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    69asuna18

    ジョチェ🛹

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    69asuna18

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    同僚の踪玄と恋人の誕生日の話
    ※モブが主役

    #ソウスズ
    bambooTiles

    「誕生日に贈るもの、というのはどういうものが良いのでしょうか」

    ふわりと香るいれたての珈琲の香りに、踪玄の仕事が一段落ついた事を知る。口元からコップが離れたのとほぼ同時に放たれた言葉に耳を疑った。

    「…考えてなかったんですか?」

    有給の申請をして、もう2週間以上。てっきり旅行にでも行くのかと思っていた。

    「有給取ってたし、何処かに出かけるのかと思ってました」

    思ったままを口にした。
    「はじめはそのつもりだったのですが、どうやら前の日に仕事が終わるのが遅いようで。家で過ごす事になったのです」

    こんな事なら休みをあわせておけば良かったのです。などと、小さな声で残念そうに呟いている。デスクの上で光るスマホの画面には、贈り物を探しているのだろう『恋人に喜ばれるプレゼント!』なんて文字が踊っていた。

    「好きなものとか、……あれほしいなぁ〜とか言ったりしないんですか?」

    その言葉に、彼の顔は一層険しくなった。ぐいと珈琲を飲み、未だ力の篭った眉間を指先で解す。

    「それが……そういう事を何も言わない人なのです。…物欲もなく、小生が買いますよと言って断ってしまうので…。本当は旅行先ではめを外して頂こうかと…お酒が美味しい所を探して居たのですが…」

    はぁ、と落胆する声に。仕事より悩んでいるなぁと、大変そうだなぁと思わず苦笑いが漏れた。

    「こんな事、相談してしまい申し訳ないのです。…贈り物など、今まであまりした事がなく…」

    時間が経って、灯りの消えたスマホに再び長い指を添える。ツィっとスクロールしてもなかなか彼のお眼鏡に叶うものは無いようで、何度めか分からないため息は、コップに揺蕩う珈琲を揺らした。

    「…なんでも、嬉しいと思いますよ。こんなに考えてくれてるんだし。ケーキとお酒があれば誕生日らしくていいじゃないですか」

    はははと声を上げて笑うと、ふわりと笑顔が戻る。

    「それもそうですね」

    ツィっと、再びその指がスマホに触れる。同時に其処を眺めていた瞳が一瞬で真剣なものへと変わったのがわかった。

    「とても、いいアイデアなのです。ありがとうございます」

    そう言うと、彼はスマホを定位置に戻し、コップに残った残りの珈琲を飲み干して。いつもの蛇みたいな眼差しで、パソコンへと向かった。
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    69asuna18

    MENU新刊『甘い香りに包まれて』

    前回のイベントでのコピー本『花の香りのする方へ』とその続きをまとめたものになります。
    (加筆修正有り)
    コピー本で出したものの、途中までをサンプルとしてアップします😊
    甘い香りに包まれて生を受けた世には、バース性と呼ばれる新たな性別が誕生していた。男女の性別とは別の第二の性。男と女とは別にα、β、Ωと三つの性別が存在し、全ての人間は六種類に分けられる。αはエリートが多く、βは一番多い所謂普通。そしてΩには発情期なるものが存在し、その体質が故に世間から冷遇されている。その為、性別による差別が目立ち、第二性がΩである人は悩みが尽きない。
    生まれ変わる前と違う事象が起きている事に、興味があった踪玄はバース性の研究に勤しんだ。しかし、調べれば調べるほど、その新たに備わった性別が、人間そのものに嫌悪を抱かせる。
    薬を飲み、体調を管理すれば、Ωであっても社会的に問題なく過ごせるはずなのに、理解が進んでない事もあり、定職につくのも難しく給料も少ない事の方が多い。働ける時に働きたいと思う人も多く、病院に定期的に通う人も少なくない。…出来るのは理解のある人間に囲まれていて、給料が安定している者だけ。そのせいで、発情期に倒れたり、身体に合わない安い薬を飲んで体調を崩す者も少なくない。
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    69asuna18

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    捏造転生のお話
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    『もう、共に過ごす事は叶わないけど、いつでもあなたの事を思って祈るよ。いつかまたどこかで会えるように。』

    その言葉に、あふれ出した記憶はより鮮明になる。ソウゲンという名から、山南敬助として生きるようになった日の事。そこで出会った最愛の人と自分の最後の事。そういえば、幼少の頃に祖父の葬式に来たお坊さんの袈裟を掴んで離さなかったと母に笑われたな、と。記憶の片隅で彼を思っていたからなんだろうと今なら理解できる。すべてが繋がり、非科学的な事が大嫌いなはずの自分が、江戸時代から生まれ変わった人間なのだと根拠もないのに、納得したのは高校に入る直前だった。
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    69asuna18

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    前回のイベントでのコピー本『花の香りのする方へ』とその続きをまとめたものになります。
    (加筆修正有り)
    コピー本で出したものの、途中までをサンプルとしてアップします😊
    甘い香りに包まれて生を受けた世には、バース性と呼ばれる新たな性別が誕生していた。男女の性別とは別の第二の性。男と女とは別にα、β、Ωと三つの性別が存在し、全ての人間は六種類に分けられる。αはエリートが多く、βは一番多い所謂普通。そしてΩには発情期なるものが存在し、その体質が故に世間から冷遇されている。その為、性別による差別が目立ち、第二性がΩである人は悩みが尽きない。
    生まれ変わる前と違う事象が起きている事に、興味があった踪玄はバース性の研究に勤しんだ。しかし、調べれば調べるほど、その新たに備わった性別が、人間そのものに嫌悪を抱かせる。
    薬を飲み、体調を管理すれば、Ωであっても社会的に問題なく過ごせるはずなのに、理解が進んでない事もあり、定職につくのも難しく給料も少ない事の方が多い。働ける時に働きたいと思う人も多く、病院に定期的に通う人も少なくない。…出来るのは理解のある人間に囲まれていて、給料が安定している者だけ。そのせいで、発情期に倒れたり、身体に合わない安い薬を飲んで体調を崩す者も少なくない。
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