あなただけにあなたの傍にいたいと、願った。
◇◇◇
貴方に嫁いだ日の事を、よく覚えている。
「後宮に入ったら、もうこのように臆病じゃだめだぞ」
柔らかな声で諭してくれた貴方の顔が見られなくて俯いたままのわたくしを責める事も呆れる事もなく、ただ優しく頭を撫でてくれた貴方の手のぬくもりを。
その瞬間はまるで時が止まってしまったかのようで、けれど、その永遠のような一瞬の静寂の中で──わたくしの心臓だけは、鼓動が貴方に聞こえてしまうのではないかというくらいに高鳴っていた。
今思えばわたくしは、あの瞬間に恋をしたのだと思う。
貴方を好きになることは──この世界のどんな事よりも当たり前に思えたのだ。
◇◇◇
「今度の戦いには自ら顔を出すのですか?」
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