亜久堂 御狐
TRAINING祓本の夏五が焼肉食べにいくそうです。焼肉と一緒にすんな「悟、それまだ。こっち焼けてるから先に食べな」
「これ何?」
「カルビ。さっき頼んだご飯と一緒に食べるやつ。あ、ついでにタレ頂戴」
「あの海苔ご飯?へー旨そ。タレ何がいい?」
「レモン。悟はなにで食べてるの?」
「塩。飲み物頼むけどなんかいる?」
「通だね。私ウーロン茶。あと好きなの頼んでいいよ。食べ放題だしまだまだいけるでしょ?」
「傑もな。じゃあこっからここまで二人前ずつ~あっ土手煮食いたい」
「土手煮ちょっと摘まんでいい?一つもいらないけど一口食べたい」
「おっけ」
金曜日の夜、家族連れで賑わう食べ放題の焼肉店に二人は来ていた。奥まった座敷に通してもらったから平気だろうと、入店時につけていたキャップとマスクを取る。悟はサングラスをつけたままだ。本人曰く視力が良過ぎて辛いらしい。一般のサングラスよりも暗めのそれでは焼き加減がわからないだろうと、傑が率先して肉を焼いている。もしその目のことがなくても傑は焼肉奉行になっていただろう。元来、世話焼きな質なので。
1958「これ何?」
「カルビ。さっき頼んだご飯と一緒に食べるやつ。あ、ついでにタレ頂戴」
「あの海苔ご飯?へー旨そ。タレ何がいい?」
「レモン。悟はなにで食べてるの?」
「塩。飲み物頼むけどなんかいる?」
「通だね。私ウーロン茶。あと好きなの頼んでいいよ。食べ放題だしまだまだいけるでしょ?」
「傑もな。じゃあこっからここまで二人前ずつ~あっ土手煮食いたい」
「土手煮ちょっと摘まんでいい?一つもいらないけど一口食べたい」
「おっけ」
金曜日の夜、家族連れで賑わう食べ放題の焼肉店に二人は来ていた。奥まった座敷に通してもらったから平気だろうと、入店時につけていたキャップとマスクを取る。悟はサングラスをつけたままだ。本人曰く視力が良過ぎて辛いらしい。一般のサングラスよりも暗めのそれでは焼き加減がわからないだろうと、傑が率先して肉を焼いている。もしその目のことがなくても傑は焼肉奉行になっていただろう。元来、世話焼きな質なので。
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TRAINING5/7ワンライお題【ドーパミン/ペルシャ猫/征服】
夏油が五条より薬に頼るお話です。ちょっとうす暗い感じです。
オーバードーズ 傑は基本的にどんな依頼でも断らない。知らない男が部屋の隅に見えて困っているっていう事故物件のような軽いものから、山中に打ち捨てられた土地神のような、郷土史を調べて挑まねばならない入り組んだものまで、彼はどんな依頼でも断ることがなかった。俺はそれをアメコミの超人的なヒーローの正義感のような、完璧なもののように、つまり欺瞞のように思っていたし、傑もそう見られていると分かっていただろうけれど、それでも彼は自分のスタンスを変えず、俺はそんな彼を一番側で見るのをやめなかった。
だって傑は不安定だったのだ。もう俺たちはその頃をとっくに通り過ぎてるっていうのに、彼はまるで自我が出来上がり、それを疑い出す思春期の少年みたいだった。俺はそんな彼を見ずにはいられなかった。
1971だって傑は不安定だったのだ。もう俺たちはその頃をとっくに通り過ぎてるっていうのに、彼はまるで自我が出来上がり、それを疑い出す思春期の少年みたいだった。俺はそんな彼を見ずにはいられなかった。
mondlicht1412
DONEワンドロワンライの第63回 お題「ドーパミン」をお借りしました。離反回避ifな夏五です。
【夏五】第63回 お題「ドーパミン」 自分の背丈よりも何倍も大きな呪霊と対峙する。ここには悟ひとりだけだ。一緒に来た付添人は皆、遠く離れた安全圏で見学している。
どんなおどろおどろしい異形が襲い掛かってこようとも、悟の表情は1mmも動かない。ただ、いつものように攻撃を避けて、祓って、それでおしまい。
無事に祓除が終わったら、見学していた大人たちは戻ってくる。
それが普通。それが日常。
彼らは頭を下げて、いつも同じセリフを口にする。
「お見事でございます」
「さすがは悟様」
「五条家の誇り」
伏せられた顔が見えることはない。持ち上げる言葉とは裏腹に、そこに浮かぶのは嘲笑か、怯えか、それとも。
どんなに稀有な眼であっても、他人の心まではわからない。
1882どんなおどろおどろしい異形が襲い掛かってこようとも、悟の表情は1mmも動かない。ただ、いつものように攻撃を避けて、祓って、それでおしまい。
