さよりこ
DONE以前投稿したチョコレートのお話の続きです。mine(昨日のカザマ、可愛かったな……)
仕事終わりにカザマのおじいさんの店に向かう。仕事中は何とかガマンできたが、こうして一人になると、昨夜の恋人の姿を思い出しては口元が緩んでしまう。ワイルド系で売っている人気モデルのNanaの時には見せられない姿だ。
だけど、今の俺は七ツ森。しかもマスクで口元が隠れているとなれば、気持ちも顔も緩んでしまうというものだ。
昔の俺はこうじゃなかった。表情だって豊かじゃないし、テンションだってそんなに高くない。あまり目立たない、どこにでもいる普通の男。だけど高校に入って、友達ができて、恋人ができて……自分でも知らなかった自分をたくさん知った。
「あ」
高校時代に思いを馳せていたら、いつの間にか店の前についていた。そっと中に入ると、カザマはカウンターの近くでお客さんと話をしているようだった。店が閉まるまであと少しある。俺は仕事の邪魔をしないように店の隅に移動した。
1348仕事終わりにカザマのおじいさんの店に向かう。仕事中は何とかガマンできたが、こうして一人になると、昨夜の恋人の姿を思い出しては口元が緩んでしまう。ワイルド系で売っている人気モデルのNanaの時には見せられない姿だ。
だけど、今の俺は七ツ森。しかもマスクで口元が隠れているとなれば、気持ちも顔も緩んでしまうというものだ。
昔の俺はこうじゃなかった。表情だって豊かじゃないし、テンションだってそんなに高くない。あまり目立たない、どこにでもいる普通の男。だけど高校に入って、友達ができて、恋人ができて……自分でも知らなかった自分をたくさん知った。
「あ」
高校時代に思いを馳せていたら、いつの間にか店の前についていた。そっと中に入ると、カザマはカウンターの近くでお客さんと話をしているようだった。店が閉まるまであと少しある。俺は仕事の邪魔をしないように店の隅に移動した。
oredayo_mino
MOURNING七風食堂へ寄稿する予定だったけど暗い気がして没にしたヤツです。長崎皿うどん食べて過去を思い出す七風です。
漫画みたいに、タイムリープ、できたらいいのにね。「皿うどん食べたい」
スーパーで買い物をしていればそんな声が聞こえてきて、玲太はカートを押す手を止めて振り向いた。
声の主は数十種類以上の乾麺が陳列されている棚を眺めていて、その中の一つを手に取ると「ん」と玲太へ差し出した。
「皿うどん? 実、麺類ニガテじゃなかったか?」
「啜るのはね。でもそれはパリパリの麺だから」
皿うどん。魚介や豚肉、野菜がふんだんに使われていて、熱々のあんが揚げ麺に絡み、パリパリとした触感が楽しい長崎の郷土料理だ。玲太も数回食した事があるそれを食べたいとご所望の恋人は短く「ヨロ~」と告げると嬉々とした様子でお菓子売り場へと歩いていく。
(皿うどんねぇ……)
手の中にある袋麺を裏返し、玲太は皿うどんの作り方に目を通す。――あん掛け系の料理は何度も作っているし、材料も冷蔵庫にあるもので代用できる。さほど難しい料理ではない。
3396スーパーで買い物をしていればそんな声が聞こえてきて、玲太はカートを押す手を止めて振り向いた。
声の主は数十種類以上の乾麺が陳列されている棚を眺めていて、その中の一つを手に取ると「ん」と玲太へ差し出した。
「皿うどん? 実、麺類ニガテじゃなかったか?」
「啜るのはね。でもそれはパリパリの麺だから」
皿うどん。魚介や豚肉、野菜がふんだんに使われていて、熱々のあんが揚げ麺に絡み、パリパリとした触感が楽しい長崎の郷土料理だ。玲太も数回食した事があるそれを食べたいとご所望の恋人は短く「ヨロ~」と告げると嬉々とした様子でお菓子売り場へと歩いていく。
(皿うどんねぇ……)
手の中にある袋麺を裏返し、玲太は皿うどんの作り方に目を通す。――あん掛け系の料理は何度も作っているし、材料も冷蔵庫にあるもので代用できる。さほど難しい料理ではない。
さよりこ
DONE米は美味しく炊けた七風の続きです。七ツ森が一人で頑張ります。カザマはやっぱり魔法使いです。文字数かなりオーバーしちゃいましたごめんなさい。
