ロールキャベツはお好きですか? その後ダイとポップが不思議な体験をしたその数日後──
その夜も、彼らはポップの部屋で、熱い濃厚な夜を過ごしていた。
あの不思議なお姉さん達に貰った例のアイテムだが、その夜再度使用され、例によってドロドロのベチョベチョになってしまったのだった。
そして事後──
「うわっ……またコレ、デッロデロになってんなぁ……」
ポップはソレを指先で摘みながら持ち上げる。
「ソレ……明日どうやって部屋に持って行こう……」
ダイはそのアイテムを見て、困惑の表情を浮かべた。
初めてソレが使用された際はダイの部屋だったので、ダイがそのまま部屋の洗面所で洗濯をして、乾かし、仕舞っておいたのだ。
だが、ここはポップの部屋。
明日の朝にはカッピカピの状態のソレを、そのまま部屋へ持っていくのは、リスクが高い。
「あー……じゃあおれが洗っといてやるよ。今度からは、その部屋のヤツが洗濯することにしようぜ」
「うん。ありがとう」
ポップの提案にダイがニコッと笑い、ぎゅっと抱きつく。
ポップもそんなダイを抱きしめ返すと、ダイの首元に顔を埋めた。
ピリッと一瞬、ほんの僅かな痛みが走る。
「?」
「こないだゴメに噛ませただろ?今度はちゃんとしたヤツ付けたんだよ」
「……キスマーク?」
「そ。おんなじ所な」
そう言ってポップはニッと笑い、自分の首の斜め後ろ辺りを指でトントンと叩いた。
ダイはその仕草に頬を染め、同じ箇所を手のひらで押さえる。
「お、おれもやってみたい!」
「お、そうか?」
ダイがポップの胸元に唇を寄せ、ちゅ、と吸うもなかなか上手くいかない。
「あれっ?……あれっ?」
「ははっ。くすぐってぇよ」
「むーっ!」
「要練習、だな。さ、そろそろ寝ようぜ」
そしていつものように二人抱き合って眠りについた。
そして翌朝──
ダイが目を覚ますと、いつもとは少し体勢が違っていた。
大抵は、目を覚ますと目の前に意外と逞しいポップの胸筋があるのだが、今朝は珍しくダイがポップを胸の辺りに抱き込むように眠っていたのだ。
安らかな顔で眠りにつくポップを暫し堪能したダイは、ふと昨夜の事を思い出した。
──こっそり……付けちゃおうかな……!
いつもならば届かないポップの首の斜め後ろ辺りに唇を寄せ、吸ってみるがやはり上手くいかない。
──あれぇ?
何度かそうやっているうち、ダイは誤って爪でその辺りを引っ掻いてしまった。
──あっ、しまった!……痛かったかな……?
そうっとポップの顔を覗くと、まつげがふるりと震え、ポップが目を覚ました。
「ん……何やってんだ……?」
「な、なんでもないよっ!」
キスマークをつける練習をしていたけれど、やはり上手くいかなかった事を知られるのが恥ずかしく、ダイはその事を誤魔化した。
が、ポップは目覚めの瞬間、チリリと肩口に僅かな痛みを感じていたので、ダイがこっそり同じ場所にキスマークを付けたのに恥ずかしくて言えないのだと思ったのだった。
──なんだよ……可愛いことしやがって……。
「そうか……?おはよう、ダイ」
「ん。おはよ、ポップ」
可愛い恋人の行動には敢えて触れず、ポップは目覚めの口づけを交わした。
朝食後部屋に戻ったポップは、やはりカッピカピになっていた例のアイテムを丁寧に洗濯し、洗面所にソレを干した。
そして、部屋を清掃に来たメイドが入らないよう、洗面所のドアに
「掃除は不要!!!」と張り紙をしておく。
「……よし」
これで大丈夫。そう、思っていたのだ……彼は。
彼は知らなかった。
メイドの認識として、掃除とゴミ捨ては別の項目である事を。
その日の日中──
パプニカ城主であるレオナは、城内のざわついた雰囲気を感じ取っていた。
なにやらメイド達が騒がしい。
妙に浮ついたというか、色めき立っているように思えたのだ。
執務室を抜け出し、こっそりと彼女達の話を盗み聞きする。
決してそれが面白そうな話だと思ったからではない。
そう、城主として、使用人達の行動は逐一把握しておかねばなるまい、と思っての行動だ。
再度言っておくが、誓って、話のネタになりそうだとかを思っての行動ではない。
そんな、まるで城主とは思えぬような動きでコソコソと物陰に隠れるレオナの耳に、「女性を連れ込む」という言葉が聞こえてきて、彼女は眉を顰めた。
彼女が求めているのは、「誰が誰を好きか」だの「誰と誰が付き合っている」だのといった情報であって、「女性を連れ込む」という、パプニカ王家や勇者一行のイメージダウンに繋がるような情報ではないのだ。
──全く……!誰よ、そんなおかしな行動してるのは……!
