あゆみ
Leri_sosaku
DONECoC『留守番番』KP
ョアさん
PC/PL
曽祢山 翠(そねやま みどり)/二科さん
岸端 有彌(きしはた あゆみ)/れり
「最高の収穫があった。面白いね。」
シナリオクリアです!
ありがとうございました!
kingyo_yura
DOODLE2024.9.18・19TRPG『嗤う人間師』
KP:ゆらおん
PL:ayumi⍤⃝
そら
みく
かふ
#あゆみくかふそら人間師
ここのやりとり、ちょっと可愛いおもろかったよねーてだけ。ネタバレ……じゃないだろうしなぁ……でらくがきカテゴリ
ponpontatsuta
PASTけあきのあゆみずっと一緒に
灯す火(けあきデー) あの夏から、暑いと思ったことがない。彼岸の食物を食べたからか、亡霊に取り憑かれたからか、分かりはしないが暁人はあれから、冷えた空気を纏って生きている。夏でも汗一つかかず長袖を着て、上着まで羽織る暁人のことを、友人は羨ましがったり、気味悪く思って離れたりと様々だったが、暁人自身は特に気にしてはいなかった。
「お前、またタバコ吸い出したんだな」
「何で? 吸ってないけど」
「そうかぁ? お前夏になるとタバコ臭えぞ。特にこの時期すげえ臭う」
言われた暁人は、思い当たるフシしかない。しかしだからといって、喜ぶこともできない。
そんなふうにマーキングしていくくせに、今まであの男が暁人の前に現れたことは一度もないのだから。
1440「お前、またタバコ吸い出したんだな」
「何で? 吸ってないけど」
「そうかぁ? お前夏になるとタバコ臭えぞ。特にこの時期すげえ臭う」
言われた暁人は、思い当たるフシしかない。しかしだからといって、喜ぶこともできない。
そんなふうにマーキングしていくくせに、今まであの男が暁人の前に現れたことは一度もないのだから。
ponpontatsuta
PASTけあきのあゆみ余裕なんてない
ボーナスをあげよう(けあきデー)「ボーナスを出してやる」
「え、いいよ。僕まだそんなに役に立ってないもん」
暁人が殊勝なことを言ってくるもんだから、オレは思わずその頭を撫でる。子供じゃないんだと反撃されるかと思ったら、予想外の答えが返ってきた。
「これでいいよ、ボーナス」
「あ?」
「僕のボーナス、いま頭を撫でてくれたので充分かなって」
あんまり可愛いことを言うので、オレはそのまま暁人の頭を掻き回すように撫でる。暁人は今度はやめてよとか言いながら、オレを見た。その表情はまんざらでもなさそうで、嬉しげに綻んでいる。
「じゃあ次のボーナスはハグにでもするか」
調子に乗って冗談のつもりで言うと、暁人が驚いたような顔をして、すぐにはにかむように笑う。
865「え、いいよ。僕まだそんなに役に立ってないもん」
暁人が殊勝なことを言ってくるもんだから、オレは思わずその頭を撫でる。子供じゃないんだと反撃されるかと思ったら、予想外の答えが返ってきた。
「これでいいよ、ボーナス」
「あ?」
「僕のボーナス、いま頭を撫でてくれたので充分かなって」
あんまり可愛いことを言うので、オレはそのまま暁人の頭を掻き回すように撫でる。暁人は今度はやめてよとか言いながら、オレを見た。その表情はまんざらでもなさそうで、嬉しげに綻んでいる。
「じゃあ次のボーナスはハグにでもするか」
調子に乗って冗談のつもりで言うと、暁人が驚いたような顔をして、すぐにはにかむように笑う。
ponpontatsuta
PASTけあきのあゆみ何度だって
プレゼント(けあきデー)「デパートの父の日コーナーで見かけて、何かいいなって思って……」
