暖かな部屋に生木のモミの木。クリスマスソングを口ずさむ小さな我が子たち。微笑みながら見守る半身。その上ない至福の空間にバッキンガムは目を細めた。
ツリーの飾り付けを行うと告げたときの歓声はいまだ耳に残っている。録音しそびれたことを悔やむほどのはしゃぎようで、思わず半身と笑ってしまったほどだ。
木の下部を下の子が、真ん中を上の子が、二人が届かない上部をバッキンガムが、子らの指示を受けながらオーナメントを掛けていく。飾りをしまっていた箱を間に置いて、半身はソファーに座り、今年も少し離れた場所からツリーの出来を確かめている。
「次はこれがいい。これ、なんの人形?」
「聖人じゃないか?」
上の子に手渡されたのは古臭い衣装を着た男の人形だった。綿が詰まっているとは思えなほど平たい。昨年の飾りつけで目にした記憶はないが、何処からか出てきたのか。疑問に思いながらも紐を枝に吊るす。
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