いばらのかんむり「あー……イヌピー?」
ベッドの上がオレの洋服だらけだった。綺麗に並べて堆く丸くなってる。
店に置いておいた私服のすべてをつぎ込んで、ついでにクッションやらタオルやらも巻き込んで。それは形作られていて、その真ん中で蹲るように寝転んだ乾はオレのツナギを抱いていた。
目許が赤い。長い前髪の間からちらっとこちらを見て、泣きそうに眉を歪める。
「……」
「…これ、巣なのか?」
問いかけても乾は答えない。
ただ短い呼吸を繰り返しながら、オレのツナギに顔を埋めている。
□ □ □
その日、渋谷の実家から出勤したオレは真っ暗に静まりかえった店に首を捻った。
いつもこの時間は店の二階を住処にしている乾が朝の開店準備を始めているのが常だったからだ。
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