ぬのさと
DONE魔道祖師オンライン交流会6のペーパーラリー「蓮」で書いた、小さい頃の師姐のお話。聖女のような彼女も抑圧や鬱屈があったのかなと。
姉 私が思い出せる限りの昔から、私の両親は不仲でした。夜中に厠へ行こうと起きたとき、両親が云い争いをしている声が扉から漏れていて、暗い廊下をそれ以上は進めずにうずくまってしまったことがあります。ただ、そのころはまだ、子どもの前では喧嘩をしないという意識は、両親にもあったようです。父と母、バラバラでちぐはぐながら、どちらもにかわいがられた記憶もあります。
待望の江氏の嫡男として弟が産まれ、子はかすがいどころか、それにより両親の仲は決定的にこじれました。
元々、雲夢江氏と異なり、母の実家である眉山虞氏は身分による規律と権威を重視し、家風も、個人の気質も相容れません。母にそっくりな風貌の弟は、成長するにつれて性格も母とよく似ていることがわかり、両親の喧嘩も増えていきました。このころには、もはや親の喧嘩を子どもに隠すということすらしなくなりました。
1679待望の江氏の嫡男として弟が産まれ、子はかすがいどころか、それにより両親の仲は決定的にこじれました。
元々、雲夢江氏と異なり、母の実家である眉山虞氏は身分による規律と権威を重視し、家風も、個人の気質も相容れません。母にそっくりな風貌の弟は、成長するにつれて性格も母とよく似ていることがわかり、両親の喧嘩も増えていきました。このころには、もはや親の喧嘩を子どもに隠すということすらしなくなりました。
ちょりりん万箱
DONE始めます。若啓コンビの話。青蘅君の字や啓仁先生の名は全て捏造でございます。
温若寒の三男設定などなどもかなりの捏造です。
太陽と雲と①<一>
岐山の教化司で行われる清談会には、各地の仙門が集まっていた。
岐山温氏、蘭陵金氏、姑蘇藍氏、雲夢江氏、清河聶氏の五大世家を中心として仙門は形成される。
中でも長年仙門の長たる仙督を務める岐山温氏の力は絶大で、他の四家でさえ一歩退く程である。
それでも、四家が纏まれば岐山温氏に対抗しうる力になるために、温氏は四家を蔑ろにするわけにもいかず、その均衡は保たれていた。
まだ若い宗主というものが軽んじられる仙門において、姑蘇藍氏の宗主・青蘅君こと藍和同は穏やかな気質と端正な容姿、優雅な立ち振舞いから十七歳でありながら一目置かれていた。
堅苦しい家規が家訓石に刻まれた姑蘇藍氏の中で育ちながらも柔軟な思考と発想で宗主としての統率力も優れ、どの世代からも尊称で呼ばれるほどの人物だ。
5271岐山の教化司で行われる清談会には、各地の仙門が集まっていた。
岐山温氏、蘭陵金氏、姑蘇藍氏、雲夢江氏、清河聶氏の五大世家を中心として仙門は形成される。
中でも長年仙門の長たる仙督を務める岐山温氏の力は絶大で、他の四家でさえ一歩退く程である。
それでも、四家が纏まれば岐山温氏に対抗しうる力になるために、温氏は四家を蔑ろにするわけにもいかず、その均衡は保たれていた。
まだ若い宗主というものが軽んじられる仙門において、姑蘇藍氏の宗主・青蘅君こと藍和同は穏やかな気質と端正な容姿、優雅な立ち振舞いから十七歳でありながら一目置かれていた。
堅苦しい家規が家訓石に刻まれた姑蘇藍氏の中で育ちながらも柔軟な思考と発想で宗主としての統率力も優れ、どの世代からも尊称で呼ばれるほどの人物だ。
ちょりりん万箱
DONEMDZS交流会6にて無配したお話。夜狩り後に鬼ごっこする少年組と魏先輩😁
鬼事逃げろ
逃げろ
今宵の月は全てを照らし
明るく獲物を浮かび上がらせる
獲物の足元
暗い影はなりを潜め
この腕から逃げ出すことはできない
山の中を逃げ回った少年たちは、それぞれ地面に座ったり膝をついたりして、ゼエゼエと整わない呼吸と格闘していた。
「誰だよぉ…暴れ足りないなんて言った奴は………」
恨みがましく藍景儀が言うと一斉にみんなが、欧陽子真を指差した。
「私!? 違うよっ! 今日の夜狩りはあっさりでしたね、って魏先輩に言っただけだろ!?」
「そしたら、師叔が暴れ足りないのか? って言い出したんだ」
指差された欧陽子真が首と手を振りながら否定する。金如蘭がそれに付け加えてぼやいた。
「それで鬼ごっこしよう、ってところが魏先輩だね」
8781逃げろ
今宵の月は全てを照らし
明るく獲物を浮かび上がらせる
獲物の足元
暗い影はなりを潜め
この腕から逃げ出すことはできない
山の中を逃げ回った少年たちは、それぞれ地面に座ったり膝をついたりして、ゼエゼエと整わない呼吸と格闘していた。
「誰だよぉ…暴れ足りないなんて言った奴は………」
恨みがましく藍景儀が言うと一斉にみんなが、欧陽子真を指差した。
「私!? 違うよっ! 今日の夜狩りはあっさりでしたね、って魏先輩に言っただけだろ!?」
「そしたら、師叔が暴れ足りないのか? って言い出したんだ」
指差された欧陽子真が首と手を振りながら否定する。金如蘭がそれに付け加えてぼやいた。
「それで鬼ごっこしよう、ってところが魏先輩だね」
はるもん🌸
