡まり合い、荒船と村上は久しぶりにきつめの喧嘩に至ったわけだ。三日前のことである。
    勿論、水上は経緯の全ては知り得ない。

    「喜ぶんとちゃう」

    和解はした。互いに謝罪し、出立を見送るところまで持ち直している。だが荒船自身の現状を鑑みれば…どこまでも優しい彼の恋人が何も気にしていないとは到底思えない。ましてや身内に心配事が起きたのだ。現地に向かうのはともかく、問題ないと連絡を寄越してくれた恋人を待ち構えて二人で大阪観光程度は許されるかもしれない。
    持ち上げられた手の思いはそのようなところだろう。

    「…貰っとく。生駒さんにもよろしく言っといてくれ」
    「こっちこそやろ。鋼くんに気ぃ遣うたらあかんて言うといて」

    ああ。つまり、もしかして。村上絡みの急な仕事の調整もあって水上は明日こちらに留まる選択をしたのか。漸く回転し始めた頭で、改めて礼を言うべきかと判断した口が開かれる。
    礼の応酬など不要のものだ。目敏い水上はすかさず、いつだかのように意趣返しの意味を込めて遠慮した。

    「俺は帰る家も一緒やし、おかまいなく」

    荒船は口から出掛かった礼を飲み込んで、代わりに缶コーヒーを奢るに止まった。
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    REHABILI一緒にカーテンを買いに行く荒と村
    「こういうの見るのわりと楽しいよな」
    「そうなのか」

    肩にかけた鞄を正し、家具を眺めながら荒船が発した一言に、村上は少しばかり驚いていた。その反応を受けて辺りを見渡していた荒船が質問を投げかける。

    「お前はあんまり興味ないのか」
    「楽しいとは思うけど…拘りはないかな」
    「成程な」

    村上は家具を見ることに対してではなく、荒船がこういった場所を楽しんでいることを意外に思ったのだが、伝わらなかったようだ。

    「じゃあ…今日付き合わせて悪いなと思ってたんだけど、良かった」
    「おう。わりと乗り気だぞ」

    しかし、自身の用事に付き合わせてやって来た場所でそう言われれば少なからずありがたかった。
    支部のカーテンが汚れたのは今朝のことだ。明るい布地に本物の悪こと別所太一が珈琲をかけてしまった。洗う為にと外したところ足で踏んだまま持ち上げ更に裂けてしまったのだ。流石に新しいものを買おうと判断が下されされ、村上が出掛けるついでにと購入に名乗りをあげた。近くに大型インテリア用品店があることは知っていたが、入ったことはない。もとから会う約束をしていた荒船が土地勘のある人物だったため頼ることしにしたのだ。申し訳なさそうな後輩の姿が蘇る。荒船の台詞も添えて新しいものを持ち帰ろうと決めた。
    2070

    oz3011347532190

    REHABILI荒の寝顔が気になる村の小話。
    村上はそのSEの性質上、よく眠る。意識がないので断言はできないが寝姿を誰かに見られることなどざらにあるはずだ。勿論、時と場合は選ぶが必要ならば本来は寝床に適さない場所で眠ることだってあった。部隊に配属後、早くに任務に出られたのはその成果といえる。だが、もとより何処でも眠れる性分だったかといえばそれは違う。本部内で眠ることに抵抗がなくなったのは自身のSEを把握し稽古をつけてくれた師匠の意向によるところが大きい。どういったSEでどの程度の再現が可能でどれくらいで反映されるのか。それを見極めながら実地で弧月の扱いを教わったのだ。疲れのせいではなく学習の為に、皆が目に見える努力を重ねる新天地で一人眠ってしまうことに恐れに似た感情があったことは誰にも言っていない。目覚める度に誰かが迎えてくれたことで寝入ることへの抵抗が薄れていった。得られた成果を褒められることで、もはや自然に行えるようになったのだ。支部で自室を与えられていることを思えば、家族を除き村上の寝姿を見た回数が最も多いのは荒船という師匠だろう。だからこそとでも言おうか。目覚めの際に真面目な顔で声を掛けられ、時には笑いながら促された。そんな相手の寝顔は、村上にとってとても貴重なものに感じられたのだ。
    1903

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