Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    69asuna18

    ジョチェ🛹

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 33

    69asuna18

    ☆quiet follow

    同僚の踪玄と恋人の誕生日の話

    #ソウスズ
    bambooTiles

    「おはよ〜ございます」

    扉を開けて、あくびを1つ。タイムカードを押しながら挨拶をして、中へ入る。いつもなら何人かから挨拶が返ってくるのに、今日は誰も返事をしない。一番乗りだったかなぁと思いながらデスクへ行くと、隣の席に人だかりが出来ていた。珍しい。だってそこは踪玄の席だ。

    「どうかしたんですか?」

    視線をそこへやると、踪玄のデスクの上にはいくつかのケーキが並べられていた。

    「よかったらどうぞ。……感想を教えて頂けたら嬉しいのですが」

    そう言われ、すぐにピンと来た。

    「もしかして、ケーキ作ったんですか?」

    「えぇ、練習しておこうかと思いまして」

    ずっと、相談を聞いていたから、なんのためになんていうのは聞かなくても分かる。恋人の誕生日プレゼントだ。贈るものが無事に見つかったのは良いが、それを恋人より先に食べてしまっても良いものだろうかと差し出されたケーキを受け取るのに、すこし躊躇した。

    「…味は大丈夫だと思いますが」

    「いや、あの……恋人さんより、先に食べてしまってもいいんですか?」

    そう尋ねると、踪玄は今気がついたと言わんばかりに口をあんぐりと開けて、フリーズした。

    「あ、や……そうですね…しかし、美味しくないものを送るわけにもいきませんので…」

    それを言われたらそうなのだが。まぁ、そんな事で怒ったり嫉妬するような恋人ではなさそうだし。

    「僕が秘密にしてたら大丈夫ですね」

    そう笑うと「よろしくお願いします」と踪玄も笑っていた。並べられたケーキはチョコレートとシフォンケーキ。シンプルな方が良いような気もするし、チョコレートが好きなのでそれも一応作ってみましたと説明された。どちらも甘さが控えめなのは、彼自身が甘いものがあまり得意ではないからかもしれない。

    「どっちも、美味しいですよ。もう少し甘い方がコーヒーにはあうかもしれませんけど、お酒とあわせるならこれくらいでも大丈夫かと思います。はじめてでこんなに作れるんですね、すごいです」

    思わず沢山話してしまうくらいには美味しかった。そう言うと、踪玄は恥ずかしそうに小さく笑う。

    「いえ、実は何回か作りまして。……自分で食べるのには飽きてしまって持ってきた……と言ったら笑いますか?」

    肩を竦めて話すその姿は、なぜだかとても愛らしく見えて。

    「いや、恋人さん、愛されてていいなぁと思いますよ」

    そう言うと一層恥ずかしそうに頬を染めて、それを誤魔化すようにデスクの上のケーキを1つ摘んで、口へ頬張った。コーヒーで口を潤して。

    「あぁ、本当に。もう少し甘いほうがいいかも知れないですね」

    そう、まるで独り言のように呟いた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭💗💗👏👏👏🎂🎂🎂☕☺🎂🍰👏👏👏👏👏👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    69asuna18

    MENU新刊『甘い香りに包まれて』

    前回のイベントでのコピー本『花の香りのする方へ』とその続きをまとめたものになります。
    (加筆修正有り)
    コピー本で出したものの、途中までをサンプルとしてアップします😊
    甘い香りに包まれて生を受けた世には、バース性と呼ばれる新たな性別が誕生していた。男女の性別とは別の第二の性。男と女とは別にα、β、Ωと三つの性別が存在し、全ての人間は六種類に分けられる。αはエリートが多く、βは一番多い所謂普通。そしてΩには発情期なるものが存在し、その体質が故に世間から冷遇されている。その為、性別による差別が目立ち、第二性がΩである人は悩みが尽きない。
    生まれ変わる前と違う事象が起きている事に、興味があった踪玄はバース性の研究に勤しんだ。しかし、調べれば調べるほど、その新たに備わった性別が、人間そのものに嫌悪を抱かせる。
    薬を飲み、体調を管理すれば、Ωであっても社会的に問題なく過ごせるはずなのに、理解が進んでない事もあり、定職につくのも難しく給料も少ない事の方が多い。働ける時に働きたいと思う人も多く、病院に定期的に通う人も少なくない。…出来るのは理解のある人間に囲まれていて、給料が安定している者だけ。そのせいで、発情期に倒れたり、身体に合わない安い薬を飲んで体調を崩す者も少なくない。
    13532

    related works

    69asuna18

    DONEブ!ソウスズ
    捏造転生のお話
    【指につながるその先は】の続き。
    赤い糸を信じてた家の蔵の中にあった古い医学書の間から、ひらひらと落ちてきた手紙には。流れるような美しい文字で、まるで恋文のような内容が書かれていて。その宛名にソウゲンは驚き目を見開いた。同時に、今の自分が経験したことの無い、あるはずもない記憶が頭の中へ浮かんできて思わずその場へ崩れ落ちた。ドンと膝をつく。青痣が出来るかもしれないと、膝を撫でながら。流れ込んだ記憶に意識を戻し、なんだったんだと、手紙の文字へ指を這わす。宛名には自分の名前が書かれていた。

    『もう、共に過ごす事は叶わないけど、いつでもあなたの事を思って祈るよ。いつかまたどこかで会えるように。』

    その言葉に、あふれ出した記憶はより鮮明になる。ソウゲンという名から、山南敬助として生きるようになった日の事。そこで出会った最愛の人と自分の最後の事。そういえば、幼少の頃に祖父の葬式に来たお坊さんの袈裟を掴んで離さなかったと母に笑われたな、と。記憶の片隅で彼を思っていたからなんだろうと今なら理解できる。すべてが繋がり、非科学的な事が大嫌いなはずの自分が、江戸時代から生まれ変わった人間なのだと根拠もないのに、納得したのは高校に入る直前だった。
    2266

    69asuna18

    MENU新刊『甘い香りに包まれて』

    前回のイベントでのコピー本『花の香りのする方へ』とその続きをまとめたものになります。
    (加筆修正有り)
    コピー本で出したものの、途中までをサンプルとしてアップします😊
    甘い香りに包まれて生を受けた世には、バース性と呼ばれる新たな性別が誕生していた。男女の性別とは別の第二の性。男と女とは別にα、β、Ωと三つの性別が存在し、全ての人間は六種類に分けられる。αはエリートが多く、βは一番多い所謂普通。そしてΩには発情期なるものが存在し、その体質が故に世間から冷遇されている。その為、性別による差別が目立ち、第二性がΩである人は悩みが尽きない。
    生まれ変わる前と違う事象が起きている事に、興味があった踪玄はバース性の研究に勤しんだ。しかし、調べれば調べるほど、その新たに備わった性別が、人間そのものに嫌悪を抱かせる。
    薬を飲み、体調を管理すれば、Ωであっても社会的に問題なく過ごせるはずなのに、理解が進んでない事もあり、定職につくのも難しく給料も少ない事の方が多い。働ける時に働きたいと思う人も多く、病院に定期的に通う人も少なくない。…出来るのは理解のある人間に囲まれていて、給料が安定している者だけ。そのせいで、発情期に倒れたり、身体に合わない安い薬を飲んで体調を崩す者も少なくない。
    13532