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    oz3011347532190

    @oz3011347532190

    あらむらとみずいこが好き

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    荒の寝顔が気になる村の小話。

    #荒村
    desertedVillage

    村上はそのSEの性質上、よく眠る。意識がないので断言はできないが寝姿を誰かに見られることなどざらにあるはずだ。勿論、時と場合は選ぶが必要ならば本来は寝床に適さない場所で眠ることだってあった。部隊に配属後、早くに任務に出られたのはその成果といえる。だが、もとより何処でも眠れる性分だったかといえばそれは違う。本部内で眠ることに抵抗がなくなったのは自身のSEを把握し稽古をつけてくれた師匠の意向によるところが大きい。どういったSEでどの程度の再現が可能でどれくらいで反映されるのか。それを見極めながら実地で弧月の扱いを教わったのだ。疲れのせいではなく学習の為に、皆が目に見える努力を重ねる新天地で一人眠ってしまうことに恐れに似た感情があったことは誰にも言っていない。目覚める度に誰かが迎えてくれたことで寝入ることへの抵抗が薄れていった。得られた成果を褒められることで、もはや自然に行えるようになったのだ。支部で自室を与えられていることを思えば、家族を除き村上の寝姿を見た回数が最も多いのは荒船という師匠だろう。だからこそとでも言おうか。目覚めの際に真面目な顔で声を掛けられ、時には笑いながら促された。そんな相手の寝顔は、村上にとってとても貴重なものに感じられたのだ。

    「荒船?」

    名前を呼んではみたが、控えめな寝息しか返ってこない。

    「………」

    何か羽織るものを、と考えたがすぐに動きかけた体に静止をかける。トリオン体では無意味だろう。ではどうしたものか。ここは荒船隊の作戦室ではない。本部フロアに置かれた長椅子に座って荒船は眠っているのだ。本人も仮眠をとるつもりでほとんど廊下に等しいこんな場所に掛けているのだろう。小さな机こそ置いてあるがその上には荒船愛用のキャップしかない。村上は、本部まで同行した同隊の狙撃手が訓練に参加していることが気に掛かった。荒船に限って、とは思う。思いはするが懸念があるなら対処すべきだ。その判断基準も、教えてくれたのは目の前の師匠だった。

    「荒船、」

    小さく呼んだところで起きるはずもない。師匠の貴重な姿を見納めることを勿体ないと渋っているのだという自覚がある。心配しているのも本心のはずだが、悪念と呼べるものも確かに存在する。このままではいけない。せめて出来心として処理することは許されるだろうかと、そっとスマートフォンを取り出した。

    「…穂刈みたいな起こし方すんな…」
    「悪い」

    間近で響いた機械音により荒船はあっさりと目覚め、重そうに体を持ち上げる。謝りはしたが表立って申し訳ないといった様子は見せない。そんな村上の反応は、荒船にとって悪い気のするそれではなかった。決して口先ばかりの謝罪をしているわけではないとわかっていたし、こんなことをしても許してもらえるという安心感があるのだろう。荒船は向けられる信頼を心地良く思っている。村上が同じような真似をする相手などごく僅かであるはずなのだ。

    「いま何時だ」
    「六時前だ。訓練はよかったのか?」
    「ああ。もとから間に合うか怪しかったから不参加って言っといた」

    手前にあったキャップを被り、荒船は立ち上がる。

    「お前は、今日は支部に帰らねえとなんだろ」
    「近くで不審者の情報が出てるから…いまは来馬先輩が支部にいてくれてるけど、太一が終わったら早めに戻ろうと思う。荒船は?」
    「オレは水上とカゲの補習対策だ。今がいないんじゃ当真も後から顔出すんだろうけどな」

    来馬隊隊長は、隊内では唯一の三門市近辺の出身者だ。支部は来馬家の所有物でこそあるが、帰る家は他にある。オペレーターである今を一人にするまいとしての配慮だ。それに夕飯は共にする予定なので待たせるのも忍び無い。
    全て説明せずとも汲んでもらえる距離感を、村上もまた嬉しく思っていた。

    「よろしく頼む」
    「お前はカゲの親か」

    まるで兄のような素振りで頭を小突いて去っていく。上背はそう変わりないはずなのだが村上にはいつもその背中が大きく映った。掲げられた手に、見えないとわかりつつ同じ動きを返す。荒船が進んだ先に現れた水上にも手を振りながら、村上もまた行動を開始した。
    写真を消すように言われなかったことに気がついたのは、自室へ帰ったあとのことだ。

    「仲良えよなぁ」
    「見てたのかよ。こそこそすんな」
    「してへんわ。チクってもええねんで、コウくんに」
    「は?」
    「攻撃手時代に弟子の寝顔撮ったる悪い師匠おったらしいやん」
    「………カゲか」

    師弟揃って同じような出来心を発揮していたことを、スマートフォンを片手に悩む村上は知らないままでいる。
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    oz3011347532190

