百鬼夜行
くまぐま
DONE平安時代のモブ(山賊)が道満に遭遇し、百鬼夜行に巻き込まれる話。何でも許せる方向け。
・山賊の視点ですが、血生臭い事などは起こりません。
・妖怪が出たり、喋ったりします。
・最後あたりに晴明が出ます。
・蘆屋道満が出て来る物語ではありませんが、「今昔物語集」巻27・第44話、「宇治拾遺物語」巻1・第17話、「百鬼夜行絵巻」などをベースにさせて頂きました。
初出 pixiv 2021.5.29
うたげの夜に
鈴鹿峠は、杉の木立の鬱蒼と茂る、昼なお暗い山路だった。
伊勢の国と、近江の国の境。
平安京の遷都に伴って開かれたこの峠道は、東国へ向かう都人、京へ上る旅人などが行き交うが、勾配の険しい坂が右へ左へ折れ曲がる、数ある街道の中でも屈指の難所である。
それに加えて、山賊の横行が[[rb:甚 > はなは]]だしく、人々を悩ませていた。
◇
しとしとと小雨降る或る日の夜半、鈴鹿の山に棲まう山賊の男が、雨宿りの場所を探して峠を駆けていた。
深山では、急な悪天候に見舞われる事も珍しくない。
初夏といえども、しんと冷えた夜気が肌を刺す。降り注ぐ雨が、少しずつ体の熱を奪う。
あちこちから囁きのように、木々の打ち震える音が聞こえる。
ダァリヤ
DONE夜凪(よなぎ)百鬼夜行後だの高専時代だのぽろぽろ視点が変わる不親切な設計です。世界の終わりについて。世界よりも先に終わってしまったこと。
【五夏】よなぎ 伝えておけばよかった。
ザアザアと潮の音がする。もうとっくに海に入るような季節ではない。分かっていたが、裸足で砂の上に立っていた。寄せては引く波がくるぶしまで濡らして、その冷たさに足の指がじんじんと痺れる。
眼前に広がる水は黒い。夜の海は酷く暗くて、友人の長い髪を思わせる。自分にはない濡羽色の髪が、とても、とても好きだったことを思い出す。
感傷に浸って海を求めるような青臭さなんて、十年も前に捨てたはずだった。それでも、来ずにはいられなかった。
好きだと伝えておけばよかった。
波が銀色にうねる。遮るものが何もない遠い水平線に、小さな光の点が見えた。漁船だろうか。どこかの岬の灯台かもしれない。どれくらい離れているのか分からない。頼りない光の粒は、時折瞬いた。
6188ザアザアと潮の音がする。もうとっくに海に入るような季節ではない。分かっていたが、裸足で砂の上に立っていた。寄せては引く波がくるぶしまで濡らして、その冷たさに足の指がじんじんと痺れる。
眼前に広がる水は黒い。夜の海は酷く暗くて、友人の長い髪を思わせる。自分にはない濡羽色の髪が、とても、とても好きだったことを思い出す。
感傷に浸って海を求めるような青臭さなんて、十年も前に捨てたはずだった。それでも、来ずにはいられなかった。
好きだと伝えておけばよかった。
波が銀色にうねる。遮るものが何もない遠い水平線に、小さな光の点が見えた。漁船だろうか。どこかの岬の灯台かもしれない。どれくらい離れているのか分からない。頼りない光の粒は、時折瞬いた。
so_soboro
MOURNINGクリスマスまで仕事をしてしまった1ファンが百鬼夜行にいけるという喜びを爆発させています。センシティブな内容です(浮かれていますのでご注意ください)。あたたかなコメントをいただき、再公開いたします。 5
meek0yryr
Reuse Halloween夏五 離反から百鬼夜行の間のどこかの時空。悟をつかまえた傑と逃げられるのに逃げなかった悟。ハッピーエンドではないけどバッドエンドではないです捕縛 縄で拘束した手首を強く縛り上げる。
自分でどうでもできる力がある悟が私に抗わずにされるがままになっていることに優越感を感じ、
しかし渇きは止まらない。
縄を握る手に力を入れて一層強く引けば、白い肌からじわじわと血が滲んできた。
私はそれに躊躇いなく口を付けた。
誰のものとも変わらない鉄の味が口に広がる。
顔を上げると、何ともない風を装っているであろう顔が存在している。目元はマスクで隠されている。
