Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    69asuna18

    ジョチェ🛹

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 33

    69asuna18

    ☆quiet follow

    ソウゲン生誕祭2023

    #ソウスズ
    bambooTiles

    神様の言うとおり師走の初め頃の生まれだと聞いたのは、自分の誕生のした日を祝ってもらった時だった。
    生まれてきてくれて、ありがとうと言われた時。ふと思い出しては切なくなる過去も、此処で過ごす為のものだったのかも知れないと少しばかり前向きになれた。それもこれも、全て、ソウゲンと出会ってからだ。
    だから、どうしても彼が生まれたその日に。なにか形になるものを送りたいとスズランは町へ出た。
    新しい書物…は、すぐに買っていそうだし。菓子も酒も興味は無いのは知っている。食べても感想といえば美味しいか美味しくないか位。研究に使う道具も、なにがなんだかさっぱり分からないから、必要なのかも分からない。うんうんと唸りながら町を歩いていると「斎藤さん」と声をかけられた。

    「あ、こんにちわ」

    よく流行りの菓子を教えてくれる、町家の子だ。

    「難しい顔をして如何されたんですか?」
    「贈り物を考えててね」
    「……好きな人に、とか?」
    「……あら、鋭いね」
    「百面相して歩いてましたから」

    流石に流行りに敏感な子だ、敏い。そんなに表情に出ていたのだろうかと、首を傾げたけれど。誤魔化しても駄目ですよと笑われた。

    「…そうなの、好きな人に贈り物。でも、なにが欲しいかとか分からなくて」

    白状して、贈り物に最適なものを提案してもらうほうが良さそうだ。

    「何でもよろしいのでは?」

    その言葉に、目論見は簡単に崩れてしまった。

    「え、ぇぇ…?」

    あっさりと吐き出された言葉に、思わず挙動不審な声が漏れる。彼女はそんな事も気にせず、続けて話す。

    「所詮気持ち、ですから。…贈るものを考えてくれた。それだけで十分です。…後であれが良かった、これが良かったと言うような人を好きになられたのですか?」
    「……いや、そんな事言わないよ」
    「でしたら、何でも大丈夫ですよ」

    そう言われて、なるほどそうだと。悩んでいた気持ちなど、どこかへと消えてしまった。





    部屋の机の上、隅に小さな包がおいてある事にソウゲンは気がついた。真白でとても綺麗な包だ。

    「これは、スズラン殿のですか?」

    自分のではないから、きっと彼のであろうと当たりをつけて尋ねる。するとなぜかその頬が夕日に照らされた様に赤く染まって見えた。

    「……いや、その……ソウゲンちゃんの…」
    「小生…の…?」

    自分のでないがと首を傾げるとスズランの言葉は尻すぼみに小さくなって行く。よく聞こえるようにと耳を寄せ、紡がれた言葉を繰り返す。
    すると、恥ずかしそうに。ひひひと小さく笑って。

    「冬の生まれだって聞いたから。何か、と思って。…でもなんかちょっと恥ずかしくて」

    その笑みのなんと愛らしい事か。そうやって考えてくれただけで、嬉しいのだが。

    「……開けてもよろしいので?」
    「うん」

    包を綴る紐を解き、質の良い紙を開く。するとそこには小さなつげ櫛が収まっていた。

    「髪長いのに、あんまり梳いたりしてないでしょう?…持ってないものがいいかなと…」

    良いもので梳けばさらさらになるんだって。町家の子から聞いてね。と、返事をする間もなく。止めねば、延々と話しそうだった。スズラン殿と呼ぶと、ハッと口を噤む。

    「櫛を送る意味はご存知で?」

    尋ねれば、その顔はさっきと比にならないほど真っ赤に染まってしまった。聞いてしまってはいけなかっただろうかと思いながら、その顔の紅潮が意味を理解しての事だと言うのはすぐに分かって。気がついた時には腕の中に閉じ込めて居た。

    「……幸せも多い。苦労も多い。死ぬまで共に…って事でしょう。知ってるよ。………そういう意味だよ」

    耳を澄まさなければ聴こえない程の蚊の鳴くような小さな声で。最後の言葉はしばし溜め込んで絞り出す。

    「良かったのです」

    自然ともれた返事に、腕の中の恋人は嬉しそうに身を寄せた。

    「…来年は、なにがいい?もう、他に良いもの思いつかないよ」

    沢山悩んだ事。櫛を買う時に、良い子がいるんだねと揶揄われた事。全てを楽しそうに、気恥ずかしそうに話すその姿が、ひどく愛しく。真っ白な額に唇を寄せる。

    「スズラン殿が居て下されば」

    そう伝えると彼は、嬉しそうに笑って。あの娘が言った通りだったと、町家の娘に相談した事も教えてくれた。


    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💒❤❤💚💜💚💜❤👏👏💚💜💚💜💚💜💚💜☺👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    69asuna18