MOURNING今日も家訓をやぶって藍忘機に口づけをしている場所を発見してしまった藍啓仁。当初は同様で血を吐くほどだったが、もう見慣れて今はため息しか出ない。刹那、今は亡き江楓眠の言葉を思い出す。魏無羨はそういう人間なのだと。そんなことは藍啓仁には関係がない事だ。今日も彼は彼の正義のために説教をする――――――――。かわいい子には旅をさせろかわいい子には旅をさせろ。若い頃、国外から来た客人にそんなことわざがあると教わった。
弟子は皆可愛く思う。その中でも、藍忘機には才能を感じ、早くから様々な夜狩に向かわせた。
その結果、どうなったか。
丹精込めて育て上げ、特に気に入っていた弟子は得たいの知れない人間なのか魔なのかよくわからない奴に惑わされてしまった。未だに二人の仲をよくは思っていない。いつか藍忘機が魏無羨に飽きてくれればいいのにとさえ思っている。
しかしそんな日は来ないだろう事はわかっていた。
藍忘機の執着心は父親にソックリなのだ。
そしてもう一つ、藍啓仁は理解している事がある。表向きは魏無羨が藍忘機を惑わしたように見えるが、実際は違う。
魏無羨は昔から美しい女性が好きだったという噂はかねがね聞いていた。
847弟子は皆可愛く思う。その中でも、藍忘機には才能を感じ、早くから様々な夜狩に向かわせた。
その結果、どうなったか。
丹精込めて育て上げ、特に気に入っていた弟子は得たいの知れない人間なのか魔なのかよくわからない奴に惑わされてしまった。未だに二人の仲をよくは思っていない。いつか藍忘機が魏無羨に飽きてくれればいいのにとさえ思っている。
しかしそんな日は来ないだろう事はわかっていた。
藍忘機の執着心は父親にソックリなのだ。
そしてもう一つ、藍啓仁は理解している事がある。表向きは魏無羨が藍忘機を惑わしたように見えるが、実際は違う。
魏無羨は昔から美しい女性が好きだったという噂はかねがね聞いていた。
はるもん🌸
MOURNING※捏造設定おセッセしまくると相手に霊力が溜まるという設定ですが健全です
天賦の才――この体は弱い。そう、思っていた。
* * *
夜狩りの指導の際、魏無羨は琴を使って攻撃をするように指示をする機会がある。
実のところ魏無羨は藍家の琴が放つ攻撃の威力というのをいまいち把握していない。琴で衝撃波を放つ時の基本を知れば子供たちに何かいい助言をしてやれるかもしれないと魏無羨は考えた。
特にやることもなかったというのが一番の理由なのだが、琴の練習に付き合わせてほしいと藍啓仁に願い出てみた。自分の考えを伝えると、思っていたよりも簡単に同行の許可を得ることができた。「遊びではないぞ」と一言忠告は受けたが、理由があるのであればむやみに藍啓仁は魏無羨を邪険にはしない。
岩の上に琴を置いてポロロンと音を鳴らしてみる。美しい音色が響き、魏先輩は琴も弾けるんですね、などと褒められた。ふふんと魏無羨は鼻を高くするものの、皆のように重力を使った攻撃波を打つことができないので少し肩を落とす。
1945* * *
夜狩りの指導の際、魏無羨は琴を使って攻撃をするように指示をする機会がある。
実のところ魏無羨は藍家の琴が放つ攻撃の威力というのをいまいち把握していない。琴で衝撃波を放つ時の基本を知れば子供たちに何かいい助言をしてやれるかもしれないと魏無羨は考えた。
特にやることもなかったというのが一番の理由なのだが、琴の練習に付き合わせてほしいと藍啓仁に願い出てみた。自分の考えを伝えると、思っていたよりも簡単に同行の許可を得ることができた。「遊びではないぞ」と一言忠告は受けたが、理由があるのであればむやみに藍啓仁は魏無羨を邪険にはしない。
岩の上に琴を置いてポロロンと音を鳴らしてみる。美しい音色が響き、魏先輩は琴も弾けるんですね、などと褒められた。ふふんと魏無羨は鼻を高くするものの、皆のように重力を使った攻撃波を打つことができないので少し肩を落とす。
はるもん🌸
MOURNINGまだ魏無羨は弟子たちを引きつれたまま帰ってこない。泊まり込みになると聞いてはいた。魏無羨が不在になってから二日目の午後、気づけば魏無羨の事ばかり考えている。なかなか家業に集中できずにいる自分に気づき、冷泉で少し頭を冷やそうと考えた。冷泉に体を落とし、心が落ち着いてもやはり頭に魏無羨がよぎる。あの笑顔を思いだすと、自然と胸がじんわりとあたたまる。愛しい。そう思った時、一つの旋律が藍忘機に流れた―――藍忘機の鼻歌「…~♪」
魏無羨は耳を疑った。
(まさか藍湛の…鼻歌?!)
いてもたってもいられなくなった。彼は急いで服を脱ぎ、ザブンと冷泉に入る。
* * *
今回の夜狩りの監督は大変だった。新参者の姑蘇の弟子が複数いて、それぞれ腰を抜かしそうになったり手が震えるものがいたりしたのだ。
「俺が14歳だったころはもっと男らしかったぞ」などとぼやきながら静室に戻ろうとしていたその時、
曲がり角でばったりと藍思追と遭遇した。
「魏先輩」
「思追、どこにいくんだ?さっき帰ってきたばっかなんだからヘトヘトだろう。なんだその本の量」
「夜狩りでの魏先輩を見ていたら、まだまだだなと思いまして」
「それで、その量の本を今から読むのか?やめろやめろ。勉強なんて寝てからやれ」
1843魏無羨は耳を疑った。
(まさか藍湛の…鼻歌?!)
