yomoya_32
DOODLE壮年月鯉 閣下のお髭ムスターシュ さりさりと、顎や口元をくすぐられる感覚に目がさめた。
視界に広がったのは、真っ白な光を後ろに背負った、私のおとこ。
穏やかな目つきでじっとこちらを見つめながら、指先でずっと髭をなぞっている。
「おはようございます。鯉登さん」
生まれたばかりの陽光が差し込み、耳を澄ませば鳥のさえずりでも聞こえてきそうな、部屋にはそんな清々しさが満ちていた。
「おはよう」
返事をして目を閉じると、へいたんな顔が近づいてきてはちゅうと口を吸われる。
鼻先をすりつけるそぶりをみせると、彼の頬がスリ……と合わされて、年甲斐もなく胸があつくなった。
「ふふ……」
唇を離したあとも何やら楽しそうに私の髭を弄る。どうした? と聞けば、今度は頬に手を当てて親指の腹で目元をこすった。
1311視界に広がったのは、真っ白な光を後ろに背負った、私のおとこ。
穏やかな目つきでじっとこちらを見つめながら、指先でずっと髭をなぞっている。
「おはようございます。鯉登さん」
生まれたばかりの陽光が差し込み、耳を澄ませば鳥のさえずりでも聞こえてきそうな、部屋にはそんな清々しさが満ちていた。
「おはよう」
返事をして目を閉じると、へいたんな顔が近づいてきてはちゅうと口を吸われる。
鼻先をすりつけるそぶりをみせると、彼の頬がスリ……と合わされて、年甲斐もなく胸があつくなった。
「ふふ……」
唇を離したあとも何やら楽しそうに私の髭を弄る。どうした? と聞けば、今度は頬に手を当てて親指の腹で目元をこすった。
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DOODLE月島軍曹のお誕生日に書いた、年齢逆転現パロの月鯉(鯉登さんは一途ですが、一瞬モブと結婚する描写があるので、絶対無理な方はご注意ください)
この世でいちばん、尊いもの 息子の誕生日に、何か欲しいものはあるか? と訊いて、返ってきた答えに驚愕した。
「父さんが、欲しい」
はじめて頬に添えられたこの手の、大きさと暖かさを覚えている。遠い遠い記憶のなか、よくこうやって触れられた。
音をなくした部屋の中で、ふたり。わたしは目を凝らすように、瞳の綺麗に澄んだ男を見つめた。汗がふきだす。胸がはやる。当然の背徳感と驚き。それから、魂が震えるような喜びに挟まれて、心がどうにかなってしまいそうだ。
「……はじめ」
どれくらい黙っていたか分からないが、ひとこと、名前を呼ぶのが精一杯だった。
* *
基は、八年前に結婚した女性の連れ子だった。
最初に出会ったのは彼が十歳のころ。少しきまずそうに、だが丁寧にあいさつしてくれた姿を今も覚えている。その時のわたしは、こみあげてくる涙をこらえるのに必死だった。なぜならずっと、彼を探していたからだ。
4693「父さんが、欲しい」
はじめて頬に添えられたこの手の、大きさと暖かさを覚えている。遠い遠い記憶のなか、よくこうやって触れられた。
音をなくした部屋の中で、ふたり。わたしは目を凝らすように、瞳の綺麗に澄んだ男を見つめた。汗がふきだす。胸がはやる。当然の背徳感と驚き。それから、魂が震えるような喜びに挟まれて、心がどうにかなってしまいそうだ。
「……はじめ」
どれくらい黙っていたか分からないが、ひとこと、名前を呼ぶのが精一杯だった。
* *
基は、八年前に結婚した女性の連れ子だった。
最初に出会ったのは彼が十歳のころ。少しきまずそうに、だが丁寧にあいさつしてくれた姿を今も覚えている。その時のわたしは、こみあげてくる涙をこらえるのに必死だった。なぜならずっと、彼を探していたからだ。
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DOODLE「現パロ同棲しているけど忙しくてすれ違い生活気味なふたりがひさしぶりにデートに出かけたらお互いへのドキドキが増し増しになってしまうというベタな月鯉」という最高のお題をいただいて書きましたdate. 二人の休みが合ったのは、じつに一ヶ月半ぶりだった。
わたし──鯉登音之進は、コンサルティングファームでコンサルタントとして働いている。最近はもっぱらテレワークで、出社することはあまりない。
