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    アンドリュー(鶏)

    DONE2025年5月30日~6月1日開催の『星の祝祭Ⅵ』に併せて公開の新作です。
    ビネ・デル・ゼクセに住む絵描きの少年とクリスのお話。

    この絵描きの少年は、ゲーム本編ビネ・デル・ゼクセのクリスの邸宅近くにいるモブの少年がモデル。名前などの設定は個人の妄想ですが、彼が絵を描いていてクリスに見てもらっているらしいセリフは本編で見られます。
    よかったらぜひ幻想水滸伝3のゲーム本編で確かめてみてね!
    女神の愛する庭で 少年が瞬きをしたそのとき、目の前の猫がごろんと転がった。白猫はとても心地よさそうな様子で青々とした芝生に四肢を伸ばしている。少年はあっ、と声を上げた。そして黒炭を持ったままの右手で、汚れるのにも構わず自身の金髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。そしてまだ余白の多い自らのスケッチと眼前の白猫を交互に見た。集中して書き込んでいた背中側の毛並みは、今はすっかり芝生に埋もれて隠れてしまっている。というより、もはや彼が描き込んでいたポーズとは端から変わってしまった。少年は深いため息をついた。
     少年と白猫の出会いは数十分前のことだった。港町ビネ・デル・ゼクセ生まれのごく普通の少年──リアンは、その日路地裏で一匹の白猫を見つけた。緑の目をした真っ白の猫で、その細身でしなやかな身のこなしから雌の猫だろうと思われる。ほの暗い路地裏の、建物のすき間から昼下がりの陽光が差している一角に白猫はごろんと転がって毛繕いをしている。彼は白猫が逃げないように少し距離をとり、そして脇に抱えた自分の顔くらいの大きさのスケッチブックを取り出してその場にしゃがみこんだ。
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