「ちょっと、あなた達……」
レオナは詳しく話を聞くため、ヒソヒソと噂話に没頭しているメイド達の元へと近づいていった。
数分後──
メイドから話を聞いたレオナは、頭を悩ませながら執務室へと向かっていた。
──まさか、彼が連れ込むなんて……!考えられないけど、念の為確認だけはしておく必要があるわね。
さてどう確認するか……そう思いながら歩いていると、今度は別のメイド達が、その「彼」の噂をしていた。
──ああ、もう……!
だが、先程のメイド達とは違い、こちらの彼女らは妙にはしゃいでいる。
──なんだか様子が違うわ……何かしら?
再び物陰に身を潜め、話を盗み聞きする。
バダックやアポロあたりが見れば確実に小言を貰うであろう行動だが、幸いにも辺りに人影は見当たらない。
彼女らの噂話は、やはり「彼」の話だった。
だが、およそ彼とは結びつかぬ単語が聞こえ、レオナはギョッとし、直ぐ様彼女らに話を聞いたのだった。
夕方──
レオナに呼ばれ、ダイは執務室のドアを、コンコンコンと小気味よく叩いた。
どうぞ、とレオナの声が返ってきたため、ダイはガチャリとドアを開け中へ入る。
「ああ、ダイ君。ごめんなさいね、急に呼び出したりして」
「ううん、気にしないで。何かあったの?」
「ええ……ダイ君に、聞きたい事があって」
「聞きたい事?」
「ええ、そうよ。あたしに、知っている事を教えて欲しいの」
レオナは神妙な顔で、ダイに言った。
──レオナ……ものすごく真剣な顔だけど、何があったんだろう。
思わずダイも、キリリと顔を引き締める。
「正直に答えてちょうだいね」
「う、うん……」
「あのね……ポップ君って、誰か女性と懇意だったりするのかしら?」
レオナからの思わぬ質問に、ダイはきょとんとした。
レオナがメイドの噂話で聞いた「彼」……それはポップの事だった。
そしてポップについて知りたいのなら、相棒のダイに聞くのが一番早い、そしてダイならばきっと素直に答えてくれる……そう思っての判断だった。
「えっ?ポップ?こんい?」
「ええとつまり……付き合ってる女性はいるのかしら、って事」
「えっ!?付き合ってる……女性⁉」
「そう。ダイ君は知ってる?」
──知ってるも何も、ポップと付き合ってるのはおれ、なんだけど……。
ダイもポップも、実は二人の仲を公言していない。
というのも、付き合う以前から二人は互いの部屋で一緒に寝る(この場合は文字通り就寝する事を意味している)仲だったので、付き合うようになっても傍目にはしている事は全く変わらないように見えるというのが理由の一つで。
もう一つ──これは主にポップが思っていることだったが──バレると色々と面倒(特にこの城の城主には)だからという理由があった。
なので、ダイは嘘は言わずに答える。
「ポップが付き合ってる女性はいないと思うよ」
「そう……やっぱりそうよね。それじゃあ……」
少しだけ安堵の面持ちを浮かべたレオナが、今度は何かを期待するような目で、ダイを見つめた。
「ポップ君って……女装癖があったりするのかしら」
「じょそう……へき?」
「女の子の格好をするのが好きか……って事よ!」
興奮気味に、レオナがずいっとダイに顔を近づけた。
「えぇえーそ……それは……」
少なくとも、普段の旅人の服姿はもちろん、共に夜を過ごす時の事は分かる。
もちろん、彼は女の子の服など着ない、いたって普通の男だ。
だが……とダイは不安になった。
ダイとて、四六時中常に彼といる訳ではない。
ポップが自分といない間に……、もしくはあの旅人の服の下に、そういうものをこっそり身につけていたとしたら……!?