シアワセの味ってたぶんコレ『悪い、帰り遅くなる。昼は適当に食べててくれ』
朝からおじいさんの店に手伝いに出かけたカザマからメールが届いたのは、十一時を過ぎた頃だった。画面に指を滑らせて「了解」と返そうとして、ふと先日買っておいたものの存在を思い出した俺は、その先に一言追加した。
「了解。カザマの分も用意しとく」
キッチンの戸棚から炊き込みご飯の素を取り出す。
先日一緒に料理を作った(と言えるかはわからないが)時に、カザマは俺が炊いたご飯を「うまい」と言って食べてくれた。そこで俺は、コレなら一人でも食事の用意ができるんじゃないかと考えた。
なにせ研いだ米に入れるだけなのだ。米が炊けるなら失敗するハズがない。
さっそくキッチンへと向かい、三合分の米を研ぐ。ちょっと多いかもしれないが、残った分は夜に回せばいい。
1617朝からおじいさんの店に手伝いに出かけたカザマからメールが届いたのは、十一時を過ぎた頃だった。画面に指を滑らせて「了解」と返そうとして、ふと先日買っておいたものの存在を思い出した俺は、その先に一言追加した。
「了解。カザマの分も用意しとく」
キッチンの戸棚から炊き込みご飯の素を取り出す。
先日一緒に料理を作った(と言えるかはわからないが)時に、カザマは俺が炊いたご飯を「うまい」と言って食べてくれた。そこで俺は、コレなら一人でも食事の用意ができるんじゃないかと考えた。
なにせ研いだ米に入れるだけなのだ。米が炊けるなら失敗するハズがない。
さっそくキッチンへと向かい、三合分の米を研ぐ。ちょっと多いかもしれないが、残った分は夜に回せばいい。
whataboutyall
DONE七風食堂 眠れない夜のためのスープ七風食堂 眠れない夜のためのスープ 眠れない夜がある。
カーテンをそっと開くと、午前2時の窓の外にはいくつもの明かりの灯った家があり、その明かりの一つ一つに生活があるのだと、そしてこんな時間まで起きているのは自分だけではないことに、安堵する。
それでも、眠れない夜がある。やらなくていいこと、言わなくていい言葉、やりたかったこと、泣けばよかったこと、逃げ出したあれこれ、追いかけすぎた何か、を思い出し、走って疲れて歩いてしゃがんで、息を吸うより溺れて沈む、眠れない夜がある。
そんなとき玲太は、七ツ森と眠るベッドからそっと抜け出し、ひとりブロッコリーチェダーチーズのスープを作る。明日の朝を正しく迎えられるように。明日の朝、起きる楽しみを心に抱いて今夜を眠るために。
892カーテンをそっと開くと、午前2時の窓の外にはいくつもの明かりの灯った家があり、その明かりの一つ一つに生活があるのだと、そしてこんな時間まで起きているのは自分だけではないことに、安堵する。
それでも、眠れない夜がある。やらなくていいこと、言わなくていい言葉、やりたかったこと、泣けばよかったこと、逃げ出したあれこれ、追いかけすぎた何か、を思い出し、走って疲れて歩いてしゃがんで、息を吸うより溺れて沈む、眠れない夜がある。
そんなとき玲太は、七ツ森と眠るベッドからそっと抜け出し、ひとりブロッコリーチェダーチーズのスープを作る。明日の朝を正しく迎えられるように。明日の朝、起きる楽しみを心に抱いて今夜を眠るために。
ふゆつき
DONE足りない甘味は君で満たしていつもよりタイトな撮影に向けて節制生活を送ってる。風真が作る食事はヘルシーなのに美味しくてとても助かってる。
「でもお前、甘味が恋しいって顔してる」
「うっ……バレました?」
「バレバレ。顔に出過ぎだろ」
食事は文句無しに美味しい。けれど、甘味は別ものなのだ。仕方ないだろ。そんな会話をしてたら余計に甘いものが食べたくなる。餌を前に待てと言われたワンコみたいにうーっと唸ってしまう俺を見て風真は軽く肩をすくめた。
「まぁ、あんまり我慢し過ぎも良くないし、ちょっと待ってろよ」
そういうといそいそと何か作り始めた。ボウルに卵を割り入れる。
「カザマさ、その片手で卵を割るの難しくないの?いつもやってるケド」
「慣れだよ、慣れ」
739「でもお前、甘味が恋しいって顔してる」
「うっ……バレました?」
「バレバレ。顔に出過ぎだろ」