無事に祓除が終わったら、見学していた大人たちは戻ってくる。
それが普通。それが日常。
彼らは頭を下げて、いつも同じセリフを口にする。
「お見事でございます」
「さすがは悟様」
「五条家の誇り」
伏せられた顔が見えることはない。持ち上げる言葉とは裏腹に、そこに浮かぶのは嘲笑か、怯えか、それとも。
どんなに稀有な眼であっても、他人の心まではわからない。
亜久堂 御狐
TRAININGなんてことない土砂降りのはなし。バケツの底油断していたといえばそれまで。でもそんなダセー事認めたくないだろ。降水確率なんか見たことない。サングラスの隙間から雨雲が見えればそれで十分。気付かなくたってぽたっと一滴当たればそれで無下限張れるんだから、傘なんていらなかった。
その油断がゲリラ豪雨への対応判断を鈍らせた。
「だからそんなずぶ濡れかつ不機嫌なんだ?」
「うっせ」
バケツをひっくり返したようなってよく聞いたけど本当にその通りの大雨だった。雨粒ひとつが当たる間もなくざばっと降って、バケツが空っぽになったかのようにぴたっと止まる。任務で屋外にいた俺はタイミング悪く任務の、それも祓ってる途中で、身構える間も無くずぶ濡れ。廃墟内に逃げ込んだ呪霊を追っていた傑は難を逃れたのだった。
1858その油断がゲリラ豪雨への対応判断を鈍らせた。
「だからそんなずぶ濡れかつ不機嫌なんだ?」
「うっせ」
バケツをひっくり返したようなってよく聞いたけど本当にその通りの大雨だった。雨粒ひとつが当たる間もなくざばっと降って、バケツが空っぽになったかのようにぴたっと止まる。任務で屋外にいた俺はタイミング悪く任務の、それも祓ってる途中で、身構える間も無くずぶ濡れ。廃墟内に逃げ込んだ呪霊を追っていた傑は難を逃れたのだった。
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DONEワンドロワンライの第62回 お題「まやかし」をお借りしました。離反後のある日、夏の前に五にそっくりな男が現れた話。
いつか書きたい夏五。
【夏五】第62回 お題「まやかし」「ねぇ、教祖様。僕と遊ばない?」
首都・東京、呪いの坩堝たる街、新宿。右を見ても左を見ても猿だらけのこの場所は本来忌避したいところだが、ここほど上級の呪霊が溢れているところも他にない。さらに手駒を増やすためだと割り切って、夏油はときどきこうして足を運んでいる。
だから、分不相応に話しかけてくる輩はいつもならば無視してそのまま去るところなのだ。思わず足を止めてしまったのは、その声が数年前にまさにこの場所で道を分かった、かつての親友と瓜二つ――いや、そのものだったからだ。
振り向いて、さらに驚く。
少し上にある視線、ネオンに照らされて輝く白銀の髪、そして。丸いサングラスから覗く、宝石を埋め込んだかのような青い瞳。
1899首都・東京、呪いの坩堝たる街、新宿。右を見ても左を見ても猿だらけのこの場所は本来忌避したいところだが、ここほど上級の呪霊が溢れているところも他にない。さらに手駒を増やすためだと割り切って、夏油はときどきこうして足を運んでいる。
だから、分不相応に話しかけてくる輩はいつもならば無視してそのまま去るところなのだ。思わず足を止めてしまったのは、その声が数年前にまさにこの場所で道を分かった、かつての親友と瓜二つ――いや、そのものだったからだ。
振り向いて、さらに驚く。
少し上にある視線、ネオンに照らされて輝く白銀の髪、そして。丸いサングラスから覗く、宝石を埋め込んだかのような青い瞳。
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TRAINING4/30ワンライお題【アセトアミノフェン/八月/まやかし】
薬を濫用する夏油と何も出来ない五条のお話です。さしすが風邪をひきます。高専時代と教師時代のお話。
甘い、熱い、苦い 一、
八月のある日、傑の机の引き出しの中から大量の薬を見つけた。俺はそれを部屋に持って帰ってゴミ箱に捨てたが、その次の日に探ると、薬は二倍の量になって傑の引き出しの中に入っていた。それ以来俺は傑の机の中を見ていない。ただの風邪薬じゃないか、そう思ったので。そう思わずにはいられなかったので。そう思わなきゃ恐ろしすぎたので。
二、
傑の手のひらは熱い。彼は特に体温が高いわけではないが、なぜか俺を触る時にだけ、傑のそれは熱くなる。興奮するからだろうか? それとも俺の体温が下がっているのだろうか?
