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    山田

    comeco

    DOODLE付き合い始めの銃三デートのおはなし
    山田家ちょぴっと出てきます
    参考書は僕の恋人「ただいまー。」
     あっちー外から帰ると三郎がソファに寝転んでアイスを食べている。
    「あ、おかえり。」
    「……おまえ、それ」
     昨日の夜風呂の後に食って残ってたのは一本だけだったはず。
    「んー?ラスト一本。欲しかったらお前が買ってこいよな。」
    「はあ⁈俺が部活から帰ったら食うからって言ってあっただろ!」
    「名前書いてなかったお前が悪いんですう。山田家では名前が無ければ食べても文句言えないはずですからねー。」
     それはそうだけど。
    「チッ!買いに行くか……あ。」
     財布を出そうと尻ポッケを探るとガサッと紙の音。
    (そうだ。美術の[[rb:先生 > センコー]]になんか渡された。)
     部室に着替えに行こうと美術室の前を通った時に呼び止められて「これ、余ってるから兄弟と行ってこい」と言われた。くれるんなら貰っとくかくらいで内容も見ずに受け取った。ウチの先生たちなんかしんねーけど学校にくる生徒用の催し物のタダ券くれるんだよな。こないだはプロサッカーの学生招待券を体育の先生にもらったし。それは[[rb:友達 > ダチ]]と行ったんだけど美術の先生からってことは俺にはなんも関係ないんじゃねーかな。と思いながらぐしゃぐしゃの紙を取り出す。紙は二枚。特別美術展招待券と書いてある。
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    s a t o u

    DONEピアノとモブと三郎
    鋼鉄の箱庭にて それは別れの曲だった。
     僕が初めてその旋律を耳にしたのは放課後。来年の春には取り壊される予定の、旧校舎二階の音楽室に「彼」はいた。もうずっと調律もされていないであろうグランドピアノの鍵盤を、まるで数学の問題を解くような正確さで彼は奏でていた。
     無感情に、あたりまえに。
     ちらちらと踊る埃が夕陽に照らされる音楽室の真ん中に彼は座っていた。フレデリック・ショパンによる練習曲作品十第三番。その日、その瞬間、彼はそれを弾いていた。僕と同じく天才と呼ばれる山田三郎が、あの日、あの瞬間、あの音楽室にいたのだ。






     水曜日だった。
     連れ立って運動場や体育館へ向かう放課後の生徒の波に逆らって、僕は旧校舎へと向かっていた。数年前に耐震工事が施された新校舎が完成してからは、古びた長机や錆びついたキャビネットなんかが積まれるだけの、ほとんど物置同然と化している場所。その校舎の二階、いちばん奥にあるのが音楽室だった。名だたる音楽家たちの肖像画も、所々破れて中身が見えている椅子も、がたついた譜面立ても全て新校舎の音楽室へと運ばれたが、グランドピアノだけが取り残されたらしい。僕はいつしか、誰もいない校舎の誰もいない教室にひっそりと佇むピアノに会いに行くのが習慣になっていた。そして、その日もそうしていた。
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