恋人は刑事で名を月島基という。近頃は盗人の捜査をしていたらしく、昼夜関係なく妙な時間に帰ってきては、わたしを驚かせた。何しろいろんな格好をしていたので。
一緒に住んで長いが、お互い仕事の話はほとんどしない。が、月島が、わざとらしくはないが妙なコスチュームで帰宅するのを三度ほど目にしたとき、流石に何をやっているのかと聞いた。どうやら二四時間体制で容疑者を尾行していたらしい。様々なスーツ、オフィスカジュアルに、作業着、遊び人みたいなラフな格好に、つなぎ……一番興奮したのは、そうだな──大工なのか鳶職なのか、そういう服だ。季節は残暑の厳しい九月で、汗や粉塵で薄汚れた月島が職人のようないでたちで束の間の休息のためと家に戻った。その後すぐ顧客対応がなければ、急用だ何だと理由をつけてきっと一時離席していたと思う。
2519わたし──鯉登音之進は、コンサルティングファームでコンサルタントとして働いている。最近はもっぱらテレワークで、出社することはあまりない。
恋人は刑事で名を月島基という。近頃は盗人の捜査をしていたらしく、昼夜関係なく妙な時間に帰ってきては、わたしを驚かせた。何しろいろんな格好をしていたので。
一緒に住んで長いが、お互い仕事の話はほとんどしない。が、月島が、わざとらしくはないが妙なコスチュームで帰宅するのを三度ほど目にしたとき、流石に何をやっているのかと聞いた。どうやら二四時間体制で容疑者を尾行していたらしい。様々なスーツ、オフィスカジュアルに、作業着、遊び人みたいなラフな格好に、つなぎ……一番興奮したのは、そうだな──大工なのか鳶職なのか、そういう服だ。季節は残暑の厳しい九月で、汗や粉塵で薄汚れた月島が職人のようないでたちで束の間の休息のためと家に戻った。その後すぐ顧客対応がなければ、急用だ何だと理由をつけてきっと一時離席していたと思う。
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DOODLEキスする月鯉(明治軸)接吻 二人で行った初詣の帰り道。全くひとけのない瑞垣の外で、鯉登少尉殿と初めて接吻をした。
賑わいを遠く感じながらゆく道すがら、隣を歩いていた彼がふいと立ち止まった。黙って私の肩を握りしめる指先の力がやけに強くて、見上げた顔は思うより近くにあった。
「月島……」
白く見える息が顔にかかる。新年特有の静謐な、冷たい夜風に、温く酒精の香りが混ざっていた。さきほど境内で振る舞われていた御神酒を飲んだからだ。そんな少尉の吐息が心地良くて、思わず知らず強張っていたらしい身体がふっと、緩んだ。
「はい」
「口を吸ってもいいか?」
表情は変わらなかったと思う。が、瞳孔が開いたような感覚はあった。
「はい」
──目を瞑ってやるべきだろうか。そう逡巡するうちに、まぶたを伏せた少尉の顔が迫っていた。上から顔を押し付ける体で、むにゅ、と柔らかく湿った唇がやや遅れて押し当てられる感覚がした。
1464賑わいを遠く感じながらゆく道すがら、隣を歩いていた彼がふいと立ち止まった。黙って私の肩を握りしめる指先の力がやけに強くて、見上げた顔は思うより近くにあった。
「月島……」
白く見える息が顔にかかる。新年特有の静謐な、冷たい夜風に、温く酒精の香りが混ざっていた。さきほど境内で振る舞われていた御神酒を飲んだからだ。そんな少尉の吐息が心地良くて、思わず知らず強張っていたらしい身体がふっと、緩んだ。
「はい」
「口を吸ってもいいか?」
表情は変わらなかったと思う。が、瞳孔が開いたような感覚はあった。
「はい」
──目を瞑ってやるべきだろうか。そう逡巡するうちに、まぶたを伏せた少尉の顔が迫っていた。上から顔を押し付ける体で、むにゅ、と柔らかく湿った唇がやや遅れて押し当てられる感覚がした。
tu_mi_ki_gkm
DONE現パロとフォゼ月鯉です。1枚目:ファミレスに行くと毎回テンションのままに大量に注文する鯉登だが、後から「月島が好きそうだと思って頼んだ」などと言ってほとんど月島に食わせている
2枚目:手についたおにぎりの米粒を月島の背中になすりつける鯉登