父の日に暁人がプレゼントを寄越してきた。年が離れてるとはいえ、恋人相手にこの日付でプレゼントかよ、と思ったりもしたが、暁人の家庭環境を思い出してそれもありか、と思い直すなどしたオレは何とも優しいと思う。
「ネクタイねぇ」
「気に入らない?」
「いや、いいんじゃねぇか? オレじゃ選ばないようなデザインだが、悪くないぜ」
ネクタイは紺と灰と白の斜めに走った太めのストライプが洒落ていて、普段使いするより次に二人で出かける時に付けたほうがいいな、とオレをニヤけさせる代物だ。暁人は若いし、センスがいい。オレにセンスがないとは思いたくはないが、若者の暁人からすれば古臭く感じるところもあるだろう。だからこうして暁人に何かをプレゼントされたり、コーディネイトに口を出されたりするのは、正直悪くないと思っている。むしろ好ましいくらいだ。
1008父の日に暁人がプレゼントを寄越してきた。年が離れてるとはいえ、恋人相手にこの日付でプレゼントかよ、と思ったりもしたが、暁人の家庭環境を思い出してそれもありか、と思い直すなどしたオレは何とも優しいと思う。
「ネクタイねぇ」
「気に入らない?」
「いや、いいんじゃねぇか? オレじゃ選ばないようなデザインだが、悪くないぜ」
ネクタイは紺と灰と白の斜めに走った太めのストライプが洒落ていて、普段使いするより次に二人で出かける時に付けたほうがいいな、とオレをニヤけさせる代物だ。暁人は若いし、センスがいい。オレにセンスがないとは思いたくはないが、若者の暁人からすれば古臭く感じるところもあるだろう。だからこうして暁人に何かをプレゼントされたり、コーディネイトに口を出されたりするのは、正直悪くないと思っている。むしろ好ましいくらいだ。
ponpontatsuta
PASTけあきのあゆみモブ視点は体に良い
また、よろこんで! 常連のおっさんがエロくて、少しずつ距離を詰めている。スーツをラフに着こなして、くたびれたコートを纏った姿はオールドタイプの刑事のようで、なかなかに腰にくる。聞けば本当に刑事だったらしい。まったく好みどストライクで、俺はおっさんがバイト先の居酒屋に来るたびに、テーブルに張り付くようにしておっさんの覚えを良くしていた。
そうしてもう三ヶ月。しばらくぶりに来たおっさんは今日も順当にエロくて、枯れ専の俺としてはもう少し熟れて欲しいって希望も吹き飛ぶ。
たまには若いのもいいよなって仲間に言ったら、恋してるのねって返されたりもしてる。まったく、今日もおっさんはどエロい。
ほくほくとしながら奥の座敷に通して、お通しを運んでおしぼりを渡すとおっさんが入り口辺りを見た。
1689そうしてもう三ヶ月。しばらくぶりに来たおっさんは今日も順当にエロくて、枯れ専の俺としてはもう少し熟れて欲しいって希望も吹き飛ぶ。
たまには若いのもいいよなって仲間に言ったら、恋してるのねって返されたりもしてる。まったく、今日もおっさんはどエロい。
ほくほくとしながら奥の座敷に通して、お通しを運んでおしぼりを渡すとおっさんが入り口辺りを見た。
ponpontatsuta
DOODLEけあきのあゆみ喧嘩するほど
傘、真夏日(けあきデー)「今日は何月!?」
「五月だ! 言うなますます暑くなる!」
日差しで頭の天辺を焦がされながら、オレは暁人と公園のベンチで滝のような汗を流していた。
アジトのエアコンが壊れたのを皮切りに、暁人と同居中の部屋のエアコンまでが寿命を迎えたのは昨日だ。
元々稼働過多だったアジトのエアコンがオーバーヒートするだけなら分かるが、何もここ十年大事にしてきた部屋のエアコンまで釣られるように壊れることはないだろう。