いてもたってもいられなくなった。彼は急いで服を脱ぎ、ザブンと冷泉に入る。
* * *
今回の夜狩りの監督は大変だった。新参者の姑蘇の弟子が複数いて、それぞれ腰を抜かしそうになったり手が震えるものがいたりしたのだ。
「俺が14歳だったころはもっと男らしかったぞ」などとぼやきながら静室に戻ろうとしていたその時、
曲がり角でばったりと藍思追と遭遇した。
「魏先輩」
「思追、どこにいくんだ?さっき帰ってきたばっかなんだからヘトヘトだろう。なんだその本の量」
「夜狩りでの魏先輩を見ていたら、まだまだだなと思いまして」
「それで、その量の本を今から読むのか?やめろやめろ。勉強なんて寝てからやれ」
はるもん🌸
MOURNING魏無羨がニヤニヤしながら嗅がせてきたのは、いつしか見た事のある見た目がおかしい香炉。眠る前から怪しい展開になるだろうことはわかっていたが、まさかこの時の夢を見るとは思わず、数回ほど藍忘機は目を瞬かせた。香炉 初めての口づけ―――これは、夢か。
魏無羨が目隠しをしたまま笛を吹いている。自分はそれを眩しそうに見ていた。どうせ気づかれない、気づかれてもこれは夢。そう思い、藍忘機は昔と同じように木の上にいる魏無羨の元へと足を運ばせた。いつしかの夜狩りの帰りに、見知らぬ夫婦が木陰で深い口づけをしているのを見かけた。
好きなもの同士なら、ああやって愛し合うのかと学んだ。
そして魏無羨と同じ事がしたいという欲を感じた。
魏無羨に初めて口づけをしかけた時、あの夫婦のそれを真似た。目を隠しをしたまま的(マト)に矢を放った時の魏無羨は本当に美しく見えた。あれは私のもだと印をつけたくなるほどに。
笛の音が聞こえた瞬間、霊獣を狩る事よりも魏無羨の傍にいたいという欲求が強まった。そっと遠くから眺めるつもりだったが、風を感じて気持ち良さそうにしている無防備な彼を目前に我慢をする事ができなかった。もうすでに自分たちは道侶。今襲わなくても毎晩これでもかと愛し合っている。しかしこの瞬間、藍忘機はあの時の劣情がまざまざと蘇り、気づけば彼の手首を抑えて口づけていた。それも無理やり。
1378魏無羨が目隠しをしたまま笛を吹いている。自分はそれを眩しそうに見ていた。どうせ気づかれない、気づかれてもこれは夢。そう思い、藍忘機は昔と同じように木の上にいる魏無羨の元へと足を運ばせた。いつしかの夜狩りの帰りに、見知らぬ夫婦が木陰で深い口づけをしているのを見かけた。
好きなもの同士なら、ああやって愛し合うのかと学んだ。
そして魏無羨と同じ事がしたいという欲を感じた。
魏無羨に初めて口づけをしかけた時、あの夫婦のそれを真似た。目を隠しをしたまま的(マト)に矢を放った時の魏無羨は本当に美しく見えた。あれは私のもだと印をつけたくなるほどに。
笛の音が聞こえた瞬間、霊獣を狩る事よりも魏無羨の傍にいたいという欲求が強まった。そっと遠くから眺めるつもりだったが、風を感じて気持ち良さそうにしている無防備な彼を目前に我慢をする事ができなかった。もうすでに自分たちは道侶。今襲わなくても毎晩これでもかと愛し合っている。しかしこの瞬間、藍忘機はあの時の劣情がまざまざと蘇り、気づけば彼の手首を抑えて口づけていた。それも無理やり。
はるもん🌸
MOURNING金丹の核を生み出す秘術が藍家にあるif「生まれ生まれて死に死に死んでいゆく。そうやって人は転生していくんだ。俺が万が一死んでも、それは天命って事で受け入れるよ」
含光君×夷陵老祖「姑蘇へ帰ろう。そうすれば、君の体の…」
藍忘機が最後まで言い終わる前に、魏無羨は言う。
「生まれ生まれて死に死に死んでいゆく。そうやって人は転生していくんだ。俺が万が一死んでも、それは天命って事で受け入れるよ」
邪に侵された者の末路は死。藍忘機は魏無羨が魔に魅入られないよう、親切にも姑蘇で清心音を奏でると毎日言いに来てくれるのだ。はじめのうちは金丹を無くした情けない自分を知られたくなくて突き放していた。しかしこうして頻繁に藍忘機が来てくれる事から、だんだんと彼に心を許すようになっていった
「藍湛、俺さ、金丹が無いんだ」
「…?」
藍忘機になら、もうすべて言ってもいいと思った。話し終わったあと、藍忘機は目を閉じ、きつく眉を寄せていた。
1146藍忘機が最後まで言い終わる前に、魏無羨は言う。
「生まれ生まれて死に死に死んでいゆく。そうやって人は転生していくんだ。俺が万が一死んでも、それは天命って事で受け入れるよ」
邪に侵された者の末路は死。藍忘機は魏無羨が魔に魅入られないよう、親切にも姑蘇で清心音を奏でると毎日言いに来てくれるのだ。はじめのうちは金丹を無くした情けない自分を知られたくなくて突き放していた。しかしこうして頻繁に藍忘機が来てくれる事から、だんだんと彼に心を許すようになっていった
「藍湛、俺さ、金丹が無いんだ」
「…?」
藍忘機になら、もうすべて言ってもいいと思った。話し終わったあと、藍忘機は目を閉じ、きつく眉を寄せていた。
はるもん🌸
MOURNING散歩してたら運命の相手を発見した魏嬰とその運命の相手、藍湛との恋の始まりのお話。※魏嬰が犬克服してます注意
転生後の彼ら 天気の良い昼下がり。まだ朝早くではあるが、今日も夷陵の公園には人が集まる。ある人はコーヒーを片手に森林のような木々を眺めて歩き、またある人は柔らかい芝生の上にシートを敷いて寝そべっている。実に気持ち良さそうだ。
夷陵の公園は広い。端から端まで歩くと1時間はかかる広さだ。ペットのお散歩にはもってこい。そこに髪を高く結った、活発そうな美青年が歩いている。そして彼と共に歩いてるのは真っ白なチワワ。道行く人、犬、鳥などに見境なくキャンキャンと吠えている。
「こら~、江澄、そこの犬が怯えてるだろ。吠えるのヤメロって」