通常であれば、そういった人物は滅多にいない筈なので、そんなおかしな考えには至らないのだが、生憎ダイは、最近そういう人物達と出会ったばかりだった。
それ故、またもや彼は正直に答えた。
「そんな事ないと思うけど……でもおれの知らない所でどうなってるかまでは……」
「やっぱりそうよね」
目を爛々と光らせて、レオナはダイの言葉に大きく頷く。
「あたしとしてはそんな偏見は持ちたくはないんだけど、そうじゃない人もいるだろうから、そうだとしたら何かしらの対策をしたほうがいいわよね……」
彼女はもっともらしい言葉を言いながらも、ニヤニヤとした笑みを浮かべていた。
「ありがとう、ダイ君!助かったわ」
そう言ってレオナは一方的に話を終わらせてしまった。
レオナの執務室から出ると、ダイは途方に暮れた。
ポップが女の人と付き合っている……その可能性はないはずだ。
それぐらい、ポップに愛されている自覚はある。
だが……もう一つの可能性は……?
──ううん!もしそうだったとしても……ポップはポップだもん!でも……やっぱり気になる……!……よしっっ!!
その夜──
ポップはダイの部屋に向かう前に、洗面所を覗く。
布面積の小ささと、その素材のおかげかすっかり乾ききった例のアイテムを取り、夜着のポケットに忍ばせた。
流石に2日連続で使用するつもりはないが、ダイに返却しておく為だ。
──さぁーて、今日はどうすっかな……。そうだ……!もうちょい跡、付けちまうってのもいいかもな……。
頬を緩ませながら、ポップはダイの部屋へ向かった。
ダイの部屋へ向かうと、いつも気恥ずかしげに迎えてくれるダイが、今日は深刻な顔をしていた。
先程部屋の前で別れた時の態度は普通だったのに、だ。
だが待てよ……とポップは思った。
──こいつ……何か言いたげな顔ずっとしてなかったか……?まさか別れ話……いや、そんなハズはねえ!おれたちはこんだけ毎日イチャついてるんだぜとにかく……もしまた何か悩んでんなら、ちゃんと話聴いてやらねえと……!
そう考えたポップは、ベッドの上に正座をしたダイに倣い、自分もその正面に正座した。
だが、夜着のズボンがもたついていた為、先に例のアイテムを返却しておく事にした。
「ほら……これ、もう乾いてたぜ」
「あ……!うん……ありがとう」
ダイはなにやら複雑そうな顔でソレを受け取り、脇に置いた。
「で、どうした?……またなんか悩んでんのか?」
「あ……あのさ……」
ダイは少し目を泳がせた後、上目遣いでポップに尋ねた。
「ポップも……やっぱりつけたい?」
──例のこのアイテムを。
ダイはそう尋ねたつもりだった。
一方ポップは、先程今夜のプレイを考えていたところだったので、ダイがタイミングよくちょうどその話をしてくれたと思った。
「そりゃまあ……つけたいかつけたくないかって言われりゃあ、つけたいよな」
「……!そ、そうなの……!?」
ダイはショックだった。
──まさかポップにもそんな趣味があったなんて……!
「ん?だって好きだったらつけたいと思うのが当たり前だろ?」
「す、好き!?好きなの!?ポップ!?」
必死の形相で尋ねてくるダイに、ポップもこれはただ事ではないと悟る。
──何を不安がってるのか知らねえが……ちゃんと伝えてやらねえと!!
