行為のあとの気だるい時間はアキレウスの寝顔を眺めて過ごしている。
涙の粒に濡れた睫毛。ぽってりと腫れた赤い唇。男の身体というのを忘れるほどに貪って、幾度も無理をさせている。そう振り返ることは多々あれど、健やかな寝息を耳を聞くと安堵した。淫らな声で啼かせた喉を労るように撫でてやれば、眠った身体が甘く震える。その素直な様に、ケイローンは目を細めた。
食事も眠りも不要な身体はそれでもそれらを享受する。生きていた頃にそうしたように、当たり前に何かを食らい、夜が深まれば床につく。それが習慣となっている。そのためそこに肉欲が並んだとしても、取り立てておかしいこととは思わない。ただその欲を己が抱くようになったことと、その矛先がアキレウスだったことだけは、意外なことだと思っている。
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