続く真夏日に業者の修理もすぐには来ないため、オレと暁人は外に涼みに出ることになった。喫茶店にでも行ければよかったんだが、そこで昨日の怪異だ。
「KKからドブみたいな臭いがする!! 鼻曲りそう!!」
「暁人オマエこそ香水臭いんだよ!! こっちこそ鼻曲がるわ!!」
2082「五月だ! 言うなますます暑くなる!」
日差しで頭の天辺を焦がされながら、オレは暁人と公園のベンチで滝のような汗を流していた。
アジトのエアコンが壊れたのを皮切りに、暁人と同居中の部屋のエアコンまでが寿命を迎えたのは昨日だ。
元々稼働過多だったアジトのエアコンがオーバーヒートするだけなら分かるが、何もここ十年大事にしてきた部屋のエアコンまで釣られるように壊れることはないだろう。
続く真夏日に業者の修理もすぐには来ないため、オレと暁人は外に涼みに出ることになった。喫茶店にでも行ければよかったんだが、そこで昨日の怪異だ。
「KKからドブみたいな臭いがする!! 鼻曲りそう!!」
「暁人オマエこそ香水臭いんだよ!! こっちこそ鼻曲がるわ!!」
ponpontatsuta
PASTけあきのあゆみ思い出と未練
ネクタイ(けあきデー) KKのネクタイは古くて、くたびれている。でも布はしっかりしていて、とてもいいものらしいってことも分かる。
「それ、いつもしてるよね」
KKが出かけるためにネクタイを巻いているのを見て、僕は訊ねていた。
「ああ、ネクタイのことか」
「うんそう。大切そうにしてるよね。誰かのプレゼントだったりするの」
しまった、と思ったけど遅かった。KKは少し困ったような顔をすると話し出す。KKにプレゼントをする「誰か」なんて、予想がついていたのに、僕は馬鹿だ。
「息子が父の日のプレゼントにくれたんだ。正確には息子が選んで、家内が金を出したんだが」
気まずくなりそうな空気はなく、僕は一旦安堵した。
「へぇ、そうなんだ……」
KKと家族は破局を迎えている。その幸せな時間の残滓を纏い続けるKKに、らしくなさと、らしさを同時に感じる。
1399「それ、いつもしてるよね」
KKが出かけるためにネクタイを巻いているのを見て、僕は訊ねていた。
「ああ、ネクタイのことか」
「うんそう。大切そうにしてるよね。誰かのプレゼントだったりするの」
しまった、と思ったけど遅かった。KKは少し困ったような顔をすると話し出す。KKにプレゼントをする「誰か」なんて、予想がついていたのに、僕は馬鹿だ。
「息子が父の日のプレゼントにくれたんだ。正確には息子が選んで、家内が金を出したんだが」
気まずくなりそうな空気はなく、僕は一旦安堵した。
「へぇ、そうなんだ……」
KKと家族は破局を迎えている。その幸せな時間の残滓を纏い続けるKKに、らしくなさと、らしさを同時に感じる。
ponpontatsuta
PASTけあきのあゆみつまりはあなただけ
Only You またお祈りされてしまった。何度目か分からない就活の失敗にため息しか出ない。KKと一緒に住むのを決めた時は、こんな事になるなんて思わなかった。こんな情けない姿を見せることになるなんて。
「ただいま……」
疲れて帰ると、KKはソファで寝転んで本を読んでいた。今日の家事当番はKKなので、テーブルには簡単な料理が並んでいる。
「いま食べる気になんないから、冷蔵庫に入れとくね……」
「おー、置いといていいぜ。後でオレがやっとく。それより……ん」
本を畳んで下に置き、腕を広げるKK。何だよ、と思うのに、体が吸い込まれるようにKKに倒れ込んでしまう。
「うー……」
「オマエは頑張ってる。オマエは偉い。オマエは可愛い」
615「ただいま……」
