Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    生時

    @7_kankankan_100

    DONEどひふ版深夜のワンライのお題「貯金」で書いたどひふです。中学生時代。中学生の頃、一二三はある物を見つけてしまった。
    独歩の部屋の棚の奥、惑星や鉱物、植物や生物の図鑑の後ろに隠れるようにそれはあった。夏休みの自由研究の調べ物に独歩の本を借りようとしただけだ。探るつもりはなくて全く偶然の事だったので一二三はなんの悪気もなくそれを図鑑の後ろから取り出す。クッキーかチョコかが納まっていただろう繊細な花柄が描かれた缶箱。そのままにしておけなかったのは『一二三の……』と太字の油性ペンで書かれた文字を見つけたから。その先に続く文字があるらしいが本に隠れて見えなかったのだ。
    独歩はこんな所に『一二三の……』何を隠しているのだろうか。もしかしたら悪口かもしれない、と一二三はちょっとヒヤリとした。学校で時々独歩にしつこくくっつくなと怒られたりするのを思い出すと、その可能性はあり得る。
    でも仕方がない。独歩にくっついていると落ち着くし、いないとなんだか寂しくてやっぱり側に行ってしまう。眠る時にお気に入りのぬいぐるみを離さない小さい子のようなものなのかもしれない、と一二三は自分で思っていた。これが大人だったら、タバコやお酒のようなやめたくてもやめられないものだろうか。ま 2391

    時緒🍴自家通販実施中

    TRAINING征陸さんとお母さんのオルゴールと狡噛さんと宜野座さんのオルゴール。
    学生時代から外務省時代まで続いた二人のお話です。
    800文字チャレンジ15日目。
    オルゴール(あなたを思うということ) 父が母に贈ったプレゼントの中に、木箱を薔薇模様を彫ったオルゴールがある。母はもう意識を失ってしまったが、まだ薬を打ちつつ俺の世話をしてくれていた頃に、夜中そのオルゴールを鳴らしていたことがあった。エリーゼのために。ベートベンが愛した女のために書いた曲。父は音楽知識も豊富だったから、それを贈ることに何か意味があったのかもしれない。母と示し合わせた何かがあったのかもしれない。けれど俺はそれが分からないで、悲しい曲を夜中、空を見ながら聴く母を、家に帰って来ない父を、そしてそんな両親と暮らしていかねばならない自分を不安に思ったのだった。
     だから狡噛がオルゴールをくれた時、それがエリーゼのためにだった時、俺は少し驚いた。何となく父を思わせるところのある彼は(会ったこともないというのに、狡噛は父に似たことをよく言った)、五年目の記念に、と進級したばかりの俺にそう言った。俺はいつものようにあたふたしてしまって、ちゃんと答えられなかったと思う。でもそれをもらった時、俺はもしかしたら、二人に別れが来るかもしれない、と思わずにはいられなかった。狡噛を思って、空を見上げながらオルゴールを鳴らす時が来ると思わずにはいられなかった。そして数年後に、それは現実となったのだった。
    936

    時緒🍴自家通販実施中

    TRAINING学生時代の狡噛さんと宜野座さんのラブレターにまつわるお話。
    800文字チャレンジ9日目。
    手紙(ラブレター) 狡噛は変にアナクロなところがある男だった。授業はほとんど重ならなかったが、教師の講釈をタブレットにまとめるでなくノートに書き写したり、そして今ではほとんど見ない小説を読んでいたり。だからからなのか、狡噛にかぶれた少女たちは、彼と同じ本を読みたがった。そしてその本に感化された少女たちは、狡噛に手紙を書くのだった。愛しています、好きです、そんな簡単な、けれど想いを込めたラブレターを書くのだった。狡噛の靴箱には、いつだってラブレターが詰まっていた。俺はそれに胸を痛めながら、彼が学生鞄にそれを入れるのをじっと見た。そしてその手紙はどこに行くのだろうかと、俺は思うのだった。
     彼の同級生がいたずらを思いついたのは、狡噛があまりにもラブレターをもらっていたからだろう。ラブレターで狡噛を呼び出して、待ちぼうけさせてやろう、という馬鹿ないじめだった。全国一位の男には敵わないから、せめてそんな男でも手に入れられないものがあることを教えてやる、ということなのだろう。俺は話を聞いても、それを狡噛には伝えなかった。ただ俺は狡噛が傷つくとどうなるのか少し気になった。そんなこと、どうでも良いことなのに。
    1008

    百合菜

    DONEアンジェリーク・ジュリリモ
    「抑えていた想いは宇宙の危機を招き」

    ジュリアスのもとに入ってきた報告、それは「女王陛下が倒れた」というものだった。
    女王候補生時代、互いに好意を持っている自覚はあった。そして、お互い、宇宙を優先するがゆえ、その想いは殺した。
    しかし、それがあだとなり!?

    ※再録です


    「陛下の様子はどうだ」

    ドアを開けると同時に光の守護聖・ジュリアスはベッドの横にいるロザリアに尋ねる。

    「特に異常はありませんわ」
    「そうか」

    そう言いながらジュリアスはベッドに視線を向ける。
    ベッドには女王であるアンジェリークが瞼を閉じて眠りについている。
    ジュリアスがその知らせを受けたのは3日前のことであった。
    いつものように執務室でオスカーと打ち合わせをしていると、慌てた様子で使いのものがやってきた。

    「光の守護聖・ジュリアス様、大変です。陛下のご様子が!!」

    聞くところによると、執務の最中にアンジェリークは意識を失ったらしい。
    急遽、医者の診察を受けたが、特に異常は見当たらないとのこと。
    「もしかすると、何かを拒絶している可能性もないでしょうか」
    医者のその言葉が気になりつつも、特に大きく容態が変化することもなく、3日が過ぎていった。
    いつも見せる碧の瞳。
    それが瞼の下に隠されていることにジュリアスは心当たりがある。
    だからこそ、この状況が歯がゆい。

    「ロザリア、そなたも看病に疲れているであろう。ここは私が見ているから、少し休むといい」
    「よろしいのですか?」 7657