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    さばみこ

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    さばみこ

    DONE3/14のイチナンのお話です。
    7後、同棲時代、両片思い、ほのぼの。
    以前書いた2/14の話からゆるく続いていますが、こちら単体でも楽しめます。
    作中で作らせている料理は、ある好きな曲から取りました。

    5/14のスパコミにイチナンで申し込みました!
    成人向けの新刊二冊を予定しています。
    サンプルは4月初旬〜中旬ごろにpixivに載せる予定です。よろしくお願いします。
    きみの話「ほら、あったけえだろ」
     ナンバが振り返り言う。得意げな顔をしていた。言葉通りの暖かな陽の光の下、春風が吹き抜ける。それはいっぱいに生えている草花たちを躍らせ、彼のふわふわとした髪を揺らしていった。
     街の狭い路地をいくつも通り抜け、歩いた先にある小さな空き地。周りの建物が取り壊されたのか、その場所にはさんさんと陽ざしが降りそそいでいた。ごく小さな範囲の更地には、春を迎えようとしている雑草が所狭しと生い茂っている。寂しい空き地というよりは原っぱといった印象だ。ここが、ナンバのとっておきの場所らしい。

     季節は三月の中旬、ここ数日のニュースでは異人町の桜の開花予想が流れ出している。時期外れの暑いほどの陽気が続いていたが、その日の日陰はやけに肌寒かった。ぶるりと体を震わせたとき、ナンバから思い立ったような声で「いい場所がある」と告げられた。ポケットに突っ込んだ手を見かねて言ったのかもしれない。背中で案内をするように、ナンバはすいすいと路地を通り抜けていった。その後を一番は追って行く。
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    さばみこ

    TRAINING習作、パスタを作って食べるイチナンの話です。
    ※8の冒頭軸で、原作通り一番が片思いからの失恋をしている設定です。ナンバの片思いです。この後二人は両思いになりますがそういう設定の単発の短編です。
    絶望パスタ 料理が作られていく音を聞きながら、一番は自宅のソファで項垂れていた。はあ、ともう何度目になるか分からないため息が部屋に響く。
    「元気出せよ、もう聞き飽きたろうけど……」
     台所にいるナンバが振り返り声を掛けてくる。
    「だってよ、既読すらつかねえ……」
    「ああもう、ため息やめろ、幸せが逃げるって」
     同じくもう何度目になるか分からないやり取りを繰り返してから一番はソファに深く座り直す。そんな様子を見届けると、ナンバは肩をすくめてまた料理に取り掛かった。彼の立つ台所からは何やらおいしそうな香りが漂いだしていて、一番は久しぶりに腹が減るのを感じた。
     一世一代の大告白でヘマをやってから、一番はもう何週間も落ち込んでいた。食事が喉を通らなくなったことなんか滅多にないのに、この頃は食欲も落ちている。そんな姿を見かねたのか、ナンバが飯でもどうだと誘ってきたのが昨日の夜のことだった。親友相手に見栄を張ることもないので、正直にあまり外に出かける気にならないと打ち明けると、それなら家まで作りに行くと返事が返ってきた。持つべきものは世話好きの親友だと感謝しながら、一番は素直に甘えることにした。
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    さばみこ

    PAST七章前夜のイチナンが寝る前にお喋りする話
    両思いになる前、🌸→☂️の無自覚片思い
    場面的には五章の後編です。ぷらいべったーに載せていたものです。
    七章前夜 狭い部屋には寝息が響いている。湿気た平たい布団の上で一番は何度目かの寝返りを打った。今日はなかなか眠気がやってこない。それが気合なのか緊張なのか、何かの予感のせいなのか考えあぐねて一番は大きく息を吐いた。
     明日は大きな計画が待っている。潜りこんでいるバイト先、横濱貿易公司の倉庫で一仕事をする日だった。監視の目を盗んで偽札を一枚持ち帰る、決して悪くない作戦のはずだ。うまくいけば明日が最後のバイトになるだろう。『やっと肉体労働とおさらばだ』と嬉しげだった誰かを思い出し、一番は軽く笑う。少し肩の力が抜けた気がした。
     ぐう、と大きないびきが聞こえて一番は横を向く。部屋の隅では足立が気持ちよさそうに眠っていた。そういえば皆で夜食を食べたとき、紗栄子にずいぶん飲まされていたなと思い出す。飲ませた当人も今はすこやかな寝息を立てている。初めは二人暮らしの仮住まいのつもりだったこの部屋に、今はパズルのように布団を四つ敷き詰めている。窮屈だが居心地は悪くなかった。ずいぶん賑やかになったなと思うと、一番の胸は温もった。
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    さばみこ

    DONE敵の不思議な力で一番が10代の頃の姿に戻ってしまうイチナンのお話です。
    途中にシリアスを挟みますがめちゃくちゃハッピーエンドです。
    以下の要素を含むのでご注意ください。
    ・攻めの外見の一時的な年齢操作
    ・別れを切り出す場面

    両思い、7と8の間の同棲時代の設定です。
    二人で夏を満喫したり、気持ちを再確認して甘々になるお話です。
    別れを切り出す場面がありますが作中ずっとお互いが相手のことを大好きです
    夏の幻 それは夏の夜の出来事だった。
     その日も一週間の仕事を終え、二人で暮らす部屋に戻る。帰路から二階の灯りがついているのが見えてナンバは足を速めた。今日は向こうの方が早かったようだ。家に帰ると一番が待っている。もうすっかり慣れた生活だったが、それはいつまでもくすぐったいことに感じられた。

     高めに設定したクーラーをつけ、ゴミ捨て場で拾った扇風機でぬるい空気をかき混ぜながら、二人で夕飯を食べる。一週間分の労働をねぎらいながら酒も空ける。ささやかだけど幸せな時間だ。いつもと同じ夏の夜の光景だった。
    「あれ、冷やしてなかったっけか」
     一階で冷蔵庫を開けた一番の声が聞こえてきた。ここのところの忙しさのせいで、酒の買い置きをうっかり切らしていた。どうする、今日はもうお開きにするか?と訊ねると、一番は少し考えるそぶりを見せたあと首を振った。
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