疲れて帰ると、KKはソファで寝転んで本を読んでいた。今日の家事当番はKKなので、テーブルには簡単な料理が並んでいる。
「いま食べる気になんないから、冷蔵庫に入れとくね……」
「おー、置いといていいぜ。後でオレがやっとく。それより……ん」
本を畳んで下に置き、腕を広げるKK。何だよ、と思うのに、体が吸い込まれるようにKKに倒れ込んでしまう。
「うー……」
「オマエは頑張ってる。オマエは偉い。オマエは可愛い」
ponpontatsuta
PASTけあきのあゆみワレナベトジブタ
おかしなふたり「大体さ、今時の若者って何!? 僕は僕だろ!?」
暁人は普段柔和で人当たりが良いが、怒りのスイッチが入ると止まらなくなることがある。
「オレが悪かった。もう機嫌なおせよ」
「悪かったと思うならちゃんと謝って! 悪かったは謝罪じゃないし、ご機嫌取りで謝られてもさぁ!」
「だから悪かったって……大体何だよ。オマエだってオレのこと、妖怪DVDおじさんとか言ってたろ」
「それは事実! KKのは不当なカテゴライズ!」
「屁理屈言うな」
「屁理屈言ってるのはKK!」
この後十分に及ぶオレたちの小競り合いは、日頃思っていた引け目をオレから最悪な形で引き出した。
「じゃあ別れるか」
こんな頑なで、面白みのないおっさんから、自由にしてやるよ、暁人。
715暁人は普段柔和で人当たりが良いが、怒りのスイッチが入ると止まらなくなることがある。
「オレが悪かった。もう機嫌なおせよ」
「悪かったと思うならちゃんと謝って! 悪かったは謝罪じゃないし、ご機嫌取りで謝られてもさぁ!」
「だから悪かったって……大体何だよ。オマエだってオレのこと、妖怪DVDおじさんとか言ってたろ」
「それは事実! KKのは不当なカテゴライズ!」
「屁理屈言うな」
「屁理屈言ってるのはKK!」
この後十分に及ぶオレたちの小競り合いは、日頃思っていた引け目をオレから最悪な形で引き出した。
「じゃあ別れるか」
こんな頑なで、面白みのないおっさんから、自由にしてやるよ、暁人。
ponpontatsuta
PASTけあきのあゆみずっと一緒
家族になろうよ「家族になるか」
他に言葉が思い浮かばなかった。もう恋人だ。だったら、これ以上の言葉はないと思っていた。
「そんなこと言わなくても、将来介護はするつもりだよ」
暁人は微笑みを浮かべてオレの手を取る。オレは盛大に滑ったらしい。
あの夜から十年。オレももういい年だ。こんな商売もしてる。いつ死んでもいいように、暁人に残すものがあるように。
そうして思うのは、結婚だ。オレは古い人間だから、最終到達地点をそこに見出してしまう。
伊月暁人という未練が出来て、死んだことにしていた戸籍を戻した。並大抵のことじゃなかったが、それを越えて、いま暁人と二人で生きている。その証として、オレは暁人の伴侶になりたい。
「暁人」
980他に言葉が思い浮かばなかった。もう恋人だ。だったら、これ以上の言葉はないと思っていた。
「そんなこと言わなくても、将来介護はするつもりだよ」
暁人は微笑みを浮かべてオレの手を取る。オレは盛大に滑ったらしい。
あの夜から十年。オレももういい年だ。こんな商売もしてる。いつ死んでもいいように、暁人に残すものがあるように。
そうして思うのは、結婚だ。オレは古い人間だから、最終到達地点をそこに見出してしまう。
伊月暁人という未練が出来て、死んだことにしていた戸籍を戻した。並大抵のことじゃなかったが、それを越えて、いま暁人と二人で生きている。その証として、オレは暁人の伴侶になりたい。
「暁人」
ponpontatsuta
PASTけあきのあゆみコスプレはいいね!