様子がおかしいふたりhttps://odaibako.net/gacha/6079
お題箱よりお題をお借りしました。ご覧いただきありがとうございます。 2
tadanoyuuki
MOURNINGTwitterにあげていた最終回後月鯉のSSですお互いがお互いの灯台だから大丈夫な感じの月鯉「一滴も飲めません。全てお断り致します」
よく通る鯉登の声が執務室に響く。対峙する上官の背にある窓の外には長閑な陽光が煌めき、小鳥の囀りさえ聞こえる穏やかさであるというのに、鯉登の凛としたその答えに月島は雷に打たれたような衝撃を覚えて硬直してしまった。
しん、と静まり返った部屋、隣にはいつものように胸を張るが如くの姿勢で堂々と立つ鯉登、そして自分たちの前に座るのは、本来であればこのように押しかけての面会など叶うはずもない遥か雲の上の──、
「……決して悪い話ではないと思うがね」
「いいえ。閣下は私の話を聞いておられなかったのでしょうか」
躊躇いもなく続けた鯉登を、月島は思わずぎょっと見上げる。それでも咄嗟に咎める声が出なかったのは、月島も心の中では鯉登に、そうであって欲しいと強く思いながら本日、彼に同行してここを訪れていたからだ。
4258よく通る鯉登の声が執務室に響く。対峙する上官の背にある窓の外には長閑な陽光が煌めき、小鳥の囀りさえ聞こえる穏やかさであるというのに、鯉登の凛としたその答えに月島は雷に打たれたような衝撃を覚えて硬直してしまった。
しん、と静まり返った部屋、隣にはいつものように胸を張るが如くの姿勢で堂々と立つ鯉登、そして自分たちの前に座るのは、本来であればこのように押しかけての面会など叶うはずもない遥か雲の上の──、
「……決して悪い話ではないと思うがね」
「いいえ。閣下は私の話を聞いておられなかったのでしょうか」
躊躇いもなく続けた鯉登を、月島は思わずぎょっと見上げる。それでも咄嗟に咎める声が出なかったのは、月島も心の中では鯉登に、そうであって欲しいと強く思いながら本日、彼に同行してここを訪れていたからだ。
naru381231
TRAINING父の墓を見に佐渡へやってきた月鯉(何でも大丈夫な方向け)
(ショタ之進)
(墓地でイチャついてる)
※赤子のオトノシンをコイト家から攫って前世の🎏に仕上げようと育ててるイカれた月さんがいます。
!注意!
※現パロ、転生。🌙記憶あり🎏記憶なし
※歳の差二十歳以上の月鯉
※倫理観薄めの二人の世界です。既に普通に手を出して恋人同士になってます。
※※※※※
酒瓶片手に暴力を振るい、人を人とも思わぬ非道な父が、数年前に他界した。
十代のうちに実家を飛び出し、縁を切った月島にとって、それは一切関係のないことで、役所からの電話をその場で乱暴に切り捨てたことを、今でも後悔はしていない。
畜生は、生まれ変わっても畜生のままだった。
その畜生の墓を、今年は何故だか訪れてみたくなった。
死んだことを確認する為。成れの果てを嘲笑う為。積もり積もった恨み言をぶつける為。今世は己の手で殺さずに済んだのだと安堵する為。理由なら、きっと全部だ。
2335※現パロ、転生。🌙記憶あり🎏記憶なし
※歳の差二十歳以上の月鯉
※倫理観薄めの二人の世界です。既に普通に手を出して恋人同士になってます。
※※※※※
酒瓶片手に暴力を振るい、人を人とも思わぬ非道な父が、数年前に他界した。
十代のうちに実家を飛び出し、縁を切った月島にとって、それは一切関係のないことで、役所からの電話をその場で乱暴に切り捨てたことを、今でも後悔はしていない。
畜生は、生まれ変わっても畜生のままだった。
その畜生の墓を、今年は何故だか訪れてみたくなった。
死んだことを確認する為。成れの果てを嘲笑う為。積もり積もった恨み言をぶつける為。今世は己の手で殺さずに済んだのだと安堵する為。理由なら、きっと全部だ。
0129chinhostar
DONE夢の話7/23月夜に恋の投げキッスにて無料配布した漫画です
「はじめくんのおねえさん♂」の続きのような気持ちで描きましたが、本編読んでいなくてもお楽しみいただけます! 4
zeana818
