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    まどろみ

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    まどろみ

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    空i港時空。七→灰。灰が必要以上に早世を気にしていたらどんなかんじかを考えた結果。

    #七灰

    なかよしこよし灰原がたわいもない話をするのはいつものことだが、今日のそれはいつもと毛色が違っていた。
    「七海と一番仲が良かったのは誰?って話になって、猪野と虎杖が僅差で白熱した戦いだったよ」
    七海は人たらしだねえと灰原は笑う。
    「人たらし?」
    「だって、生前の七海を知ってる人はみんな七海が好きなんだなってのが伝わってきたから」
    さすが七海!と褒める声に他意は見受けられない。そのことがひどく腹立たしかった。

    「灰原は」
    「なに?」
    「灰原は、私との仲が一番良かったと言える話はないのか?」
    「ないよ」
    即答だった。
    「死人に出る幕はないよ」
    先程と変わらぬ声音で言葉を紡ぐ。
    「僕は話の土俵にも立てないんだ」
    ふ、と目が緩んだ。それは羨望なのか、諦めなのか。今も昔もその真意を読み取ることはできない。

    「そもそも、仲の良さに一番も二番もないでしょう」
    「確かに!」
    でもそういうくだらない話が楽しいんだよね、と笑う姿が眩しくて目を細める。君の方が人たらしだ。私はそんなふうにはなれない。
    「それでいいんだよ、七海はそのままで」
    人好きのする顔で君は笑った。

    私は知っている。
    君はどんな人にも同じ表情、声音で対応することを。
    私はわかっている。
    自分の表情筋が君の前でだけ緩むことを。

    ※※※

    オマケ1
    「灰原さんは殿堂入りだよな」
    「「「それな」」」

    ※※※

    オマケ2
    灰「僕と一番仲が良かった人?夏油さ…」
    七「私」
    灰「夏油s」
    七「私!」
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    まどろみ

    TRAINING七灰。タイムカプセルを開ける話。メリバ
    タイムカプセル≒恋文珍しくもない五条の呼び出しに応答し二つの箱を持って帰宅した。片手で持てるくらいのサイズのそれはタイムカプセルだ。手渡されるまですっかり存在を忘れていた。十年前の今日、先輩の思い付きがきっかけで作ったものだった。一つは自分のもの、もう一つは…同級生の灰原のもの。「本人がいないから仕方ないだろ」という彼の手には、取りに来れない人間の分を含めて二つの箱があった。差し出されたものを固辞しようとしたが「それはお前が開けるべきだ」と家入にまで言われては持ち帰るしかなかった。
    手始めに自分の名前が書かれた箱を開ける。中には手紙と当時好きだった作家の文庫本が一冊。手紙には当たり障りのない文章が羅列されており、すぐに読み終わってしまった。当時は自分でこれを読むとは思ってなかったのだ。呪術界という万年人手不足のこの業界、後ろ盾のない身では早々に切り捨てられるだろうと。だから誰に見られてもよいものにしたのだったと当時を振り返る。後ろ向きな気持ちで作ったものに哀愁や懐かしさなんてかけらもない。というより、手渡された時からもう一つの箱にしか意識は向かなかった。唯一の同級生、灰原雄のタイムカプセル。これを作った数か月後には儚くなってしまった彼だが、未来の彼自身に一体何を残したのか。勝手に見てしまうことへの謝罪をしつつ彼の分の箱を開ける。中に入っていたのは手紙と旧式の携帯電話と充電器。これを作る少し前に新しい機種にしたんだーと言っていたな、と当時を振り返る。随分昔の話なのに、彼のことならすぐ思い出せてしまうことに苦笑する。携帯を充電し電源を入れると暗証番号四桁を求められた。彼にプライバシーやセキュリティなんて概念があったのかと驚きつつ誕生日や身長など知りうる情報を入れるがどれも違うようではねられてしまった。仕方なく見るのが怖くて後回しにしていた手紙を開封する。一枚の紙には、懐かしい彼の筆跡で僕の好きな食べ物を英語で!とだけ書かれていた。彼の好きな食べ物、米だ。それが何だ…と考えているところに携帯が目に入る。暗証番号は数字だとばかり考えていたがどうやら違ったようだ。無事ホーム画面に移り、操作しているとメール欄の中に一件の未送信の下書きを見つけた。
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