いつかの憧憬「……それで、今度の休暇はどこへ行く?」
メレフは執務用の机上に積まれた書類の束に目を通しながら、少し離れたところでてきぱきと明日の支度をしているカグツチに声をかけた。カグツチは手を止めずにふいとメレフへと顔を向け、軽く微笑みを返す。
「メレフ様の向かわれたい場所でよろしいのでは?」
「それに悩んでいるから尋ねているんだろう」
そのカグツチの返答にメレフは書類から顔を上げ、少し困ったように笑いながらカグツチに返した。そのメレフの表情を見て、カグツチもクスクスと笑う。
「ふふ、失礼致しました」
メレフは手にしていた書類を机上に置いた。長時間酷使していた目を休めるようにその瞳を閉じ、一つため息をつく。
「カグツチはどこか行きたい場所はあるか?」
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