DONEみんな大好き俳優パロです。月鯉ですよ〜wどっちがいい? カンカン照りの空の下、音之進はドディオン・ブートンのアクセルを思い切り吹かした。ドルンドルンと重く空吹かしになり、舌打ちする。やっぱり少しでも上り坂になると動きが悪い。父上に言えば調整してくれるだろうか……いや、忙しいと一喝されておしまいだろう。それすらもされないかもしれない。悪くすれば取り上げられるかも……思えば、父の顔もこの数日見ていなかった。
ふんと鼻息荒く、更に吹かす。音之進の気合が乗り移ったか、ドルンッと強く反応した。今のうちだ。体重を前に掛け、勢いをつけた。ドディオンは音之進の意志のまま、加速した。
その瞬間、目の前を人影が横切る。あっと思った時には遅かった。跳ね飛ばされた人間が、ぐるん! と大きく回転した。
4429ふんと鼻息荒く、更に吹かす。音之進の気合が乗り移ったか、ドルンッと強く反応した。今のうちだ。体重を前に掛け、勢いをつけた。ドディオンは音之進の意志のまま、加速した。
その瞬間、目の前を人影が横切る。あっと思った時には遅かった。跳ね飛ばされた人間が、ぐるん! と大きく回転した。
mizuki_mir
MAIKINGちょっと書き換えるかもですが、進捗です前の話→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18028286
ましゅまろ→https://marshmallow-qa.com/mizuki_mir?utm_medium=twitter&utm_source=promotion
ドーナツホールの続きから食べる⑤5
窓の外から雨の音がする。
パタン、パタンと屋根を叩く音が断続的に聞こえていて、この分では明日の漁もなくなりそうだ。
図書館から借りていた本が、もう少しで読み終わる。
社会人の時にずっとできなかったことのひとつだ。
図書館に通って、背表紙が気になった本を片っ端から読み漁る。当たり外れはもちろんあるが、それを含めて、だ。
そのために買った読書灯が座卓の真ん中を照らして鎮座している。最近買ったばかりだが気に入っていて、部屋備え付けの小さな座卓に座布団、そして読書灯。このスペースは、自分が作り上げたものだ。自分の居場所に対して、真摯に向き合って作るのは、会社を辞めてから初めてのことだった。
ぺらりと紙をめくる音が響く。
1820窓の外から雨の音がする。
パタン、パタンと屋根を叩く音が断続的に聞こえていて、この分では明日の漁もなくなりそうだ。
図書館から借りていた本が、もう少しで読み終わる。
社会人の時にずっとできなかったことのひとつだ。
図書館に通って、背表紙が気になった本を片っ端から読み漁る。当たり外れはもちろんあるが、それを含めて、だ。
そのために買った読書灯が座卓の真ん中を照らして鎮座している。最近買ったばかりだが気に入っていて、部屋備え付けの小さな座卓に座布団、そして読書灯。このスペースは、自分が作り上げたものだ。自分の居場所に対して、真摯に向き合って作るのは、会社を辞めてから初めてのことだった。
ぺらりと紙をめくる音が響く。
ぎねまる
MOURNING網走の夜の一幕。「月下の獣」の続きのSSの予定でした。多分「地獄にふさわしい」ってフレーズが書きたかっただけ。朔の竜「なあ月島。ここは戦場に似ていたか?」
「いいえ。
砲弾も飛んでこない。
飛び散り焼け焦げる肉片も無い。
敵はまともな武器すら持っていなかった。
せいぜいが、制圧です。」
虐殺という言葉は使わない。
「ああ、腹が減ったな」
「携帯糧食はありますが、駆逐艦の中です」
「重焼麵麭は嫌だ。口の中の水分を持っていかれる。握り飯がいい」
「我慢してください。石を舐めたら唾が出ますよ」
「ここの台所に食べものがあるんじゃないか? 位置的に燃えていないはずだ」
「将官が略奪を企んでどうするんですか……」
ああそうか。
弁えている。
鯉登は甘えるべきところ、我儘を言うべきところを知っている。身なりを整え清潔に上品に味の良いものを食べるべき場所と、泥と血に塗れながら喰い物を食べ戦い続ける場所とを知っている。あるべき場所での振る舞い方を知っている。
450「いいえ。
砲弾も飛んでこない。
飛び散り焼け焦げる肉片も無い。
