From the New Worldそれはまったく突然の事だった。至近に雷でも落ちたかのような光に包まれ、視界からは色も形も失われた。強すぎる光に私自身もまた同化したかのようだった。束の間、すべての感覚を喪い、無に帰す。
気づけば私は地面に倒れ伏していた。椅子に掛け、机に広げた総譜に書き込みをしていたはずだが、何もない。手にしていたペンも無くなってしまった。着の身着のまま、野外に放り出されている。
「エルヴィン……団長?」
団長と呼ばれることはないが、楽団長をそう呼ぶ場合もあるのだろうかと惑いつつ体を起こす。青年が一人立っている。
「メフィストフェレス?」
「いや、そんな名前じゃないですけど」
「すまない。取り組んでいた仕事の影響だ。劇中の登場人物の名を口にしたまでで、決して君を悪魔のようだと言ったわけではない」
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