三、
「硝子の風邪、早く治るといいな」
八月、硝子が風邪をひいた。原因は過労。反転術式の使いすぎで、身体が悲鳴を上げたのだ。彼女はそれでも任務にあたろうとしたし、上層部もそうさせようとしたので、夜蛾先生が抗議し今は病室で眠っていた。でも、病室で煙草を吸ったので、それはさすがに先生に怒られていた。
1481八月のある日、傑の机の引き出しの中から大量の薬を見つけた。俺はそれを部屋に持って帰ってゴミ箱に捨てたが、その次の日に探ると、薬は二倍の量になって傑の引き出しの中に入っていた。それ以来俺は傑の机の中を見ていない。ただの風邪薬じゃないか、そう思ったので。そう思わずにはいられなかったので。そう思わなきゃ恐ろしすぎたので。
二、
傑の手のひらは熱い。彼は特に体温が高いわけではないが、なぜか俺を触る時にだけ、傑のそれは熱くなる。興奮するからだろうか? それとも俺の体温が下がっているのだろうか?
三、
「硝子の風邪、早く治るといいな」
八月、硝子が風邪をひいた。原因は過労。反転術式の使いすぎで、身体が悲鳴を上げたのだ。彼女はそれでも任務にあたろうとしたし、上層部もそうさせようとしたので、夜蛾先生が抗議し今は病室で眠っていた。でも、病室で煙草を吸ったので、それはさすがに先生に怒られていた。
mondlicht1412
DONE祓本の夏五。夏が見た悪い夢。
【祓本夏五】悪い夢 見慣れた後姿があった。しかしどこか違和感がある。
無造作に遊んでいる白銀の髪が、きっちり短く切り揃えられきっちり整っている。そしてらしくないスーツを着ていた。お決まりのステージ衣装となっている、黒の上下ではなくて、なんというだったか…そう、いわゆるリクルートスーツ。
「悟…?」
半信半疑でその名前を口にする。間違いなく彼だと思うと同時に、まったくの他人のようにも思えて、なんとも奇妙な感覚だった。
声が小さかったせいなのか、彼が振り向くことはなかった。それがなぜか拒絶されているように思えて、焦りが浮かぶ。
「悟、」
さっきよりも大きな声で呼び、同時に何かに突き動かされるように走り寄る。今度は気づいてもらえたようで、ゆっくりとこちらを見た。
2525無造作に遊んでいる白銀の髪が、きっちり短く切り揃えられきっちり整っている。そしてらしくないスーツを着ていた。お決まりのステージ衣装となっている、黒の上下ではなくて、なんというだったか…そう、いわゆるリクルートスーツ。
「悟…?」
半信半疑でその名前を口にする。間違いなく彼だと思うと同時に、まったくの他人のようにも思えて、なんとも奇妙な感覚だった。
声が小さかったせいなのか、彼が振り向くことはなかった。それがなぜか拒絶されているように思えて、焦りが浮かぶ。
「悟、」
さっきよりも大きな声で呼び、同時に何かに突き動かされるように走り寄る。今度は気づいてもらえたようで、ゆっくりとこちらを見た。
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DONEワンドロワンライの第61回 お題「いっぱい」をお借りしました。前の第57回「泡立つ」第58回「壁」第59回「閉世界仮説」第60回「胸」の続きです。
0後の生存if、囚われてる夏と心がすれ違っている話。
ひとまずこれでおしまい。 2783
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TRAINING4/23ワンライお題【心筋梗塞/依存症/いっぱい】
世話になった呪術師の寝ずの番をする五条と夏油のお話です。微糖。
寝ずの番 呪術界の大家が死んだ。それは御三家にも影響が及ぶほどで、もちろん俺たち高専生も、幸せに心筋梗塞で死んだ彼の実家に通夜に行くことになった。そしてどういうわけか俺は、いや、俺と傑は寝ずの番の一人に選ばれることとなったのだった。
寝ずの番をすると言っても、いっぱいの花に囲まれた彼を見つめる以外にはすることはなかった。あとは輝く刀に自分の顔を映し出したりとか遊ぶくらいだ。葬儀で刀を置くのは、猫を避けるためだそうだ。猫は古代より悪と描かれていて、ちょっとした隙に故人の身体を奪ってしまうのだという。でも、この人の命はまた奪われる。自然死をした呪術師は、身体の一部を奪われたら呪詛師に呼び出される可能性があるため、自然死ではない方法で二度死ぬよう、今は忙しく御三家の呪術師たちが走り回っている。滑稽だ、馬鹿らしい。でも、俺も世話になった人だった、さまざまな呪法に通じたあの人が、誰かに利用されては困る。