食事は文句無しに美味しい。けれど、甘味は別ものなのだ。仕方ないだろ。そんな会話をしてたら余計に甘いものが食べたくなる。餌を前に待てと言われたワンコみたいにうーっと唸ってしまう俺を見て風真は軽く肩をすくめた。
「まぁ、あんまり我慢し過ぎも良くないし、ちょっと待ってろよ」
そういうといそいそと何か作り始めた。ボウルに卵を割り入れる。
「カザマさ、その片手で卵を割るの難しくないの?いつもやってるケド」
「慣れだよ、慣れ」
むんさんは腐っている早すぎたんだ
DONE七風食堂二つ目。オシャレな料理はオシャレな文を書かれる皆様に託します……
「あっつ!」
「当たり前だろ、焼きたてなんだぞ。気をつけて食えよ」
「あー……舌火傷した……でもやっぱり焼きたて、美味い」
「そうだな」
目の前のカザマは専用のピックで器用にたこ焼きを回転させながら笑う。……あんまそう無防備に微笑まないで欲しい。ただでさえ予定外に今日は二人っきりなワケだし。そもそも今日の発起人はダーホンじゃん? そりゃ急な家の用事は仕方ないけどさ、こんな急に二人っきりにされたらこっちの心臓が持たないんデスよ。
目の前のカザマはそんなこっちの気持ちなんて素知らぬ顔で『焼けたぞ』なんて言いながら俺の皿に焼けたたこ焼きを放り込んでくる。……あーあ。意識してるの、俺だけなんだろーね、コレ。
1209「当たり前だろ、焼きたてなんだぞ。気をつけて食えよ」
「あー……舌火傷した……でもやっぱり焼きたて、美味い」
「そうだな」
目の前のカザマは専用のピックで器用にたこ焼きを回転させながら笑う。……あんまそう無防備に微笑まないで欲しい。ただでさえ予定外に今日は二人っきりなワケだし。そもそも今日の発起人はダーホンじゃん? そりゃ急な家の用事は仕方ないけどさ、こんな急に二人っきりにされたらこっちの心臓が持たないんデスよ。
目の前のカザマはそんなこっちの気持ちなんて素知らぬ顔で『焼けたぞ』なんて言いながら俺の皿に焼けたたこ焼きを放り込んでくる。……あーあ。意識してるの、俺だけなんだろーね、コレ。
araito_00
DONE何本でも…以下略同棲してたのに何か知らんけど喧嘩して今一人で寂しいかじゃま
瓶の中身は、半分だ。
風真はあまり酒を飲む方ではない。付き合いの居酒屋や、接待でいく料亭などでは失礼のない程度に嗜む。料理を邪魔せず引き立てるような辛口の酒はどちらかといえば好きだ。
だからといって、自宅で晩酌をするかといえばまた別の話だ。一人で酒に合う料理やつまみを用意してまで飲むほど、酒の味自体を好んでいる訳でも、酩酊する感覚を楽しんでいる訳でもない。
風真はダイニングに置かれた、カッティングの美しいガラス瓶をじっと眺める。黒々とした液体は、底も先も見えない。嘆息し、用意していたグラスを引き寄せる。そこには既にミルクが注がれており、僅かに波立ち、溢れそうになる。瓶の栓を開けると、ふわり、と嗅ぎ慣れた香りが広がった。
786風真はあまり酒を飲む方ではない。付き合いの居酒屋や、接待でいく料亭などでは失礼のない程度に嗜む。料理を邪魔せず引き立てるような辛口の酒はどちらかといえば好きだ。
だからといって、自宅で晩酌をするかといえばまた別の話だ。一人で酒に合う料理やつまみを用意してまで飲むほど、酒の味自体を好んでいる訳でも、酩酊する感覚を楽しんでいる訳でもない。
風真はダイニングに置かれた、カッティングの美しいガラス瓶をじっと眺める。黒々とした液体は、底も先も見えない。嘆息し、用意していたグラスを引き寄せる。そこには既にミルクが注がれており、僅かに波立ち、溢れそうになる。瓶の栓を開けると、ふわり、と嗅ぎ慣れた香りが広がった。
araito_00
DONE何本でも…投稿していいって…ごめんなさい、この企画好きすぎるんです…
よく分かんないけど同棲はしてる二人
風真は焼き菓子を作るのが上手い。詳しく聞いたことはないが、彼の母親がお菓子を作る人だったらしくその影響だと言っていた。
「今日は何作るの?」
キッチンには卵、砂糖、小麦粉、牛乳、バターが並べられている。だけど大抵のお菓子はそれらの食材で作られるので、七ツ森はまだ、風真が何を作ろうとしているのか分からない。ただ、その食材達が冷蔵庫の中で乏しくなると七ツ森は少しソワソワとする。