    MENU新刊『甘い香りに包まれて』

    前回のイベントでのコピー本『花の香りのする方へ』とその続きをまとめたものになります。
    (加筆修正有り)
    コピー本で出したものの、途中までをサンプルとしてアップします😊
    甘い香りに包まれて生を受けた世には、バース性と呼ばれる新たな性別が誕生していた。男女の性別とは別の第二の性。男と女とは別にα、β、Ωと三つの性別が存在し、全ての人間は六種類に分けられる。αはエリートが多く、βは一番多い所謂普通。そしてΩには発情期なるものが存在し、その体質が故に世間から冷遇されている。その為、性別による差別が目立ち、第二性がΩである人は悩みが尽きない。
    生まれ変わる前と違う事象が起きている事に、興味があった踪玄はバース性の研究に勤しんだ。しかし、調べれば調べるほど、その新たに備わった性別が、人間そのものに嫌悪を抱かせる。
    薬を飲み、体調を管理すれば、Ωであっても社会的に問題なく過ごせるはずなのに、理解が進んでない事もあり、定職につくのも難しく給料も少ない事の方が多い。働ける時に働きたいと思う人も多く、病院に定期的に通う人も少なくない。…出来るのは理解のある人間に囲まれていて、給料が安定している者だけ。そのせいで、発情期に倒れたり、身体に合わない安い薬を飲んで体調を崩す者も少なくない。
    13532

    related works

    69asuna18

    MENU新刊『甘い香りに包まれて』

    前回のイベントでのコピー本『花の香りのする方へ』とその続きをまとめたものになります。
    (加筆修正有り)
    コピー本で出したものの、途中までをサンプルとしてアップします😊
    甘い香りに包まれて生を受けた世には、バース性と呼ばれる新たな性別が誕生していた。男女の性別とは別の第二の性。男と女とは別にα、β、Ωと三つの性別が存在し、全ての人間は六種類に分けられる。αはエリートが多く、βは一番多い所謂普通。そしてΩには発情期なるものが存在し、その体質が故に世間から冷遇されている。その為、性別による差別が目立ち、第二性がΩである人は悩みが尽きない。
    生まれ変わる前と違う事象が起きている事に、興味があった踪玄はバース性の研究に勤しんだ。しかし、調べれば調べるほど、その新たに備わった性別が、人間そのものに嫌悪を抱かせる。
    薬を飲み、体調を管理すれば、Ωであっても社会的に問題なく過ごせるはずなのに、理解が進んでない事もあり、定職につくのも難しく給料も少ない事の方が多い。働ける時に働きたいと思う人も多く、病院に定期的に通う人も少なくない。…出来るのは理解のある人間に囲まれていて、給料が安定している者だけ。そのせいで、発情期に倒れたり、身体に合わない安い薬を飲んで体調を崩す者も少なくない。
    13532

    69asuna18

    DONEブ!ソウスズ
    捏造転生のお話
    【指につながるその先は】の続き。
    赤い糸を信じてた家の蔵の中にあった古い医学書の間から、ひらひらと落ちてきた手紙には。流れるような美しい文字で、まるで恋文のような内容が書かれていて。その宛名にソウゲンは驚き目を見開いた。同時に、今の自分が経験したことの無い、あるはずもない記憶が頭の中へ浮かんできて思わずその場へ崩れ落ちた。ドンと膝をつく。青痣が出来るかもしれないと、膝を撫でながら。流れ込んだ記憶に意識を戻し、なんだったんだと、手紙の文字へ指を這わす。宛名には自分の名前が書かれていた。

    『もう、共に過ごす事は叶わないけど、いつでもあなたの事を思って祈るよ。いつかまたどこかで会えるように。』

    その言葉に、あふれ出した記憶はより鮮明になる。ソウゲンという名から、山南敬助として生きるようになった日の事。そこで出会った最愛の人と自分の最後の事。そういえば、幼少の頃に祖父の葬式に来たお坊さんの袈裟を掴んで離さなかったと母に笑われたな、と。記憶の片隅で彼を思っていたからなんだろうと今なら理解できる。すべてが繋がり、非科学的な事が大嫌いなはずの自分が、江戸時代から生まれ変わった人間なのだと根拠もないのに、納得したのは高校に入る直前だった。
    2266

    recommended works

    emotokei

    DONEじれったいお題ったーより、
    お題『くるしいけど、しあわせ』

    DK幼馴染ジョーチェリ。愛抱夢の「卒業」の時。
    ❤←🌸だと感じている🐯がいます。
    🐯が過去に🌸以外と関係を持った描写あり。

    えっちなの書こうとしたけど中略しちゃったので、
    そのうち中略部分をちゃんと書けたらいいですね…。
     誰かに触れることがこんなに怖いなんてはじめてだ。

     他人と肌を重ねるのは、はじめてじゃない。むしろ、どちらかといえば、この年齢にしては慣れている方だと思う。
     手に入らない唯一以外は誰もが同じように見えたし、同じように快楽で鋳つぶしてきた。分け合う熱の心地良さを知っているつもりでいた。
     女の子はすきだ。柔らかくて、すべすべしていて、甘い声が気持ちよくて、深く繋がる感覚で互いに溺れていく時間は楽しくて好きだった。ぐるぐると渦を巻くような激情とは違う、暖かく穏やかなふれあいは、ひどく安心した。
     男を相手にしたこともある。相手は決まって鎖骨と腰骨がはっきりと浮き出ているような細身の男ばかりだ。骨張った身体は受け入れる時の滑らかさが足りず、後ろから突き上げる度にのけぞる背中を心の柔い部分を占める相手といつだって重ねていた。
    1597