1396寝ずの番をすると言っても、いっぱいの花に囲まれた彼を見つめる以外にはすることはなかった。あとは輝く刀に自分の顔を映し出したりとか遊ぶくらいだ。葬儀で刀を置くのは、猫を避けるためだそうだ。猫は古代より悪と描かれていて、ちょっとした隙に故人の身体を奪ってしまうのだという。でも、この人の命はまた奪われる。自然死をした呪術師は、身体の一部を奪われたら呪詛師に呼び出される可能性があるため、自然死ではない方法で二度死ぬよう、今は忙しく御三家の呪術師たちが走り回っている。滑稽だ、馬鹿らしい。でも、俺も世話になった人だった、さまざまな呪法に通じたあの人が、誰かに利用されては困る。
mondlicht1412
DONE呪専時代寮の隣室モブ先輩視点(夏五)
【夏五】隣室 安いボロアパートほど、ではないが――そんなところに住んだ経験はないけども――寮の壁はそれなりの厚さしかなくて、ゆえに隣室の音がたびたび聞こえてくる。
ゲームで盛り上がっている歓声とか、何かを割ってしまった音とその後の悲鳴、今流行の音楽。
左側の部屋からは、テレビの音がよく聞こえる。テレビと言ってもリアルタイムの番組じゃなくて、たぶん録画してあったバラエティとか借りてきたのだろう映画を見てる。
呪術師なんてものをしているから、番組をリアルタイムで見ることは少ない。俺も同じように録画はしているが、結局見られずに容量が足りなくなって消してしまうなんてこともたびたびある。それに比べれば、隣室の消化率は高いと思う。
1479ゲームで盛り上がっている歓声とか、何かを割ってしまった音とその後の悲鳴、今流行の音楽。
左側の部屋からは、テレビの音がよく聞こえる。テレビと言ってもリアルタイムの番組じゃなくて、たぶん録画してあったバラエティとか借りてきたのだろう映画を見てる。
呪術師なんてものをしているから、番組をリアルタイムで見ることは少ない。俺も同じように録画はしているが、結局見られずに容量が足りなくなって消してしまうなんてこともたびたびある。それに比べれば、隣室の消化率は高いと思う。
mondlicht1412
DONEワンドロワンライの第60回 お題「胸」をお借りしました。前の第57回「泡立つ」第58回「壁」第59回「閉世界仮説」の続きです。
0後の生存if、囚われてる夏と心がすれ違っている話。
⚠️夏は不在、オリキャラ有、五の流血有 3073
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TRAINING4/16ワンライお題【マーメイド/生霊/胸】
さしす。八百比丘尼を保護しろという任務を命じられた三人のお話です。
人魚と紫陽花 人魚の呪霊が流す涙を体内に取り込むと、長生きが出来る。
そんな噂が非合法の骨董マーケットの間で立ったのは、俺たちがまだ高専一年の夏に差しかかった頃のことだった。古式ゆかしい八百比丘尼が現代に現れたのなら、伝承通り肉を食えばいい。でも何故今回は肉でなく涙なのか。俺にはそれが分からず、傑も不思議そうな顔をしていたように思う。
「それで今回の俺たちの任務は?」
「八百比丘尼の保護」
「あぁ、面倒臭そうだなぁ……」
そんなこんなで、俺は傑と二人で八百比丘尼を探す羽目になったのだった。
でも、八百比丘尼は、人魚はすぐに見つかった。彼女が自分から、俺たちが学ぶ高専に近づいてきたからだ。彼女は教室で多分涙なのだろう、透明な液体が入った瓶を下げた胸元にナイフを置いて、生霊みたいな顔をして、「もう、私を殺してください」と言った。いや、俺たちが命じられたのはあんたの保護でそういう物理的な殺害じゃない。というか不老不死なのにナイフで刺せば死ぬのか。俺はそれを疑問に思ったが、教室にいる誰もがそれを尋ねなかった。
2176そんな噂が非合法の骨董マーケットの間で立ったのは、俺たちがまだ高専一年の夏に差しかかった頃のことだった。古式ゆかしい八百比丘尼が現代に現れたのなら、伝承通り肉を食えばいい。でも何故今回は肉でなく涙なのか。俺にはそれが分からず、傑も不思議そうな顔をしていたように思う。