敵はまともな武器すら持っていなかった。
せいぜいが、制圧です。」
虐殺という言葉は使わない。
「ああ、腹が減ったな」
「携帯糧食はありますが、駆逐艦の中です」
「重焼麵麭は嫌だ。口の中の水分を持っていかれる。握り飯がいい」
「我慢してください。石を舐めたら唾が出ますよ」
「ここの台所に食べものがあるんじゃないか? 位置的に燃えていないはずだ」
「将官が略奪を企んでどうするんですか……」
ああそうか。
弁えている。
鯉登は甘えるべきところ、我儘を言うべきところを知っている。身なりを整え清潔に上品に味の良いものを食べるべき場所と、泥と血に塗れながら喰い物を食べ戦い続ける場所とを知っている。あるべき場所での振る舞い方を知っている。
naru381231
MOURNING※単行本十一巻あたりの全然できてない月鯉です。※意識してもらいたくて意味のわからない絡み方をする鯉くん。
※こんなやりとりがあれば良いなぁ、の腐った妄想です。
────────────────
士官学校では、粋がる無法者も少なくはなかった。
容姿端麗、文武両道、勇猛精進、品行方正。そんな四拍子をぴったりと揃え持った鯉登を、良くは思わない人間だっている。
正々堂々と、真っ向から喧嘩を売る者はまだわかりやすかった。向かってくるのなら叩くまで。血気盛んな男子らしい発想だと、鯉登は笑って相手を叩きのめした。
一方で、陰湿な嫌がらせには少々手を焼いた。私物が失くなったと思いきや、翌日には汚れて返ってくる。根も葉もない噂を流されては、それを信じた阿呆がすり寄ってくる。顔も見せず、罵声も発さず、直接的ではない攻撃の方が始末に終えないものだと、鯉登は月島のなだらかな鼻をつつきながら言う。
2296士官学校では、粋がる無法者も少なくはなかった。
容姿端麗、文武両道、勇猛精進、品行方正。そんな四拍子をぴったりと揃え持った鯉登を、良くは思わない人間だっている。
正々堂々と、真っ向から喧嘩を売る者はまだわかりやすかった。向かってくるのなら叩くまで。血気盛んな男子らしい発想だと、鯉登は笑って相手を叩きのめした。
一方で、陰湿な嫌がらせには少々手を焼いた。私物が失くなったと思いきや、翌日には汚れて返ってくる。根も葉もない噂を流されては、それを信じた阿呆がすり寄ってくる。顔も見せず、罵声も発さず、直接的ではない攻撃の方が始末に終えないものだと、鯉登は月島のなだらかな鼻をつつきながら言う。
じぇひ
TRAINING月鯉 修作 現パロ毎日何かしら上げていきたいです。文字書き上手くなりて〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
接待線香花火 花火がしたい。仕事中、なんの脈絡もなくふっと浮かんだ願望だった。鯉登は手持ち花火をしたことがあるのだろうか。さすがにあるか、と思いつつも子供のようにはしゃぐ彼を想像してしまう。弾ける火花に照らされる華がある顔だとか、眉間に皺を寄せるほどに真剣に線香花火をする様子だとか。愛しい恋人の喜ぶ姿を空想すれば、月島の中で花火をすることは既に決定事項になっていた。
コンビニにも置いてあるのだから便利な時代なったものだな、と片手に抱えて自宅まで小走りする。潮風にのって生暖かな空気が、身を包むスーツと相まって体感温度を上げていく。額には薄らと汗が滲んで来たけれど拭いもせず一心不乱に足を動かす。健康的な鯉登のことだからそろそろ寝る準備を始めているかもしれない。一層恋しくなって、自分を縛り付けるスラックスが煩わしい。ネクタイを緩めると、はしゃいでるのは俺の方だと自嘲した。そこの角を曲がれば鯉登のいる我が家が見えてくる。
2349コンビニにも置いてあるのだから便利な時代なったものだな、と片手に抱えて自宅まで小走りする。潮風にのって生暖かな空気が、身を包むスーツと相まって体感温度を上げていく。額には薄らと汗が滲んで来たけれど拭いもせず一心不乱に足を動かす。健康的な鯉登のことだからそろそろ寝る準備を始めているかもしれない。一層恋しくなって、自分を縛り付けるスラックスが煩わしい。ネクタイを緩めると、はしゃいでるのは俺の方だと自嘲した。そこの角を曲がれば鯉登のいる我が家が見えてくる。