江澄の頭を撫でてなだめてやる。すると、まだグルル…とは唸るものの、大人しくなった。
「そうそう。良い子にしてな」
4280夷陵の公園は広い。端から端まで歩くと1時間はかかる広さだ。ペットのお散歩にはもってこい。そこに髪を高く結った、活発そうな美青年が歩いている。そして彼と共に歩いてるのは真っ白なチワワ。道行く人、犬、鳥などに見境なくキャンキャンと吠えている。
「こら~、江澄、そこの犬が怯えてるだろ。吠えるのヤメロって」
江澄の頭を撫でてなだめてやる。すると、まだグルル…とは唸るものの、大人しくなった。
「そうそう。良い子にしてな」
はるもん🌸
MOURNING金凌が生き埋めになって助かった直後、江澄につかまった魏嬰がもし逃げるのに藍湛を利用してたらif 実は俺、含光君と親しい仲なんだ「俺は莫玄羽だ。魏無羨なんかじゃないし、それに藍湛ととっても親しい仲だ。お前がもし俺を殺せば藍湛が黙ってないぞ。藍家と江家の戦争が始まるかもな?」
江澄はまるきり無視は出来なかった。なぜなら莫玄羽…魏無羨に対する藍忘機の態度に、異様なものを感じ取っていたからだ。
「いいだろう。証明できるなら、その話信じてやってもいい」
すぐに江家の門弟を使い藍忘機を呼び寄せた。経緯を説明し、状況を理解した藍忘機は頷いた。
「藍の二の若様が嘘をつけない事は承知している。さて藍忘機、本当にその男と恋仲なのか。答えろ!」
江澄の荒々しい怒声に、魏無羨はあきらめとも似た笑いを浮かべる。
「…恋仲ではない」
江澄は勝ち誇ったように魏無羨を見る。魏無羨もわかっていた。藍忘機が嘘をつけない事くらい。
1009江澄はまるきり無視は出来なかった。なぜなら莫玄羽…魏無羨に対する藍忘機の態度に、異様なものを感じ取っていたからだ。
「いいだろう。証明できるなら、その話信じてやってもいい」
すぐに江家の門弟を使い藍忘機を呼び寄せた。経緯を説明し、状況を理解した藍忘機は頷いた。
「藍の二の若様が嘘をつけない事は承知している。さて藍忘機、本当にその男と恋仲なのか。答えろ!」
江澄の荒々しい怒声に、魏無羨はあきらめとも似た笑いを浮かべる。
「…恋仲ではない」
江澄は勝ち誇ったように魏無羨を見る。魏無羨もわかっていた。藍忘機が嘘をつけない事くらい。
はるもん🌸
MOURNING魏嬰先生のお話。 魏嬰先輩の講義「思追、自分の長所を一つあげてみろ」
「!」
魏無羨が講義をしていると聞いた。夜狩りから戻ってきてすぐ入った情報だ。
一体何を教えているのかは知らないが、魏無羨が教える事なら役に立つ情報のはずである。
もうすでに講義は始まっていた為、邪魔にならないよう音を立てずに後ろの席に座った。そして気づいた魏無羨は部屋に入ってきたばかりの藍思追に自分の長所を言えと指示をしてきたのである。
「えぇっと…」
立ち上がり、それなりの回答をしなければと頭を巡らすも、なかなか答えられない。
いつもは質問にすぐに答える事ができる藍思追だが、この質問は魏無羨が思った通り藍思追には難しいようだ。
「どうした?謙虚にならなくていいぞ。これは授業なんだから。言わないと話が進まない」
1461「!」
魏無羨が講義をしていると聞いた。夜狩りから戻ってきてすぐ入った情報だ。
一体何を教えているのかは知らないが、魏無羨が教える事なら役に立つ情報のはずである。
もうすでに講義は始まっていた為、邪魔にならないよう音を立てずに後ろの席に座った。そして気づいた魏無羨は部屋に入ってきたばかりの藍思追に自分の長所を言えと指示をしてきたのである。
「えぇっと…」
立ち上がり、それなりの回答をしなければと頭を巡らすも、なかなか答えられない。
いつもは質問にすぐに答える事ができる藍思追だが、この質問は魏無羨が思った通り藍思追には難しいようだ。
「どうした?謙虚にならなくていいぞ。これは授業なんだから。言わないと話が進まない」
あんとろ
DONEはやて丸さんのイラストを勝手にお借りして、短いですが文章を添えさせて頂きました。 しんみりほっこり有難うございます💕2022/1/14(7/4移設)
君が居ないと寂しい「あ~寒い」
両手を擦り合わせ、口元に持って行くとはあ~と息を吹きかける。ほんのり温まった手を揉みながら空を見た。
白い粉雪が降りてくるのに、また息を吐く。水蒸気となって霧散する様子に、身を震わせた。
「雪か」
どおりで寒い訳だ。
「早く帰らないと」
藍湛が心配する。今日は一人で麓の彩衣鎮へと下りて来ていた。本当は二人で出かける予定であったが、仙督に急な仕事が入ってしまい流れてしまった。藍湛は心底すまなそうな表情でいたが、俺は笑って言った。
「いいよ。気にするな、また日を改めて一緒に行こう」
手を振って藍湛を見送った。
「さて」
一人になってしまったなと思い、今日一日何をして過ごそうかと思案する。久々の二人の時間に、一人での過ごし方は考えていなかった。
1439両手を擦り合わせ、口元に持って行くとはあ~と息を吹きかける。ほんのり温まった手を揉みながら空を見た。
白い粉雪が降りてくるのに、また息を吐く。水蒸気となって霧散する様子に、身を震わせた。
「雪か」
どおりで寒い訳だ。
「早く帰らないと」
藍湛が心配する。今日は一人で麓の彩衣鎮へと下りて来ていた。本当は二人で出かける予定であったが、仙督に急な仕事が入ってしまい流れてしまった。藍湛は心底すまなそうな表情でいたが、俺は笑って言った。
「いいよ。気にするな、また日を改めて一緒に行こう」
手を振って藍湛を見送った。
「さて」
一人になってしまったなと思い、今日一日何をして過ごそうかと思案する。久々の二人の時間に、一人での過ごし方は考えていなかった。
春をなでる
DONE🌟交流会6についてのお礼🌟主催者さまと作品を見せてくださった方々、見てくださった方々にこの場をお借してお礼申し上げます。ありがとうございました。