「それで今回の俺たちの任務は?」
「八百比丘尼の保護」
「あぁ、面倒臭そうだなぁ……」
そんなこんなで、俺は傑と二人で八百比丘尼を探す羽目になったのだった。
でも、八百比丘尼は、人魚はすぐに見つかった。彼女が自分から、俺たちが学ぶ高専に近づいてきたからだ。彼女は教室で多分涙なのだろう、透明な液体が入った瓶を下げた胸元にナイフを置いて、生霊みたいな顔をして、「もう、私を殺してください」と言った。いや、俺たちが命じられたのはあんたの保護でそういう物理的な殺害じゃない。というか不老不死なのにナイフで刺せば死ぬのか。俺はそれを疑問に思ったが、教室にいる誰もがそれを尋ねなかった。
藤 夜
DONE夏五教師×教師の平和軸
支部に掲載中の『巡る季節 巡る想い』から9月のお話。
真希さん視点で、戦闘訓練からの休憩時間のワンシーン。
【長月】 照りつける陽射しはまだ暑く秋なんて名ばかりで、じっとりと汗をかけば手が滑る。僅かに気が逸れたと自覚する前に、左肩に受けた打撃を流しきれずに不様に転がった。
「ちっいっ」
「重心は下げて。瞬発力を鍛えた方が堅実だね」
淡々とわかりきった事を告げる様子に、嘲りや侮蔑は入らず、事実だけを伝える。力の差が歴然といる私にもそれだけはわかった。大丈夫かよ、と心配そうな表情で近付いてきたパンダに、ひらりと手を振って大事ないことを合図した。
「そう簡単には」
「そうだろうね。積み重ねの鍛練だし。筋トレも大切だけど、体幹を鍛えた方がいいかな」
強かにうった腰を擦りながら起き上がると、離れて見ていた悟が近づいてきた。木陰から出た途端、きらきらと髪が光を集めて反射して眩しいぐらいだ。見た目も特級なだけある。
2104「ちっいっ」
「重心は下げて。瞬発力を鍛えた方が堅実だね」
淡々とわかりきった事を告げる様子に、嘲りや侮蔑は入らず、事実だけを伝える。力の差が歴然といる私にもそれだけはわかった。大丈夫かよ、と心配そうな表情で近付いてきたパンダに、ひらりと手を振って大事ないことを合図した。
「そう簡単には」
「そうだろうね。積み重ねの鍛練だし。筋トレも大切だけど、体幹を鍛えた方がいいかな」
強かにうった腰を擦りながら起き上がると、離れて見ていた悟が近づいてきた。木陰から出た途端、きらきらと髪が光を集めて反射して眩しいぐらいだ。見た目も特級なだけある。
mondlicht1412
DONE離反後、ちょっとだけ邂逅する夏五。【夏五】シンデレラ 軽やかなベルの音と同時に扉が開いたときから、店内の視線はずっとひとりの男に釘付けだ。
細長い店内をさらに半分に割るような長いカウンター。店内にはこのカウンター席が7つしかない。私とは反対側に座っている、デート中らしきカップルの彼女は、まるで芸術作品のような横顔にうっとりと見惚れている。ただ、彼氏の方も同様なので、浮気だなんだの喧嘩には発展することはないだろう。
「マスター、いつもの」
少し不機嫌そうな声で告げられた注文にも、ひとりカウンターの向こう側に立つ壮年の男は気を害した様子もなく、はいはいと頷く。小洒落たバーのマスターというよりは、このあたりを縄張りにしているヤクザと言われた方が納得してしまいそうな強面である。その見かけにビビって引き返す者もいると聞いたが、2人のやり取りを見るに、どうやら常連であるらしい。
2633細長い店内をさらに半分に割るような長いカウンター。店内にはこのカウンター席が7つしかない。私とは反対側に座っている、デート中らしきカップルの彼女は、まるで芸術作品のような横顔にうっとりと見惚れている。ただ、彼氏の方も同様なので、浮気だなんだの喧嘩には発展することはないだろう。
「マスター、いつもの」
少し不機嫌そうな声で告げられた注文にも、ひとりカウンターの向こう側に立つ壮年の男は気を害した様子もなく、はいはいと頷く。小洒落たバーのマスターというよりは、このあたりを縄張りにしているヤクザと言われた方が納得してしまいそうな強面である。その見かけにビビって引き返す者もいると聞いたが、2人のやり取りを見るに、どうやら常連であるらしい。
haramichan029
DONE・ℒ𝒶𝓈𝓉𝒾𝓃𝑔 𝓃𝑜𝓉𝑒・事後シチュなのでワンクッション
スンスンとキスマ、イ桀の残り香に思いを馳せました!
