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DONEソウゲン生誕祭2023神様の言うとおり師走の初め頃の生まれだと聞いたのは、自分の誕生のした日を祝ってもらった時だった。
生まれてきてくれて、ありがとうと言われた時。ふと思い出しては切なくなる過去も、此処で過ごす為のものだったのかも知れないと少しばかり前向きになれた。それもこれも、全て、ソウゲンと出会ってからだ。
だから、どうしても彼が生まれたその日に。なにか形になるものを送りたいとスズランは町へ出た。
新しい書物…は、すぐに買っていそうだし。菓子も酒も興味は無いのは知っている。食べても感想といえば美味しいか美味しくないか位。研究に使う道具も、なにがなんだかさっぱり分からないから、必要なのかも分からない。うんうんと唸りながら町を歩いていると「斎藤さん」と声をかけられた。
1772生まれてきてくれて、ありがとうと言われた時。ふと思い出しては切なくなる過去も、此処で過ごす為のものだったのかも知れないと少しばかり前向きになれた。それもこれも、全て、ソウゲンと出会ってからだ。
だから、どうしても彼が生まれたその日に。なにか形になるものを送りたいとスズランは町へ出た。
新しい書物…は、すぐに買っていそうだし。菓子も酒も興味は無いのは知っている。食べても感想といえば美味しいか美味しくないか位。研究に使う道具も、なにがなんだかさっぱり分からないから、必要なのかも分からない。うんうんと唸りながら町を歩いていると「斎藤さん」と声をかけられた。
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PROGRESS11 月23日のサンプルです『COLORFUL』
ソウスズがデ●ズニーでデートするお話
COLORFUL「それでね。その時一番星ちゃんがね、わぁ~って叫んでさぁ。すっごい面白かったんだよね」
鈴蘭は共に出掛けなかった踪玄に、身振り手振りを交えて、今日の出来事を至極楽しそうに話をした。さかのぼる事一カ月ほど前。久しぶりに出会った仲間たちと遊びに出掛けようとなったのが事の始まり。折角だし、遊園地にでも。と盛り上がったのは良いが、踪玄は「小生、人が多い所はあまり得意ではないので」と話しにのって来なかった。昔と違い、年齢が皆よりも少し離れているのも原因だったのかも知れない。
踪玄が行かないならと、鈴蘭も「じゃぁ、僕もやめておこうかな」と言おうとしたのだが。いつの間にか、鈴蘭は頭数に入っていて。折角の休日だったが、珍しく2人離れて過ごしたのだった。少しでも会いたいと思い、鈴蘭は皆と別れたその足で踪玄の家へと向かった。
2663鈴蘭は共に出掛けなかった踪玄に、身振り手振りを交えて、今日の出来事を至極楽しそうに話をした。さかのぼる事一カ月ほど前。久しぶりに出会った仲間たちと遊びに出掛けようとなったのが事の始まり。折角だし、遊園地にでも。と盛り上がったのは良いが、踪玄は「小生、人が多い所はあまり得意ではないので」と話しにのって来なかった。昔と違い、年齢が皆よりも少し離れているのも原因だったのかも知れない。
踪玄が行かないならと、鈴蘭も「じゃぁ、僕もやめておこうかな」と言おうとしたのだが。いつの間にか、鈴蘭は頭数に入っていて。折角の休日だったが、珍しく2人離れて過ごしたのだった。少しでも会いたいと思い、鈴蘭は皆と別れたその足で踪玄の家へと向かった。
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DONEタイトルのまんま。出来てない両片想いのソウスズが、謎のお部屋に閉じ込められちゃったよ!