なにせ大抵のお菓子は、それらの食材で作られるので。
「マフィン」
風真はそう言って、一つずつ計りに食材を乗せていった。彼の頭の中のレシピに則り、それぞれ分量が揃えられていく。
「丁寧だよな」
「お菓子はそういうもんなの。配合が違うと全然別ものになるか…下手したら失敗する」
1029「今日は何作るの?」
キッチンには卵、砂糖、小麦粉、牛乳、バターが並べられている。だけど大抵のお菓子はそれらの食材で作られるので、七ツ森はまだ、風真が何を作ろうとしているのか分からない。ただ、その食材達が冷蔵庫の中で乏しくなると七ツ森は少しソワソワとする。
なにせ大抵のお菓子は、それらの食材で作られるので。
「マフィン」
風真はそう言って、一つずつ計りに食材を乗せていった。彼の頭の中のレシピに則り、それぞれ分量が揃えられていく。
「丁寧だよな」
「お菓子はそういうもんなの。配合が違うと全然別ものになるか…下手したら失敗する」
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DONE七風食堂:冷蔵庫の残り物でごはん作ってくれ……風真……。明日は買い出しへ買い物に行く日は週に一度と決めている。自宅から徒歩十五分のスーパーは金曜が特売日で、カードで支払うと5%値引いてくれる。一週間分買いだめした食材を小分けにして冷凍し、作り置きのおかずを作っていれば「主婦みたい」と緑の瞳がいつも笑う。
食材がほとんど底をつく木曜は俺の腕の見せ所だった。すかすかの冷蔵庫の中にはシチューの残りとサラダに使ったブロッコリーの残り。冷凍庫の中には食パンとピザ用チーズ。戸棚の中には使いかけのマカロニ。
今日の夕食は決まりだ。残り物を工夫してそれなりの料理に変化させるのは意外と楽しい。まず冷凍の食パンを常温に戻す。その間にシチューをあたため、マカロニを湯がく。マカロニは少し芯がある位でざるに上げ、グラタン皿に盛りつける。その上からブロッコリーを乗せ、常温に戻した食パンを一口サイズに切り、同様に皿に盛りつける。その上からシチューを流し込み、冷凍してあったピザ用チーズを振りかける。それからオーブントースターで約8分焼くだけ。すると、チーズのいい香りに誘われたのか、ふらふらと実がキッチンへやってくる。
1000食材がほとんど底をつく木曜は俺の腕の見せ所だった。すかすかの冷蔵庫の中にはシチューの残りとサラダに使ったブロッコリーの残り。冷凍庫の中には食パンとピザ用チーズ。戸棚の中には使いかけのマカロニ。
今日の夕食は決まりだ。残り物を工夫してそれなりの料理に変化させるのは意外と楽しい。まず冷凍の食パンを常温に戻す。その間にシチューをあたため、マカロニを湯がく。マカロニは少し芯がある位でざるに上げ、グラタン皿に盛りつける。その上からブロッコリーを乗せ、常温に戻した食パンを一口サイズに切り、同様に皿に盛りつける。その上からシチューを流し込み、冷凍してあったピザ用チーズを振りかける。それからオーブントースターで約8分焼くだけ。すると、チーズのいい香りに誘われたのか、ふらふらと実がキッチンへやってくる。
whataboutyall
DONE七風食堂 香港にて点心を食う 英語も繁体字も読めないから、頼むと七ツ森に言われた玲太は、活字のみの注文票を見ながらさらさらと点心のオーダーを書き込んだ。久しぶりに、香港の雑踏が恋しくなったと玲太は七ツ森を誘ってやってきた彼は、行きつけのうまい点心を食わす店に七ツ森を連れて行った。
昼前だというのに店内は満席だった。円卓に白いテーブルクロスがかかり、追加注文できるよう点心を載せたワゴンがテーブルの間を縫うように動く。
ほどなくして彼らのテーブルの上にはいくつかの蒸し籠や皿が並んだ。店員が竹で編んだせいろの蓋を開けると、中から湯気がもうもうと立ち上り、中から小籠包やシュウマイ、海老餃子などが現れる。
