なかよしこよし灰原がたわいもない話をするのはいつものことだが、今日のそれはいつもと毛色が違っていた。
「七海と一番仲が良かったのは誰?って話になって、猪野と虎杖が僅差で白熱した戦いだったよ」
七海は人たらしだねえと灰原は笑う。
「人たらし?」
「だって、生前の七海を知ってる人はみんな七海が好きなんだなってのが伝わってきたから」
さすが七海!と褒める声に他意は見受けられない。そのことがひどく腹立たしかった。
「灰原は」
「なに?」
「灰原は、私との仲が一番良かったと言える話はないのか?」
「ないよ」
即答だった。
「死人に出る幕はないよ」
先程と変わらぬ声音で言葉を紡ぐ。
「僕は話の土俵にも立てないんだ」
ふ、と目が緩んだ。それは羨望なのか、諦めなのか。今も昔もその真意を読み取ることはできない。
「そもそも、仲の良さに一番も二番もないでしょう」
「確かに!」
でもそういうくだらない話が楽しいんだよね、と笑う姿が眩しくて目を細める。君の方が人たらしだ。私はそんなふうにはなれない。
「それでいいんだよ、七海はそのままで」
人好きのする顔で君は笑った。
私は知っている。
君はどんな人にも同じ表情、声音で対応することを。
私はわかっている。
自分の表情筋が君の前でだけ緩むことを。
※※※
オマケ1
「灰原さんは殿堂入りだよな」
「「「それな」」」
※※※
オマケ2
灰「僕と一番仲が良かった人?夏油さ…」
七「私」
灰「夏油s」
七「私!」