好きだと言わないと出られない部屋赤ん坊にでもなったかのような優しく抱き留められる感覚に、今日の夢は心地よいなぁと、スズランは安堵のため息をついた。
「スズラン殿、お休みの所申し訳ないのですが」
その声に瞼を持ち上げると、そこには苦しそうに身を屈めたソウゲンがスズランを覗き込むように見つめていた。
「ん?……あれ、僕、酔っぱらいすぎてた?」
でないと、この状況の意味が分からなかった。好きだとは思っているが、その想いもろくに伝えていない人の脚の上でぐっすり眠っているなんて。
「小生も、研究の合間に寝てしまったのかと…そう思ったのですが、…この部屋の意味が分からず。なにやら面妖な事象に巻き込まれたとしか思えず…」
部屋?面妖な事象?なんの事だろうと、とりあえず周りを見渡すべくそこから動こうとする。
3012「スズラン殿、お休みの所申し訳ないのですが」
その声に瞼を持ち上げると、そこには苦しそうに身を屈めたソウゲンがスズランを覗き込むように見つめていた。
「ん?……あれ、僕、酔っぱらいすぎてた?」
でないと、この状況の意味が分からなかった。好きだとは思っているが、その想いもろくに伝えていない人の脚の上でぐっすり眠っているなんて。
「小生も、研究の合間に寝てしまったのかと…そう思ったのですが、…この部屋の意味が分からず。なにやら面妖な事象に巻き込まれたとしか思えず…」
部屋?面妖な事象?なんの事だろうと、とりあえず周りを見渡すべくそこから動こうとする。
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MENU新刊『甘い香りに包まれて』前回のイベントでのコピー本『花の香りのする方へ』とその続きをまとめたものになります。
(加筆修正有り)
コピー本で出したものの、途中までをサンプルとしてアップします😊
甘い香りに包まれて生を受けた世には、バース性と呼ばれる新たな性別が誕生していた。男女の性別とは別の第二の性。男と女とは別にα、β、Ωと三つの性別が存在し、全ての人間は六種類に分けられる。αはエリートが多く、βは一番多い所謂普通。そしてΩには発情期なるものが存在し、その体質が故に世間から冷遇されている。その為、性別による差別が目立ち、第二性がΩである人は悩みが尽きない。
生まれ変わる前と違う事象が起きている事に、興味があった踪玄はバース性の研究に勤しんだ。しかし、調べれば調べるほど、その新たに備わった性別が、人間そのものに嫌悪を抱かせる。
薬を飲み、体調を管理すれば、Ωであっても社会的に問題なく過ごせるはずなのに、理解が進んでない事もあり、定職につくのも難しく給料も少ない事の方が多い。働ける時に働きたいと思う人も多く、病院に定期的に通う人も少なくない。…出来るのは理解のある人間に囲まれていて、給料が安定している者だけ。そのせいで、発情期に倒れたり、身体に合わない安い薬を飲んで体調を崩す者も少なくない。
13532生まれ変わる前と違う事象が起きている事に、興味があった踪玄はバース性の研究に勤しんだ。しかし、調べれば調べるほど、その新たに備わった性別が、人間そのものに嫌悪を抱かせる。
薬を飲み、体調を管理すれば、Ωであっても社会的に問題なく過ごせるはずなのに、理解が進んでない事もあり、定職につくのも難しく給料も少ない事の方が多い。働ける時に働きたいと思う人も多く、病院に定期的に通う人も少なくない。…出来るのは理解のある人間に囲まれていて、給料が安定している者だけ。そのせいで、発情期に倒れたり、身体に合わない安い薬を飲んで体調を崩す者も少なくない。
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MAIKING同僚の踪玄と恋人の誕生日の話④「おはよ〜ございます」
扉を開けて、あくびを1つ。タイムカードを押しながら挨拶をして、中へ入る。いつもなら何人かから挨拶が返ってくるのに、今日は誰も返事をしない。一番乗りだったかなぁと思いながらデスクへ行くと、隣の席に人だかりが出来ていた。珍しい。だってそこは踪玄の席だ。
「どうかしたんですか?」
視線をそこへやると、踪玄のデスクの上にはいくつかのケーキが並べられていた。
「よかったらどうぞ。……感想を教えて頂けたら嬉しいのですが」
そう言われ、すぐにピンと来た。
「もしかして、ケーキ作ったんですか?」
「えぇ、練習しておこうかと思いまして」
ずっと、相談を聞いていたから、なんのためになんていうのは聞かなくても分かる。恋人の誕生日プレゼントだ。贈るものが無事に見つかったのは良いが、それを恋人より先に食べてしまっても良いものだろうかと差し出されたケーキを受け取るのに、すこし躊躇した。