    REHABILI一緒にカーテンを買いに行く荒と村
    「こういうの見るのわりと楽しいよな」
    「そうなのか」

    肩にかけた鞄を正し、家具を眺めながら荒船が発した一言に、村上は少しばかり驚いていた。その反応を受けて辺りを見渡していた荒船が質問を投げかける。

    「お前はあんまり興味ないのか」
    「楽しいとは思うけど…拘りはないかな」
    「成程な」

    村上は家具を見ることに対してではなく、荒船がこういった場所を楽しんでいることを意外に思ったのだが、伝わらなかったようだ。

    「じゃあ…今日付き合わせて悪いなと思ってたんだけど、良かった」
    「おう。わりと乗り気だぞ」

    しかし、自身の用事に付き合わせてやって来た場所でそう言われれば少なからずありがたかった。
    支部のカーテンが汚れたのは今朝のことだ。明るい布地に本物の悪こと別所太一が珈琲をかけてしまった。洗う為にと外したところ足で踏んだまま持ち上げ更に裂けてしまったのだ。流石に新しいものを買おうと判断が下されされ、村上が出掛けるついでにと購入に名乗りをあげた。近くに大型インテリア用品店があることは知っていたが、入ったことはない。もとから会う約束をしていた荒船が土地勘のある人物だったため頼ることしにしたのだ。申し訳なさそうな後輩の姿が蘇る。荒船の台詞も添えて新しいものを持ち帰ろうと決めた。
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    oz3011347532190

    REHABILI荒の寝顔が気になる村の小話。
    村上はそのSEの性質上、よく眠る。意識がないので断言はできないが寝姿を誰かに見られることなどざらにあるはずだ。勿論、時と場合は選ぶが必要ならば本来は寝床に適さない場所で眠ることだってあった。部隊に配属後、早くに任務に出られたのはその成果といえる。だが、もとより何処でも眠れる性分だったかといえばそれは違う。本部内で眠ることに抵抗がなくなったのは自身のSEを把握し稽古をつけてくれた師匠の意向によるところが大きい。どういったSEでどの程度の再現が可能でどれくらいで反映されるのか。それを見極めながら実地で弧月の扱いを教わったのだ。疲れのせいではなく学習の為に、皆が目に見える努力を重ねる新天地で一人眠ってしまうことに恐れに似た感情があったことは誰にも言っていない。目覚める度に誰かが迎えてくれたことで寝入ることへの抵抗が薄れていった。得られた成果を褒められることで、もはや自然に行えるようになったのだ。支部で自室を与えられていることを思えば、家族を除き村上の寝姿を見た回数が最も多いのは荒船という師匠だろう。だからこそとでも言おうか。目覚めの際に真面目な顔で声を掛けられ、時には笑いながら促された。そんな相手の寝顔は、村上にとってとても貴重なものに感じられたのだ。
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    uncimorimori12

    DONEみずいこ
    さとぴ誕生日おめでと〜
    このネタ皆やってるけど俺は書いてないから書くぞ
    天国にいちばん近いところ 君はなぜ冬という季節がクソ寒いのかを知っているだろうか。
     日照時間が短いから? 地球が公転してるから? 北半球の宿命? いいやいいや、全部不正解。よくもまあゴミのような解答が出揃った。正解は『愛しい恋人が隣にいない寂しさを北風が刺すから』だ。
     勿体ぶった癖になんだそのポエミーでセンチメンタルな答えはと批判する者もいるだろう。馬鹿らしいと鼻で笑う者も。それらの人間の反応を俺は否定しない。実際、ほんの数年前までならば自分も同じ様にアホらしいと呆れ、鼻で笑い、無駄な時間を使ったと出題者に三行半を突きつけさっさとその場を立ち去ったことであろう。しかしまあ、人間とは常に出会いという名の矯正装置により価値観の変容を迫られ化学反応を起こし、昨日の自分とは全く意見が合わなくなることなんてザラに発生する悲しき生き物である。よって、どちらかと言えば他人の悲壮感たっぷりのlemonだかなんだかを笑う側の人間だった俺は、気が付けば今年の冬は隣に騒がしくて忙しなく愛しい恋人がいない事実に打ちひしがれ一人のアパートで萎びる情けない男に作り変えられてしまったのだ。全く、夢ならばどれほど良かったことだろう。
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    uncimorimori12

    DONEみずいこ
    書きながら敏志の理不尽さに自分でも爆笑してたんで敏志の理不尽さに耐えられる方向けです。
    犬も食わない「イコさん」
     自分を呼び止める声に振り返る。そこには案の定、いや声の主から考えても他の人間がいたら困るのだが、やっぱり街頭に照らされた水上ひとりが憮然とした顔でこちらに向かって左手を差し出していた。はて、たった今「また明日な」と生駒のアパートの目の前で挨拶を交わしたばかりだと言うのにまだ何か用があるのだろうか。生駒は自身のアパートに向かいかけていた足を止めると名前の後に続くはずの水上の言葉を待つ。すっかり冷え込んだ夜道にはどこからか食欲をそそられる香りが漂ってきて、生駒の腹がクルクルと鳴った。今晩は丁度冷蔵庫に人参や玉ねぎが余っていたのでポークシチューにする予定だ。一通り具材を切ってお鍋にぶち込み、煮えるのを待ちながらお風呂に入るという完璧な計画まで企てている。せっかくだしこのまま水上を夕飯にお誘いするのも手かもしれない。うん、ひとまず水上の話を聞いたら誘ってみようかな。そこまで考えて辛抱強く水上の言葉を待ち構えていたのだが、待てども暮らせども水上は口を開くどころか微動だにすらしない。生駒は訳が分からず水上の白い掌と顔を交互に見比べた。
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