表情を窺うことは叶わないが、おそらく冷めた目で私を見下ろしているだろう。瞳の奥に欲望を宿しながら。
禁欲的だと言われる。これは私の話だ。
教祖として袈裟に身を包み、老若男女分け隔てなく接する。
逆に悟は我慢が効かない、好き放題やりたい放題。
2243自分でどうでもできる力がある悟が私に抗わずにされるがままになっていることに優越感を感じ、
しかし渇きは止まらない。
縄を握る手に力を入れて一層強く引けば、白い肌からじわじわと血が滲んできた。
私はそれに躊躇いなく口を付けた。
誰のものとも変わらない鉄の味が口に広がる。
顔を上げると、何ともない風を装っているであろう顔が存在している。目元はマスクで隠されている。
表情を窺うことは叶わないが、おそらく冷めた目で私を見下ろしているだろう。瞳の奥に欲望を宿しながら。
禁欲的だと言われる。これは私の話だ。
教祖として袈裟に身を包み、老若男女分け隔てなく接する。
逆に悟は我慢が効かない、好き放題やりたい放題。
むつい
MOURNING※五伊地・伊地知さん誕生日記念小説のボツ
・五伊地で、見え隠れする夏の影に嫉妬する伊さんの話でした
・百鬼夜行前。夏油さんは離反して元気に呪詛師してる時期
・下書きのような何か
・尻切れトンボ 5658
VAZZY227_
CAN’T MAKEプロットだけ出来上がってる百鬼夜行れあゆ山の奥に鈴の音が響く。座敷わらしのお通りだ。
「ねぇ!玲司くん聞いた??」
「何の話?」
「最近近くの山に来たらしいかわい子ちゃんの話だよ!」
座敷わらしのルカのお目当ては雨続きで引きこもっている玲司と遊ぶことであった。可愛い女の子には目のない玲司だがこの雨天ではまだ情報が伝わっていなかったとみえてルカの言葉に驚いた表情を見せた。
「マジで?この辺にいるの?」
「マジマジ大マジ!俺も会ったけど線が細くて儚げな美人さんだったよ〜!」
「まぁお前は一生会えないだろうけどな」
にやっと笑ってそう付け加えたのはルカの友人の岳だった。高齢化が進む地域の方が死神の仕事があるんだと言いながらこの辺りに住み着いているのである。
1633「ねぇ!玲司くん聞いた??」
「何の話?」
「最近近くの山に来たらしいかわい子ちゃんの話だよ!」
座敷わらしのルカのお目当ては雨続きで引きこもっている玲司と遊ぶことであった。可愛い女の子には目のない玲司だがこの雨天ではまだ情報が伝わっていなかったとみえてルカの言葉に驚いた表情を見せた。
「マジで?この辺にいるの?」
「マジマジ大マジ!俺も会ったけど線が細くて儚げな美人さんだったよ〜!」
「まぁお前は一生会えないだろうけどな」
にやっと笑ってそう付け加えたのはルカの友人の岳だった。高齢化が進む地域の方が死神の仕事があるんだと言いながらこの辺りに住み着いているのである。
tsumuginosabu
DONE百鬼夜行で彼女を亡くした五条と、夏油のことが好きだった女の子の話。Twitterで載せていたものの横書きverです。
画像の文字が読みにくいという方や、横で読むほうが好きという方はこちらでどうぞ。
「恋心というにはあまりにも」 彼が死んだと聞いた。彼が殺されたと聞いた。それを伝えてきたその人は、いつもと違って表情が抜け落ちていた。きっと、私も同じような顔をしているのだろう。そう思った。
「傑は、僕が殺した」
「……そう」
どこか上の空な返事になった。そっか、死んじゃったのか。なんて、軽く受け止められるような想いを抱いていたわけではない。けれど、どこか腑に落ちたような感覚がしていた。この不毛な恋心の行き着く先は、私か彼の死——これしかないだろうと心のどこかでは理解していたから。
好きだった彼が、離反という選択をした時点である程度の覚悟はしていた。覚悟はしていたとはいえ、辛かった。
きっと、夏油は私の気持ちを知っていた。酷い人だと思う。最後のあの日、突き放してくれればこの恋心も捨てられただろうに、それを彼は許さなかった。中途半端な優しさは、かえって人を傷つける。初めてこれを理解した瞬間だった。