1116扉を開けて、あくびを1つ。タイムカードを押しながら挨拶をして、中へ入る。いつもなら何人かから挨拶が返ってくるのに、今日は誰も返事をしない。一番乗りだったかなぁと思いながらデスクへ行くと、隣の席に人だかりが出来ていた。珍しい。だってそこは踪玄の席だ。
「どうかしたんですか?」
視線をそこへやると、踪玄のデスクの上にはいくつかのケーキが並べられていた。
「よかったらどうぞ。……感想を教えて頂けたら嬉しいのですが」
そう言われ、すぐにピンと来た。
「もしかして、ケーキ作ったんですか?」
「えぇ、練習しておこうかと思いまして」
ずっと、相談を聞いていたから、なんのためになんていうのは聞かなくても分かる。恋人の誕生日プレゼントだ。贈るものが無事に見つかったのは良いが、それを恋人より先に食べてしまっても良いものだろうかと差し出されたケーキを受け取るのに、すこし躊躇した。
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MAIKING同僚の踪玄と恋人の誕生日の話※モブが主役
③「誕生日に贈るもの、というのはどういうものが良いのでしょうか」
ふわりと香るいれたての珈琲の香りに、踪玄の仕事が一段落ついた事を知る。口元からコップが離れたのとほぼ同時に放たれた言葉に耳を疑った。
「…考えてなかったんですか?」
有給の申請をして、もう2週間以上。てっきり旅行にでも行くのかと思っていた。
「有給取ってたし、何処かに出かけるのかと思ってました」
思ったままを口にした。
「はじめはそのつもりだったのですが、どうやら前の日に仕事が終わるのが遅いようで。家で過ごす事になったのです」
こんな事なら休みをあわせておけば良かったのです。などと、小さな声で残念そうに呟いている。デスクの上で光るスマホの画面には、贈り物を探しているのだろう『恋人に喜ばれるプレゼント!』なんて文字が踊っていた。
959ふわりと香るいれたての珈琲の香りに、踪玄の仕事が一段落ついた事を知る。口元からコップが離れたのとほぼ同時に放たれた言葉に耳を疑った。
「…考えてなかったんですか?」
有給の申請をして、もう2週間以上。てっきり旅行にでも行くのかと思っていた。
「有給取ってたし、何処かに出かけるのかと思ってました」
思ったままを口にした。
「はじめはそのつもりだったのですが、どうやら前の日に仕事が終わるのが遅いようで。家で過ごす事になったのです」
こんな事なら休みをあわせておけば良かったのです。などと、小さな声で残念そうに呟いている。デスクの上で光るスマホの画面には、贈り物を探しているのだろう『恋人に喜ばれるプレゼント!』なんて文字が踊っていた。
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MAIKING同僚の踪玄と、恋人の誕生日の話※モブが主役
①「連休前の忙しい時に申し訳ないのですが、来月有給を頂きたいのですが」
その言葉に、あたりはざわついた。あの仕事人間の踪玄が。早く帰れと言わなければ当たり前みたいに残業をする彼が。自ら有給を希望するなんて。そう思ったのは上司も同じだったようで。
「沢山残ってるからね、好きにしていいよ」
そう、二つ返事で。書類だけよろしくねとつけたした。
「………何処か出掛けられるんですか?」
記入された日付けは6月5日。月曜日だ。日曜日から旅行に行くからと休みをとる人も多い。彼もそうだろうかと思って、聞いたのはただの興味だったが。
「……恋人の、誕生日でして」
少しだけ、気恥ずかしそうに笑って。「ご迷惑おかけします」と、書類に視線を落とした。
323その言葉に、あたりはざわついた。あの仕事人間の踪玄が。早く帰れと言わなければ当たり前みたいに残業をする彼が。自ら有給を希望するなんて。そう思ったのは上司も同じだったようで。
「沢山残ってるからね、好きにしていいよ」
そう、二つ返事で。書類だけよろしくねとつけたした。
「………何処か出掛けられるんですか?」
記入された日付けは6月5日。月曜日だ。日曜日から旅行に行くからと休みをとる人も多い。彼もそうだろうかと思って、聞いたのはただの興味だったが。
「……恋人の、誕生日でして」
少しだけ、気恥ずかしそうに笑って。「ご迷惑おかけします」と、書類に視線を落とした。
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DONEワンドロ 『それは雪のように』の続き。クリスマスのお話
愛の重さ「ねぇ、ソウゲンちゃん。手袋暖かい?」
「えぇ、とても」
待ち合わせ、出会って開口一番尋ねる鈴蘭に、ソウゲンはその贈り物の手袋を、まるで医者が出てくるドラマの様に。今から手術でもするかのように自慢気に見せる。そして、その手で鈴蘭の手を握った。
「ポケットに手を入れなくても暖かいので助かるのです」
