耳たぶに熱しゅるりと、その大きな手でファットガムは器用にネクタイを締める。
いつもヒーロースーツの姿しか見ないので、低脂肪で且つスーツ姿なんてとても珍しい。それなのに、なんでかその手付きは自然で、まるで毎日そうしてる人みたいだと切島は思った。現在切島は書類と格闘中だったが、ついチラチラと横目で盗み見る。
「ま、こんなもんやろ」
既に外は真っ暗で、灯りのついた事務所内が映る窓ガラスの前でファットガムは少し癖のある金髪を後ろに向かって撫でつけた。形のいいおでこが露わになってどきりとする。ダークなボルドーに白のストライプ柄なんて、見たことないような派手なスーツを着こなせるのは、ファットガムのすらりと高い背と容姿あってこそだろう。「派手ですね」
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