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    しおえ

    MEMO借金のカタ(?)として望遠鏡を押し付けられた王九のはなし。
    予定↓
    そのうち信九になる。
    モブがたくさんでる。
    アグリオスキロはかく語りき 王九は、幼き頃より修行を積んだ寺に見切りをつけたとき、その山を去り、今までの己というものを捨てて、街へ出た。そこで自ら獣のように生き、ある男に出会い、出会いは変革をもたらし、他者を排除し、尊ぶことをせず、十年ののちも倦むことを知らなかった。しかし遂に、彼の心に少しばかりの変化が起きた。
     ――ある朝、王九はあかつきと共に起き、太陽を迎えて立ち、わざわざ敵地とも呼べる城砦に侵入し、眠気に目をしょぼつかせる人物にこう言った。
    「俺たちはここ数ヶ月間、金にも得にもならねぇバカげたことを繰り返してきた。てめえはそれを〝幸せ〟だとか抜かしたが、俺は、そうは思わない。俺は生まれてからずっと自由だった。受け入れたいと思えた不自由は一つだけだ。けどな、他人に不自由をくれてやりたいと思ったのは初めてだ。はじめて、丘の上で人を待った。待ちわびたこともある。人の言葉に一喜一憂して、わけが分からなくなって、わけが分からないままに、それでも良いと思えた。本当は、それが煩わしかった。だが今は、その煩わしさも悪くねぇと思える。俺はてめえに贈りたい。このクソみてえな感情っていうやつを。てめえの中の、その幸福とかいうソレをぶち殺して、違うもので埋めてやるよ。同じところに堕ちてこい。俺がてめえに不幸ってやつを与えてやる。よろこべ、クソ野郎」
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