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    ねこまんま

    @GWT60624633

    GW:T K暁
    ねこが自分の食べたいものを自炊するところ🍙

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    ねこまんま

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    お盆に里帰りするだけの話。

    #K暁

    インターホンが鳴る。何か頼んでたっけ?と暁人が通話ボタンを押すが返事はない。
    今時ピンポンダッシュなんて…と思ったがそういえば逃げゆく足音もなかった気がする。様子を窺っているのだろうか。
    無視しようかとも思ったが子供の悪戯なら注意しなければいけない。
    そう思って玄関へ続く廊下への扉を開きギョッとした。

    玄関の上り框に男が腰を下ろしている。昨晩鍵はかけたはずだ。それ以降家からは出ていない。空き巣狙いだろうか。連休中は特に増えるらしい。
    息を殺して男の様子を窺っていると男もこちらに気づいたらしく視線がぶつかった。

    「…KK?」見知った顔がそこにある。KKと呼ばれた男は右手を小さくあげ軽い挨拶をする。

    「…お盆だから帰れって追い出されたんだけど、他にいくあてがな…って痛てっ」
    暁人は軽くエーテルショットをKKの右頬に当ててやる。ダメージが入ったということはどうやら本物の霊体らしい。
    「ご挨拶だな。どうせ誰もいないんだろ、上がるぜ」
    幽霊は律儀に玄関で靴を脱ぐと頬をさすりながらリビングに上がっていく。
    あの夜から約一年…。一体何故ここに…?いろいろな疑問が頭に浮かんでは消え、浮かんでは消え。ぽかんとしている暁人を気にする素振りも見せず、幽霊は勝手にインスタントコーヒーを淹れリビングのソファに座り、テレビの電源をつける。

    「死んだ後の裁判ってよ、いきなり閻魔様の前に連れて行かれるわけじゃねえんだ」
    閻魔様の判決を受けるまでに何段階かの審査をあらかじめうけておく必要があり、きちんと供養された亡者はファストパス方式でどんどん先へ先へと進んでいくが、そうでない場合は延々とスタンバイ列で待つことになるらしい。
    「しかもオレは死に方が普通じゃなかったからな、前例がないってことで審査に時間がかかるんだよ」
    「そこは自慢する所なのかな…」得意気に話すKKの顔を見てようやく暁人は口を開くことができた。

    「で、お暁人くんは元気でやってるのかな?」
    「元気、といえばまぁ元気かな…」
    KKが抜けた後も霊力が多少は残っていること。たまにエドたちと連絡をとり、仕事の合間にゴーストバスター稼業もこなしていることを端的に説明する。
    「KKが遺していった依頼がようやく全部片付いたよ」
    「ありがとな」
    優しい声色に暁人の頬も緩む。

    しばらくの沈黙。テーブルの上に載せられたKKの手に暁人は思わず自分の手を重ねた。

    「冷た…くない」
    霊体とはガスのようなものだとばかり思っていたためKKが実体を持っていることに暁人は驚く。

    「ま、オレは特別だからな」曰く、般若に力を植え付けられて以降半死半生のような存在になっていたが、そのせいで死んだ後も完全に死にきれず九割九分死一分生程度の割合で「生きている」らしい。

    「じゃあずっとこのままここにいてよ」

    思わず暁人の口から本音が溢れた。あの時言えなかった言葉。

    「…悪いが、それは流石に無理だな」
    死者と生者の間にいつまでも漂っているわけにはいかない。いつかどこかできちんと隔たりを造らなければならない。

    「ま、しばらく裁判は進みそうにないしな。暁人くんが寿命を迎えるまではこうして来れるんじゃないか」

    そういって暁人の唇に唇を重ねる。暁人が長く長く、焦がれていた感触。

    「一年に一度の再会…まるで織姫と彦星じゃないか」
    「そういう気障なセリフが出てくるところ、変わってないね」

    ─続きはベッドでしようか。
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    りんご

    DONEまじない、あるいは、のろい (ここまで読みがな)
    K暁デー「スーツ」
    お題的なこともあって結婚と葬送の話をどっちも書きたかっただけです。あっきーがバカ重い感じですが、その環境ゆえにうまく隠すことがうまかっただけで彼の本質はこうだろうなーとか思ったり。いつものごとく二人で喧嘩して、戦って、駆け抜ける話です。
    中の人本当にありがとうございました、お陰で細々と楽しくK暁を追いかけられました。
    呪い短くも長くもない人生を振り返るにあたり、その基準点は節目にある行事がほとんどだろう。かくいうKKも、自らのライフイベントがどうだったかを思い出しながら目の前の光景と類比させる。
    準備が整ったと思って、かつての自分は彼女に小さな箱を差し出した。元号さえ変わった今ではおとぎ話のようなものかもしれないが、それでもあの頃のKKは『給与三ヵ月分』の呪文を信じていたし、実際差し出した相手はうまく魔法にかかってくれたのだ。ここから始めていく。そのために、ここにいる隣の存在をずっと大事にしよう。そうして誓いまで交わして。
    まじないというのは古今東西、例外なく『有限』である。
    呪文の効力は時の流れに飲まれて薄れてゆき、魔法は解け、誓いは破られた。同じくしてまさか、まじないの根本に触れることになるだなんて思わなかった、ところまで回想していた意識を、誰かに強い力で引き戻される。
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