―七色。「宗雲さんは何色がいいと思う?」
ハキハキとした通る声でエージェントと話すのはアカデミーの同級生の、伊織陽真。あんまりにはっきりと自分の好きな人の名前を呼ぶものだから、雨竜はびっくりしてライダーフォンから顔を上げた。何色?なんのことだろう。落ち着かなくなって、キョロキョロとそちらを見てしまう。すると、その様子がエージェントに見つかり、その目線で気がついたのか、伊織はぐるりと姿勢を変えて「雨竜!居たのか!」と、すぐに近づいてきた。大きな瞳はまるで良い事を思いついたと言わんばかりキラキラと輝いて。
「雨竜もちょっと力貸してくれない?」
なんて言いながら、雨竜の腕を掴んで今まで座っていた席の隣へ引っ張って行った。
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