レンゲの上に小籠包を載せようと箸でその、つままれたひだをつまみ上げると、たぷりとした肉汁が小籠包の餡のしたの皮にたまり、丸い膨らみを成す。あわててレンゲに載せると、中身の重さに耐えかねた薄皮が破れ、中から油の浮いた胡麻の香りのする薄茶色の肉汁がじわりとにじみ出る。それをすすりながら口の中に運べば、まだ蒸したての餡が熱く、彼らは眉間に皺をよせ、しばらく口をあけて熱い空気を逃がすために無言になる。
873昼前だというのに店内は満席だった。円卓に白いテーブルクロスがかかり、追加注文できるよう点心を載せたワゴンがテーブルの間を縫うように動く。
ほどなくして彼らのテーブルの上にはいくつかの蒸し籠や皿が並んだ。店員が竹で編んだせいろの蓋を開けると、中から湯気がもうもうと立ち上り、中から小籠包やシュウマイ、海老餃子などが現れる。
レンゲの上に小籠包を載せようと箸でその、つままれたひだをつまみ上げると、たぷりとした肉汁が小籠包の餡のしたの皮にたまり、丸い膨らみを成す。あわててレンゲに載せると、中身の重さに耐えかねた薄皮が破れ、中から油の浮いた胡麻の香りのする薄茶色の肉汁がじわりとにじみ出る。それをすすりながら口の中に運べば、まだ蒸したての餡が熱く、彼らは眉間に皺をよせ、しばらく口をあけて熱い空気を逃がすために無言になる。
さよりこ
DONEキッチンの前に立った途端ポンコツになる人が書きました。カザマは魔法使いです。米を炊くのは料理に入りますか??
米は美味しく炊けました「たまには一緒に作るか?」
「え」
まさかのコンビニ行こうぜ、と同じノリだった。
エプロンを持つカザマの隣に並ぶ。自分の家のキッチンなのに、これから料理をするんだと思うとなんだか新鮮な気持ちになる。
「ナニ作るの?」
「ハンバーグ。あと朝作った味噌汁が残ってるから、それも……。だいたいは俺が作るから」
不安が伝わったのか、カザマがエプロンの紐を結びながら「大丈夫だって」と笑顔を向けた。
冷蔵庫からハンバーグのタネを取り出し、慣れた手つきで形を整え、真ん中に凹みを入れる。それから手際よくフライパンにサラダ油を入れ、強火のまま投入する。ジュージューという肉の焼ける音が目の前で繰り広げられる。いつもはカザマの背中越しに聞いている音だった。
992「え」
まさかのコンビニ行こうぜ、と同じノリだった。
エプロンを持つカザマの隣に並ぶ。自分の家のキッチンなのに、これから料理をするんだと思うとなんだか新鮮な気持ちになる。
「ナニ作るの?」
「ハンバーグ。あと朝作った味噌汁が残ってるから、それも……。だいたいは俺が作るから」
不安が伝わったのか、カザマがエプロンの紐を結びながら「大丈夫だって」と笑顔を向けた。
冷蔵庫からハンバーグのタネを取り出し、慣れた手つきで形を整え、真ん中に凹みを入れる。それから手際よくフライパンにサラダ油を入れ、強火のまま投入する。ジュージューという肉の焼ける音が目の前で繰り広げられる。いつもはカザマの背中越しに聞いている音だった。
R_mantankyan
DONE七風食堂🍪参加させていただきます。大幅に文字数オーバーしたけど許して……🙇♂️20ポンドの行方クリスマスまであと3週間ほどとなったある日。ロンドンの外れに佇む小さなスーパーマーケットで、店主の男はオープン前の掃除をして時間を潰していた。平日ともあって外の人通りは少ない。これは暇な一日になりそうだと予感したその時、一台の車のエンジン音が店の前で停まった。熱心な主婦が買い物に来たのかと思って扉の方を見たが、ベルの音とともに入ってきたのは一人のアジア系の男だった。
店主はその男の顔を知っていた。というか一度見たら忘れない外見をしていた。柔和な印象を与えるグリーンの瞳にスッと通った鼻筋。特徴的なピンクの猫っ毛は、襟足だけ黒く無造作に後ろで縛られている。その男を印象づける極めつけは、たまに一緒に来るパートナーらしき男性も美形のアジア人だということだ。
1730店主はその男の顔を知っていた。というか一度見たら忘れない外見をしていた。柔和な印象を与えるグリーンの瞳にスッと通った鼻筋。特徴的なピンクの猫っ毛は、襟足だけ黒く無造作に後ろで縛られている。その男を印象づける極めつけは、たまに一緒に来るパートナーらしき男性も美形のアジア人だということだ。
araito_00
DONE最高企画に参加させて頂きました!みんな…書いて…!!