メイドの日「おい、それは何だ」
「男性サイズのメイド服ですにゃ」
にゃーんと猫又が、何でもないことみたいに言う。KKは青くなったり赤くなったりしながら、刃物みたいな声で言った。
「オレも暁人も着ねぇぞ」
「女狐の格好はするくせにぃ」
「オレはしてねぇし、あれは強いから、いいんだ」
「じゃあ、暁人は? 暁人は着てくれる?」
にゃーんと、可愛く首を傾げられた。そうは言われても。
「KKが嫌がることは、したくないなぁ」
「そんにゃあ」
困り眉の猫又、かわいいな。
でもダメだ。メイド服は二着。このままだとKKまで、メイド服を着る羽目になってしまう。
ちょっと見たいけど、だからってKKが嫌がることは、本当に本意じゃない。だから僕もお断りする。ごめんね。
1303「男性サイズのメイド服ですにゃ」
にゃーんと猫又が、何でもないことみたいに言う。KKは青くなったり赤くなったりしながら、刃物みたいな声で言った。
「オレも暁人も着ねぇぞ」
「女狐の格好はするくせにぃ」
「オレはしてねぇし、あれは強いから、いいんだ」
「じゃあ、暁人は? 暁人は着てくれる?」
にゃーんと、可愛く首を傾げられた。そうは言われても。
「KKが嫌がることは、したくないなぁ」
「そんにゃあ」
困り眉の猫又、かわいいな。
でもダメだ。メイド服は二着。このままだとKKまで、メイド服を着る羽目になってしまう。
ちょっと見たいけど、だからってKKが嫌がることは、本当に本意じゃない。だから僕もお断りする。ごめんね。
ponpontatsuta
PASTけあきのあゆみ僕たちは生きてる
デリシャス・イン・マンション 食べることは生きることだ。生きることは楽しいことだ。
そう思えたのはあの夜のお陰で、それまではただ生きるために食べていた。楽しいなんて思ったこともない。
バイトの掛け持ちや力仕事でたくさん食べてはいたけど、それだけだ。それが変わったのは、変えてくれたのは、ほかの誰でもない、僕の相棒。KK。
「本当によく食うよな」
「うん、美味しくてさ。美味しくて美味しくて、止まらないんだ」
アジトで作った山盛りのチャーハンをかき込む。笑う声がして食べるのをやめると、KKが笑っていた。
「それでどうして太らねぇんだよ、オマエ。腹の中にブラックホールでもあるんじゃねぇのか」
食べ物で一杯になってるお腹を両脇から押さえられて、僕は苦しさよりもくすぐったさで笑った。
948そう思えたのはあの夜のお陰で、それまではただ生きるために食べていた。楽しいなんて思ったこともない。
バイトの掛け持ちや力仕事でたくさん食べてはいたけど、それだけだ。それが変わったのは、変えてくれたのは、ほかの誰でもない、僕の相棒。KK。
「本当によく食うよな」
「うん、美味しくてさ。美味しくて美味しくて、止まらないんだ」
アジトで作った山盛りのチャーハンをかき込む。笑う声がして食べるのをやめると、KKが笑っていた。
「それでどうして太らねぇんだよ、オマエ。腹の中にブラックホールでもあるんじゃねぇのか」
食べ物で一杯になってるお腹を両脇から押さえられて、僕は苦しさよりもくすぐったさで笑った。
ponpontatsuta
PASTけあきのあゆみその記憶は初恋
闇と遊んだ記憶 闇の中で手を引かれて歩いた。僕は多分その時迷子で、右も左も分からなくて。
僕の手を引く大きな手は暖かくて力強くて、僕は勇気をもらったみたいな気持ちで、泣かないでいられた。でも結局、あれは誰だったんだろう。
「分かりますにゃ」
にゃーん、と猫又が営業を仕掛けてきた。碌な事にならないから断れよ、とKKにはいつも言われていたけど、この時は好奇心と懐かしさが勝ってしまった。こっそり貯めていた冥貨を注ぎ込んで、猫又からそれを買う。
記憶はっきりするーん、とか何とか。かなり胡散臭い名前だったけど、僕はその和綴じの冊子のようなアイテムを言われた通りに枕の下に敷いて寝た。