また交流会参加できますこと楽しみにしております。
HARU
西村ルル
PROGRESS⚠️魏無羨女体化注意⚠️pixivで公開中の『藍忘機少年はそれを我慢できない 前編~問題児の秘密~』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17621574の後編の進行状況です。
ここから先がなかなか進みません😭 1405
西村ルル
CAN’T MAKE⚠️藍忘機女体化注意⚠️ちょっとマニア向き?なバンドAU。
わかる人にしかわからん専門用語だらけですみません。
いつか書きたいけどいまは書けない😂
清楚なお嬢様バンギャ藍忘機♀(ふたなり)×コテコテV系バンドのヴォーカル魏無羨♂(童貞)
※バンギャ=V系バンドファンの女性。
※繋がり=バンドマンと個人的に繋がってる人。
※狙いギャ=繋がりたくてバンドマンを狙う人。 1848
enbi1024
DONEpixivから転載。MDZS交流会5でネップリにしていたものです。魏嬰の誕生日の話。「お前に呪いをくれてやる」と同一軸です。
散々な一日 バタバタと誰かが走る音がする。緊急事態だろうか。寝そべりながら書を眺めていた魏無羨は、あまりの慌ただしさに身を起こしながら気を引き締めた。「廊下は走るべからず」の家規に則って、藍氏の者はよほどのことでも走らない。それがこんなにも音を立てて走っているのだから、きっととんでもないことが起こっているのだろう。こちらに向かってきているであろう弟子の姿を想像しながら、魏無羨は険しい顔つきで扉を引いた。
そこには確かに姑蘇藍氏の校服を纏った人物がいたけれど、今はいるはずのない人物が立っていた。
「藍湛」
仙門百家で行われる夜狩に監督役として参加するため、藍忘機は明日まで不在のはずだ。どうしてと思い、それほどの緊急事態なのかと息を飲む。普段、夫夫で睦み合う時以外は髪一つ乱すことがないのに、今は息が乱れているし抹額も心なしか曲がっている。どれだけの邪祟が現れたらこんなにも取り乱した様相になるのだろう。何を言われても驚かないという覚悟をもって藍忘機からの言葉を待つ。
3565そこには確かに姑蘇藍氏の校服を纏った人物がいたけれど、今はいるはずのない人物が立っていた。
「藍湛」
仙門百家で行われる夜狩に監督役として参加するため、藍忘機は明日まで不在のはずだ。どうしてと思い、それほどの緊急事態なのかと息を飲む。普段、夫夫で睦み合う時以外は髪一つ乱すことがないのに、今は息が乱れているし抹額も心なしか曲がっている。どれだけの邪祟が現れたらこんなにも取り乱した様相になるのだろう。何を言われても驚かないという覚悟をもって藍忘機からの言葉を待つ。
enbi1024
DONEpixivから転載。本人と江澄だけが知っている魏嬰の生まれた日の話。忘羨ベースの江澄視点。
お前に呪いをくれてやる「明日は道侶殿の誕生日だろう? 道侶思いの貴殿のことだから、当日に祝いたいに違いないと思ったんだが。違うのか?」
色の白い肌がいつにも増して白くなっていく。江澄の目の前にいる男は、初対面の人間でも一目で顔色が悪いとわかるほどにみるみる青ざめていった。いつも余裕綽々な顔をしている人物のらしくない姿に、ほんの少し胸がスッとする。精々慌てふためいて、右往左往すればいい。道侶になったことに浮かれているからこんなことになるのだ。
これは八つ当たりだ。人の気も知らないで幸せな毎日を過ごしているくせに、肝心なところをひた隠しにしようとしている愚か者への、ほんのささやかな嫌がらせ。
(精々肩身の狭い思いをするんだな)
8825色の白い肌がいつにも増して白くなっていく。江澄の目の前にいる男は、初対面の人間でも一目で顔色が悪いとわかるほどにみるみる青ざめていった。いつも余裕綽々な顔をしている人物のらしくない姿に、ほんの少し胸がスッとする。精々慌てふためいて、右往左往すればいい。道侶になったことに浮かれているからこんなことになるのだ。
これは八つ当たりだ。人の気も知らないで幸せな毎日を過ごしているくせに、肝心なところをひた隠しにしようとしている愚か者への、ほんのささやかな嫌がらせ。
(精々肩身の狭い思いをするんだな)
enbi1024
DONEMDZS交流会6展示物です。後日pixivにもUPします。原作後、江澄がひょんなことから魏嬰と共闘する話。
変わったもの 変わらないもの いつ来ても変わらない清廉な空気を肌で感じながら、江澄は周囲の景色を見回した。
いつ来ても静かで、動植物の気配しか感じられない場所だ。それこそ、若い時の記憶から一寸も変わっていないように見える。一度焼けてしまったものを建て直したはずだが変化のない並びはとてもその様に見えない。
宗主として江澄は雲深不知処を訪れていた。いつもは苛々しながら用事を終えるのだが、今日は比較的穏やかな心持ちでいる。苛立ちの原因である含光君と顔を合わせていないためだ。忙しいのか不在なのか、どちらかは知らないが好都合である。あの男に関わると不愉快な思いしかしないのだから。
一方で、ひょっとしたら顔を合わせた方が良かったのかもしれないとも思う。気持ちに余裕があったらあったで、要らぬことを考える。それだけここは因縁の場所だ。
9855いつ来ても静かで、動植物の気配しか感じられない場所だ。それこそ、若い時の記憶から一寸も変わっていないように見える。一度焼けてしまったものを建て直したはずだが変化のない並びはとてもその様に見えない。
宗主として江澄は雲深不知処を訪れていた。いつもは苛々しながら用事を終えるのだが、今日は比較的穏やかな心持ちでいる。苛立ちの原因である含光君と顔を合わせていないためだ。忙しいのか不在なのか、どちらかは知らないが好都合である。あの男に関わると不愉快な思いしかしないのだから。