そしてポップはダイの両肩を掴み、ダイの両目を見てはっきりと伝えた。
「ああ……!心の底から、おれは愛してるぜ……!!」
──キマった……!!!
ポップは心の中で、ガッツポーズをした。
一世一代の愛の告白だ。もうこれはプロポーズと言っても過言ではない。
だがプロポーズされた方のダイは、顔を蒼白にして、ふらりとよろめいた。
──し、知らなかった……!ポップがそんなにコレのことが好きだったなんて……。
そして、一番最初に身につけたのが自分であったことを、心の底から申し訳なく思った。
「ご、ごめんよ、ポップ……。おまえの気持ちも考えないで、おれ、勝手につけちゃって……」
しゅんとして謝るダイに、ポップは慌てる。
今朝の事を謝るのは筋違いだ。
ダイの可愛らしい行動に、ポップも胸が高鳴ったのだから。
「お、おいおい……!何を謝ってるんだよ。おれはなあ……おめえがつけてくれて嬉しかったんだぜ?」
「え……そ、そう?」
「ああ。だからなーんにも気にすることはねえ。寧ろじゃんじゃんつけてくれってお願いしたいくらいだぜ」
「そっか……よかった」
ポップの言葉にダイは胸を撫で下ろした。
「でも、今度からはおれも勝手につけさせてもらうからな?」
「えっ……⁉」
──勝手に……つける!?
「つけるって……ポップが……?」
「当たり前だろ。他に誰がつけるんだよ」
「そ……そうなんだ……。あの……出来れば、先に教えて欲しいな……」
平然としているポップとは対照的に、ダイは気弱に言った。
抱かれに行った先で、これから自分を抱こうとする者が、アレを身に着けているというのはなかなか心臓に悪い。
そんなダイの態度に、ポップは少々ムッとした。
──なんだよ、ダイのやつ……!さっきからおれの気持ち、全っ然理解してねえじゃねえか……!
そう、全然理解していないのである。
ただし、ポップもまた、ダイの思考を理解していないのであった。
ポップは考えた。
どうしたらダイに納得してもらえるのか……。
そして考えた末、こう告げた。
「んじゃあ……ちゃんとおれにつけてくれねえか?」
「ちゃ、ちゃんと……つける?」
「ああ……勝手につけるのはおれもとりあえずやめるから、その代わりおめえ、おれにつけてくれよ」
「おれが!?つけるの!?ポップに!?」
「ああ……ほら」
そう言ってポップは自ら夜着を胸元まで捲りあげた。
「……っっっ!!!そ、れは……ちょっと……今、は……」
とりあえず、待って欲しい。
アレをつけたいほど愛してるという発言に動揺している今、流石にソレをつけてあげる勇気をダイは持ち合わせていなかった。
あまりにも戸惑っているダイの様子に、ポップもダイを急かすことはやめようと思った。
別れ話など危機的状況の話ではないのだ。
ダイの心の準備が整った時にでも、ゆっくり手解きをしてやればいい。
「分かったよ。焦ることはねえ。ゆっくりやってこうぜ……な?」
「うん……ごめんよ、ポップ」
なんとかその場は収まった二人は、その後いつも通りの甘い夜を過ごした。
翌日──
沈んだ表情で、ダイはレオナの元を訪れた。
「あのさレオナ……昨日レオナが言った事……本当だったみたい」
「……!!!そ、れって……」
「ポップ……女の子の服を着るの、好きだって」
「そ……そう、だったの……」
「うん……」
「で、でも……っ!お願いだよ……あいつの事……!」
どうかおかしな目で、見ないで欲しい。
そう言いかけたダイの口を、レオナの手がそっと塞いだ。
「分かってるわ。あたしはそんな事で彼を嫌いになったりしないわ。もちろん、みんなもね」
「レオナ……!」
「でも、知らない人にわざわざ知らせる必要もないでしょうから、これは私達の胸に留めておきましょうね……!」
「そうだね……!ありがとう、レオナ」
例え彼にどんな趣味があろうとも、自分達は態度を変えたりしない……!!!
