「ということで、家族旅行は中止だ。」
はぁ〜と父は珍しく溜息をつく。ディアマンドとスタルークは父の執務室に呼ばれ身構えていたが、国や命に関わる一大事ではなく一先ず安堵した。しかし、数年ぶりともいえる全員揃った長めの休暇に家族全員で遠出ができる機会だったのにと三者三様で内心落ち込んでいた。父の前に開かれている手帳には、「旅行」と心無しか躍った赤文字と矢印に、ほぼ重なるよう矢印と共に「現場視察」と他の予定より乱雑に書かれていた。
「しかし父上、私が行けば良い話なのではないですか?この付近であれば何度か私も行っておりますので私が――」
「そ、そうです!僕もこの付近であれば自警団と害獣駆除で訪れたことがありますので僕が――」
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