一方で、ひょっとしたら顔を合わせた方が良かったのかもしれないとも思う。気持ちに余裕があったらあったで、要らぬことを考える。それだけここは因縁の場所だ。
春之助
MOURNING魏嬰が猫のように死に際に姿を消すお話し私の2021年11月22日のメモ帳に残ってたお話なんだけど、続きがなくて誰か知らない??これ壁打ちしてたとかあるのかな……、あまりにも記憶が無い、、
猫ってすごくすごく可愛いよね魏嬰が猫のように死に際に姿を消すお話し
魏嬰のコロコロ変わる表情にいつしか笑い皺が増えた。髪は綺麗な白銀を宿し、赤と黒の若々しさは無くなった。人を揶揄う言動は変わらないのに、声は落ち着き、目には慈愛を含んでいた。共に過ごしてもう何十年も経っているのだと愛しい月日に思いを馳せた。
彼の変わっていく新しい姿に毎日のように愛しさが増していく。しかし、その新しい姿は次第に寿命を感じさせていった。 歳を重ねてもお酒好きは変わらなかったが、飲む量は格段に減っていた。天天と言った行為も彼の負担が大きかったから徐々に減りいつしか無くなった。食事も姑蘇の食事をよく食べるようになり、私が用意する事は減っていった。魏嬰は自分でやらなきゃ身体が鈍るのだと、私に世話を妬かせる事を拒否するようになった。
4651魏嬰のコロコロ変わる表情にいつしか笑い皺が増えた。髪は綺麗な白銀を宿し、赤と黒の若々しさは無くなった。人を揶揄う言動は変わらないのに、声は落ち着き、目には慈愛を含んでいた。共に過ごしてもう何十年も経っているのだと愛しい月日に思いを馳せた。
彼の変わっていく新しい姿に毎日のように愛しさが増していく。しかし、その新しい姿は次第に寿命を感じさせていった。 歳を重ねてもお酒好きは変わらなかったが、飲む量は格段に減っていた。天天と言った行為も彼の負担が大きかったから徐々に減りいつしか無くなった。食事も姑蘇の食事をよく食べるようになり、私が用意する事は減っていった。魏嬰は自分でやらなきゃ身体が鈍るのだと、私に世話を妬かせる事を拒否するようになった。
Kk_moon2307
PROGRESSMDZS交流会6開催おめでとうございます!せっかくスペースいただいたのに……途中で申し訳ないです……。
ギリギリにならないと動けない自分が恨めしい(>_<)
★現代AU?になります。
現状は全年齢対象ですが、出来上がりはR18になりますのでご了承ください。
忘羨なのに藍湛が登場していないので、なるべく早く仕上げたいと思います。 2368
ivy_orchid_mdzs
DONE「同じ地獄なら」魔道祖師オンライン交流会6展示用漫画。
献舎してすぐくらいの忘羨です。
好きな子を毎晩自分の体の上に乗せて眠るって結構な地獄なのでは?と思って描きました🥺 我慢できた藍忘機( *ˊᵕˋ)ノˊᵕˋ*) エライエライ
8ページ。全年齢です🎶 8
ivy_orchid_mdzs
MAIKING18歳未満閲覧禁止‼️🔞(高校生不可)含光君×夷陵老祖漫画24ページ。
「追憶」(前編)
終始暗い🥺🙏
後編はハピエンで終わります!
後編⇒ https://poipiku.com/3976889/7877660.html
pass:成人済み18↑?(yes/no) 24
ちょりりん万箱
DONEこの日夏の暑さを通り越した雲夢は、秋の実りに恵まれて賑わっていた。
蓮花塢の前の埠頭はその実りを商売する物売りとそれを求める人々で溢れかえり、一年で一番の人出になる。
「かぼちゃはどうかね~!!」
「美味しい大根は今年の初物だよー!!」
「柿、栗ありますよ~!」
道いく人々に商売人たちの呼び込みの声がかけられ、人々は手に品物を抱えては家路につく。
だが、秋のある期間だけは物売りだけでなく人が溢れかえる理由がもう1つあった。
大量の荷を載せた船が何艚もやってきて、船を埠頭に停め蓮花塢に船頭が走る。しばらくして江氏の弟子たちが積まれた荷を見にやってきて何個か小さな書簡を手にしたら、船は荷を載せたまま埠頭を離れる。
それが何回か繰り返されるのだ。
6691蓮花塢の前の埠頭はその実りを商売する物売りとそれを求める人々で溢れかえり、一年で一番の人出になる。
「かぼちゃはどうかね~!!」
「美味しい大根は今年の初物だよー!!」
「柿、栗ありますよ~!」
道いく人々に商売人たちの呼び込みの声がかけられ、人々は手に品物を抱えては家路につく。
だが、秋のある期間だけは物売りだけでなく人が溢れかえる理由がもう1つあった。
大量の荷を載せた船が何艚もやってきて、船を埠頭に停め蓮花塢に船頭が走る。しばらくして江氏の弟子たちが積まれた荷を見にやってきて何個か小さな書簡を手にしたら、船は荷を載せたまま埠頭を離れる。
それが何回か繰り返されるのだ。
ちょりりん万箱
DONE師叔と甥の誕生日 鍛練場に姿を現した江晩吟はいつもと違うその場の空気に固まる。
本来なら弟子たちが規則正しく並び、剣の鍛練に勤しんでいるはずなのに、真ん中に集まるように人だかりになっているのは、何だ?
「へえ~、今はそんなのが流行りなのか」
「こんなのもあるんですよ」
そこでは楽しそうで賑かな声が響く。
誰も江晩吟に気づかない。
「やはり、雲夢だなぁ!流行りものがすぐにわかる!」
一際大きく聞こえてきた声は耳に馴染んだ高さと口調で、その声の主を江晩吟はよく知っていた。
みるみる江晩吟の眦がつり上がり、眉間に深い深い皺が刻まれた。
そのまま大股で人だかりに近寄った江晩吟は腰に手を当て息を大きく吸う。
「魏無羨!!貴様、こんな所で何してる!!」
11938本来なら弟子たちが規則正しく並び、剣の鍛練に勤しんでいるはずなのに、真ん中に集まるように人だかりになっているのは、何だ?
