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    yuno

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    yuno

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    男やもめ江澄な曦澄の続き。葬儀の悲しみから少し落ち着いた頃あたりです。藍曦臣の独白ターンで、気遣う曦臣と立ち直ってく江澄。まだ関係深めは蝸牛の歩みです。曦臣も無自覚。

    #曦澄

    【曦澄】もう一度 #2気丈な人の気落ちした背中が胸に痛く、少しでも慰めになればと、あれから季節の折には文を送り、子供たちへと菓子を贈った。
    そんなこちらの気遣いを、江晩吟は丁重に受け取ってくれた。
    返礼の文に添えられた、子供たちが菓子を喜んで食べていた様子に藍曦臣も慰められたように思う。
    葬儀で目にした幼子たちは、突然の母親の死に戸惑い、嘆き悲しみ、怯えているようにも見えた。
    おそらく初めて触れたであろう死というもの。喪失の悲しみや寂しさに加え、何か得体の知れない恐れを感じ、父親の傍を離れなかった姿を思い出す。不安に怯える幼子の姿を見るのは心苦しい。そんな子供たちを、決して失うまいと抱き寄せていた彼の人の腕もまた震えていたのを覚えている。
    その幼子たちが菓子を喜んでくれたという。子の笑顔はきっと彼の慰めにもなったことだろう。

    手紙には、藍曦臣の気遣いのお返しにと、蓮花塢に招きたい旨が記されていた。
    葬儀からもう半年。季節が巡り、もうすぐ夏になる。蓮の開花の時期だ。
    湖一面に広がる蓮の花はさぞ美しく見応えがあるだろう。
    蓮は泥に染まらず美しく咲く花。強く清らかな花が彼らを慰め、励ましてくれるに違いない。

    「……」

    一度だけ蓮花塢の蓮を見たことがある。婚儀の折、客房に泊めて貰い、翌朝案内してもらった。蓮の開花はここ蓮花塢の朝の宴なのだと江晩吟は誇らしげに笑っていた。
    湖一面を覆い尽くす、言葉を失うほどの美しい神秘的な光景。彼の人の満ち足りた微笑み。在りし日の幸福の記憶だ。

    その思い出の場に、もう一度招かれる。
    その場に自分を招いてくれるのかと、光栄に思うとともに、身の内に留まらず、客人を招ける江晩吟の心の強さを見た気がした。

    彼は立ち直り、思い出に浸り留まることなく、再び前を向いて生きていこうとしている。
    悲しみに暮れるのではなく、こうして自身を労った者に感謝し、礼を返そうと心を配っている。文にも、今を生きる子らの姿を見る姿勢があった。

    「やはり貴方はお強い。今を生きる方だ」

    知らず、笑みが浮かんだ。
    宗主として、また共に戦線を潜り抜けた者として、これまで浅くはない縁があったと思う。
    思い出すのは気丈に前を向く背中と、真っ直ぐに見据える眼差し。涙し、慟哭する姿を見たこともあったが、彼の目は常に前を向き、生きている今を見ていた。

    「まるで蓮の花のようだよ」

    苦難に挫けることなく、面を上げ、強く生きる。その姿は美しい。
    その強さに、美しさに、時に驚かされ、時に眩しく、また励まされたことを思い出す。

    「もしかしたら、慰められているのはまた私の方なのもしれないね」

    在りし日を懐かしみながら、藍曦臣は江晩吟の筆跡をそっと撫でた。
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     藍曦臣は眠っただろうか。
     江澄はそろりと帳子を引いた。
    「藍渙」
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     —— 1731

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     当然、その噂は雲夢江氏の宗主の耳にも届いた。
     江澄は鼻で笑っただけだった。

     ところが、江澄が噂を耳にしたその数日後、姑蘇からはるばる客がやってきた。
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    「何故、お前が来る。含光君はどうした」
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    「雲夢の酒が飲みたいんだよ。これはお前の分。俺はいつも飲んでるからな」
     江澄は遠慮せずに天子笑を盃に注いだ。
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     しばらくは二人ともが無言であった。落花生の殻がただ積まれていく。
    「なあ、噂なんて気にするなよ」
     だしぬけに魏無羨が言った。
    「気にしていない」
    「嘘だね。じゃあ、なんで、沢蕪君に別れようなんて文を出したんだ」
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