それが今夜で、いま、ここは夢の中だ。
「迷子か、ガキ」
1049僕の手を引く大きな手は暖かくて力強くて、僕は勇気をもらったみたいな気持ちで、泣かないでいられた。でも結局、あれは誰だったんだろう。
「分かりますにゃ」
にゃーん、と猫又が営業を仕掛けてきた。碌な事にならないから断れよ、とKKにはいつも言われていたけど、この時は好奇心と懐かしさが勝ってしまった。こっそり貯めていた冥貨を注ぎ込んで、猫又からそれを買う。
記憶はっきりするーん、とか何とか。かなり胡散臭い名前だったけど、僕はその和綴じの冊子のようなアイテムを言われた通りに枕の下に敷いて寝た。
それが今夜で、いま、ここは夢の中だ。
「迷子か、ガキ」
ponpontatsuta
PASTけあきのあゆみレットアスオンリー
ハネムーンサラダ 学内のカフェでコーヒーを飲んでいたら、二人組の女の人に声をかけられた。
「お一人なら、一緒にコーヒー飲みませんか」
顔は真っ赤で、声は震えている。もしかしたら、凄く勇気を出してくれたのかもしれない。そう思うと僕は微笑んで、なるべくやさしく答えを返した。
「連れを待っているので、すみません」
女の人は少しだけ泣きそうな顔をして、すぐ笑顔を作った。きれいな人だな、と思った。もう一人の女の人は、不機嫌な顔を隠さずに僕を睨んでくる。優しい人だな、と思った。
「ごめんなさい。変なことを言ってしまって」
「いいえ、構いませんよ」
「暁人」
ちょうどそこに、KKが来た。不機嫌そうにしていた女の人が口を開く。
「二人と二人でちょうどいいじゃないですか。お話しましょうよ」
723「お一人なら、一緒にコーヒー飲みませんか」
顔は真っ赤で、声は震えている。もしかしたら、凄く勇気を出してくれたのかもしれない。そう思うと僕は微笑んで、なるべくやさしく答えを返した。
「連れを待っているので、すみません」
女の人は少しだけ泣きそうな顔をして、すぐ笑顔を作った。きれいな人だな、と思った。もう一人の女の人は、不機嫌な顔を隠さずに僕を睨んでくる。優しい人だな、と思った。
「ごめんなさい。変なことを言ってしまって」
「いいえ、構いませんよ」
「暁人」
ちょうどそこに、KKが来た。不機嫌そうにしていた女の人が口を開く。
「二人と二人でちょうどいいじゃないですか。お話しましょうよ」
ponpontatsuta
PASTけあきのあゆみ僕はね
煙の行方2 KKに当分一人での仕事は駄目だと言われて、また振り出しに戻ってしまった。でもあの時、あの場で固まって動けなくなってる子猫を見殺しにすることは出来なかった。それにKKはそんな僕を否定するんじゃなくて、僕がもっと強くならなきゃいけないって暗に言ってくれた気もするし、振り出しだけど、少しは前進したと思いたい。
「あれ、KKは」
『仕事だ』
KKはこうして一人での危険な仕事もこなす。その度に僕は腹の底が寒くなるような思いをする。僕がいては足手まといだからと止められたその意図は、危険な目に遭わせないように、だとは分かっているけど。
「早く手伝えるようになりたいです」
『頑張るといい』
エドさんとはこうしてボイレコで会話する。KKには普通に話しかけることもある、と聞いて、物凄い胸騒ぎとソワソワした気持ちが湧いて、焦ったのはつい最近だ。理由は、もう分かっている。
889「あれ、KKは」
『仕事だ』
KKはこうして一人での危険な仕事もこなす。その度に僕は腹の底が寒くなるような思いをする。僕がいては足手まといだからと止められたその意図は、危険な目に遭わせないように、だとは分かっているけど。
「早く手伝えるようになりたいです」
『頑張るといい』
エドさんとはこうしてボイレコで会話する。KKには普通に話しかけることもある、と聞いて、物凄い胸騒ぎとソワソワした気持ちが湧いて、焦ったのはつい最近だ。理由は、もう分かっている。
ponpontatsuta
PASTけあきのあゆみ素直になれば?