「へえ~、今はそんなのが流行りなのか」
「こんなのもあるんですよ」
そこでは楽しそうで賑かな声が響く。
誰も江晩吟に気づかない。
「やはり、雲夢だなぁ!流行りものがすぐにわかる!」
一際大きく聞こえてきた声は耳に馴染んだ高さと口調で、その声の主を江晩吟はよく知っていた。
みるみる江晩吟の眦がつり上がり、眉間に深い深い皺が刻まれた。
そのまま大股で人だかりに近寄った江晩吟は腰に手を当て息を大きく吸う。
「魏無羨!!貴様、こんな所で何してる!!」
ちょりりん万箱
DONE羅星の下キラキラと春の夜空に星が瞬く。
「う~、さぶっ!」
藍景儀は垂れてきた鼻水をすすりながら、外套を着込むと焚き火の前に座った。
春になったとはいえ、まだ夜は冷える。
特に野外は校服の上に厚手の外套を1枚羽織らなければ、野宿などできない。
「この時期に野外訓練しようなんて提案したのは誰だ?」
「魏先輩だね」
藍景儀の責めるような声に藍思追は返した。
言い出した本人は、ほかの焚き火に分かれて座る弟子たちの所を1つ1つ訪ねては、会話をしていた。
『野宿しよう!んんっ?これだと藍先生から許可が下りないか。ん~……野外訓練だな!』
思い立ったように魏無羨が言い出した話。
『天幕を張ってその中に泊まる。食事は現地調達。焚き火の前で語ろうぜ~』
6617「う~、さぶっ!」
藍景儀は垂れてきた鼻水をすすりながら、外套を着込むと焚き火の前に座った。
春になったとはいえ、まだ夜は冷える。
特に野外は校服の上に厚手の外套を1枚羽織らなければ、野宿などできない。
「この時期に野外訓練しようなんて提案したのは誰だ?」
「魏先輩だね」
藍景儀の責めるような声に藍思追は返した。
言い出した本人は、ほかの焚き火に分かれて座る弟子たちの所を1つ1つ訪ねては、会話をしていた。
『野宿しよう!んんっ?これだと藍先生から許可が下りないか。ん~……野外訓練だな!』
思い立ったように魏無羨が言い出した話。
『天幕を張ってその中に泊まる。食事は現地調達。焚き火の前で語ろうぜ~』
ちょりりん万箱
DONE紙銭静室の庭から白い煙が筋のように伸びて空に舞い上がっている。
焚き火をしているのかと、藍忘機は影竹堂の門を潜り足を止めた。
庭に小さく枯れ葉を積み上げたその焚き火の前に黒い背中が立ち、何かを焚き火に入れている。
入れられた物はすぐに火がつくと焚き火の風に押し上げられ、煙と一緒に空に舞う。
それをじっと見つめる道侶の横顔を焚き火の灯りが浮き上がらせた。その表情がどこか寂しげで儚げで、藍忘機は声をかけるべきか迷った。
「あ、おかえり~」
先に藍忘機に気づきこちらを向いた魏無羨に先程の表情はない。
ざりっと足音を立てて藍忘機は焚き火に近寄ると足元にある紙銭に視線が行った。焼いていたのはこれかと藍忘機は1枚を拾い上げ、そのまま魏無羨を見れば、苦笑いを浮かべている。
2821焚き火をしているのかと、藍忘機は影竹堂の門を潜り足を止めた。
庭に小さく枯れ葉を積み上げたその焚き火の前に黒い背中が立ち、何かを焚き火に入れている。
入れられた物はすぐに火がつくと焚き火の風に押し上げられ、煙と一緒に空に舞う。
それをじっと見つめる道侶の横顔を焚き火の灯りが浮き上がらせた。その表情がどこか寂しげで儚げで、藍忘機は声をかけるべきか迷った。
「あ、おかえり~」
先に藍忘機に気づきこちらを向いた魏無羨に先程の表情はない。
ざりっと足音を立てて藍忘機は焚き火に近寄ると足元にある紙銭に視線が行った。焼いていたのはこれかと藍忘機は1枚を拾い上げ、そのまま魏無羨を見れば、苦笑いを浮かべている。
ちょりりん万箱
DONE側にまた、何か考えているな。
雲深不知処の面々は、魏無羨のうきうきした様子を見ながら底知れない恐怖を感じていた。
やたらと機嫌が良い時ほど要注意というのは経験から皆知っている。
今日も鼻歌混じりで雲深不知処を歩く魏無羨を誰もが遠巻きに見ていた。
そしてこれも皆知っている。
こんな時には近寄らない方が騒動に巻き込まれないーーー
おや?と藍思追の足が止まる。
出入りの商人達が集まる部屋の中に、一際目立つ黒い服に目が行った。
いつになく真剣に商人と座り込んで話し込む姿は間違いなく敬愛する魏無羨。
藍思追はこの部屋で魏無羨を今まで見かけたことがなく珍しいと考えて、はたと朋輩から聞いた話を思い出した。
『魏先輩、また何か企んでいる』
7779雲深不知処の面々は、魏無羨のうきうきした様子を見ながら底知れない恐怖を感じていた。
やたらと機嫌が良い時ほど要注意というのは経験から皆知っている。
今日も鼻歌混じりで雲深不知処を歩く魏無羨を誰もが遠巻きに見ていた。
そしてこれも皆知っている。
こんな時には近寄らない方が騒動に巻き込まれないーーー
おや?と藍思追の足が止まる。
出入りの商人達が集まる部屋の中に、一際目立つ黒い服に目が行った。
いつになく真剣に商人と座り込んで話し込む姿は間違いなく敬愛する魏無羨。
藍思追はこの部屋で魏無羨を今まで見かけたことがなく珍しいと考えて、はたと朋輩から聞いた話を思い出した。
『魏先輩、また何か企んでいる』
ちょりりん万箱
DONEりんごといっしょさらさらと清い水が流れ、緑の木々に囲まれた雲深不知処。
その中のかなり奥まった場所に第二公子が大事に大事に世話をしているウサギたちがいる。
第二公子だけでなく弟子たちもかいがいしく世話をしているが、最近そこに全く種類の違う動物が紛れ込んでいた。
「りんごちゃん、ここにいたか〰️」
大きな耳に黒い体毛のロバは声の主をちらっと見ただけで、川べりに佇み再び草を食む。
「久々に小屋に行ったら居ないから心配したぞ~。思追に聞いたらウサギたちの所だって言うからさ」
