15歳冬「僕のこと、どうやって知ったの?」
灰原は前々から疑問に思っていたことを口にした。2人の出会いは中学3年の夏。学校が別だったのもあり、こちらは向こうを知らなかったが向こうはこちらを知っているという状態からのスタートだった。
「僕、SNSやってないんだけど」
今時の子供にしては珍しくガラケーを使う灰原は自身の情報発信をしていなかった。そのせいでケンカが強い奴という不名誉な噂が一人歩きすることにもなったのだが今は割愛する。
「…中体連」
「え?」
「地区大会に出てただろう」
「ああ!」
確かに、と彼と出会う数日前のことを思い出す。帰宅部の灰原は助っ人を頼まれて陸上競技大会に出場していた。
「見てたの?」
「…ああ」
実のところ、七海は実物を見たわけでない。血眼になって灰原を探していた彼は大会の結果記録を見て彼の所属を知ったというのが真相だ。この話を深掘りされるとボロが出る。そう判断した七海は話題を変えた。
「ところで、高校では入らないのか?陸上部」
「うん。元々助っ人だったし、それに」
「それに?」
「走るのは好きなんだけど、限界突破すると下半身がまったく動かなくなるんだよね…って、七海、大丈夫!?」
灰原の言葉に七海は崩れ落ちた。
「トラウマをえぐるのはクソ」
「理不尽すぎない?」