煙の行方 単独で祓ってみたいと暁人が言った時、オレは止めなかった。簡単な仕事を振り分けて、札も多めに持たせた。それなのに暁人は、明け方穢れの気配をぷんぷんさせながら帰ってきた。
「暁人」
「ごめん……大詰めって時に、気を抜いちゃって……」
嘘だ。暁人はそんな人間じゃない。理由なんて、誰だって分かりきっていた。
タクティカルジャケットに不自然な膨らみ、それがたまに身動ぎする。
「暁人……オマエそれ」
「あ、うん、その、戦いに巻き込んじゃって……咄嗟に」
大方、犬だか猫だかが戦いの邪気に当てられて硬直したのを、懐に入れて庇いながら戦ったんだろう。優しさは美徳だが、避けきれなかった穢れにこんなに冒されている相棒は、看過できなかった。
1115「暁人」
「ごめん……大詰めって時に、気を抜いちゃって……」
嘘だ。暁人はそんな人間じゃない。理由なんて、誰だって分かりきっていた。
タクティカルジャケットに不自然な膨らみ、それがたまに身動ぎする。
「暁人……オマエそれ」
「あ、うん、その、戦いに巻き込んじゃって……咄嗟に」
大方、犬だか猫だかが戦いの邪気に当てられて硬直したのを、懐に入れて庇いながら戦ったんだろう。優しさは美徳だが、避けきれなかった穢れにこんなに冒されている相棒は、看過できなかった。
ponpontatsuta
PASTけあきのあゆみ彼岸の絆
NOT GUILTY「遠くまできちゃったね」
そういう暁人の手は痩せていて、骨と血管が浮いている。加齢で色素の抜けた肌はいっそ美しく、まるで生まれたてのようなのに、幾重にも皺が刻まれていて、ひどく頼りない。
「オレは、そうでもないみたいだ」
「KKはあの夜のまんま、変わらない」
「暁人」
「それなのに、僕が死んだら死ぬんだね」
「そうだ。それがオマエが招いた呪いだ」
「ごめんね」
微笑みながら謝る顔は幼く、罪悪感など欠片も知らぬかのようだ。いや、罪を感じる必要など、これっぽっちもない。
「オレは幸福だった」
「僕は寂しかった。でも、今、やっと幸せだ」
微笑みが深くなる。
もうすぐ死ぬ、オレの半身。
「KK、手を握ってて」
「オマエこそ、離すなよ」
405そういう暁人の手は痩せていて、骨と血管が浮いている。加齢で色素の抜けた肌はいっそ美しく、まるで生まれたてのようなのに、幾重にも皺が刻まれていて、ひどく頼りない。
「オレは、そうでもないみたいだ」
「KKはあの夜のまんま、変わらない」
「暁人」
「それなのに、僕が死んだら死ぬんだね」
「そうだ。それがオマエが招いた呪いだ」
「ごめんね」
微笑みながら謝る顔は幼く、罪悪感など欠片も知らぬかのようだ。いや、罪を感じる必要など、これっぽっちもない。
「オレは幸福だった」
「僕は寂しかった。でも、今、やっと幸せだ」
微笑みが深くなる。
もうすぐ死ぬ、オレの半身。
「KK、手を握ってて」
「オマエこそ、離すなよ」
ponpontatsuta
PASTけあきのあゆみざざーん
波間の攻防 視線が吸い寄せられる。たかだか素足だ。しかも、親子ほど年の離れた青年の素足。それなのに。
浜辺の砂を蹴りながら、波と戯れている暁人は無邪気そのもので、後ろめたさが募る。
「けーけ! ねぇ、何でそんなに離れてんの」
「水がかかる」
「え、かけてるのに。道理で届かないわけだ。もっと近づいてよ」
「何ニヤニヤしてるんだよ。やらしい顔しやがって」
「やだ、えっち」
それなのに、暁人は屈託なく笑う。
「エッチって、オマエな」
「ふふ、KKの二の腕に欲情してるの、バレた?」
屈託なく、欲望を語る。
「ねぇ、ここに来る前にね、準備してきたんだ」
視線が絡んだ。熱と湿り気を帯びた空気が二人を包む。
「いつでも出来るよ。ここでする? それとも、宿?」
715浜辺の砂を蹴りながら、波と戯れている暁人は無邪気そのもので、後ろめたさが募る。
「けーけ! ねぇ、何でそんなに離れてんの」
「水がかかる」
「え、かけてるのに。道理で届かないわけだ。もっと近づいてよ」
「何ニヤニヤしてるんだよ。やらしい顔しやがって」
「やだ、えっち」
それなのに、暁人は屈託なく笑う。
「エッチって、オマエな」
「ふふ、KKの二の腕に欲情してるの、バレた?」
屈託なく、欲望を語る。
「ねぇ、ここに来る前にね、準備してきたんだ」
視線が絡んだ。熱と湿り気を帯びた空気が二人を包む。
「いつでも出来るよ。ここでする? それとも、宿?」