同棲して何年目かの二人、社会人
(安定の文字数オーバー)
「おかえり」
「…ただいま」
七ツ森の顔には疲れが見えた。彼はここ暫く残業続きで、土曜出勤は常。繁忙期だから仕方がないと割り切ってはいるものの、心身の消耗は激しい。今日も休日出勤を終わらせてきたところで、平日よりは早く帰れているがそれでも時刻は21時をまわっていた。
「飯?風呂?」
「ふろ、」
絞り出した声に被さるように、きゅるる、と間抜けな音がする。風真は思わず吹き出して笑った。
「身体は正直なようで」
「…でも、これから準備してくれるんデショ?待ってるのも何か急かしてるみたいじゃん…」
この頃は帰宅時間が読めず、帰るコールが出来るのは会社を出てからだ。職場まで自転車で五分程のこの環境は有難いが、食事を準備してくれている風真には申し訳ないと、常々七ツ森は思っていた。
1177「…ただいま」
七ツ森の顔には疲れが見えた。彼はここ暫く残業続きで、土曜出勤は常。繁忙期だから仕方がないと割り切ってはいるものの、心身の消耗は激しい。今日も休日出勤を終わらせてきたところで、平日よりは早く帰れているがそれでも時刻は21時をまわっていた。
「飯?風呂?」
「ふろ、」
絞り出した声に被さるように、きゅるる、と間抜けな音がする。風真は思わず吹き出して笑った。
「身体は正直なようで」
「…でも、これから準備してくれるんデショ?待ってるのも何か急かしてるみたいじゃん…」
この頃は帰宅時間が読めず、帰るコールが出来るのは会社を出てからだ。職場まで自転車で五分程のこの環境は有難いが、食事を準備してくれている風真には申し訳ないと、常々七ツ森は思っていた。
むんさんは腐っている早すぎたんだ
DONE同棲中、社会人設定。もっといろんな料理あったでしょと自分でもツッコミたい。
夜の帳の中、小さく虫の音が聞こえる。
(そろそろ寒くなってきたな)
虫の音をBGMにそんなことを考えながら文庫本を読んでいたところ、手元に置いていたスマホが着信音を奏でた。
――今から帰ります
その、一言だけのメッセージ。確認した風真はほんの少し口角を上げ、返信を送った。
――『わかった。夕飯は?』
そのまましばらくスマホの画面を見つめ、既読表示がつかない事に小首を傾げた瞬間、ドアの鍵が差し込まれた音がした。得心がいった風真は肩をすくめて玄関へ向かうと、時を同じくしてドアが開いて恋人である七ツ森がよろめきながら入ってきた。
「んー……ただいまぁ」
「ったく。帰るってメッセージはもっと早く送ってこないと意味ないだろ」
1169(そろそろ寒くなってきたな)
虫の音をBGMにそんなことを考えながら文庫本を読んでいたところ、手元に置いていたスマホが着信音を奏でた。
――今から帰ります
その、一言だけのメッセージ。確認した風真はほんの少し口角を上げ、返信を送った。
――『わかった。夕飯は?』
そのまましばらくスマホの画面を見つめ、既読表示がつかない事に小首を傾げた瞬間、ドアの鍵が差し込まれた音がした。得心がいった風真は肩をすくめて玄関へ向かうと、時を同じくしてドアが開いて恋人である七ツ森がよろめきながら入ってきた。
「んー……ただいまぁ」
「ったく。帰るってメッセージはもっと早く送ってこないと意味ないだろ」