暁人が借りてきた映画のラインナップを見て思わず眉をひそめる。
「だって夏といえばホラーじゃない?」
ったく誰が決めたんだよ、そんなこと。
オレの気も知らず暁人はいそいそとプロジェクターの電源を入れ部屋の照明を落とし、定位置につく。
テーブルの上にはいつの間にか和歌コーラの缶が2つと開かれたウーマチップスが並べられていた。
オレはなぁ、こういうのが苦手なんだよ。
もともと「視る」ことができる体質のオレは並み大抵の怪奇現象で驚かされることはない。だいたいあの手のモノは居そうなところにいるし、よっぽど厄介なやつじゃない限りわざわざ脅かしに来るやつなんかそうそういない。
しかし映画は違う。
暁人がリモコンのボタンを押すと画面いっぱいにおどろおどろしいタイトルが表示された。
──エンドロールが終わりディスクのメニュー画面に戻る。
「KKって実はこういうの苦手だったりする?」
んなわけねぇだろ、とオレが言いかけたところで暁人の指がオレの左手の甲をトントンと叩く。
「結構、力入ってたよ」
暁人の視線をたどるとオレの左手が暁人の右手をしっかり握りしめている。暁人は嬉しそうに身を乗り出すとこう囁いた。
「そういえばさ、幽霊って下ネタ言うと近づいてこないんだって」
おいおい、どんな都市伝説だ。それで幽霊が祓えるならオレたちはとっくに失業してるぞ。
「本当かどうか試してみない?」
…そうだな。
どちらにせよ。今夜は眠れなさそうだ。