手が繋げる。そういう意味だと理解した鈴蘭は、仕事嬉しそうに、大きく頷きながら「うん」とその手を強く握り返す。そして、約束のクリスマスマーケットへと二人で歩を勧めた。
キラキラの電飾。賑わう飲食スペースに、ソウゲンは眩しそうに瞬きを繰り返して、物珍しい物でも見るようにあたりを見回した。人が多すぎて、気をつけなければすぐに逸れてしまいそう。握った手を身体に引き寄せて、鈴蘭の腕をしっかりと掴む。
1463「えぇ、とても」
待ち合わせ、出会って開口一番尋ねる鈴蘭に、ソウゲンはその贈り物の手袋を、まるで医者が出てくるドラマの様に。今から手術でもするかのように自慢気に見せる。そして、その手で鈴蘭の手を握った。
「ポケットに手を入れなくても暖かいので助かるのです」
手が繋げる。そういう意味だと理解した鈴蘭は、仕事嬉しそうに、大きく頷きながら「うん」とその手を強く握り返す。そして、約束のクリスマスマーケットへと二人で歩を勧めた。
キラキラの電飾。賑わう飲食スペースに、ソウゲンは眩しそうに瞬きを繰り返して、物珍しい物でも見るようにあたりを見回した。人が多すぎて、気をつけなければすぐに逸れてしまいそう。握った手を身体に引き寄せて、鈴蘭の腕をしっかりと掴む。
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DONEソウスズワンドロお題『聖夜』
※現パロです
1時間以上かかってしまったけど…←
それは雪のように「おや、あれは…」
街中で見かけた可愛らしい姿は、見紛うことなく恋人のものだった。何をしているのかと思えば何やら配って歩いている。アルバイトだろうか。そんな話はきいていないが。じっと見つめていると、視線に気がついたのか、鈴蘭がこちらを向いた。びっくりしたような表情のあと、まるで見つかったと言いたげな気不味そうな顔をした。
「…やぁ〜…ちょっとさ、欲しいものがあって」
いつもの逢瀬の日、その事を尋ねるとあからさまに言葉を濁して、視線を反らす。
「何か必要なものがあれば、お手伝いしましょうか?」
自分は大人なのだし、それなりに収入もある。恋人なのだから、プレゼントくらいしても良いだろう。そう思ったのに。
「いや、その…自分で買いたいんだよね」
2353街中で見かけた可愛らしい姿は、見紛うことなく恋人のものだった。何をしているのかと思えば何やら配って歩いている。アルバイトだろうか。そんな話はきいていないが。じっと見つめていると、視線に気がついたのか、鈴蘭がこちらを向いた。びっくりしたような表情のあと、まるで見つかったと言いたげな気不味そうな顔をした。
「…やぁ〜…ちょっとさ、欲しいものがあって」
いつもの逢瀬の日、その事を尋ねるとあからさまに言葉を濁して、視線を反らす。
「何か必要なものがあれば、お手伝いしましょうか?」
自分は大人なのだし、それなりに収入もある。恋人なのだから、プレゼントくらいしても良いだろう。そう思ったのに。
「いや、その…自分で買いたいんだよね」
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DONEワンドロ【お誕生日】の続きソウスズ
二人でケーキ食べに行く話。
此方も同じショーケースの中に並ぶ色とりどりのケーキを見つめて、ソウゲンはうーんと首を傾げた。鈴蘭に連れて来られた小洒落た店は花やリボンで飾られたとても可愛らしいお店で。ショーケースの中のケーキも自分の知っているものとは全然違うのだなぁと唖然とした。
「鈴蘭殿のおすすめはどれなのです?」
「うーん…どれも美味しいよ。…スフレもふわふわだし、ベイクドチーズケーキはちょっと前に流行ったもんね。ガトーショコラもいいしね。あ、オペラ美味しいんだよ!あ、でも、あんまり甘すぎるのは得意じゃないかな。ティラミスはどう?」
次々口から出るケーキの名前はまるで呪文のよう。指をさしながら教えてくれるその様子は、何百年も前に見た団子を嬉しそうに選ぶその姿そのものだった。
1638「鈴蘭殿のおすすめはどれなのです?」
「うーん…どれも美味しいよ。…スフレもふわふわだし、ベイクドチーズケーキはちょっと前に流行ったもんね。ガトーショコラもいいしね。あ、オペラ美味しいんだよ!あ、でも、あんまり甘すぎるのは得意じゃないかな。ティラミスはどう?」
次々口から出るケーキの名前はまるで呪文のよう。指をさしながら教えてくれるその様子は、何百年も前に見た団子を嬉しそうに選ぶその姿そのものだった。
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DONEソウスズワンドロお題『興味深い反応』
貴方の糧になるなら
死んでも構わないと思っているのに。
貴方は僕を愛しているから
僕の願いは叶わないまま。
