Dear My Hero【オル相】「やあイレイザーヘッド」
「お疲れ様です」
オールマイト、と彼の名を呼ばなかったのは目立ちたくない一心のはずだけれど、高層ビルの風が吹き荒ぶ最上階の更に上、屋上の転落防止用の手摺りの外側にしゃがみ込んだ相澤の隣で同じく眼下に広がる街を眺める本人以外にその声を聞く者はいない。
「君も例の事件に?」
「ええ」
ゴーグルをしたまま視線も上げず言葉少なに答える相澤をちらりと見遣りオールマイトは並ぶようにちょこんとしゃがみ込んだ。
いつもは腰に手を当て自信満々に己を誇示するように立つ姿しか見ないから、返って相澤は驚き、しかしそれを表情に出すことなく今度は黙って首を回して隣を見た。
「何か御用ですか」
「君の姿が見えて嬉しくなってね」
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