原作軸バドエンです🤦♀️
↓イ桀の香水妄想(知識なし)
◆top note
ペッパー|シナモン|ベルガモット
◆middle note
アンバー|ジャスミン
◆lasting note
レッドムスク|パチュリ 5
mondlicht1412
DONEワンドロワンライの第59回 お題「閉世界仮説」をお借りしました。前の第57回「泡立つ」第58回「壁」の続きです。
0後の生存if、囚われてる夏と心がすれ違っている話。
⚠️夏は不在、オリキャラ有、五の流血有 4146
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TRAINING4/9ワンライお題【鬱血/閉世界仮説/フラスコ】
さしすがちょっと辛い任務にあたるお話です。しゃべっているのは五条と夏油だけです。仄暗い感じです。
光を灯す 桜が散ろうとする頃、フラスコや、シリンダーが並ぶ部屋にその少女はいた。手錠をかけられて机に繋がれた腕は鬱血していて、だが彼女は明るくこう言った。
「お兄さん、あの方は?」
あの方はどこに行ったのです? 約束したのに。
俺はその問いにすぐに答えられなかった。答えたのは傑だった。あなたの言うあの方は私たちに捕らえられました(私たちが殺しました)。さぁ、怪我を治してもらいましょう。傑の言葉を聞いていた硝子が足を踏み出す。俺はそれを見ていられず、することも出来ることもなく、連続殺人犯のアジトから出たのだった。
呪術師の娘が連続殺人犯、正しくは呪詛師にさらわれたのは、今から一週間前のことだった。俺たちがそれを助け出したのは昨日の話。彼女の残穢をたどって探し出したから任務はそう難しくなく、むしろこんな簡単な仕事を他の呪術師が早急にしなかったことが不思議だった。ただ呪詛師は呪いをかけていたから、最強の俺たち以外の他の呪術師は、そのトラップにひっかかったのかもしれない。それより不思議なのは、少女が今も男を待っているということだ。伝え聞いたところによると、彼女は例の男をいまだに慕って待っているらしい。高専に戻って食事をとって傑の部屋に帰る途中、まるでロミオとジュリエットみたいだなって言う彼に、俺はロマンチストすぎると友人の部屋の扉を開きながら言った。
2420「お兄さん、あの方は?」
あの方はどこに行ったのです? 約束したのに。
俺はその問いにすぐに答えられなかった。答えたのは傑だった。あなたの言うあの方は私たちに捕らえられました(私たちが殺しました)。さぁ、怪我を治してもらいましょう。傑の言葉を聞いていた硝子が足を踏み出す。俺はそれを見ていられず、することも出来ることもなく、連続殺人犯のアジトから出たのだった。
呪術師の娘が連続殺人犯、正しくは呪詛師にさらわれたのは、今から一週間前のことだった。俺たちがそれを助け出したのは昨日の話。彼女の残穢をたどって探し出したから任務はそう難しくなく、むしろこんな簡単な仕事を他の呪術師が早急にしなかったことが不思議だった。ただ呪詛師は呪いをかけていたから、最強の俺たち以外の他の呪術師は、そのトラップにひっかかったのかもしれない。それより不思議なのは、少女が今も男を待っているということだ。伝え聞いたところによると、彼女は例の男をいまだに慕って待っているらしい。高専に戻って食事をとって傑の部屋に帰る途中、まるでロミオとジュリエットみたいだなって言う彼に、俺はロマンチストすぎると友人の部屋の扉を開きながら言った。