貴方の糧になるならちりっと腕に走った痛みに、鈴蘭は顔を顰めた。痛みの走った其処を、反対の手で押さえる。ジクジクとそこから血液が溢れているのを感じて、背筋が冷えた。掌には真っ赤な血が流れていて、止血しなければとそこにぐっと力を込める。
「大丈夫か、鈴蘭!」
アキラが声をあげ、目の前に切りかかってきた敵を薙ぎ倒した。どうやら、それが最後の一振りだった様で、これ以上向かってくる者は居なかった。ホッとため息をつき壁に背を預ける。よくよく見れば他の隊士の多くも傷を負っていて、皆満身創痍なのがよく分かる。アキラちゃんが居なければどうなっていたか分からないと、鈴蘭はホッと胸を撫で下ろし、きゅっと唇を噛み締めた。
「追手が来るかもしれない。みんな此処から早く離れよう」
2556「大丈夫か、鈴蘭!」
アキラが声をあげ、目の前に切りかかってきた敵を薙ぎ倒した。どうやら、それが最後の一振りだった様で、これ以上向かってくる者は居なかった。ホッとため息をつき壁に背を預ける。よくよく見れば他の隊士の多くも傷を負っていて、皆満身創痍なのがよく分かる。アキラちゃんが居なければどうなっていたか分からないと、鈴蘭はホッと胸を撫で下ろし、きゅっと唇を噛み締めた。
「追手が来るかもしれない。みんな此処から早く離れよう」
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DONEブ!ソウスズ捏造転生のお話
【指につながるその先は】の続き。
赤い糸を信じてた家の蔵の中にあった古い医学書の間から、ひらひらと落ちてきた手紙には。流れるような美しい文字で、まるで恋文のような内容が書かれていて。その宛名にソウゲンは驚き目を見開いた。同時に、今の自分が経験したことの無い、あるはずもない記憶が頭の中へ浮かんできて思わずその場へ崩れ落ちた。ドンと膝をつく。青痣が出来るかもしれないと、膝を撫でながら。流れ込んだ記憶に意識を戻し、なんだったんだと、手紙の文字へ指を這わす。宛名には自分の名前が書かれていた。
『もう、共に過ごす事は叶わないけど、いつでもあなたの事を思って祈るよ。いつかまたどこかで会えるように。』
その言葉に、あふれ出した記憶はより鮮明になる。ソウゲンという名から、山南敬助として生きるようになった日の事。そこで出会った最愛の人と自分の最後の事。そういえば、幼少の頃に祖父の葬式に来たお坊さんの袈裟を掴んで離さなかったと母に笑われたな、と。記憶の片隅で彼を思っていたからなんだろうと今なら理解できる。すべてが繋がり、非科学的な事が大嫌いなはずの自分が、江戸時代から生まれ変わった人間なのだと根拠もないのに、納得したのは高校に入る直前だった。
2266『もう、共に過ごす事は叶わないけど、いつでもあなたの事を思って祈るよ。いつかまたどこかで会えるように。』
その言葉に、あふれ出した記憶はより鮮明になる。ソウゲンという名から、山南敬助として生きるようになった日の事。そこで出会った最愛の人と自分の最後の事。そういえば、幼少の頃に祖父の葬式に来たお坊さんの袈裟を掴んで離さなかったと母に笑われたな、と。記憶の片隅で彼を思っていたからなんだろうと今なら理解できる。すべてが繋がり、非科学的な事が大嫌いなはずの自分が、江戸時代から生まれ変わった人間なのだと根拠もないのに、納得したのは高校に入る直前だった。
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DONEブ!ソウゲン×スズラン捏造 転生パロ
なので温かい目で見ていただけたら嬉しいです。
指につながるその先は授業中に新選組と聞いた途端、湯水のようにあふれ出した記憶は、自分がその新選組の一員だった事をありありと思い出させた。仲間の事、そのうちの一人と恋仲であった事、驚きと圧倒的な情報量に頭はいっぱいになり、気絶するように倒れたのはつい先日の話。
蘇った記憶を整理して、どう過ごしてきたかを思い出そうとしても、はっきりと記憶していたのは安倍晴明の霊を皆で倒して、その後も新選組として活動したと言う事だけ。思い出したかったのは恋人とどうなったのか、だったのに。肝心なそこは全く思い出せなかった。
思い出したかった理由はただ一つ。こうして自分が生まれ変わっているのだから、もしかしたら彼にも会えるのではないかと一縷の望みを抱いたからだった。ただ一目会いたいと。願わざるを得なかったからだった。
3563蘇った記憶を整理して、どう過ごしてきたかを思い出そうとしても、はっきりと記憶していたのは安倍晴明の霊を皆で倒して、その後も新選組として活動したと言う事だけ。思い出したかったのは恋人とどうなったのか、だったのに。肝心なそこは全く思い出せなかった。
思い出したかった理由はただ一つ。こうして自分が生まれ変わっているのだから、もしかしたら彼にも会えるのではないかと一縷の望みを抱いたからだった。ただ一目会いたいと。願わざるを得なかったからだった。