ダイとレオナは、そんな新たな決意を胸に、顔を見合わせ頷きあった。
さらに翌日──
「なんだよ、姫さん。おれに用って」
「ごめんなさいね、どうしても君に渡しておきたい物があって」
レオナは執務室へポップを呼び出した。
「渡したい物?」
「そう。……どうかこれを受け取ってちょうだい」
そう言ってレオナは、綺麗にリボンが巻かれた、白い箱を手渡す。
中身は随分と軽い。
「なんだよ、コレ?」
「それはあたしの気持ちよ……ポップ君」
だがしかし、プレゼントと言うには硬い表情でレオナは告げる。
「あたし、ダイ君から聞いてしまったの……君が隠している事を」
「……!!ダイから……!?」
ポップがレオナに隠していて、なおかつダイも知っている事と言えば一つしかない。ダイとポップが付き合っている、という事だ。
「そうか……ダイのやつ、姫さんに言っちまったのか……!」
「じゃあ、やっぱり……」
「……悪りいな、姫さん。わざわざ言いふらす事でもねえと思ったんだが……」
「ううん、いいのよ……!そんな事、気にしないで」
「姫さん……」
「あたしはそんな事で君への態度を変えたりはしないわ。……あたしは君の味方よ」
「いいのか……?」
「ええ!知ってしまったからにはもうどうしようもないもの」
ポップはレオナに感謝した。と同時に、なんと潔いのだろうと感心した。
──かなわねえなぁ……姫さんには。
「……ありがとよ……姫さん」
ポップの言葉にレオナはにこりと笑う。
「でもね、あまりにもおおっぴらにされると、やっぱり風紀が乱れるっていうか、気まずいっていうか……」
「ああ、そりゃ分かってるって!目立つようにはしねえつもりさ」
「助かるわ。ポップ君ならそう言ってくれると思って、それを用意したの。……よかったら、使ってみて」
「そ、そうかい……?んじゃまあ、ありがたくもらっとくな」
ポップは明るく礼を言うと、部屋を出ていく。
「あ!後で感想聞かせてよね!!」
レオナはそう言って、ポップを見送った。
ポップは自室に戻ると、早速レオナに貰った箱を開けてみることにした。
リボンを解き、蓋を開けると、それは薄い柔らかな紙で包まれている。
「なんだ?使ってみて……って姫さんは言ってたが……」
包み紙をそっと開ける。
淡いグリーンの柔らかな生地で出来た、小花の刺繍があしらわれた丸みを帯びたお椀がふたつ。
そして、同じグリーンの生地の、真ん中にオレンジ色の小さなリボンがついた、横長の逆三角形。
見覚えのある物と似た形の…だがそれよりかは上品で可愛らしい物がそこに納まっていた。
「な……な……」
──なんで……こんなモノ……!!!
ポップは絶句した。
趣味は……悪くはないと思う。
だが、問題はなぜこれを贈ってきたか、だ。
──コレを贈るんなら、おれより寧ろダイに……!
そうポップは思ったが、いや待てよ、と考えを改める。
こういった話題は大好物の姫だ。
──これはアレだな……つまり、おれが、ダイに着せてやれってそう言うことか……?
はっはーん、とポップはにやりとした。
──なるほどな……まあそれなら悪くねえな。
両手でそれを目の前に持ち上げ、ソレを着用した恋人の姿を想像する。
──うん……エロさは減るが、可愛らしくて似合ってんじゃねえの?
今夜にでも着せてみるか、そうニヤニヤと締まりのない顔で笑うポップだったが、まだ彼は知らない。
数秒後、部屋の扉がノックされている事に気づくのが遅れたせいで、いつもの時間に部屋を掃除にしたメイドに、その姿を見られてしまう事を。
必死の形相で口止めをするも、それが却って噂に真実味を持たせてしまう事を。
そして、数日後、ようやく全ての誤解が解け、改めて秘密を公表する羽目になる事を。
終
ポップ君は色々と頑張ってくださいo(^o^)o!!!