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    last_of_QED

    @last_of_QED

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    8/25フェンリッヒ🐺誕生日おめでとう🎉🎂
    誕生日のお祝い、その起源を君は知っているかい?

    #ディスガイア4
    disgaea4
    #フェンリッヒ
    fenrich.

    825【825】



    「フェンリっち! 誕生日おめでとー!」
    「デス!」
    「……何処から聞きつけて来た」

     キラキラとした瞳の少女二人と苦い顔の狼男。此処は魔界の果て、地獄。しかしその様相は常とは少し違っていた。拠点はささやかながら飾り付けられ、掲示板には「Happy birthday フェンリっち」の文字。クラッカーが鳴り、中央テーブルには毒々しいホールケーキとティーカップ、数え切れぬほどの蝋燭が準備されている。

    「人間は昔からこの手のものが好きだな。まさか現代ではキンダーフェストが成人にまで広がっているのか?」
    「キンダーフェスト?」
    「2000歳を超えた大人が、それも"悪魔"の俺が祝福されるなど、片腹痛い」
    「クク、かつては人間の心にそのような畏れもあったな。今となっては……このザマだが」

     眷属の蝙蝠と共に音も無く現れた吸血鬼が人間の少女と妹を見て笑う。あどけない二人の表情は、少なくとも畏れとは反対のもの。何者かを祝わんとする、わくわくと喜びに満ちた顔。

    「フェンリッヒよ、昔在った文化が今も続いているとは限らんぞ。特に人間界の変遷は目まぐるしい。お前の言う風習は最早姿を変え……一種のパーティーのようなものとして根付いてしまっているようだ」
    「閣下直々のご説明……痛み入ります。ところでこのちんけな装飾に心当たりはございますか?」
    「だから! フェンリっちの誕生日のために準備したんだって言ってるでしょ!」
    「ちっとも聞いてないデス」

     お前も歳をとったということだなと、唯一訳知り顔の吸血鬼が笑う。一方で不満そうなプリニー帽の少女は口を尖らせた。

    「ねえねえ、キンダーフェストって? フェスティバル……お祭り?」
    「ああそうだ。人間の子どもを拐う、楽しい祭さ」
    「ちょ、ちょっと……誕生日がなんでそんな物騒な話になるのよ?」

     たじろぐフーカを揶揄うように狼男はにやり笑い、その先を話そうとしない。デスコもおどおどと不安げだ。見かねた吸血鬼が口を開く。

    「小娘、お前、歳は幾つになる」
    「14歳、ぴっちぴちの中学三年生よ!」
    「では知らぬのも無理はない。なんせ600年前の風習だからな、キンダーフェストは。……言うなれば人の子どもの誕生会だ。悪魔、悪霊がこぞって誕生日の子どもを狙ってやってくるとの謂れを当時の人間は酷く畏れていてな。その子を守るため多くの者が集まった。それがキンダーフェスト、お前たちが誕生日と騒ぐものの原型だ」

     当時は政腐もしっかりしていた。魔界全土、畏れエネルギーの補給には困らなかった。人間を戒める役割を存分に発揮した、まさに悪魔にとっての古き善き時代だ。そんな風に懐かしみを込めて男は語る。

    「人は神に願いが届くようにとケーキの上に蝋燭を一日中灯していた。無事に一日が終われば火を吹き消し、集まった者たちでケーキを分け合ったそうだ。……小娘たちが昨日からそわそわと準備を進めていたのだ。今日は人の真似事でもしてみようではないか、フェンリッヒ」
    「か、閣下まで……」
    「流石のフェンリっちさんも主人の命には従わざるを得ないのデス!」
    「ナイス、ヴァルっち!」

     さあ、我がシモベが他の悪魔に拐われないよう、盛大に祝うとするか?

     ちらと此方を見た主人は愉しげだ。その表情は、祝福に満ちていた。共に地獄へ堕ちようというあの時、俺に構わず何処へでも行くが良いと表情を殺して言い放った貴方が、今度はそんなことを言うのですか。

     都合良く形を変えては変わりゆく人間の文化も、口元がつい緩んだ自分自身も大概だ。肩をすくめると観念して、ケーキの上の蝋燭へと息を吹き掛けた。


    fin.