足場の岩をひょいひょいと飛び越えて、魏無羨はロバの側に立った。だが、ロバは魏無羨を見ない。
「おいおい、無視するなよ。せっかくいいもの持ってきたのに」
魏無羨は真っ赤な実を2つ取り出した。
9476その中のかなり奥まった場所に第二公子が大事に大事に世話をしているウサギたちがいる。
第二公子だけでなく弟子たちもかいがいしく世話をしているが、最近そこに全く種類の違う動物が紛れ込んでいた。
「りんごちゃん、ここにいたか〰️」
大きな耳に黒い体毛のロバは声の主をちらっと見ただけで、川べりに佇み再び草を食む。
「久々に小屋に行ったら居ないから心配したぞ~。思追に聞いたらウサギたちの所だって言うからさ」
足場の岩をひょいひょいと飛び越えて、魏無羨はロバの側に立った。だが、ロバは魏無羨を見ない。
「おいおい、無視するなよ。せっかくいいもの持ってきたのに」
魏無羨は真っ赤な実を2つ取り出した。
ちょりりん万箱
DONE稀月「なんか、凄くないか?俺の誕生日が満月で、それも今月2回目の満月だなんて」
魏無羨が露縁に立ち、手を拡げてうーんと背伸びをする。
山奥の冷え冴えた空気の中に煌々と照る満月。
竹林の中にある静室は、雲深不知処の中でも隔離された場所にあり、夜になると人の気配は魏無羨と室の主である藍忘機のものしかない。
「稀にそんな月もあるらしい」
露縁に出した卓の上で、自分の杯には熱い茶を、魏無羨の杯には酒を注ぎながら藍忘機は答えた。
「稀ってどのくらい?」
「3年弱に1度だったと、記憶している」
藍忘機の持つ杯から細く白い湯気が上がり茶の香りが辺りに広がる。
「へえ~、その3年に1度に俺の誕生日が当たったのか!おまけにこんなに天気も良くてお月見日和。これは俺の日頃の行いがいいからだな!」
1617魏無羨が露縁に立ち、手を拡げてうーんと背伸びをする。
山奥の冷え冴えた空気の中に煌々と照る満月。
竹林の中にある静室は、雲深不知処の中でも隔離された場所にあり、夜になると人の気配は魏無羨と室の主である藍忘機のものしかない。
「稀にそんな月もあるらしい」
露縁に出した卓の上で、自分の杯には熱い茶を、魏無羨の杯には酒を注ぎながら藍忘機は答えた。
「稀ってどのくらい?」
「3年弱に1度だったと、記憶している」
藍忘機の持つ杯から細く白い湯気が上がり茶の香りが辺りに広がる。
「へえ~、その3年に1度に俺の誕生日が当たったのか!おまけにこんなに天気も良くてお月見日和。これは俺の日頃の行いがいいからだな!」
ちょりりん万箱
DONE寸話「あ、ありがとうございました……」
ちらりちらりと自分たちの後ろに向けられる視線に藍氏の弟子たちはさもありなんと皆、苦笑した。
この場に漂う異臭。
その異臭を放つ存在が自分たちの後ろにある。というか、いる。
「いえ、これで怪異もおさまるでしょう」
藍思追が丁寧に言うと明らかにほっとした屋敷の当主は藍氏の仙師ににっこりと笑った。
「些少ではございますが、皆様、お食事を用意してございます。よろしければ……」
主の言葉が詰まったのはしょうがないだろう。
異臭を放つ存在が家の中に入ってしまったらと考えるのは当然だ。
「あ、いえ、お気づかいなく」
藍思追は辞退しようとそう答えた。
当主の3人の娘たちは、姑蘇藍氏の若い見目麗しい仙師たちに声をかけたくて、柱の陰からこちらに熱い視線を向けている。
4142ちらりちらりと自分たちの後ろに向けられる視線に藍氏の弟子たちはさもありなんと皆、苦笑した。
この場に漂う異臭。
その異臭を放つ存在が自分たちの後ろにある。というか、いる。
「いえ、これで怪異もおさまるでしょう」
藍思追が丁寧に言うと明らかにほっとした屋敷の当主は藍氏の仙師ににっこりと笑った。
「些少ではございますが、皆様、お食事を用意してございます。よろしければ……」
主の言葉が詰まったのはしょうがないだろう。
異臭を放つ存在が家の中に入ってしまったらと考えるのは当然だ。
「あ、いえ、お気づかいなく」
藍思追は辞退しようとそう答えた。
当主の3人の娘たちは、姑蘇藍氏の若い見目麗しい仙師たちに声をかけたくて、柱の陰からこちらに熱い視線を向けている。
ちょりりん万箱
DONE誕辰藍氏双璧は、黙った。
「……何、その無言の反応」
腰に手を当てて、仁王立ちする魏無羨が目を細める。
「疑ってるのか?」
魏無羨の低い声に藍忘機はゆっくりと首を振る。
「疑ってはいない。信じられないだけ」
「それを疑っているというんだ、藍湛」
びしっ、と人差し指で藍忘機を指した魏無羨はふん、と鼻息荒く告げる。
「この思念紙人形、名付けて『気持ちわかる君』は凄いんだぞ!!」
その名前からいって怪しいのだ、と藍忘機の目が訴えている。藍曦臣に至っては無言のまま、笑顔だ。
「久々の俺の発明品!これをぺたりと貼れば、その物に残っている思念を20秒だけ、語ってくれる紙人形だ!」
じゃーんと見せられた紙人形には赤い色で書かれた呪文と顔の真ん中に口が描いてある。
3294「……何、その無言の反応」
腰に手を当てて、仁王立ちする魏無羨が目を細める。
「疑ってるのか?」
魏無羨の低い声に藍忘機はゆっくりと首を振る。
「疑ってはいない。信じられないだけ」
「それを疑っているというんだ、藍湛」
びしっ、と人差し指で藍忘機を指した魏無羨はふん、と鼻息荒く告げる。
「この思念紙人形、名付けて『気持ちわかる君』は凄いんだぞ!!」
その名前からいって怪しいのだ、と藍忘機の目が訴えている。藍曦臣に至っては無言のまま、笑顔だ。
「久々の俺の発明品!これをぺたりと貼れば、その物に残っている思念を20秒だけ、語ってくれる紙人形だ!」
じゃーんと見せられた紙人形には赤い色で書かれた呪文と顔の真ん中に口が描いてある。