5170「傑は、僕が殺した」
「……そう」
どこか上の空な返事になった。そっか、死んじゃったのか。なんて、軽く受け止められるような想いを抱いていたわけではない。けれど、どこか腑に落ちたような感覚がしていた。この不毛な恋心の行き着く先は、私か彼の死——これしかないだろうと心のどこかでは理解していたから。
好きだった彼が、離反という選択をした時点である程度の覚悟はしていた。覚悟はしていたとはいえ、辛かった。
きっと、夏油は私の気持ちを知っていた。酷い人だと思う。最後のあの日、突き放してくれればこの恋心も捨てられただろうに、それを彼は許さなかった。中途半端な優しさは、かえって人を傷つける。初めてこれを理解した瞬間だった。
singsongrain
DOODLE猫の皿改題『金魚の鉢』榎木場釣堀デェトといさま屋。プラス吝嗇なモブおじさん。
金魚の鉢 何らかの良からぬ気配を感じて目覚めた瞬間、なぜか虫取り網を持った榎木津が腰に手を当てて見下ろしていた。よくないことに非番の朝である。
「釣りにいくゾ!」
「馬鹿、お前のそれは虫取り網だ。目が細かすぎて水が逃げにくいだろう?」
起き上がって欠伸一つ溢し、浮かんだ涙を瞬きで散らす。
「手頃な網がこれしかなかったんだ!」
「釣りに行くなら網じゃなくて竿と糸持ってこい」
「竿?」
ちらりと下を見て態とらしく首を傾げる榎木津につられ、視線を落とせば軽く褌を持ち上げている朝の整理現象を意識させられ木場はチッと鋭く舌打ちをした。
「朝から元気だな、木場修。釣りは辞めて今日はしっぽり布団の中で過ごすか?」
にやりと口角を引き上げる榎木津にさらにもう一つ舌打ちをして木場は煎餅布団から起き上がった。
4688「釣りにいくゾ!」
「馬鹿、お前のそれは虫取り網だ。目が細かすぎて水が逃げにくいだろう?」
起き上がって欠伸一つ溢し、浮かんだ涙を瞬きで散らす。
「手頃な網がこれしかなかったんだ!」
「釣りに行くなら網じゃなくて竿と糸持ってこい」
「竿?」
ちらりと下を見て態とらしく首を傾げる榎木津につられ、視線を落とせば軽く褌を持ち上げている朝の整理現象を意識させられ木場はチッと鋭く舌打ちをした。
「朝から元気だな、木場修。釣りは辞めて今日はしっぽり布団の中で過ごすか?」
にやりと口角を引き上げる榎木津にさらにもう一つ舌打ちをして木場は煎餅布団から起き上がった。
singsongrain
DOODLE勝手に落語シリーズ。時そば改変。関くんと京極、榎木場。
出来心時そば 一昨日辺りから蝉が鳴き始めた。そろそろ梅雨も明けるのだろう。
「京極堂、今日はこれをもらうよ。雪絵が読みたいと言っていた本だ」
近頃文壇を賑わわせている女性作家の本を死神もかくやと顰めっ面で和綴じの本を読んでいるこの古書店の主に見せると一瞥し、眼鏡に適ったのか読み止した本を置いて手を差しだした。
「いくらだい?」
「三十五円」
関口は草臥れた洋袴のポケットから紙幣と小銭を掻き出して掌に広げる。
「ひいふう、ああ、百円っきゃない。おつりをくれよ」
百円札を一枚、京極堂の本より重い物は持ったこともなさそうな薄っぺらな掌に乗せた。
「六十五円のおつりだがこちちらも生憎五十円札を切らしている。細かくても構わないね?」
3021「京極堂、今日はこれをもらうよ。雪絵が読みたいと言っていた本だ」
近頃文壇を賑わわせている女性作家の本を死神もかくやと顰めっ面で和綴じの本を読んでいるこの古書店の主に見せると一瞥し、眼鏡に適ったのか読み止した本を置いて手を差しだした。
「いくらだい?」
「三十五円」
関口は草臥れた洋袴のポケットから紙幣と小銭を掻き出して掌に広げる。
「ひいふう、ああ、百円っきゃない。おつりをくれよ」
百円札を一枚、京極堂の本より重い物は持ったこともなさそうな薄っぺらな掌に乗せた。
「六十五円のおつりだがこちちらも生憎五十円札を切らしている。細かくても構わないね?」