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    キッカ

    odgr

    SPOILER4/14発行になるっぽいです。ほんとか。
    マジェ昼の部捜査前の12月、クリスマスチャリティーヒーローショーに出演が決まったことをきっかけに、『演じる』『ヒーロー』というあたりのキーワードからウィリアムズ親子を考えるモクマさんの話です。モクルクです。
    マジェMカのバレとトンチキネームのモブがそこそこ出ます。実在の団体や個人とは一切関係ありません。
    アクターズ・エンパシー 月がきれいに見える部屋は、朝の光もよく入る。
     つまり自ずと目覚めが早くなることにモクマが気づいたのは、そのゲストルームを選んで借りた翌日の朝だった。正確には自分で選んだというわけではなく、広さと個別の洗面室がある方のゲストルームを気に入ったチェズレイが真っ先に部屋を選び、アーロンはアーロンで「詐欺師の近くでさえなくばどこでも良い」というものだから、モクマはアーロンが使わなさそうな方に決めたのだ。部屋は適度な狭さで、その割には窓が大きく、ひとりで過ごす時間も大切にしたいモクマとしては都合が良かった。多少朝が早くなるとしても、気の置けない仲間たちと過ごす時間が増えると思えば、十分にお釣りが来る。
     このゲストルームの窓から、緑の庭木と生け垣が茂る庭が見えるのも良かった。ウィリアムズ家の庭は、父母と子供がひとりかふたりいるような家庭の邸宅と考えるとちょうど良い広さだった。『ちょうど良い』というのはこの家全体に言える感覚で、本来ならば家の主となる夫婦の部屋、子供のための部屋、家族の時間を共有するリビング、ふたり以上での作業が快適に行える動線を想定したキッチン、窓から光が入り清潔感がある広い洗面室とバスルーム、それから、時に大事な友人を招いて快適に過ごしてもらうための部屋──チェズレイに言われて初めて気がついたが、成程ここは、理想と信念を抱いて働くエリート国家公務員の男が、家族と過ごすありふれた幸せを望んで買い求めた『設定』にひどく相応しい造りだった。
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    amelu

    DONE2024年アルハイゼン誕生日ゼン蛍。
    とあるきっかけと周りの後押しで急接近した二人のおはなし。
    光を抱く巨樹 不可抗力ではあったが、アルハイゼンは蛍と抱き合った。
     それは、真昼の往来で起きた、些細な事故に過ぎない。
     だが、あの小さくしなやかな身体を自分の腕に収めたときから、アルハイゼンの日常は複雑に縺れてしまっている。
     業務の合間に教令院を出て街中へと下りてきたアルハイゼンは、不意に曇りなく晴れ渡った暑い青空を見上げた。白い鳥が旋回するように飛んでいる。まるで、あの日のような光景だ。もっとも、あの日に真っ白な翼を広げて空を舞っていたのは、鳥ではなく蛍だったのだが。
     あの日は、風が荒れていた。ヤザダハ池の桟橋からの坂道を上りきったところで、アルハイゼンは上空を緩やかに滑空する白い影に気が付いた。その影の大きさから鳥でないことはすぐわかったが、それが彼女であることに気が付いたのは一瞬遅れてだった。突風が吹きつけ、乱れた前髪がアルハイゼンの視界を奪う。指先で払って再度見上げたときには、翼の制御を失った白い影が回転しながら勢いよく落下しているところだった。体勢を立て直すには低空すぎる。あとは如何にして着地の衝撃を和らげるかだ。目測だが、このままでは建物に衝突する可能性もある。彼女ならば咄嗟に身を翻して避けられるのかもしれないが、予備策の有用性について検討する前にアルハイゼンは石畳を蹴っていた。
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