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    はるち

    DOODLE振り返らないで前だけ見てね

    音律リー先生でその場所から出られない系のお話です!リクエストありがとうございました~!
    オルフェウスの残響 振り返ってはいけない。振り返れば、あなたは塩の柱になってしまうから。
     振り返ってはいけない。振り返れば、愛しい人を冥府の底へ置き去りにしてしまうから。
     振り返ってはいけない。振り返れば、愛する人が既に腐敗した只の肉塊であると気付いてしまうから。
     振り返っては。
     
    「……」
     目覚めたドクターは、夢の名残を振り払うように頭を振った。陽の光を隙間から零しているカーテンを開け放つと、太陽の眩しさが目を焼き、瞼の裏側に残る悪夢の余韻を焼き清めた。それでも胸の内側へと積もった澱までを祓うことはできず、だからのろのろと寝台から這い出したドクターはシャワー室へと向かった。随分と魘されていたのだろう。汗で下着が肌に張り付いて気持ち悪い。喉の渇きに、ドクターはテーブルの上へと放置されていたペットボトルに手を伸ばした。一晩封を開けて放っておいたものに口をつけるのはやめてくださいよ、腹でも壊したらどうするんです――という声が聞こえた気がして、それが幻聴でしかないと理解しているからこそ、耳を塞ぐように生温い茶を煽った。勢いをつけすぎたせいで唇の端から溢れ出し、寝巻を濡らす。どのみち洗濯が必要だから、とドクターは肌を濡らす感触を無視した。生温かいそれは、どうにも、血が肌の上を伝い落ちる感覚と似ていた。彼を失ったあの夜に、大地を濡らした赤色も、同じ感触がするのだろうか。
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