    +++++++++++++++++++++


    おまけ

    リッヒ「って……こんな燃え盛る炎、吹き消せるものか阿呆! 蝋燭何本さしたんだ?! 此処を火の海にでもする気か!?」
    閣下「フ、これだけ火を焚いて大騒ぎしていれば……確かに悪魔は近付けまいな」
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    last_of_QED

    DONEディスガイア4で悪魔一行が祈りに対して抵抗感を露わにしたのが好きでした。そんな彼らがもし次に祈るとしたら?を煮詰めた書き散らしです。【地獄の祈り子たち】



    人間界には祈る習慣があるという。どうしようもない時、どうすれば良いか分からぬ時。人は祈り、神に助けを乞うそうだ。実に愚かしいことだと思う。頭を垂れれば、手を伸ばせば、きっと苦しみから助け出してくれる、そんな甘い考えが人間共にはお似合いだ。
    此処は、魔界。魔神や邪神はいても救いの手を差し伸べる神はいない。そもそも祈る等という行為が悪魔には馴染まない。この暗く澱んだ場所で信じられるのは自分自身だけだと、長らくそう思ってきた。

    「お前には祈りと願いの違いが分かるか?」

    魔界全土でも最も過酷な環境を指す場所、地獄──罪を犯した人間たちがプリニーとして生まれ変わり、その罪を濯ぐために堕とされる地の底。魔の者すら好んで近付くことはないこのどん底で、吸血鬼は気まぐれに問うた。

    「お言葉ですが、閣下、突然いかがされましたか」

    また始まってしまった。そう思った。かすかに胃痛の予感がし、憂う。
    我が主人、ヴァルバトーゼ閣下は悪魔らしからぬ発言で事あるごとに俺を驚かせてきた。思えば、信頼、絆、仲間……悪魔の常識を逸した言葉の数々をこの人は進んで発してきたものだ。 5897

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

    last_of_QED

    DOODLE主人に危機感を持って貰うべく様々なお願いを仕掛けていくフェンリッヒ。けれど徐々にその「お願い」はエスカレートしていって……?!という誰もが妄想した執事閣下のアホエロギャグ話を書き散らしました。【信心、イワシの頭へ】



    「ヴァルバトーゼ閣下〜 魔界上層区で暴動ッス! 俺たちの力じゃ止められないッス!」
    「そうか、俺が出よう」

    「ヴァルっち! こないだの赤いプリニーの皮の件だけど……」
    「フム、仕方あるまいな」

    何でもない昼下がり、地獄の執務室には次々と使い魔たちが訪れては部屋の主へ相談をしていく。主人はそれに耳を傾け指示を出し、あるいは言い分を認め、帰らせていく。
    地獄の教育係、ヴァルバトーゼ。自由気ままな悪魔たちを良く統率し、魔界最果ての秩序を保っている。それは一重に彼の人柄、彼の在り方あってのものだろう。通常悪魔には持ち得ない人徳のようなものがこの悪魔(ひと)にはあった。

    これが人間界ならば立派なもので、一目置かれる対象となっただろう。しかし此処は魔界、主人は悪魔なのだ。少々横暴であるぐらいでも良いと言うのにこの人は逆を征っている。プリニーや地獄の物好きな住人たちからの信頼はすこぶる厚いが、閣下のことを深く知らない悪魔たちは奇異の目で見ているようだった。

    そう、歯に衣着せぬ言い方をしてしまえば、我が主人ヴァルバトーゼ様は聞き分けが良過ぎた。あくまでも悪魔なので 7025

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    CAN’T MAKE11/5新月🌑執事閣下🐺🦇【俺の名を、呼んで】今、貴方を否定する。
    「呼んで、俺の名を」の後日談。お時間が許せば前作から是非どうぞ→https://poipiku.com/1651141/5443404.html
    俺の名を、呼んで【俺の名を、呼んで】



     教会には、足音だけが響いている。祭壇の上部、天井近くのステンドグラスから柔い光が射し込んで、聖女の肌の上ではじけた。神の教えを広め、天と民とを繋ごうとする者、聖職者。その足元にも、ささやかな光を受けて影は伸びる。
     しんと凍えそうな静寂の中、彼女はひとり祭壇へと向き合っていた。燭台に火を分け、使い古しの聖書を広げるが、これは決してルーチンなどではない。毎日新しい気持ちで、彼女は祈る。故に天も、祝福を与えるのだろう。穢れない彼女はいつか天使にだってなるかもしれない。真っ直ぐな姿勢にはそんな予感すら覚える眩しさがあった。

     静けさを乱す、木の軋む音。聖女ははたと振り返る。開け放っていた出入口の扉がひとりでに閉まるのを彼女は遠目に見つめた。風のせいだろうかと首を傾げれば、手元で灯したばかりの蝋燭の火が揺らめき、何者かの息によって吹き消える。不可思議な現象に、彼女の動作と思考、双方が同時に止まる。奏者不在のパイプオルガンがゆっくりと讃美歌を奏でればいよいよ不穏な気配が立ち込める。神聖なはずの教会が、邪悪に染まっていく。
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